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第8話:「わたしがおねえちゃん!」天智の張り切りお世話と、ミルクの分け合いっこ

第8話:「わたしがおねえちゃん!」天智の張り切りお世話と、ミルクの分け合いっこ

◯月◯日(育児日記 95日目)


タイトル:三つ子の命名と、ちいさなお姉ちゃんの過剰なトントン。


「決まったにゃ! この子たちの名前、村長にも相談して決めたんだにゃ!」


秋の爽やかな風が吹き抜けるメイラさんの丸木小屋で、ルークが胸を張って発表した。


すやすやと心地よさそうに眠っている三つ子の赤ちゃんケットシーたち。 長女は毛並みが白くてしっかりものの『クララ』。 長男(次男)はのんびり屋でちょっと食いしん坊な『ナララ』。 そして三女は、天智と一番最初に手を握り合った、甘えんぼうの『ミララ』。


「クララ、ナララ、ミララ……! 響きも可愛くて、とても素敵な名前ですね!」


「あぅ! くらら! ならら! みららー!」


スライム抱っこ紐の中から、天智が嬉しそうに覚えたての名前を連呼する。 生後九十五日(約三ヶ月)を迎えた天智は、首も完全にすわり、表情も豊かになって「お世話したい欲」が爆発していた。


「あーう! パパ、おろして! おねえちゃんするー!」


「はいはい、分かったよ。でも優しくね?」


床に降り立った天智は、膝をプルプルとさせながら必死にお尻を浮かせて、はいはいとよちよち歩きの中間のようなフォームで、三つ子たちのカゴベッドへ突撃していった。


◇


「……あぅー。とんとん……とんとん……」


天智のお世話が始まった。


まず彼女が取り組んだのは「寝かしつけのトントン」である。 自分がパパにしてもらうように、三つ子たちの背中に小さな手をあてて、優しく「トントン」と叩き始めた。


「みゅ〜……(すやすや)」


白猫のクララは、天智のトントンが心地いいのか、満足そうに「ふにゃ〜」と喉を鳴らして眠っている。


「ふふ、上手ねぇ天智ちゃん。まるで本当のお母さんみたい」


ベッドで体を休めているメイラさんが、嬉しそうに目を細めた。


「あはっ! わたし、おねえちゃん! えっへん!」


褒められてすっかり調子に乗った天智。 しかし、ここからが「お姉ちゃん願望の暴走」の始まりだった。


「あぅ! おなか! へった! みるく!」


のんびり屋のナララが「みゅ〜……みゅ〜……」と小さくお腹を空かせて泣き出すと、天智の「お世話センサー」が全開になった。


「あ! みるく! わたしがあげるーっ!」


天智は自分の口元を指差し、あろうことか自分の服(パパのスライムボディの一部)をグイグイと引っ張り、ナララの口元へ押し当てようとしたのだ!


「待って待て待て天智!? パパの体を直接与えようとしないでくれぇぇぇっ!?」


私は慌てて『変化』スキルで身体の形を変え、天智の手からするりと抜け出した。


そう、天智は「お腹が空いたら、パパの体(から滲み出る自家製ミルク)を吸えばいい」という知識が染み付いているのだ。 自分がパパにしてもらっている最高の愛情表現を、大好きなクララ・ナララ・ミララにも分けてあげようとしたのである。


「あうー! パパダメー! みるくあげるのー!」


「お気持ちは泣くほど嬉しいけれど、子猫ちゃんたちには刺激が強すぎる! 三つ子ちゃんにはメイラさんのおっぱいか、ちゃんと調合した山羊ミルクじゃないとダメなんだよ!」


お世話を邪魔されたと思った天智は、ぷくーっと頬を膨らませて大抗議!


「あう! おねえちゃんなの! みるくあげるのー!」


「困ったな……バイオ学者として、天智の『お姉ちゃんになりたい』という社会性の発達は絶対に阻害したくない。だが、直に吸わせると私の体積が削られて、またミカンサイズに縮んでしまう……!」


悩んだ末、私はバイオ学と『変化』スキルの知識をフル回転させた。


「よし天智! なら『共同作業』だ! パパが器(哺乳瓶)になるから、天智が三つ子ちゃんにミルクを飲ませておくれ!」


私は自らのスライムボディの一部を、持ちやすい小さな「青い哺乳瓶」の形へと変化させた。 内部には、山羊ミルクと少量の栄養エキスを混ぜ合わせた特製ミルクが充填されている。


「ほら天智、このボトルを優しく持って、ナララちゃんのお口にあてるんだ」


「あ……! ほにゅうびん……!」


天智の目が輝いた。 小さな両手で青いスライム哺乳瓶をしっかりと握り締め、慎重に、壊れものを扱うようにナララの口元へ運んでいく。


ちゅー……ちゅー……。


「みゅ〜! うまうま……!」


食いしん坊のナララが、天智の持つ哺乳瓶から勢いよくミルクを飲み始めた!


「あぅっ……! のんだ! のんでくれたーっ!」


天智の顔に、弾けるような大満開の笑顔が咲いた。


「すごいにゃ天智ちゃん! ちゃんとあげる角度もバッチリだにゃ!」


ルークが手を叩いて絶賛する。


「あはっ! クララちゃんも! ミララちゃんも! あーん!」


調子に乗った天智は、続いてクララとミララにも順番に哺乳瓶を差し出し、上手にミルクを飲ませてあげたのだった。


◇


——だが、平和なまま終わらないのが我が家の育児である。


三つ子たちがミルクを飲み終わり、お腹いっぱいになって「ふにゃ〜」と満足そうにし始めると、天智の「お世話欲」は第二段階へと突入した。


そう、「食後のゲップと毛づくろい(?)タイム」である。


「あぅ! とんとん! げっぷー!」


天智は三女のミララを小さな腕でぎゅっと抱きかかえると、背中を「トントン」と叩き始めた。 しかし、力が入りすぎて「バン! バン!」と結構な強さになってしまう!


「みゅっ!? みゅぁっ!?」


「あぁっ! 天智、力加減! 赤ちゃん猫は骨が柔らかいから、優しくなでるだけでいいんだよーっ!」


焦った私が、天智とミララの間に割り込もうとスライムボディを伸ばした、その時。


「あむっ!」


天智が何を血迷ったか、ミララの頭を自分の口で直接「なでなで(ペロペロ)」と舐め回し始めたのだ!


「な、何をしているんだ天智ぃぃぃっ!?」


「あぅ? めいらさん、やってた!」


そう、天智は親猫のメイラさんが子猫たちを「舐めて毛づくろい(グルーミング)」している姿をしっかり観察しており、それを『マネッコ』しようとしたのだ!


だが、人間にはザラザラした猫の舌はない。 結果として、天智のよだれで、ミララの頭の毛並みが完全にオールバックの七三分け状態になってしまった!


「みゅ〜……?(オールバックになったミララ)」


「あにゃ〜……ミララちゃんの髪型(毛並み)が、昔のダンディな男役みたいになっちゃったにゃ……」


ルークがそれを見てお腹を抱えて大爆笑!


「あうー! きれいになった! ぺろぺろー!」


天智は得意気になって、今度はナララとクララの頭もペロペロと舐め回し、三つ子全員を「びっしり七三分けオールバック子猫トリオ」へと仕立て上げてしまったのだった!


「やれやれ……毛づくろいはありがたいけれど、よだれまみれだから後でパパがキレイに拭いてあげないとね……」


私は呆れつつも、自分のお腹(スライム)の上で、七三分けになった三つ子たちを誇らしげに見つめる天智を抱きしめた。


◇


夕方。


お世話をし疲れた天智は、三つ子のカゴベッドのすぐ横で、すやすやと可愛い寝息を立てて眠っていた。


その周りには、七三分けの毛並みが少し乾いたクララ、ナララ、ミララが、天智の身体にキュッとすり寄って丸くなっている。


「ふふ、すっかりお兄ちゃん・お姉ちゃん気取りね。天智ちゃんがいてくれて、この子たちも幸せそうだわ」


メイラさんが、眠る子どもたちを温かく見つめながら言った。


「ええ……。失敗ばかりですが、天智の中にこんなにも優しい『お姉ちゃん』の心が育っていたなんて、父親として胸がいっぱいです」


私はスライムボディを静かに広げ、天智と三つ子たちを冷たい夜気から守るように、ふんわりと優しく包み込んだ。


自分の身を削ってミルクを作り、七三分けのよだれを拭き取り、失敗ばかりの毎日だけど。


天智と、クララ、ナララ、ミララ。 4人の小さな命が寄り添い合う温もりに、スライムパパの核(コア)は、今夜も幸せな熱で満たされるのだった。


(第8話・完)


【次回予告】


次回第9話! 生後2週間を過ぎた子猫たちの動きが超高速化!? 『順応』ハイハイの天智と、すばしっこい三つ子たちがスライムパパを「巨大なキャットタワー」にして大暴れ! パパの核が再び大ピンチに!? お楽しみに!

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