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異世界で武技相伝 〜 いやその前に次の人生を楽しみましょうよ  作者: 東杜 伊三技
第1章

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17/24

第17話 履修する講義科目を決めましょう

 入学式とホームルームだけの春学期初日は、夕方からの寮での新入生プラス俺の歓迎会で無事に終了した。

 第7男子寮に入寮した新1年生は7名で、俺を加えると8名が新顔だね。これで1年生7名、2年生8名、3年生7名、4年生8名となり、寮の定員30名が揃った訳だ。


 なお、歓迎会はミード(蜂蜜酒)と学院生食堂から買ってきた料理を広げての、寮長であるラウロくんの挨拶、新入生と俺の自己紹介、そしてあとは飲んで食べてのダベりが延々と続く展開。

 それでも明日からの講義科目オリエンテーションに備えて、深夜を過ぎない程良い時刻には解散となりました。




 俺たち4年生の必須履修科目数は6科目で、通常は3年生時から引き続きのゼミの履修となる。

 だけど俺はこの世界で何かを学ぶのが初めてなので、学院長からも勧められたように1年生の必須科目である概論講義をいくつか取ることにした。


 興味があるのは、神話と歴史学概論、地理と社会学概論、自然博物学概論というこの世界のことを学ぶ講義。それに加えてやはり魔法学概論だよね。


 俺に魔法の適性があるかどうか分からないし、もしかしたら適性が無くて魔法が出来ない可能性もある。

 なので、既に魔法の出来る学院生に混ざって実践的な講義を履修するのは遠慮しておくとして、座学の概論講義だけは受けようと思った。

 それに実践的な訓練は、求めればサテュちゃんたち支援者がしてくれそうだし。


 あとは武術特別分校で必須の講義として、武術関係の実践的なゼミがある。

 こちらは担当教授ごとにゼミが設置されていて、昨日のホームルーム後の話で俺はアンセルモ先生の剣術学上級ゼミが必須となってしまったから、これでひとつ。


 あとは槍と棒術、弓矢術、メイスなどの打撃武器術、格闘と体術の5つのゼミがあるそうだ。

 剣術を含め、どれも俺の前世で家伝の武技の範囲で訓練してきたものばかりなので、俺的にはどれを履修してもしなくても、どちらでも良い感じなんだよね。


 それでも、1年生の座学候補とアンセルモ先生の剣術学上級ゼミで5科目だから、最低限の履修数としてはあと1科目。

 決めるのはオリエンテーション講義に出てからだけど、この前世の俺の国には無かったメイスなんかを含む打撃武器術と格闘と体術に興味があったので、そのふたつの講義に出てみることにした。


 以上のことを、昨日のホームルーム終了後に担任のアンセルモ先生に話して、彼のアドバイスを求めた。

 すると「それで良いぜ。まあ外国から来たおまえだから、1年生の概論を選択するのは俺も賛成だ」とのこと。

 ただし、1年生の概論講義はクラスごとに午前中に設定されているとのことで、アンセルモ先生からは1年A組の講義に出ろとの指示を貰った。


 学院の講義は朝9時から始まり、1時限の講義時間は1時間。時限間のインターバルは30分で、これは移動を考慮しての長めの設定。

 このサイクルが午前に2時限、午後に2時限あり、昼休みは1時間30分とかなり余裕を持って設定されている。


 つまり、1時限目は9時からで、2時限目は10時30分から。午後の3時限目は13時からで、4時限目は14時からとなり、講義は15時で終了する。

 15時以降は放課後であり、課外部活動や自由時間となるから、まあ余裕あると言いますか緩い設定なんだなぁという印象だよな。


 それでともかくも、アンセルモ先生から教えて貰った1年A組の概論講義スケジュールと4年生のゼミスケジュールを参照して、俺が想定している履修候補の講義を当てはめてみる。


 そうすると、5日サイクルの1日目の1時限目が魔法学概論、2時限目が神話と歴史学概論、午後の3時限目が剣術学上級ゼミとなる。

 以下、2日目の1時限目が地理と社会学概論と、この日はこれだけ。3日目も2時限目に自然博物学概論だけで、4日目は3時限目に打撃武器術上級ゼミのみ、5日目も3時限目に格闘・体術上級ゼミだけとなった。


 いやあ、5日サイクルで必須最低数が6科目で余裕だとは持っていたけれど、こうして並べてみると1日目だけは3科目あって少し忙しいのだが、あとは各日1科目ずつで楽勝じゃないですか。空いた時間は何しますかね。


 その辺のところをアンセルモ先生に尋ねてみると、4年生は自己学習、自己練習の自主的な研鑽を重んじているので、自分で何をするかをそれぞれに決めるのだそうだ。


 つまり専用教室で予習復習や自分が決めたテーマでの研究をしても良く、図書館での調査や学習、訓練場での自己訓練を行なっても良い。

 ただし、剣術と魔法の訓練場はそれぞれ講義を行なっているので、自己練習をする場合には講義を行なっている教授の許可が必要とのことだった。


「要するによ、空いた時間は学院の規則や慣習に反せずに、かつ学院の外に出なければ、何しても良いってこった。昼寝でも遊びでも誰かとの無駄話でもな。だがそれをするのは、おまえらの卒業後のためになると思うのならばの話だな。あとは自分で考えて自分で決めて行動しろ。それがこの学院の伝統だぜ」


 自由かつ自分で選択して決めて行動するということは、その後の自分に必ず反映される。

 そういった選択決定と行動後の予測も含めた思考を自ら養えというのが、セルティア王立学院の教育方針らしいのですな。




 オリエンテーション講義初日の1時限目。1年A組の魔法学概論の先生は先日に会ったエルヴィール部長教授ではなく、このクラスの担任でもあるスティーナ教授という若い先生だった。

 この世界には少数派らしい、長い黒髪を無造作に靡かせた細身の女性。魔法遣いって細身の女性が多いんですかね。


 講義が始まる前にそのスティーナ先生から、俺がこの講義を受講することが紹介された。

 1年A組の子たちは少しざわついたが、直ぐに静かになる。3歳も歳上の俺が混ざることに対する反発的な反応もあるかと思ったけれど、割と素直な子たちなのかな?


 初日の講義は、初歩中の初歩らしい四元素と四元素魔法の関係性や適性についての解説。

 この辺のことはサテュちゃんから教えて貰っていたので、先日知ったばかりの知識だった。


 それで初日の1時限目ということで、時間内の早めに講義が終了したのだが……。


「最後に、何か聞きたいことはありますか?」とスティーナ先生。


「はい」「はいはい。はーい」


 複数の女子から手が挙がる。


「はい、何かしら?」

「ディック先輩への質問タイムをしたいでーす」

「お名前だけじゃ、情報が足りませーん」

「そうそう」

「まだ時間はあるしねー」


 そういうことですか。俺の4年G組でのホームルームに続いてですね。

 講義冒頭の静かさはどこへ行ったのか、こちらのクラスは女子が10名居るので騒がしさが倍増ですな。男子は静かだけどね。


 はいはい、いいですよ。2日続けての質問タイムなのでお受けします。

 概論講義はその1年生のクラスの専用教室で行うので、次もここだから移動する必要が無い。なので時間はまだたっぷりありますなぁ。



 2時限目の神話と歴史学概論の教授は、イラリ先生という壮年の男性。この先生、見た目からするとエルフ族の人じゃないかな。なんとなく、オイリ学院長に雰囲気が似てるしね。


 この先生は教室に入って来て、席に着いている1年生をざっと見渡したあと、教室の最後列に座る俺の方を一瞬強い眼差しで見つめてから「講義を始める」と声を出した。

 たぶんこの先生も、俺が特別に概論講義を履修するということを聞いていたのだろうけど、あの眼差し、結構鋭かったのが印象的だ。


 講義内容はまずはこの1年間の予定で、春学期は神話や現在の歴史以前の時代について。9月からの秋学期は、現在のセルティア王国と周辺国の歴史が主となるとのこと。

 概論講義なので、特定のことを深く掘り下げるのでは無く、ざっと辿って行くらしい。


 今日の初日の講義で印象的だったのが、いま皆が暮らすこの世界は、神話の時代より『言葉が分たれ無かった世界』だということ。

 つまり、どういうことかと言うと、人類史が始まってより、いやそれ以前の神々の時代から、この惑星の地上世界で使用される言語はたったひとつだけ、だというのだ。


 前世の世界で言うと、有名なバベルの塔の神話で語られるように人間の傲慢さに怒った神により、「言葉を分たれてしまった世界」なってしまう。

 なので、俺が生きていた時代でも世界には6,500から7,000もの言語があるのだという。


 それがこの世界では、地域や種族で多少の方言の違いはあるにせよ、言語はたったひとつなのだ。

 俺以外の1年生たちは、世界中の言語が同じであり、どこか別の世界にはあるらしい「言葉を分たれてしまった世界」という概念がまったく無かったようで、逆に新鮮だったみたいだね。


 言葉が世界でひとつというのは、ある意味これはとても凄いことで、それだけこの世界の人たちって神話の時代には傲慢じゃ無かったってことですかね。

 それとも神様側に、言語をひとつだけにしておく理由や意図とかがあったのかな。

 これについてはサテュちゃん経由で、お父上や上司の方々に聞けば教えて貰えるでしょうかね。




 お昼は学院生食堂でサテュちゃんと待ち合わせをしていました。


「午前の講義はどうしたの? 何か出席した?」と聞かれたので、履修予定の講義科目と概論については1年A組のものを履修するようアンセルモ先生から指示があって、それに

 出てきたことを報告した。

 既に身近な存在となりつつある女子への素直な報告は、男子としてはとても大切ですからね。


「魔法学概論と、神話と歴史学概論ね、いい選択だわ。あとは地理と社会学概論と自然博物学概論か。そっちもこの世界を知るのに良い講義ね」


 褒められました。


「4年生のゼミは、あなたなら魔法以外どれでも良いのでしょうけど、まあアンセルモ先生の剣術学上級ゼミは仕方がないわね」


 講義が始まる以前に秒殺しちゃいましたからね。仕方無いです。


 ちなみに通常の学院生であるサテュちゃんの履修する科目を聞いてみると、座学のゼミは神話学に自然博物学、それから内政学と軍事戦術学。実践系は、剣術学上級ゼミと高等魔法学ゼミの計6科目だそうだ。


「内政学と軍事戦術学は、まあわたしの立場からね、お父さまの指示もあるし。神話学と自然博物学も立場上のことがあるのだけど、特に自然博物学ゼミを履修するのは、わたしの地元にというか北辺の地に、“アラストル大森林”というこの地域最大かつ特殊な森林地帯があるからなの」


「最大かつ特殊なアラストル大森林、でありますか」

「そうであります、のよ」


 どのくらい最大で、どういうふうに特殊なのかは、また追って詳しく教えてくれるそうで、また地理と社会学概論や自然博物学概論でも扱うだろうとのことだった。


「まあ簡単に言えば、うちの領地にも、ラウロくんの領地にも、アマートくんやサイミちゃんの住む領地にも隣接している大森林なのよね」

「へぇー」


 4つ以上の貴族領地にまたがって隣接している森って、それはどでかいのでありますなぁ。

 それで、特殊って何ですかね?


お読みいただき、ありがとうございました。

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