第19話:青い画面と魔法のボタン! パパのレベルアップ大作戦 ◯月◯日(育児日記 140日目)後編
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「まず……これ! たべて!」
アマチが最初に持ってきたのは、干し魚の木箱から掴んできた「特大の干しイワシ(魔獣魚)」だった!
「あぅ! おさかな、栄養いっぱい! パパ、あーん!」
「むぐっ!?? アマチ、パパはスライムだから、そのまま口(表面)に押し付けられても——」
「パパ! 噛まないとダメ! モグモグして!」
アマチが私のスライムボディを「ぎゅーっ!」と押さえつけ、干しイワシを強引に体内にめり込ませてくる!
「にゃははっ! ボクも手伝うニャ! ほら、山羊ミルクも飲むニャ!」
長男ナララが、スープ皿に入った山羊ミルクを前足でバシャッと私に向かってひっくり返した!
バシャァァァンッ!!
「ぐわぁぁぁっ!? 顔面(前面)にダイレクト山羊ミルク!!」
「私はクララニャ! 運動もしないとレベル上がらないニャ!」
長女クララが、私の頭上へトウッ!と飛び乗り、爪を立ててガシガシと背中を叩き始めた(※彼女なりのマッサージのつもり)!
「痛っ!? 痛くはないが、高分子ゲルの表面張力がズタズタにーーーっ!」
「みゅふ〜っ! アマチ、お背中トントンするニャ!」
三女ミララとアマチが、両側から私のスライムボディを「バン! バン!」と力まかせに叩いて伸ばす!
「あふぁぁぁっ!? 食べさせられ、飲まされ、叩かれ、引き伸ばされ……これのどこがレベルアップなんだぁぁぁぁっ!?」
「天山さん……完全に子どもたちのおもちゃ(粘土)にされてるニャ……」
ルークが呆れ顔で壁にもたれかかり、遠い目で見つめている。
しかし! バイオ学者としての私の体内で、驚くべき変化が起き始めていたのだ!
アマチが押し込んできた高タンパクの干しイワシ。 ナララがぶちまけたカルシウム豊富な山羊ミルク。 そして、クララたちが全身を「バンバン! トントン!」と叩いてくれたことによる、魔素と物理刺激による内部流体運動の超活性化!
ジュワァァァァァァッ!!
「な……なに……っ!? 体内で栄養素と魔素の代謝スピードが、通常の十倍に跳ね上がっている……!???」
私の体表から、ぽかぽかと温かい蒸気が立ち上り始めた!
ピコン! ピコン! ピコン!
視界に浮かぶステータススクリーンが、激しい効果音とともに眩い光を放ち始めたのだ!
【個別栄養素:タンパク質・カルシウム・微量魔素の急速吸収を確認】 【物理刺激によるゲル細胞の自己修復・増殖反応が限界値を突破しました】
【HP(質量)が急速回復中:40 ➔ 60 ➔ 80 ➔ 100(MAX)!!】
「な……質量が最大値まで完全復元されたーーーっ!!」
私の身体が、ドッジボール大から一気にボコボコと膨れ上がり、本来の威容である『直径一メートルの巨大バランスボール形態』へと完全復活を遂げたのだ!
だが、変化はそれだけにとどまらなかった!
ピコピコピコピコ——ポーンッ!!
視界全体を埋め尽くすほどの、ド派手なファンファーレが鳴り響いた!
【レベルアップ!!】 個体名:風海天山 のレベルが上がりました! 【Lv.12 ➔ Lv.13】
【新スキル習得】 ・『弾力衝撃吸収(大)』 ・『育児(レベル測定)』➔ 『育児(状態分析&自動温調)』へ進化!
「な……なにぃぃぃぃっ!!? 本当にレベルが上がっただとーーーっ!???」
私は自分の巨大化した青い体を震わせ、叫び声をあげた!
子どもの「レベルあげごっこ」だと思っていたカオスな騒動。 しかし、アマチたちの放った無茶苦茶な栄養補給とマッサージ(刺激)は、バイオ学的に見ても「スライムの細胞分裂とレベルアップの最適解」を奇跡的に射抜いていたのだ!
◇
「あ……! ピカーッてした! パパ、おっきくなったーっ!」
最大値(一メートル)まで巨大化し、ツヤツヤの青い光を放つ私を見上げて、アマチが歓声をあげた!
アマチの視界のステータススクリーンでも、パパのレベルが「Lv.13」になり、HPが「100/100」の満タン表示になったのがハッキリと見えたのだ!
「あはっ! パパ、つよくなった! レベル13だーっ!」
アマチは目を輝かせ、巨大化した私のスライムボディに「ドスンッ!」とダイブしてきた!
「あぐっ……! ふふ……アマチ、ありがとう! 君のおかげで、パパは本当に強くなれたよ!」
私は『進化』した新スキル『自動温調』を稼働させ、抱きついてきたアマチの体温を察知し、スライムボディの表面を「ぽかぽかの三十六度半」へと自動調整した。
「あぅ〜……パパ、あったかい……モチモチ……」
アマチが気持ちよさそうに顔をうずめる。
三つ子たち(クララ、ナララ、ミララ)も、「ボクたちの手伝いのおかげだニャ!」「パパ、おっきいニャ!」と大喜びで、巨大な私の上へと飛び乗ってきた!
「ニャはーっ! 特大キャットタワーの復活だニャーっ!」
「こらこら、飛び乗っても大丈夫だけど、爪は立てないでおくれよー!」
4人の子どもたちが、完全復元した私の巨体の上で、ポヨンポヨンと跳ね回る。
進化・補強された私の『弾力衝撃吸収(大)』は、4人の激しいジャンプの衝撃を完全に吸収し、どれだけ跳ねられてもビクともしない圧倒的な安定感を誇っていた!
「やれやれだニャ……」
一部始終を見ていたルークが、呆れ顔で頭を掻いた。
「無茶苦茶な『レベルあげ』だったけど……結果オーライってやつかニャ。天山さん、前より一段とツヤツヤして強そうだニャ」
「フッ……科学と愛、そして子どもたちの無邪気なパワーが合わされば、不可能などないのだよ、ルーク殿!」
私は誇らしげに、巨大な体を揺らしてみせた。
◇
夕方。
たっぷり「パパのレベルあげ」と「巨大タワー遊び」を楽しんだ子どもたちは、お腹を空かせて、すやすやとお昼寝の時間を迎えていた。
私の大きな身体の真ん中で、アマチと三つ子たちが重なり合うように丸くなっている。
アマチの手は、自分の視界に浮かぶ青いステータス画面に向かって、眠りながらも不器用に「トントン……」と触れようとしていた。
画面に映る、パパの【Lv.13】と【HP:100 / 100】の文字。
「あぅ……パパ……ずっと……つよいパパ……」
小さな寝言を呟くアマチ。
自分のために身を削り、小さくなってしまうパパを心配し、無我夢中でレベルを上げてくれようとした、我が愛娘の優しさと成長。
ステータススクリーンに刻まれた数字は、ただのゲーム的なデータではない。 それは、私とアマチ、そしてこの村の温かい子どもたちが紡ぎ出してきた、「家族の愛と絆の達成度」そのものなのだ。
「ありがとう、天智。これからもパパは、君のためにいくらでもレベルアップしてみせるよ」
すやすやと可愛い寝息を立てる子どもたちを、三十六度半のポカポカの身体で優しく包み込みながら、スライムパパは静かに、そして幸せに目(核)を閉じるのであった。
(第19話・完)




