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クラス召喚されたクラスメイトA  作者: kimera
椎名雪
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閑話・主人公たち 3

side 神代


 清々しい晴れ模様だった。この世界に来て半年以上が過ぎて、まだ何も為すことはできず――それどころか失ってばかりだった俺には、分不相応なほど晴れ渡った空だ。

 だが、旅立ちには絶好の晴天だ。俺は空から視線を落として、周りにいる面々を見回した。


「さ、早く出発しましょう」

「そうそう、さっさと片付けて、この世界を救わないとね」

 そう明るい声を出すのは、クラスメイトの宮野杏と月川美月。彼女たちには本当に世話になっている。

 杏はいつも献身的に俺を支えてくれるし、彼女の「炎術士」としての魔法は前衛が多い俺たちには欠かせない存在だ。更には無茶をしてけがの多い俺のために、わざわざ苦手な回復魔法を習得してくれていて、文字通りの生命線として、これからの旅を助けてくれるだろう。

 美月はいつも通り、暴走しがちな俺を抑えてくれるストッパー的な存在。俺と同じ前衛でありながら、「魔法剣士」と言う職業を生かして、中衛的な立ち回りで俺たちをフォローしてくれる。彼女に危機一髪の場面をすくわれたことは何度もある。


「魔王を倒せば終わるんだろ。だったら早いとこ倒しちまおうぜ、リーダー」

 そう言って、男臭い笑みを浮かべるのは寺岡周平。こいつとは意見が衝突するときもあったが、根は俺とどこか似ているのだろう。今ではすっかり意気投合し、本音で言い合える男友達になっている。職業「拳闘士」を持った、俺と二人で前線を支えてくれる頼もしい奴だ。


「準備はいいかい、神代くん」

 そう言ってほほ笑むのは、僕たちをここまで導いてくれたレスターさん。彼の豊富な戦闘経験は僕たちにはないもので、いつも助けられてばかりだ。いつ彼にも何か恩返しがしたいのだが、まだまだ未熟な俺たちは、今はまだ、彼の力に頼らざるを得ない。


 この四人に僕を加えた五人が、今回の旅路のメンバーだ。正直、砦にいる最高戦力と言ってもいいメンバー。これだけの面子を集めたのは、それなりの理由がある。

 今回の旅の最終目標は、魔王の討伐だ。

 執拗なゲリラ戦を展開してくる魔族に対し、その場しのぎの対処だけではらちが明かない。だから俺たち最精鋭のメンバーが、魔族を避けながら敵の本拠地を叩く。そうすれば、魔族も戦線を維持できなくなるだろう。


 もちろん、簡単なことじゃないし、問題は山ほどある。町に寄れない以上、野宿することは確定だし、食料も現地調達になる。魔獣やその他の獣を狩って、それを食料とするしかない。魔物を食べるのは……ちょっと見た目的に勘弁だけど。

 それでも、俺たちは魔王を討ちにいく。そう決めたのは、やっぱりあの一件があったからだ。これ以上、余計な犠牲を出さないためにも、ここで俺たちが全部終わらせる。


「皆様、お気を付けて。あなたたちにこの世界の命運を託します」

 そう言って頭を下げてきたのは、セシリア様。彼女はレスターさんに代わって、この砦の司令官をやってもらうことになっている。と言っても、彼女自身は戦闘経験が乏しいので、周りのいろんな人たちがフォローしていく形になるのだろう。

 彼女はいつも、俺たちに対して謝っていた。自分が呼んだせいで、辛い役割を任せて申し訳ない、と。

 優しい人だ。勝手に呼びだされた当初は、恨むような感情も少しはあったけれど、今では彼女も僕たちの仲間の一人だ。守りたい、そんな存在だ。


 セシリア様の台詞に一つうなずいて、俺はこれから旅をする仲間たちと、見送ってくれるクラスメイト達を見回した。頼もしい笑みを浮かべる仲間たちに、俺たちに期待を寄せてくれているクラスメイト達。俺はそれらを見回した後、ゆっくり瞼を閉じた。

 思えば、色々なことがあった。失敗ばかりで、失ったものばかりの苦い記憶が、頭の中に流れる。やはり、一番鮮烈に浮かぶのは、津川と悠里、そして田中の顔。彼らを、俺の力が足りないばかりに、犠牲にしてしまったこと。

 しかし、失ったからこそ得たものもある。悔やんで、悔やんで、悔やんだからこそ手に入れた、今度こそ誰かを守る力がある。

 杏は回復魔法をものにし、美月は中衛での立ち回りを習熟し、俺と寺岡は――勇者の真の力である「職業の裏」を手に入れた。この力と面子がそろえば、あの強大な魔王にだって引けを取ることはない。


 俺は閉じていた瞼を開いて、まっすぐ前に視線を向けた。

「よし、出発だ!」

 さあ、行こう。この戦いを終わらせに。




side 椎名


 今回はお休みとさせていただきます。




side 津川


「……ん」

 朝日がカーテンの隙間から細く差し込み、僕の顔を照らす。瞼越しにも感じる眩さとぬくもりに、僕はゆっくりと目を開けた。

 豪奢な部屋だった。日本にいたころならば見たこともないような、仮に見たとしてもテレビの向こう側に広がっているような、そんな部屋。部屋の中央にぽつんと置かれたベットから上体を起こし、僕はぼうっと部屋を眺める。


「……起きたか」

 ふと、そう声をかけられて、やっと意識がはっきりと覚醒した。視線を向けると、まるで最初からそこにいたかと思うほど静かに、魔族の男が部屋の隅に立っていた。いや、本当に最初からそこにいたのかもしれない。彼はいつも気配を殺しているからな。

「脅かさないで下さいよ、レンさん」

 僕がそう言ってベットから抜け出すと、男――レンさんはむっと眉根を寄せた。

「別に脅かしたつもりはないのだが」

「気配がなさすぎなんですよ……っとと」

 無自覚なレンさんに突っ込みを入れながら立ち上がろうとしたとき、体が思ったように動かず、思わず体勢を崩してしまった。何とか転ぶことだけは避けて踏みとどまる。……どうやら、大分足腰に来てるな。


「大丈夫か?」

「ええ」

 心配そうにこちらに寄ってきてくれたレンさんにそう返事して、今度こそ体を起こす。同時に、包帯だらけで生傷が多く刻まれた自分の体を見下ろした。細身ながら筋肉もしっかりついている体。ここに来る前、城にいた時と比べて、見違えるほどたくましくなったものだ。

「どうする、今日の訓練はやめとくか」

 気遣うようにそう言ってくるレンさんに、僕はゆっくり首を振った。

「いや、やります」

 レンさんが困ったようにこちらを見てくるが、考えを変える気はなかった。もう、あの時のように自分の力のなさを嘆くのはごめんだ。


「……そうか」

 しばらくこちらをじっと見ていたレンさんは、やがてふっと息を吐いて笑った。

「参加するからには手加減はできんぞ」

「望むところです」

「いい返事だ。……だが、無理はするなよ。何か体に異変があれば、遠慮なく言え」

「はい」

 僕の返事にレンさんはうなずくと、こちらに背を向けて部屋から出て行った。さて、僕も着替えて準備をしないと。

 訓練用の服に着替えながら、ここ最近の怒涛の出来事を思い返してみる。


 あの日、砦からみんなで出発し、魔族に襲われて散り散りになった時。僕は数名のクラスメイトと一緒に山道を逃げていた。そしてその最中に、また別の魔族の襲撃を受けたのだ。

 僕にとって不幸だったのは、何の因果か僕と一緒に逃げていた連中が、いつも僕を虐めてくる不良グループだったことだ。彼らは当然のように、僕を囮にして自分たちは逃げ出した。

 そして僕が幸運だったのは、目の前の魔族に殺されそうだったところを、助けてくれた人がいたことだった。


 魔王、と呼ばれている少女。ルー・エシュタミオン。勇者としてこの世界に呼び出されていた僕は、倒すべき敵の親玉によって命を救われた。彼女がやってくるのが数秒遅れていれば、僕はこの世にいなかっただろう。

 そうして僕は魔王に保護され、今はこうして魔王城の一角に住む場所を与えられている。


 魔王城で暮らしていれば、魔族の情勢については嫌でも詳しくなる。そこで僕は、魔族と言う種族もまた、危機に陥っていることを知った。

 どうやら今魔族は、内乱によって二つの派閥が争っているらしい。

 片方はいわゆる魔王軍。魔王であるルー様を中心にした派閥だ。こちらは通称、穏健派とも呼ばれていて、他種族との共存、関係強化を掲げている。

 それと対を為すのが反乱軍。こちらの中心人物は誰だかわかっていないが、ある日突然、城で重役を務めていた魔族も含めた多くの魔族が、魔王に向かって反乱を起こしたらしい。こちらは通称、過激派と呼ばれ、魔王軍とは逆に他種族の絶滅と魔族だけによる大陸統治を掲げているという。


 そう、僕らが戦っていた魔族は、こちらの過激派の連中であり、僕ら勇者が使命としていた魔王の撃破は、実は全くの見当違いだったのだ。

 さらに驚いたことに、魔族に魔物を扱う力なんてものはないらしい。あれは、過激派の連中がどこからともなく連れてきたもので、魔王軍の魔族にとっても敵と言うことだ。


 魔王ルー様だが、彼女も僕が想像していた魔王像とはかなりかけ離れた人だった。確かに強大な力を持ち、少々戦闘狂の気があるが、とても気さくで優しい人だ。彼女は敵であるはずの僕を助けてくれただけでなく、砦に帰る方法も提示してくれた。

 ではなぜ、僕がまだ魔王城にいるかと言うと――


「おう、ユーヤ、来たか」

 訓練場に顔を出した僕に、にかっと笑って話しかけてきたのはカイムさん。当然彼も魔族だ。

「んで、今日も参加するんだろ」

「はい、お願いします」

「はは、だから俺に堅苦しい敬語遣わなくてもいいって!仲間だろ?」

 そう気さくに笑いかけてくれるのは非常にうれしいのだが、彼は魔王軍の中でもかなり高位の武官だ。なんてったって、あの魔王様にため口でしゃべるほどの中である。そんな人物に気さくに話しかけるほど、僕は肝が太くない。

 あいまいに笑ってごまかした僕に、カイムさんは残念そうに息を吐いた。


「なんだよ、いつまでもつれないなあ……ま、いいや。よし、ユーヤ、今日はいつもの走り込みの後、いつも通りの模擬戦だ」

 つまりいつも通りってことだ。僕は短く「了解」と答えた。


 カイムさんほどの武人に、模擬戦で相手してもらうのは素直にありがたい。おかげで僕の実力も伸びてきている。砦にいたころには魔物一匹倒すのにも苦労していた僕だが、今や魔物の十や二十、全く苦にならずに倒せる。……まあ、手加減が下手なカイムさんと連日模擬戦をしているせいで、体はボロボロなんだけど。


「しかし、ユーヤはビビるくらい飲み込み早いからなあ。今日は俺もガチで行かねえとやばそうだな!」

 なんてカイムさんは言ってくれるが、そんなお世辞に浮かれる僕じゃない。なんてったって、まだカイムさんに勝てたためしがないのだ。やっぱり、まだまだだ。

 僕がこんなに力をつけられたのは、カイムさんに訓練をつけてもらったこともあるが、それだけじゃない。レンさんにもたまに、カイムさんとは趣向の違う訓練をつけてもらっているし、何よりルー様からの助言が大きかった。


「お主は、職業の裏を知ると良い」

 そのアドバイスで初めて知った、僕ら勇者が持っている職業の本質。それを知ることができたからこそ、僕はこうやって人並みに戦える所まで来ることができた。ルー様には感謝してもし足りない。

 ……でも、ここで満足するようじゃいけない。僕は、誰かのヒーローになりたいんだ。その夢をかなえるには、まだまだ力不足だ。もっともっと精進しないと。


「よし、じゃあ走るか!」

「はい!」

「んじゃ、いつも通り外周百周!」

「了解です!」

 返事して、いつも通りのコースを走りはじめる。そう言えば、僕を魔王城で鍛えていることを、神代たちに伝えに行くとルー様が言っていたが、もう帰ってきているのだろうか。

 今日の訓練が終わったら聞いてみよう。そう自分の中でこれからの予定を立てて、僕は自分の足に意識を集中させた。




side 魔王


「お、ユーヤ。今日も精が出るのう」

「あ、ルー様。ちょうど良かった」

「なんじゃ、私に何か用か?」

「この前言ってた、他の勇者に僕のこと伝えに行く件、どうなりました?」

「……」

「あ、あれ?なんかまずいこと言いました?僕」

「……」

「ル、ルー様。急に黙ってしまってどうしたんですか?」

「……」

「ルー様、素直におっしゃった方がよろしいかと」

「え?ミリアさん、それってどういう……」

「ごめんなさいっ!」

「ええっ!どうしたんですか!?ていうか口調、変わってますよ!」


 …………


「あー、なるほど」

「すまんユーヤ!私が不甲斐ないばかりに」

「いや、それはもういいんですけど、これからどうしましょうか」

「どうしようかのう……」

「どうしましょうかねえ……」


「「「はあ……」」」


 


どうも、kimeraです。ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

と言うわけで、津川君復活となります。まあ、予想できていた方も多かったかと思いますが。

次回からは第四章となります。次々と魔族領に集う主人公たち(+α)、本当の敵は誰なのか!?

なるべく早く投稿したいと思います。

感想・誤字の指摘・評価等していただけると、泣いて喜びます。よろしくお願いします。

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