第24話:落ち葉の山と気配遮断! パパの『赤外線探知』VS子猫かくれんぼ ◯月◯日(育児日記 160日目 前編
第24話:落ち葉の山と気配遮断! パパの『赤外線探知』VS子猫かくれんぼ
◯月◯日(育児日記 160日目)
タイトル:カサカサ落ち葉の気配遮断! スライム探知の誤作動と、ちいさな捜索隊長の「みーつけた!」。
「……バイオ学者として、そして異世界転生した父親として、私は今、生物の進化における『忍耐と隠密』の恐ろしさに戦慄している……!」
丸木小屋の前にある広大な村の広場で、私は自らのスライムボディを『直径一メートルの青い索敵ドーム形態』へと変形させ、全方位への魔素波を警戒させていた。
育児日記は160日目(生後5か月後半・前回から5日後)。
秋の深まりはピークを迎え、広場の中央には、村のみんなが掃き集めた巨大な「赤と黄色の落ち葉の山(高さ二メートル超)」がドーンと聳え立っていた。
本日のイベントは、1歳を迎えた三つ子たち(クララ、ナララ、ミララ)と、生後160日(5か月後半)を迎えた愛娘・アマチ(天智)による、秋の恒例『落ち葉の大かくれんぼ大会』である!
「ルールは簡単だ! 鬼は私! 君たち4人はこの落ち葉の山や広場の周りに隠れ、一〇〇数え終わるまでに見つからなければ勝ちとする!」
「あぅーっ! かくれんぼ! アマチ、かくれる! ぜったい、勝つもん!」
アマチは気合十分で、頭頂部の「髪の毛猫耳」をピコンッと立ち上げた。 生後5か月後半を迎えたアマチは、よちよち歩きが完璧になり、四つんばいの『猫足ハイハイ』を使えば、目にも留まらぬスピードで移動できる「快速ベビー」へと進化している。
「みゅ〜♪(負けないニャ!)」「ボク、絶対に隠れ切るニャ!」「パパ鬼、ばーかニャ!」
三つ子たちも、ピンと立てた尻尾をパタパタと振って大はしゃぎである。
「よし! それでは……パパ鬼、カウントダウン開始! 一、二、三……」
私が大きなスライムボディを丸め、目を瞑る(核の感度を下げる)と、子どもたちが一斉に「タタタタタッ!」と足音を立てて散らばっていった。
◇
「……九十八、九十九、一〇〇! もういいかいーっ!?」
「「「「……(し〜ん)……」」」」
広場に、静寂が訪れる。
「フッ……カワイイ子どもたちめ。どこに隠れたのか、バイオ学者でありステータス画面を持つこの私に、隠れ通せると思うなよ?」
私はニヤリ(スライムの表面を歪める)と笑うと、新スキル『育児(状態分析&自動温調)』をフル稼働させ、広場全体へと視線(探知波)を走らせた。
ピコン!
【索敵モード起動】 ・対象:アマチ、クララ、ナララ、ミララ ・探知手段:魔素波&生体サーモ(体温検知)
「ふははは! 生体サーモを使えば、どれだけ落ち葉の深くに隠れていようとも、三十六度から三十八度の温かい体温反応が一発で弾き出されるはず——」
……しかし。
ピコン……ピピピ……。
【探知結果:該当反応 0件】
「な……なにぃぃぃぃっ!??? 探知不能だとーーーっ!?」
私は青いスライムの目(視認部位)を限界まで丸く見開いた!
なんと、広場のどこからも、子どもたちの体温・魔素反応が一切感知されないのだ!
「ど……どういうことだ!? 一〇〇数える間に、村の外へ逃げ出したとでもいうのか!?」
焦る私に、広場の脇で薪割りをしていたルークが、くすくすとお腹を抱えて笑いかけてきた。
「にゃははっ! 天山さん、無駄だニャ! 1歳になったケットシーの本気を舐めちゃいけないニャ!」
「ル……ルーク殿!? これは一体……!?」
「ケットシーはね、1歳になると本能的に【気気遮断(断熱隠密)】のスキルを覚えるんだニャ! 自分の体温も魔素も完全に殺して、落ち葉や影と同化することができるんだニャー!」
「な……気配遮断&断熱隠密だとーーーっ!???」
バイオ学者としての科学的常識が激震した!
そう! 1歳(人間での幼稚園〜小学校低学年相当)を迎えた三つ子たちは、ケットシーの本能である「狩りの隠密術」を開眼させていたのだ! 全身の毛並みを落ち葉の温度と同化させ、呼吸すら殺して落ち葉の山の深くに潜んでいるため、私の生体サーモ(赤外線探知)が完全に無効化されていたのである!
「くっ……! まさか子猫たちの野生の本能が、私のステータス探知を上回るとは……!」
◇
しかし、問題は三つ子たちだけではなかった。
「三つ子ちゃんたちは気配遮断で隠れられたとして……アマチはどこだ!? アマチは人間の赤ん坊だぞ!? 気配遮断など使えるはずが——」
私はもう一度、探知波の感度を『最大出力』へと引き上げた!
【生体サーモ:感度五〇〇%に増幅!】
ジジジジジッ……!!
私の体表から、探知出力を上げすぎたことによる強烈な摩擦熱(六十度超)が立ち上り始めた!
「あつっ!? 熱い熱い! 探知出力を上げすぎて私のスライムボディが発熱し始めたぞ!?」
焦る私。 その時、足元の落ち葉の山から——。
カサカサッ。
「あぅ……! パパ、あつい……? 焦げちゃうの……?」
落ち葉の山の隙間から、ひょっこりと顔を出したのは、我が愛娘・アマチであった!
「ア……アマチーーーッ!?? 君もそこに隠れていたのか!?」
「あぅ! くららちゃんたちに、おしえてもらったの! 『息を止めて、落ち葉さんになるニャ』って!」
「な……なにぃぃぃっ!???」
絶句する私!
なんと、アマチは固有スキル『マネッコ』を発動させ、三つ子たちの『気配遮断(断熱隠密)』の身体感覚を完璧にコピー! 自分の呼吸と体温放散を極限まで抑え込み、落ち葉と同化していたのだ!
「マネッコで気配遮断まで模倣するとは……! 赤ん坊の順応能力、恐るべし……!」
「あぅ! でもね、パパ! パパがあつあつになって、落ち葉さんが煙出そうだったから……アマチ、出てきたよ!」
アマチは心配そうに、自分の小さな手を伸ばし、熱くなっていた私の体表を「なで……なで……」と撫でてくれた。
「あ……アマチ……! 私を心配して、自ら出てきてくれたのか……!」
「うん! パパ、あついのダメ! はい、ポンポン!」
なんという優しさだろうか! 勝負に勝つことよりも、熱くなったパパを心配して自分から出てきてくれたのだ!
「う……うう……ぐすっ……! なんて良い子なんだアマチぃぃぃぃっ!」
私は発熱を止め、全魔素を震わせて号泣(液体化)した!




