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クラス召喚されたクラスメイトA  作者: kimera
魔族
24/27

魔獣

今日の夜、もしくは日付が変わったあとくらいに、もう一話投稿すると思います

よろしくお願いします

 魔族領、と言っても所詮は人族がすむ国と同じ大陸の一地方だ。別に草木が一本も生えていない不毛の大地、とかではなく、普通に空気も清々しい。大陸北部のためか、少し肌寒く感じるかな、と言う程度の違いしかない。

 こうやって森を歩いていると、本当に魔族領にいるのか自信が持てなくなるほどだった。

「それはそうだよ。なんだい、もっとおどろおどろしい場所だとでも思ってたのかい?」

 ユンさんがからかうようにそう言ってくるが、まさしくその通りだった。僕は軽く苦笑してうなずく。

「まあ、仕方ないことでもあるけどね。人も魔族もそうだけど、自分に敵対している者や存在を、やたら邪悪なものと思い込みがちだ。そうやって自分の正当性を守っているんだろうね」

「ユンさんって、そういう方面も詳しいんですか?」

「いんや、私は魔法一筋だよ。ただ、私もいろいろ思うことはあるさ」

 そんな下らないと言えば下らない話をしながら、僕とユンさんは町の近くの森を歩いていた。……デートじゃないぞ。ギルドで受けた依頼を達成するためだ。


 ギルドの中は割と清潔な場所で、むしろ役所とかに近いイメージだった。決められたマニュアルに従って、システマチックに以来の受注と報告が行われている。まあ、中にいる人たちはやたら人相が悪かったり、持っている得物が物騒だったりしたが。

 酒場のような場所で屈強な男たちが騒いでいる。そんなテンプレのイメージを持っていた僕にとっては意外だったが、まあ国からも認められる大きな組織ってのはこんなものかもしれない。


 ギルドについて意外だったのは、別に特別な登録なんかがなくとも、誰でも依頼を受けられる点だった。この辺は、ボランティアから始まったことに由来しているのかもしれない。倒した魔獣の死体、もしくは指定された死体の一部を見せることで、誰でも依頼の達成報酬を受け取ることができる。

 それともう一つ意外だったのは、ランクのなんかの階級制度がないことだった。AだのSだのと言ったあのランクである。

 これによって、ギルドで仕事を受ける人たちは全員平等な立場と考えられており、自分は自分、他人は他人、という一種のビジネスライクな考え方が強い。同じギルドの仲間、という認識は薄いようだった。


「むしろ私は、君の想像してたギルドってのが興味あるけどねえ」

 そう言ってこちらに興味深そうな目線をよこしてくるユンさん。まあ、この世界の人にとっては、今のギルドの形が当たり前で正常なのだろう。

「まあ、できた過程に違いがあるから、あり方も違うのは当然かもしれませんね」

「どういうことだい?」

「最初から報酬のある仕事をあっせんするために作られた組織と、無償の奉仕活動から始まった組織では、考え方が違うんじゃないんですか」

「なるほどねえ」


 さて、そういうわけで思っていたよりもあっさりと仕事を受けることができた僕たちだったが、ここで椎名がチームを分けることを提案した。

 というのも、依頼に出ていた魔獣は(ユンさんの情報が正しければ)魔物よりも強いとはいえ魔族には及ばない程度の強さでしかないため、全員で一つの依頼を達成するのは効率が悪いのだ。椎名とユンさんの強さは良く知らないが、まあ、僕なんかより強いのは確かだろう。

 さらに言えば、いくら余裕だからと言って、必要でもないのにジュナを危険地帯に連れて行く理由もない。たびのあいだ、椎名が極力魔物を避けるように動いていたのは、やはりジュナがいたからと言うのが大きいようだ。

 そう言うわけで現在、ジュナと野中さんの二人は、先に確保した宿で留守番をしてもらっている。そして、僕とユンさん、椎名とヒョウカさんの二つにチームを分けて、ギルドの依頼をこなしている、と言うわけだった。


「今回、僕たちが討伐するのは狼の魔獣でしたよね」

「そうだね、魔獣としてはどちらかと言うとオーソドックスな類だよ」

 魔獣は既存の獣から突然変異で生まれた個体を指す言葉なので、魔獣に固有名はない。狼が変異した魔獣は「狼の魔獣」、鼠が変異した魔獣は「鼠の魔獣」と呼ばれるだけだ。

 わざわざ名前を付けない理由の一端として、同じ種族から生まれた魔獣だったとしても、能力が個体によって全く違うことがあげられる。

 今回の狼の魔獣にしても、過去には魔素の影響でかなり巨大化した例もあれば、魔族顔負けの魔法を操る例も確認されている。個体ごとに能力はおろか見た目さえ変わるため、名前を付けてのカテゴリー分けが、あまり意味を持たないのだ。


「今回の魔獣は、魔法を使うタイプでしたっけ」

「そうらしいねえ。まあ、魔法と言ってもそんな強力なものじゃないみたいだし、そこまで警戒することはないよ」

 そんなやり取りをしながら、ぶらぶらと森を散策する。ゲームみたいに一つのところで敵がじっとしているわけもないので、こうして移動しながら遭遇を待つしかない。

 森の中は薄暗く、またときおり普通の野生の動物の姿も見かけるため、対象の魔獣を見つけるのも一苦労だろう。僕はそう考えていたが、ユンさんは自信ありげだった。

「そりゃあ、ユキには負けるけどねえ。私だって、気配を読むのは得意な方だよ」

 そう言って笑うユンさんは心強い。もちろん僕自身も油断する気はないが、こういうことでユンさんに勝てる気が全くしない。索敵はまあ、お任せしよう。……戦闘でも勝てる気はしないけど。

 実際、その気配にいち早く気付いたのはユンさんだった。


「――っと、来るよ、田中くん。右の方からだ」

「了解です」

 その場に立ち止まり、見通しの悪い木々の向こうに目を凝らす。若干の緊張がある。魔物とは何度も相対したが、魔獣と戦うのは初めてだ。その緊張が伝わったのか、後ろからユンさんが声をかけてくる。

「まあ、それほど強い魔獣でもないよ。後ろから私もフォローするし、気楽にいこうじゃないか」

「よろしくお願いします」

 気の抜けるようなユンさんの声に、少し肩の力が抜けた。と同時に、木々の間から何か矢のようなものが飛来する。僕が何かするより早く、ユンさんの指から放たれた赤い閃光が、その矢のようなものをすべて撃ち落とした。


「ふむ、簡単な魔法の類だね。迂闊に近づいてこないだけの知能を持ってるみたいだけど、これじゃあ力不足だ」

 先ほど飛来した矢のようなものは、どうやら対象の魔獣が放ったものであったらしい。僕は軌道から、魔獣のいる位置に辺りをつける。

「うん、魔法の対処は問題なく私がやるよ。君は前衛の動きをしてくれ」

「了解です」

 そう言って、地を蹴る。ここ最近、幾度となくヒョウカさんと模擬戦を行っていたため、僕の戦闘力も劇的とは言えないまでも上がってきている。特に、踏込みは大きく変わった。

 今までの我流の動きから、ヒョウカさんから習った武術の洗練されたものへ。……まあ、まだまだ完璧とは言い難いものだけれど、それでも成果は形になって表れている。

 急速に距離を詰める僕に次々と魔法の矢が放たれるが、すべて後ろからの赤い閃光によって撃ち落されていく。宣言通り、ユンさんと狼の魔獣では魔法の力に圧倒的な差があるようだ。

 正面から飛んでくる魔法の矢はすべてユンさんに任せ、僕は魔獣のいる繁みに一直線に進む。ここに至って魔獣は魔法戦では勝ち目がないことを悟ったようで、繁みから飛び出して僕に襲いかかってきた。


「ギャウッ!」

「……っ」

 僕が剣を振るよりも、魔獣が僕に到達する方が早い。僕は無理に攻撃に移らず、体を半身ずらして魔獣の飛びかかりを躱した。交差するようにすれ違い、僕と魔獣の位置取りが入れ替わる。すぐさま剣をふるうが、機敏な動きで躱された。

 野生動物と人間を比べると、運動性能では圧倒的に野生動物が勝っている、と言う話を、日本にいた時聞いたことがある。やはり、魔獣と僕では基本的な運動性能が違うのだろう。俊敏性もさることながら、動体視力なんかもすぐれているはずだ。

 まともに斬りあえば、危険だ。僕は剣を短く持ち、体に引き付けるように構えた。少し窮屈だが、身を守るには適した構えだ。


「グルァッ!」

 魔獣が一足飛びにこちらに飛び込んでくるが、守りのみに意識を割いていれば、見切れないほどではない。僕はとびかかってくる魔獣を余裕をもってあしらう。

 もしも、僕と魔獣の一対一の戦いだったなら、このままでは僕のじり貧だ。防ぐばかりでは神経が磨り減るし、体力も魔獣の方が上だろう。いずれバテて、負ける。

 しかしいま、僕は一人で戦っているわけではない。とても頼れる味方がいる。


「そこだね」

 その声とともに、魔獣の右方向から高速で飛来した赤い閃光が、魔獣の体を薙ぐように通り過ぎた。魔獣は声すらあげることなく、その場に倒れる。

 魔獣からすれば、ユンさんは魔獣の後方にいたはずだったので、右方向からの攻撃は完全に予想外だっただろう。ていうか、僕も予想外だった。いったいいつ移動したんだ。


「いやあ、お疲れさん」

「お疲れ様です」

 ニコニコとこちらに手を振るユンさんに応える。ユンさんは満足げにうなずいた。

「うん、安定した良い戦いだったよ」

「いえ、助けてもらってばっかりで申し訳ないです」

「そんなことないさ」

 そう言ってユンさんはほほ笑んだ。

「私は私の仕事をした。そして君は君の仕事をした。どっちも同じくらい大切なものだよ。別にルールのある決闘をしてるわけじゃないんだし、人に頼るのは悪いことじゃないさ」

「そう、ですね。ありがとうございます」

 それでも、自分一人で何でもできて、もっと鮮やかに魔獣を倒せたら――なんて考えてしまうのは、僕がまだまだ若くて未熟だってことなんだろうな。


「よし、それじゃあ証明部位だけ剥ぎ取って帰ろうか。ジュナも待ってるだろうしね」

「そうですね」

 僕はそう答えて軽く息をはいた。 

どうも、kimeraです。ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

誤字の訂正をくれた方、ありがとうございます。大変助かりました。

見直しはするようしているのですが、つい見落としてしまいますね。気を付けます。

感想・誤字の指摘・評価等していただけると、泣いて喜びます。よろしくお願いします。

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