第22話:秋の収穫祭とお料理お手伝い! 魔法のピンクスープ大噴火 ◯月◯日(育児日記 152日目)後編
◇
シュワーーーーーッ……!
数秒後。
メイラさんの家の中は、天井から床に至るまで、全身ピンク色の温かいハーブ泡まみれとなっていた。
「う……うぐぐ……またやってしまった……圧力と酵素密度の計算ミス……」
泡まみれになってへなへなと崩れ落ちる私。
三つ子たち(クララ、ナララ、ミララ)も、頭からピンクの泡をかぶり、「みゅ〜……?」「泡だらけニャ〜……」と目をパチパチさせている。
そして、事件の主犯(?)であるアマチはというと——。
顔中にピンクの泡をくっつけ、まるで「ピンクのサンタクロース」のようなお髭を作った状態で、自分の頬についた泡を「ペロッ」と舐めた。
「あむ……あはっ! あわあわ、おいちいっ!!」
アマチの瞳が、パッと輝いた!
分解酵素によって超急速加水分解されたポムとカボ芋の泡は、まるで高級ホイップクリームのように甘く、口当たりがシュワシュワと心地よい「極上のハーブムース」と化していたのだ!
「あははははっ! あわあわスープ! おいちいよ、クララちゃん!」
アマチは小さなお手手でピンクの泡をすくい、隣にいたクララやミララの口元へ「あーん!」と差し出した!
「みゅっ……? あむ……」
クララが恐る恐る泡を舐めると——。
「みゅあぁぁぁっ! 甘くてシュワシュワして美味しいニャーッ!」
「ボクも食べるニャ!」「うまうまニャーッ!」
三つ子たちが一斉に大歓声をあげ、自分たちの身体についたピンクの泡を「ペロペロ! あむあむ!」と食べ始めたのだ!
「あにゃ〜! 大爆発したのに、めちゃくちゃ美味しくなってるニャーッ!」
ルークも自分の顔についた泡を舐めて、目を丸くして大喜び!
「あ……アマチ……? 怪我は……なかったかい……?」
私が這い上がりながら尋ねると、アマチは自慢げに胸を張り、頭の「髪の毛猫耳」をピコンピコンと踊らせた。
「あはっ! パパ! アマチ、お料理大成功! ピンクのあわあわスープ出来たよーっ!」
「い、いや……大成功というか大爆発なのだが……まあ美味しかったなら怪我の功名か……」
私がホッと胸の核を撫で下ろした、その時であった。
ガラリ。
掃除道具(ほうきと雑巾)を手にした母猫・メイラさん(Lv.42)が、静かな足取りで部屋の中へ入ってきた。
彼女の顔には、いつもの天使のような笑顔が浮かんでいる。
しかし、視界に浮かぶステータススクリーンが、容赦ない赤文字の警告を発していた。
ピコン!
【名前】 メイラ(Lv.42) 【状態】 『母性の威圧(せっかく掃除した部屋がピンク泡まみれニャ)』 【お怒り度】 85%(静かにブチギレ中)
「「ヒッ……!!!!」」
私とアマチは、一瞬で背筋を凍らせた。
「天山さん……? アマチちゃん……? とっても美味しそうな泡スープだけれど……お部屋の掃除は、誰がやるのかしら……?」
にこっ。
「「申し訳ありませんでしたぁぁぁぁっ!!!」」
私とアマチは、即座にピンクの泡の上で『正座(土下座スライム&土下座アマチ)』の体勢をとった!
「天山さん! あなたはスライム掃除機になって、部屋中の泡を1分以内に全て吸い取りなさい!」
「は、はいっ! 『吸着清掃モード』起動いたしますっ!」
「そしてアマチちゃん!」
「あぅ……っ! はいっ……!」
アマチが涙目になって縮こまる。
「お姉ちゃんとしてお手伝いしようとした気持ちは、とっても立派でしたよ。でもね、お料理の時は暴れないで、ちゃんとパパの手を握っていなさいね?」
メイラさんは優しく腰をかがめ、アマチの顔についたピンクの泡を、布巾で優しく「ポンポン」と拭き取ってくれた。
「あぅ……おかあしゃま……ごめんなさいニャ……」
「いいのよ。さあ、きれいに拭けたら、みんなで美味しい泡スープをいただきましょうね」
「あはっ! はいっ! おかあしゃま、だいすきーっ!」
アマチがメイラさんのお腹にぎゅーっと抱きつき、泣き笑いの笑顔を見せた。
◇
それから30分後。
私の「超高速スライム吸着清掃」により、メイラさんの家は見違えるほどピカピカに元通りとなった。
大きな器に盛られた「ピンクのハーブ泡ムーススープ」を囲み、天智、三つ子たち、ルーク、メイラさん、そして私が食卓についていた。
「あむ……シュワシュワ……おいちいね、ミララちゃん」
「ニャ♪ アマチのスープ、世界一ニャ!」
1歳を迎えた子猫たちと、生後5か月を迎えたアマチが、並んで仲良くスープをスプーンですくって食べている。
失敗は大爆発だったけれど。 アマチが「お姉ちゃん」として張り切り、失敗を乗り越えてみんなで笑い合ったこの時間は、何物にも代えがたい宝物だ。
「よし……明日からは『過剰発泡しない、安全バイオ調味料』の研究だな……!」
へとへとになりながらも、すでに次なる料理の研究を始める私。
甘いポムの香りが漂う温かい部屋の中で、スライムパパとアマチの賑やかな秋の日は、どこまでも幸せに過ぎていくのであった。
(第22話・完)




