第18話:ピコン! 視界に浮かぶ青い画面と、育児ステータス覚醒 ◯月◯日(育児日記 135日目)後編
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しかし、このステータススクリーンの出現は、天智側にも大きな意識の変化をもたらすことになった。
「あぅ……あぅ……?」
アマチは、宙に浮かぶ青いスクリーンを小さな手で不器用にタップしながら、真剣な顔で画面を見つめていた。
アマチの視界に映っているのは、パパ(風海天山)のステータスである。
そこには、赤い点滅とともにこう表示されていたのだ。
【HP(質量):15 / 100(危険!)】
生後4か月半のアマチには、「HP」や「15/100」という数値の意味そのものは正確には分からない。 だが、スキルの影響か、青い画面から伝わってくる感覚で直感的に理解してしまったのだ。
「この赤いピカピカは……パパがすっごく減っちゃって、苦しい状態なんだ」ということを。
「あぅ……パパ……減ってる……。アマチに……ミルク……くれたから……?」
アマチの瞳から、ボロッと大粒の涙がこぼれ落ちた。
「あ……アマチ? どうしたんだい急に泣いたりして! パパは大丈夫だよ、ほら、こうして喋れているし——」
「ちがうーっ! パパ、減ってるの! あかいの、出てるのーっ!」
アマチはポロポロと涙を流しながら、部屋の隅にある「果物カゴ」へと『猫足ハイハイ』で猛ダッシュした!
そして、カゴの中から一番大きくて熟した「ぽむの実(甘い果実)」を小さな両手で抱え込むと、コロコロと転がりそうになりながら、私の元へと戻ってきたのだ!
「あぅっ! パパ! これ! たべて! あーん!」
アマチは必死の形相で、自分よりも重そうなぽむの実を、私のハンドボール大のスライムボディへ「ギューッ!」と押し当ててきた!
「あ……アマチ……! 私に食べさせようとしてくれているのか……!?」
「パパ! 減っちゃヤダ! 大きくなって! あーん! あーんっ!」
アマチは泣きながら、ぽむの実の皮を自分の小さな歯(生えたての乳歯)で一生懸命に噛み破り、果汁を私の体表に染み込ませようとした。
いつもなら、パパの身体をちゅうちゅうと吸って栄養をもらう側の我が子が。 パパの「身を削る数値(HP低下)」を目にしたことで、今度は自分の力でパパを回復させようと必死になっているのだ!
「う……うう……ぐずっ……! なんて良い子なんだアマチぃぃぃぃっ!」
私は感動のあまり、全魔素を震わせて号泣(液体化)した!
「ありがとうアマチ! パパ、いただくよ! 君の愛を全部吸収するよーっ!」
ジュワァァァァァッ!!
私はアマチが差し出してくれたぽむの実を身体全体で包み込み、高濃度の酵素で一気に分解・吸収! さらに果実に含まれる魔素と糖分を効率よく代謝することで、スライムボディを急ピッチで復元を開始した!
【HP:15 / 100】 ↓(ぽむの実分解・魔素代謝) 【HP:40 / 100(ドッジボールサイズへ回復!)】
ピコン!
『HPが回復しました。質量がドッジボールサイズに復元されます』
ステータス画面の数値が「15」から「40」へと跳ね上がり、点滅していた赤文字が消えた!
それを見たアマチが、涙をぬぐいながらパッと顔を輝かせた!
「あぅ! パパ、ちょっと大きくなった! あかいピカピカ、きえたーっ!」
「ああ! アマチがぽむの実をくれたおかげだよ! ありがとう、ありがとうアマチ!」
私はドッジボールサイズに回復した身体で、泣き虫の愛娘をぎゅーっと抱きしめた。
◇
「にゃ〜? 天山さん、アマチちゃん、二人で何やってるニャ?」
そこへ、部屋の梁からピョンッと飛び降りてきたのは、1歳を迎えた三つ子たちの長女・クララだった。
続いて長男ナララと三女ミララも「みゅ〜?」「あそぶニャ〜?」と集まってくる。
「おお、クララちゃん、ナララちゃん、ミララちゃん! 実はね、私とアマチに素晴らしい力が覚醒したのだよ!」
私は新スキル『育児(レベル測定)』を稼働させ、集まってきた三つ子たちへ視線を向けた。
ピコン! ピコン! ピコン!
視界に、三つ子たちのステータス画面が次々と展開される!
【名前】 クララ 【種族】 ケットシー(長女) 【レベル】 Lv.8 【ステータス特長】 AGI(素早さ):38(パパの約3倍!)
【名前】 ナララ 【種族】 ケットシー(長男) 【レベル】 Lv.8 【ステータス特長】 食いしん坊度:99%(お腹が空いている)
【名前】 ミララ 【種族】 ケットシー(三女) 【レベル】 Lv.8 【ステータス特長】 アマチへの愛着度:120%(すりすりしたい)
「な……なにぃっ!?? 1歳になった三つ子たちのレベルがすでに『Lv.8』!? しかもクララちゃんの素早さが私の3倍だとーっ!?」
バイオ学者としての数値分析が止まらない!
「なるほど……! 前回の木登りで私やアマチが翻弄されたわけだ! ケットシーの10倍成長は、伊達にレベルが上がっているわけではないのだな!」
「あぅ! くららちゃん、レベルはち! すごーい!」
アマチも自分のステータス画面を指差し、「アマチは、レベルよん!」と誇らしげにクララたちに見せびらかしている。
「みゅ〜?」「ニャー?」「青い画面、なにか浮いてるニャ?」
三つ子たちには直接画面は見えないようだが、アマチと私が空中に向かって手足をパタパタさせているのを見て、「新しいおもちゃにゃ!」と勘違いしたらしい。
「ニャはーっ! 捕まえるニャーっ!」
クララとミララが、私の視界に浮かぶステータス画面に向かって「トウッ!」と飛びかかってきた!
「ああっ! 待ちなさい! それは私の視界の中にしかない光学投影なのだから、飛びかかっても——」
ドスンッ!!
「ぶはぁぁぁぁっ!?」
三つ子たちのダイブを受け、せっかく回復した私のドッジボールボディが、再び「ぬちゃっ」と押し潰された!
【HP:40 / 100】 → 【HP:35 / 100】
ピコン!
『微小なダメージを受けました』
「パパのHPがまた減ったーっ! クララちゃんダメーっ!」
アマチが「パパを守るの!」とばかりに三つ子たちとの間に割り込み、みんなでゴロゴロと床の上を転がり合って大爆笑!
「あははははっ! パパ、大きくなーれ! ポンポン!」
「みゅ〜!」「にゃーっ!」「みゅふーっ!」
◇
夕方。
騒ぎを聞きつけたメイラさんが、お夕飯のスープを持って丸木小屋へやってきた。
「あらあら、みんなで何をそんなに大騒ぎしているの?」
「あ! おかあしゃま!」
アマチが駆け寄り、メイラさんの服の裾を引っぱった。
私は「そうだ、メイラさんのステータスも見てみよう」と、新スキル『育児(レベル測定)』をメイラさんに向けて稼働させた。
ピコン!
……しかし。
メイラさんの頭上に浮かび上がったステータス画面を目にした瞬間、私とアマチの身体が同時に凍りついた。
【名前】 メイラ 【種族】 ケットシー(母猫/元・Aランク冒険者の使い魔) 【レベル】 Lv.42 【固有スキル】 ・『母性の威圧(怒らせると村が吹き飛ぶ)』Lv.MAX ・『絶対仕つけ領域』Lv.5 ・『爪撃・連閃』Lv.6 【現在の心境】 「今日も子どもたちが元気に遊んでいて微笑ましいわね(※ただし部屋を汚したら許しません)」
「「ヒッ……!!!!」」
レベル42……!! 固有スキル『母性の威圧(怒らせると村が吹き飛ぶ)』……!!
私(Lv.12)とアマチ(Lv.4)の親子は、完全に顔を見合わせ、言葉を失った。
普段は天使のように優しいメイラさんが、実は村で最強クラスの隠しボス(Lv.42)であったという衝撃の真実!
「あ……あぅ……おかあしゃま……強い……」
アマチが、頭の髪の毛猫耳を「ペショッ」と平らに倒し、素早く正座の体勢をとった。
私も急いで『正座スライム形態』へと変形し、ピシッと背筋を伸ばした。
「あら? 二人とも、どうして急にそんなに姿勢を正しているの?」
メイラさんが、不思議そうに首をかしげて微笑む。
「い、いえっ! 何でもありませんメイラさん! 今日も素晴らしいお夕飯をありがとうございますっ!」
「あぅ! ありがとうございますニャっ!」
レベル42の母猫の威厳に平伏しながらも、私は胸の中で確かな手応えを感じていた。
数値化されたステータス。 それは、アマチの成長と体調を正確に守るための、最高のお父さんツール。 そして何より、「パパの危機(HP低下)」を知ったアマチが、初めて見せてくれた思いやりと愛の証。
ステータススクリーンという新しい力を手に、スライムパパとアマチ、そして1歳の子猫たちのドタバタ育児日記は、より賑やかに、より深みを増して続いていくのであった。
(第18話・完)




