「ほんのひと時の休み」
「うーん、なんて、言うか...研究発表会、面白くないかも...」
「そ、そうかしら?ほら、あそこなんて雷属性の新しい魔術を作っているじゃないか」
マリアの指を指した方向には、魔術の中でも珍しい雷属性の魔術の研究発表を行っていた。
ベルージュも、魔術の上達には最近停滞していたので、かなり興味を持っていた。
研究発表の内容には、昔ラファエルがアランに教えたこともあった。
(師匠ってやっぱすごいんだな...)
千年前の勇者が現代魔術の技術を上回っている。
それは、アランにとってとても興味深いことだった。
「へぇ、雷属性の古代魔法の研究ね...私としては協力しても良いくらい面白そうなんだけど...アランちゃんがいるからな...」
「僕は兵器じゃないよ」
「そうよ!アランは人間なんだから!ほらアラン、あっちも見ていよう!」
* * *
「だいたい準備は終わったね。モルー公爵もこちらに傾いてきている。さてと、決戦まであと十数時間...さあ兄上、僕の手のひらで、ころころと転がってくださいね」
* * *
「うーん、迷うねぇ...どれにしようかな...」
「これ全部で」
「え!?」
学園にある屋台の菓子を、レベッカはすべて買い取ってしまった。
アランたちは顔の周りまで菓子が積み上がっていた。
「ま、周りがみえない...」
「アラン一つお菓子頂戴」
「レベッカ、この状況で言うの?」
両手がふさがり、前もろくに見えない。
三人は、レベッカに召使の用に使われ、あまり見ない珍しい光景となっていた。
あまりの菓子の量に、道を歩いていると人目を引き、変装をしている意味がなくなっていたのは、レベッカ以外の誰もが思っていたことだ。
* * *
「はいみんな、これ差し入れ」
アランたちが精一杯持ってきた菓子を、レベッカは教室で担当しているクラスメイトたちに配っていた。
といっても、それでも買ってきた菓子はまだ3分の1程度しか減っていない。
レベッカは貴族のお嬢様であり、次期商会長。
そんな人間が、菓子量を間違えるはずがないと、アランは考えた。
(だとすると...どこに配るんだろう?)
「んー、これ全部一人で食べるの?」
「うん、もちろん」
アランは予想外の答えに、唖然としていた。
今までアランは気にもとめていなかったが、実はレベッカに出る食事はアランたちの数倍の量である。
それは、三時のおやつも同じであった。
* * *
「いやー、初日だけでこんなに稼げたなんて、上出来じゃない」
「ああ、そうだね。二日目は私達はいないから、頑張ってね」
「そうでしたね。レベッカ様も出るんでしたっけ」
学園祭二日目には、全校生徒お待ちかねの特別な行事がある。
中等部生徒会と高等部生徒会その2つの生徒会の、模擬戦である。
これは、いわばプライドとプライドのぶつかり合いである、が...
今年は一味違う。
今年はフェンデス・ハワード会長率いる中等部生徒会。
対するは、アーサー・ハワード会長率いる高等部生徒会。
これは非公式であるが、国内外の大貴族も無視できない王位継承争いである。
「そうね。だから、今日は学園祭を回って楽しまないとね。ほら、バカ王子も行くわよ」
「うざいよゴリラ。じゃあ、アラン君、行こうか」
「そ、そうですね...」
(な、なんで二人はいつもこうなんだろう...自制してほしいな...)
「レベッカは...うん、休憩してて...」
「ん?んん、んっんん!」
「何言ってんのかわかんないわよ...まあ、とりあえずアランちゃん、行きましょう」
「そ、そうですね...」
* * *
「んー、おいしいね」
「ありがとうございます、殿下!お褒めにいただき光栄です!」
「アーサーさんの影響力ってすごいんですね...」
「まあ、私一応この国の王子だからね」
ラファエル王国、第一王子の名は伊達ではない。
歩くだけで注目を浴び、尊敬の眼差し、憧れの眼差し、妬みの眼差し...いろいろな注目を浴びている。
「これは、兄上。ここでお会いするとは奇遇ですね」
「そうだね、フェンデス、奇遇だね。どうやら君はご機嫌のようだね。何かあったのかい?」
「...いえ?別になんともありませんよ?」
「そうかい。それにしても...君も随分楽しんでるようだね」
「うっ...」
フェンデスは手下に菓子や、魔術書、いろいろなものを持たせていた。
フェンデスもフェンデスで、来年卒業する最上級生にも引けを取らないほど楽しんでいた。
* * *
「なぜだろう...私は学園祭を楽しむはずだったのに...」
「あははは...」
(学園祭...そういえば、学園生徒以外も入れるんだった...)
アーサーは、国民の憧れ。
一目見れば幸運が訪れると噂されるほど、天上の人間。
そんな人間を一目見ようと、人混みができる。
そして、その人混みに惹かれる大勢の人。
そしてその大勢についていく人。
この無限ループが、このアーサーたちを囲む人混みを作り上げた。
「...これは国のためだ」
「...!」
アランは、一瞬の動きを見逃さなかった。
国民、全員がアーサーを好んでいるのではない。
中には、妬み、憎しみ、殺意を向ける人間だっている。
そう、この人混みの中にも...
「...それをどうするつもりですか?」
「!?」
「それをしまって、帰ってもらえますか?」
「...っ!」
中年の男は、その格好に似合わないほどの魔道具、杖を持っていた。
杖には魔石が埋め込まれてあった。
魔力が込められており、魔力の少ない者でも扱える代物である。
だが、おかしい。
なぜ杖が、この学園に持ち込まれたのか、どうしてアーサーを殺そうとするのか、だが、アランはまずこの男を無力化することを考えた。
アランは周りに気づかれないように杖を破壊し、魔術で電流を流して体を動かなくさせた。
そこへ、状況を察した警備員たちがすぐに集まり、人混みは解散させられた、が...
「へぇ、あなたが、私を」
「...」
中年の男性、名前はマルサス・クラード。
職業は不定であり、誰かに雇われたわけでもなかった。
だが、王族を殺そうとした以上、処刑は免れない。
「君は、なぜ私を殺そうとしたんだい?」
「...」
「まあ、良いや。君、処刑されたい?」
「...されたいやつがどこにいる」
「そうだよねー。じゃあ、私に協力してよ」
「...?」
* * *
「準備は整った。さあ、楽しみだね?」
文字数少なくてすみません...




