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クラス召喚されたクラスメイトA  作者: kimera
魔族
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ギルド

少し遅れました

 僕たちは最前線の山を抜け、魔族の領土に入ったわけではあるが、魔都までの道のりはそこから遠かった。

 まあ、当たり前である。大陸北部にある魔族領から魔族が侵攻を開始したのが、そもそも事の発端だ。よって、魔族の本拠点ともいえる魔都は、大陸の北部にある。

 それに対し、僕らが出発した最前線付近は、大陸中央部。僕らがいるルーレ大陸が、いったいどれほどの広さがるのか知らないが、近いわけがない。

 実際のところ、僕や野中さん、椎名は大陸南部にあるエルーゼ王国から出発しているので、そういう意味では移動距離は同じものだと言える。しかし、僕と野中さんは最前線の基地までは馬車で移動してきた身だし、椎名も町と町の間を馬車で移動しての旅をしていたらしい。今回のように、野営に野営を重ねるような長い旅路は、初めてだ。


 長く険しい旅路だった。よく、ジュナが着いてこれたものだと感心する。

 街道沿いを、ひたすら一日中歩く日々。たまに魔物と遭遇するときもあったが、歩きづめでストレスがたまっていた椎名とヒョウカさんによって瞬殺されていた。それ以外、一切景色に代わり映えのない旅だった。ぶっちゃけ、面白味も何もない。

 と言っても、さすがに毎日、一日中歩いているわけではない。数日に一度のユンさんが町に買い物に行った日は、一日休憩日だった。まあ、みんな疲れがあるのか泥のように眠っていたが。


 正直、なんでこんな思いしてまで魔都を目指しているのか、はなはだ疑問だ。疑問だったが、日に日に機嫌が悪くなっていく椎名を見ていると、そう問うのも悪い気がして、結局聞けていない。ぶっちゃけ、あんまり関わりたくないレベルで怖かった。

 まあ、椎名自身も何とかなると楽観視していたツケが来ていることは自覚していただろう。それでも一度自分の一度決めた方針を変えない辺り、すごいが馬鹿だ。


 そんな泥色の日々を乗り越え、僕らはやっとのことで本当の魔族領――つまり、戦争以前から魔族が支配していた土地まで来ていた。やっとここまでやって来たという達成感を感じるが、魔都はまだ先だ。

 だが、ここからの旅は今までよりもましになることは確かだった。


「魔族領って言っても、別に魔族だけが暮らしているわけじゃないよ。人族の国に人間だけが生活しているわけじゃないだろう?それと同じだよ」

 町の入り口の検問の前で列に並びながら、ユンさんはそう言った。

 僕たちは現在、全員で魔族の町に入ろうとしていた。先ほどユンさんの言った通り、別に魔族領の町だからと言って魔族しか入ってはいけないわけではないらしく、この先は普通に町の宿に泊まったり、町と町をつなぐ馬車で移動したりができるそうだ。

 今までの町は戦争で奪った町であったために、他種族が入ることが難しかった。しかし、元から魔族の領土にあった町は、そこに住んでいる他種族も多く、入るのは割と簡単、と言う話らしい。

「まあ、私も別に魔王軍の方針に詳しいわけではないから、予想にすぎないけどね」

 最後に微妙に不安になる言葉を突きたしたユンさんだったが、実際僕の心配は杞憂だったようで、町にはすんなりと入ることができた。あっさり過ぎて、逆に不安になるくらいだ。


「まあ、魔族はそれは強いし割と器用な種族だけど、なにしろ数が少ないからね。他種族もいてくれないと、広い領土を回すこともできないのさ」

 ユンさんの説明を聞きながら、大通りを歩く。確かに、魔族の数が多くを占める中、獣人や人間の姿も多く見かけるな。

 いつもは先頭を歩いている椎名も、先導をユンさんに任せて辺りを興味深そうに見回している。慣れない場所が怖いのか、ジュナと野中さんは、その椎名にぴったりとくっついて歩き、その後方で周囲を油断なく警戒しているのがヒョウカさん、と言う並びだった。

 爆発しろ、と椎名に一瞥くれた後、僕はユンさんに向き直った。

「でも、そんなに人数が少ないのに、領地を拡大する戦争を起こすのって妙じゃないですか?」

「妙だねえ。私も、魔族が戦争を起こすとはちっとも思ってなかったから、正直びっくりしてるんだよ。少なくとも、今の魔王様はそんなことする人じゃないと思ったんだけどねえ」


 ユンさんの何気ない一言に、思わず顔が引きつった。

「魔王を、知ってるんですか……?」

「おっと、そう言えば君は魔王様にふっとばされてここにいるんだったね」

 ユンさんは今気づいた、と言う顔をこちらに向けてくる。わざとらしい。ていうか、確証はないが、絶対わざとだろう。

 僕の恨めし気な視線に対して、ユンさんは何がおかしいのか、からからと笑う。

「まあ、あの子は良く勘違いされるが、悪い子じゃないんだよ。少なくとも、私はそう思ってたけどねえ」

「仲、良かったんですか?」

「どうだろう?あっちは私のことなんて覚えてないかもしれない。そのくらいの付き合いだよ」

 そう言って、ユンさんはほほ笑んだ。彼女が自分のことを語りたがらないのはいつものことなので、僕もこれ以上はつっこまない。最近、この人との距離感も分かってきた。


「で、俺たちはどこに向かってるんだ?」

 僕たちの話がひと段落するのを待っていたのか偶然なのか、黙って周囲を見ていた椎名がそうユンさんに尋ねる。ユンさんはくるりと椎名に振り向き、器用に後ろ向きに歩きながら言った。

「今晩泊まる宿を探しに――と言いたいところなんだけど、その前にちょっと寄りたいところがあってね」

「寄りたいところ?」

「ああ、ギルドだよ」

 ユンさんはそう言って、体を正面に戻す。どうやらこれ以上の説明は不要だと思っているようだ。僕は思わず尋ねた。

「ユンさん、ギルドって……?」

「おや?……ああ、そうか。そう言えば人族の町にはそんなものなかったんだったね」

 ユンさんは軽く頬を掻くと、ギルドとやらの説明をしてくれた。


 ざっくり言うと、ギルドとは、よくファンタジー小説なんかで見る冒険者ギルドと同じものらしい。

 大陸北部、つまり魔族の領地は、外魔素の影響がどうたらこうたらで魔獣の類が多い。どうたらこうたらの部分は、ユンさんが専門用語連発で教えてくれたのだが、僕にはさっぱり分からなかった。

 それで、そんな魔獣の多い地域ではおちおち暮らしていられない――と言うわけではないらしく、種族的に戦闘力の高い魔族は、普通に暮らしていけてたらしい。

 しかし、魔族以外の他種族はそういうわけにもいかない。兵士でもない人間が魔獣と不意に遭遇することは、それだけで死を意味する。

 そこで、そう言った他種族のために魔族が町付近の魔獣を狩り始めたのが、ギルドの始まりなんだそうだ。

 初めはボランティアでやっていたこのギルドだが、流石に命の危険がある仕事を無料でやりたがる魔族は少ない。そこで、魔王が政策の一部として、税金の一部を使ってさまざまな魔獣の討伐に報奨金をつけたことで、このギルドを利用する人が一気に増えた。

 今では魔族だけでなく、他種族の中でも腕自慢たちが集まるかなり大規模な組織、それがギルド。


「てことは、ユンさんもギルドに入っているんですか?」

「そうだよ。まあ、しばらく仕事を受けてなかったけどねえ」


 ちなみに魔獣というのは、ややこしいが魔物とは別物だ。魔物は魔族が使役するあの醜悪な見た目の生き物のことを指すが、魔獣と言うのはさまざまな種が存在する。

 外魔素から何かしらの影響を受け、突然変異をした獣、それが魔獣だ。その性質上、魔法を使えるものが多く、人族にとってはかなりの脅威となっている。

 人族の領土では、魔族と同じように稀に表れては人に害を為す災害のような扱いだったが――そうか、ここにはそんなのがごろごろいるのか。

 うんざりとため息を吐きそうになる。後ろでヒョウカさんが嬉しそうに笑っているのが容易に想像できるが、この情報で喜ぶのは戦闘狂だけだ。


「話がそれたが、それでなんでそのギルドに向かってるんだ?」

「それなんだけど、どうも路銀が心もとないからねえ。ここでてっとり早く金を手に入れようと思えばギルドが一番さ」

 なるほど、路銀の問題か。確かに、これから先、町の宿に泊まったり馬車で移動したりするのなら金はいくらでも必要となるだろう。

 しかし、椎名たちの財布を握っているのはユンさんだった、と言うのが意外だった。考えてみれば、ここ最近は食料の買い出しをユンさん一人で行っていたので、当たり前と言えば当たり前なのだが……。

 なんだか、余計なものを買ってきそうなイメージがぬぐえない。

「何か、失礼なことを考えてないかい?」

「いえ……」

 なんでみんなこんなに鋭いんだ。

 あわてて目をそらす僕をユンさんは面白そうに見ていたが、やがて「おっ」ろ声を上げた。


「着いたみたいだよ」

 その視線の先を追ってみると、周囲の建物と比べて一回りほど大きな建物が見える。どうやら、あれがギルドの建物らしい。

「と言うわけで、魔獣の討伐をしてお金を稼ごうか。田中くんも手伝い頼むよ」

「はい、もちろんです」

 まあ、完全におんぶにだっこで旅に同行させてもらうより、気が楽なのは確かだ。今までは食事をするのにも申し訳なさがあったからなあ。


 しかし、こんなところでテンプレである冒険者になるとは。僕は一つ息をついて、ギルドの扉をくぐった。


どうも、kimeraです。ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

4章スタートです。冒険者って、こういう小説だとよく出てきますが、初めて考えた人って誰なんですかね?

感想・誤字の指摘・評価等していただけると、泣いて喜びます。よろしくお願いします。

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