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魔法使いの家出  作者: 羽良 凪都輝
第5章 王立魔術師学校マギア 後編
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「決戦当日」


学園祭二日目、その日の学園はなにやら不穏な空気に包まれていた。

学園中の生徒は落ち着きがなく、そこらじゅうで生徒たちが話をしていた。


「どっちが勝つと思う?」

「おい!こんな場所でそんな話をするな!聞かれたら終わりだぞ!」

「で、でもよ、気になるじゃねぇか!」

「それは俺もだけどって、おい、あれ生徒会長じゃねぇか、さっさと話し辞めるぞ!」


 * * *


「流石にみんなもソワソワしてるね」

「そりゃ当たり前でしょ?あんたは緊張しないの?」

「君こそ緊張の欠片もないよね」


マリアはあくびをしながら、横にあった菓子を一口つまんだ。

レベッカやベルでさえ、無意味に歩き回り、落ち着きのない様子であるのにだ。

その様子をみるクラスメイトは、とても複雑な感情であった。


「そ、そういえば、アランは?今日見てないんだけど」

「どうしたのですか、レベッカ様?」

「わぁっ!?びっくりした...今日は随分遅かったわね」

「少し寝坊しちゃって」

「まさか二人揃って寝坊するとは思わなかった...」


二人とも珍しく寝坊するとは、アーサーも随分意外そうであった。

だが、昨日は学園祭といっても、普通の学園祭の比にならないほどの来客があり、クラスメイトたちもかなり疲れている様子であった。

結局今日クラスメイト全員が集まったのは、アランたちが来てから数分がたったところだ。


「さあ、みんな。今日は午前だけだから頑張ろう!」

「お、おう!...」


アーサーは皆にそう声をかけたが、やはり皆は落ち着きがない。

だが、アーサーはそんなの気にもとめずに早速準備に取り掛かった。


 * * *


「準備は万全。へルック先輩、あなたの方はどうですか?」

「...準備万全だ」

「そう。あと3時間、楽しみだ」


 * * *


時間は午後になり、会場には生徒たちや、王国中の貴族が集まってきた。

その中には、崇高の魔術師ウェルネス・フォン・サフィンや、ソルブ・ハワード国王もいる。

これだけの国の重要人物が集まっているということは、それだけこのイベントの重要性がわかる。

残り30分開始という中で、生徒会メンバーは少々ピリついていた。


「僕はバレないようにレベッカを護衛するね」

「そうだね。今回はちょっと嫌な予感がするね。早々に決着をつけないと、もしかしたらまずいことになるかもね」


アーサーがそう言うと、マリアは「そんなことありえないでしょ」と笑った。

だが、アーサーの目は本気の目であった。

それを理解したマリアはすぐに自身の言葉を訂正した。


「そうね、何かあったら困るもの。最初から全力でいきましょう」


 * * *


「さあ!今年も今日を入れて、あと2日!会場にお集まりの皆さん!本日司会を務めます、マリスカルです!皆さんお待ちかねイベント、生徒会対決がやってきました!今年は、第三王子率いる中等部生徒会対、第一王子率いる高等部生徒会の直接対決です!会場が熱気に包まれているのを肌で感じています!」


司会の合図とともに、会場の両端から生徒会メンバーたちがそれぞれ入場してきた。

服装はみな自身のもの、とはいかず、学生服である。

会場に集まっている観客は、かなり遠巻きで見ているが、それでも2つの生徒会の圧が映像越しで伝わってくる。


毎年激しい戦いが繰り広げられるため、観戦場とフィールドは違う場所で行われる。

そのため、水晶玉から拡大された映像が、フィールドを映し出すものである。


「この戦いのルールは簡単!殺し以外は何でもありの魔術戦です!さらに、今回はフィールド外に魔術が飛ばないよう、なんと厄災の守護神様が結界を張っております!」


アランが司会の声を聞き、少し周りをよく観察すると、やたら頑丈そうな結界が張ってあった。

だが、アランにはその結界の中になにか違和感があった。


(魔力の流れがぶれてる?気の所為?)


「では早速始めましょう!」


すると、魔術でカウントが始まった。


10








「3!2!」


「1!スタートです!」


開始と同時に、映像には巨大な火の魔術が映し出され、フィールド上にあった森林が跡形もなく灰になった。



が、同時に異変も起きた。


「い、居ない?みんなが居ない?」


それに...


「映像が途切れた!?ちょ、映像班どうした!?」


観戦場では映像が途切れため、反感を持つ観客たちが騒ぎ出した。


「おい!どうなってんだよ!」

「まさか炎帝の魔術が強すぎて耐えれなかったとか?」

「おいおい、早く映像復旧しろよ!」


 * * *


(マリアたちが居ない?転移魔術?だが、現代にはないはずだ...これはフェンデスの攻撃?いや、魔力の流れは感じなかった。だとすると、他の者がこのフィールド上に居た?いや、それよりまず)


「私は君たちと戦うのか?」

「ふっ、本当にできるんだね、転移魔術」


(やはり転移か。だが、どうやってかはわからない。まずは、フェンデスとその取り巻きを倒す、か...)


アーサーが宙に手をかざさすと、光の矢が現れ、フェンデスたちに向けて放たれた。

その二人は、異なる判断をとった。

フェンデスは自身の身体能力ですべて避けきったが、もう片方は防御結界で魔術を防いだ。


今度は逆に、二人が攻撃を仕掛けてきた。

フェンデスが地面に触れると、アーサーに向かって地面が盛れ上がり、土の柱が勢いよく貫こうとした。

だが、アーサーがその柱にそっと触れた瞬間、魔術が止まった。


「最初からそれ使うの?」


それ、というのは、アーサーが得意としている、”魔術の乗っ取り”である。

これは、自身の魔力が相手の魔力の数倍以上の場合でしか使えない。

つまり、圧倒的な魔力量を持つ者しかできない特権とも言える。


だが、フェンデスもそれを知っていたので、対処法も知っている。

それは...


「物量で押し切る」


すると、地面から3、4本と柱が次々に攻撃がやってきた。

アーサーが攻撃を避けようと足に力を入れると、後ろから強風がやってきた。


(これは、取り巻きの方の、風の魔術か)


アーサーは自分の状況を一瞬で理解し、自身の足元に防御結界を敷いた。

その結界を踏み台にし、勢いよく前に飛び出すと、そのままフェンデスを通り過ぎて、取り巻きの方に向かった。


更に、自身の背後からはその取り巻きに向かって光の矢が無数に放たれている。

同時に2つの攻撃を受けようとしている取り巻きは、表情からは焦りが見えなかった。


アーサーが間合いに入ると同時に、左から取り巻きの右足がアーサー

の頭を狙った。

アーサーは反射的に左手でその攻撃を防いだが、数メートル後退させられた。

アーサーはかなり足に力を入れたため、地面がえぐられるほどの足跡ができた。


(風の魔術で攻撃を加速したのか...面白い発想だね)


取り巻きは身体強化に加えて、風魔術で加速している。

アーサーの顔が、ニヤついてきた。

魔術は人を殺しかねないものだが、面白くて美しいもの。

それがアーサーにとっての魔術だ。

新しいものは面白い、そう感じるのが人間だ。

アーサーもその一人である。新しい魔術の使い方、それは興味をそそられるものである。


「楽しくなってきたね!」


アーサーはフェンデスなど目もくれず、取り巻きの方に攻撃を向けた。


アーサーが人差し指を指した。

その瞬間、指から光線が放たれた。

取り巻きはすぐに防御結界を作ったが、アーサーの光線は防御結界を一瞬で破壊し、取り巻きを吹き飛ばした。

取り巻きは木々をへし折るほどの勢いで飛ばされ、気絶してしまった。


「あ、ちょっとやりすぎたかな?」

「...そろそろかな」


その瞬間、爆発音が鳴った。


「...お前、人間辞めるのか?」

「それは違うよ。僕はね、”魔族と友だちになったんだ”」


フェンデスの隣には、魔族が立っていた。


 * * *


「やべ、ちょっとやりすぎたかな?」

「あ、アラン、ちょっとまずいかもね...」

「そうだね。でも、まずこの”死体”をどうにかしないと...」


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