第12話:アマチ、ケットシーになる!? 禁断の毛繕い(グルーミング)大作戦
第12話:アマチ、ケットシーになる!? 禁断の毛繕い(グルーミング)大作戦
◯月◯日(育児日記 112日目)
タイトル:子猫化が止まらない我が娘。そして毛繕い(ぺろぺろ)の狂宴。
「……バイオ学者として、真面目に生命の神秘と向き合わねばならない時が来たようだ」
丸木小屋の中、私は自分の核を果てしなく震わせながら、目の前の光景を凝視していた。
生後112日目。 我が愛娘・天智の『マネッコ』スキルによる「子猫化(ケットシー化)」現象は、ついに生物学の常識を超える領域へと踏み込みつつあった。
「あぅー! にゃ〜ご! にゃーご!」
床の上で四つんばいになり、しなやかな猫足ハイハイで移動する天智。 それだけならまだ「可愛い真似っこ」で済んだのだ。
だが、見てほしい。 天智の頭頂部左右の髪の毛が、まるで猫耳のように「ピンッ!」と三角に立ち上がり、ご機嫌に合わせてピクピクと動いているではないか!
「耳……! 髪の毛で形成されているとはいえ、まるで本物のケットシーの耳のように感情と連動して動いている……! 人間(赤ちゃん)の可塑性とスキルが合わさると、骨格や毛髪の形状変化まで引き起こすというのか……!?」
「あにゃ〜、天山さん! 天智ちゃん、すっかりボクたちの仲間だニャー!」
遊びに来たルークが、天智の「髪の毛猫耳」をナデナデしながら大爆笑している。
「あはっ! ルーク、にゃー! わたし、子猫! ケットシーだもん!」
天智は「えっへん!」と胸を張り、お尻(お尻の肉)をふりふりと振って、まるで存在しない尻尾まで振っているかのような仕草を見せた。
「可愛い……! 反則的なまでに可愛いが、親としては将来的に人間として社会復帰できるのか少々不安だぞ……!」
頭を抱える私。 しかし、本日の「子猫化」は、こんなものでは終わらなかったのだ。
◇
生後20日を過ぎた三つ子たち(クララ、ナララ、ミララ)の次なる成長ステップ。 それこそが——『毛繕い(グルーミング)』であった。
「みゅ〜……」「ぺろ……ぺろ……」
長女のクララが、自分の前足を「ぺろっ」と舐め、その足で顔を「毛繕い」し始めた。 続いて長男ナララが、妹ミララの背中を「ぺろぺろ」と優しく舐めて毛並みを整えてあげている。
ケットシーにとって、毛繕いはただの衛生管理ではない。 仲間同士の愛情表現であり、絆を深めるもっとも大切なコミュニケーションなのだ!
「あ……! くららちゃんたち、ぺろぺろしてる……!」
天智の目が、キュピーンと輝いた。
発動してしまったのだ。彼女の『マネッコ』スキルが! 自分も「三つ子たちのお姉ちゃん(兼・子猫)」として、完璧な毛繕いを披露しなければならないという使命感に燃え上がったのだ!
「あぅ! わたしも! 毛繕いするーっ!」
「あ、コラ天智! 人間のお口で直接舐めるのは衛生的に——」
私の制止も聞かず、天智は『猫足ハイハイ』で三つ子たちのカゴベッドへとダイブ!
「クララちゃん! じっとしててね! お姉ちゃんがペロペロしてあげる!」
「みゅっ!?」
天智はクララの頭を小さな手で優しく固定すると、自分の舌をパカッと出し、クララの頭を「べろんっ!」と豪快に舐め上げた!
「みゅあぁぁぁっ!?」
クララの頭の毛並みが、天智の豪快なひと舐めで見事なオールバックに!
「よし! つぎはナララちゃん! ぺろぺろ〜っ!」
「みゅーっ!?」
「そしてミララちゃんも! ぺろぺろ〜っ!」
「みゅふーっ!?」
天智の「愛情過剰な毛繕い(ベロベロ攻撃)」が炸裂! 三つ子たちは天智の豪快な舌の動きに翻弄され、あっという間に全員の毛並みが「ツヤツヤの七三分け&オールバック」に仕上がってしまった!
「あにゃ〜! 三つ子ちゃんたちがまたダンディな髪型になっちゃったニャーっ!」
ルークがお腹を抱えて床を転がりながら大爆笑!
「あはっ! きれいになった! わたし、お世話上手のお姉ちゃん!」
天智は髪の毛の猫耳を「ピコピコ」と誇らしげに動かし、胸を張った。
だが——天智の毛繕い衝動は、これで収まるはずもなかった。
◇
「よし! つぎは……パパっ!」
天智のターゲットが、こちらへ向いた。
「えっ……私……!?」
「パパも! 毛繕いしてあげる! ペロペロ〜っ!」
「ま、待ちなさい天智! 私はスライムだぞ!? 毛など一本も生えていないし、表面はゼリー状で——」
「あむっ!!」
天智が私のスライムボディ(前面)に飛びつき、勢いよく「べろんっ!」と舐めしゃぶった!
「ぬおおっ!?」
スライムの体表は、天智の唾液酵素と反応し、独特の「ぷるぷる感」を増す。 天智にとって、パパの身体は「世界一舐め心地の良い、最高のおしゃぶり&ゼリー」なのだ!
「あむっ! ごくん! ぺろぺろ! おいちい!」
「ああっ! 毛繕いじゃなくて食べている!? 美味しく味見しながら舐めているーっ!?」
天智の『マネッコ』毛繕いは、いつしか「パパのスライムボディごちそうタイム」へと変貌!
ちゅー……ちゅー……。
天智が「ペロペロ&ちゅうちゅう」と私を舐め回すたびに、私のバランスボールサイズの身体が、みるみるうちに縮んでいく!
【バランスボールサイズ】 ↓(3分経過) 【ドッジボールサイズ】 ↓(5分経過) 【サッカーボールサイズ】
「やばい! やばいやばいやばい! 毛繕い(物理)で私の体積が削られていくーっ!」
「あはっ! パパ、ぷるぷるでおいちい! ぺろぺろ〜っ!」
天智の髪の毛猫耳が「ルンルン♪」と嬉しそうに揺れる! 三つ子たちも「天智ちゃんが楽しそうにゃ!」と集まってきて、天智の真似をして私のスライムボディを「ペロペロ……ちゅうちゅう……」と舐め始め、毛づくろいの参加(合体攻撃)が始まった!
「にゃ〜! 三つ子ちゃんたちまで天山さんを舐め始めたニャーッ!」
「ル……ルーク殿! 笑ってないで助けてくれぇぇぇっ! 私という存在が『子どもたちの毛づくろい(おやつ)』として完全に消滅するぅぅぅぅっ!?」
「分かったニャ! 【ウィンド・シャワー】!」
ルークが慌てて風と水の魔法を発動!
シャワーーーーーッ!!
心地よいぬるま湯の魔法の霧が、部屋全体にふんわりと降り注いだ!
◇
バシャバシャバシャ……。
温かい水のシャワーをかぶり、天智と三つ子たちの「毛繕い狂宴」は、ようやく沈静化したのだった。
「ふぅ……ふぅ……助かった……もう少しでリンゴサイズまで縮むところだった……」
果汁と魔素を急いで吸収し、体数を復元しながら胸の核を撫で下ろす私。
天智と三つ子たちは、ぬるま湯のシャワーですっかり綺麗になり、濡れた身体を「ぶるぶるっ!」と可愛らしく震わせて水を飛ばしていた。
「あうーっ! さっぱりしたーっ!」
「みゅ〜!」「にゃーっ!」「みゅふーっ!」
天智の頭の上では、濡れた髪の毛が「しなっ」と垂れ下がり、猫耳が一度倒れた。 しかし、バスタオル(柔らかい布)で頭をポンポンと乾かしてあげると——。
ポンッ!
再び、天智の頭頂部の髪の毛が「ピンッ!」と三角の猫耳状に立ち上がった!
「あはっ! ねこみみ! パパ、わたし、子猫の天智ちゃんだよ!」
「はいはい……本当に君は、立派なケットシーのお姉ちゃんだねぇ……」
私は呆れつつも、愛おしくてたまらなくなり、縮みから復元したスライムの手で天智をぎゅーっと抱きしめた。
◇
夕方。
たっぷり毛繕いごっこをして、シャワーで綺麗になった子どもたちは、並んで気持ちよさそうにお昼寝を始めていた。
天智は三つ子たち(クララ、ナララ、ミララ)の中央に挟まれ、子猫たちの小さな頭を、自分の手で優しく「なで……なで……」と本当の毛繕いのように撫でてあげている。
天智の頭の「髪の毛猫耳」が、幸せそうにピコピコと小さく揺れていた。
「ふふ……形は真似っこでも、この子の優しさは本物だね」
私は『体温サーモ』をぽかぽかの三十六度半に設定し、重なり合って眠る4人の小さな天使たちを、そっと身体で包み込んだ。
アマチがケットシーになり、パパが身体を削られ、部屋中が七三分けの子猫だらけになっても。
この愛おしく、温かいドタバタの日々を、スライムパパは心から幸せに思うのであった。
(第12話・完)




