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第九十五話 虚無VS時&地Ⅱ

九十五話更新


カルロスとザックスのコンビネーションによってシルヴィアは徐々に追いつめられる。

激しい攻防の中で遂にザックスの強力な一撃がシルヴィアの堅牢な守りを粉砕し、地面へと彼女を叩き落した。

立ち上る砂塵。距離を置いて撃墜した二人が地上に降りる。


「言われたとおりにぶっ壊してやったぞ」

「相変わらずの馬鹿力だな。衰えても尚それだけの膂力を持っているとはね」

「伊達にモンスター共を相手にしてると思うなよ。それにワシ以上のバケモンなんぞこの世界にはいくらでもいる」

「恐ろしい話だな。生きている内に会いたくはない」

「だといいがな。それよりもよ、分かるかカルロス?」

「うむ。無事ではないと思いたいが――――」


言い切る前に前方に立ち上る砂塵が爆音と共に弾け飛ぶ。吹き荒れる風圧に目を細めつつ、乱風を起こす人物を捉える。


「ここまで来ると、もはや我々が相手をしているのは人間という括りから逸脱した生き物だと考えてしまうよ」


荒れ狂う魔力の暴風を身に纏うそれ、シルヴィア・ピステールは健在だった。

マジックアーマーの右肩口から先が弾けている以外、目立った損傷は見受けられない。


「驚いたわね。ガードマテリアルを一撃で完全に破壊できる人間がいるなんてね」


淡々と語る。右手に力を込めれば損傷したマジックアーマーが瞬時に修復され戦闘前の状態に戻る。


「へっ、第二ラウンドってか?」

「ええ、そうね。でも………」


彼女の左右の空間が割れ、虚無の大穴が開き、それぞれから剣がぬるりと顔を出す。


「そちらのターンが続くとは思わない事ね」


手を下ろすと同時に射出される虚無剣。それは一本どころではなかった。まるで機関銃、その言葉に尽きるほどの弾幕となって無数の剣の魔力弾が二人に襲い掛かる。カルロスはザックスへクロックアップを再度付与、自身は回避行動を行う。

ザックスは剣の雨に真っ向から突撃し、距離を詰める。突き刺さる剣を物ともせずシルヴィアへ肉薄し斬りかかる。


戦斧が触れる寸前になって、彼女の姿が忽然と消え空を切る。虚無の世界に逃げたと判断した頃には当の本人は回避行動を続けるカルロスのすぐ近くに姿を現していた。再び展開される虚無の弾幕。カルロスも弾幕を張って応戦する。


「余裕を見せる割には、怯えていないか?」

「猪よりも、まずあれを誘導する貴方から消えてもらった方が楽なのよ」

「私の方が楽、か。舐められたものだ」


瞬間的に時を止める。その間に一気に距離を詰める。時が動き出せばカルロスはシルヴィアを剣の射程に捉えている。振るわれた黒銀の刃を虚無の剣で受ける。


「これでも余裕と言えるのかね?」

「寧ろ好都合……」


背筋に冷たいものを感じた。カルロスが彼女から離れる。両者の間に虚無の剣が雨となって降り注いだ。一歩間違えれば串刺しになっていた。


(こちらの動きを読んでいたか? しかし対処が早い?)

「次はどんな手を使うのかしら?」


魔力弾の形状を球体に切り替えたシルヴィアが再び弾幕を張る。先までよりも幾分か速い。


「弾速を変えてきたか。だがこの程度―――!」


時を止めて避けてしまえば造作もない。

全てが停滞する世界の中でカルロスは弾幕の範囲から逃れる。如何な強敵であろうと、時という絶対的な縛りの前には成す術などありはしないのだ。


「造作もない、かしら?」

「――っ!?」


時が動き出すと同時に隣から声が聞こえ全身が総毛立つ。

敵を視認するより早く持っている盾を間に滑り込ませるように動かす。

直後に伝わる凄まじい衝撃と爆風。大きく後退させられたカルロスは盾越しに信じられない者を見た。


「時間さえ止めてしまえば勝てる――などと、元帥ともあろうお方が考えているとは思いたくないものね」

「バカな……何時からそこに居た!?」


今しがたいた場所にシルヴィアが立っている。時間を止めた時は距離があったというのに解除と同時に隣に立たれていた。予測されていた、というだけでは説明できない事態だ。


「ぼさっとしてんな!!」


叱責の声と共に追いついたザックスが戦斧でシルヴィアに斬りかかる。難なく回避し反撃の魔力弾を叩き込む。被弾を物ともせず肉薄し、魔力弾で牽制しつつ斬撃を見舞う。


「下がれ、ザックス!」


合図を出すと共に魔力を剣に集める。同時に周囲の時間を停止させ、シルヴィアを封じ込める。


「貴様の時を両断する。時剣、クロノスブレイドッ!!」


振り抜かれた刃。その軌跡が奔る正面の時空間が亀裂を境に斜めに反発するようにズレ、爆ぜた。対象を含めた周囲を時空間ごと両断するカルロス必殺の魔法。


「――私は、共に生きたかっただけ」

「なっ―――――!?」


だが、爆炎の奥から殺すように響く声。獰猛な赤い光が二つ煌々と煙の向こうからこちらを睨んでいた。


「それを奪ったのは、お前達だ。ならば選ぶ答えなど一つだけ」

「ザックス!!」

「おうよ!!」


シルヴィアの時間を限定して止める。そしてザックスへクロックアップを付与する。すでに動き出していたザックスのスピードが爆発的に上昇し、一気にシルヴィアへ接近する。


「何もかもを焼き尽くし、悪逆の限りを尽くす。例えその先の答えが、あの人の求めた未来から大きく歪曲した答えだったとしても。私の意志に応えろ、ブラックハート」

「バカな!? 時を止めたはずなのに動けるのか!?」

「虚無に時間も空間も関係ない。愚かな手ね。恥を知れ。結晶 レジストマテリアル」


彼女の周囲に四つのエメラルド色のクリスタルが顕現する。四方に飛んだあと彼女を中心に旋回を始め不可思議な波動を発する。


「おっ――おおっ!?」


ガラスの割れるような音が聞こえたと思った瞬間だった。時間停止の効力が失われ、更にザックスに付与されていた強化魔法が解除された。


「強化解除のマテリアル魔法だと!?」

「まとめて、消し飛べ!!! ブレイジングスター!!」


二つの巨星、シルヴィアの左右に現れた赤と青の魔力の塊で出来たそれを二人を思わずそう錯覚した。

煌々と燃ゆる二つの巨星がその身を炸裂させる。膨大なエネルギーが内部で暴走したかのように膨れ上がったそれらは身を形成する殻を破り、内包していたエネルギーを一気に解放した。虚無属性の大砲撃。その二つの砲撃は猛然と目標へ向かって飛んでいき、カルロスとザックスを易々と飲み込んだ。


「ぐ、お……」

「ばか、な。これ程の…差が……!?」


結果として二人は生きていた。しかし、それはあくまで結果という意味でだ。二人の受けたダメージは二人の予想を遥かに超えたもので、シルヴィアとこれ以上の交戦が困難な状態まで追い詰められていた。


「全力で撃ち込んでまだ動けるのは称賛するわ。流石といったところね」


トドメを刺すべく、彼女は二つの魔方陣を展開する。溢れ出る魔力は疲弊した二人を容易く撃破するに至る値だった。しかし、シルヴィアは撃とうとしてこなかった。視線は既に二人から外れ、魔術大国側の領土へと向けられてた。


「時間ね」


短く呟いた彼女は上げていた手を静かに魔法を解除する。突然の行動に警戒を強める。


「どうした? トドメを刺さねえのかよ?」

「ええ。その必要がなくなったからね。漸く、彼らが動き出したのだから」

「なに……?」


意味深な言葉に警戒感を高める。彼女の言葉の真意を知ろうと神経を尖らせ……二人は気付いた。

遠くから聞こえる何かが迫る音。地鳴りのようなそれは一つとして統一されていない、群れが動くような音だ。


「なんだ?」

「敵の援軍か?」

『カルロス元帥! 非常事態です!! クロス国側より生体反応……パターン青、モンスターです!!』

「なにっ!?」

「反応更に増加中――――数百を超えます! 中に大型の反応も複数確認しました!」

「ふっ……。あのイレギュラーの影響で動かない可能性も考えたけど…杞憂だったわね」

「貴様、何をした?」

「分からない? あの星から発した光がモンスターを呼び起こしたの。彼らの奥底に眠る破壊本能を、ね」


戦闘態勢を解いた彼女が隣の空間を裂いて虚無の世界を呼び出す。


「後処理は彼らに任せるとしましょう。私はまだやる事があるので失礼するわね」

「逃げる気か!!」

「ああそうそう、言い忘れていたわ。あの光は何もこのアラガミ平野だけが範囲ではないわよ」

「―――――まさか!?」


彼女の言わんとしていることを理解したカルロスが青ざめた表情を見せる。それを見てシルヴィアは深い笑みを浮かべる。


「今頃、世界中大パニックになっているかもしれないわね。残念だけれど、彼らは止まらないわ。命尽きるまで破壊衝動を止める事はない。あの星から発している狂化の波動を破壊しない限りね。予測よりも数が七割ほど少ないのはイレギュラーの影響と考えて間違いないわね。でも、一体でもあのクラスが動けたのは行幸」

『モンスター内に超大型魔力反応! 『カテゴリーA』と照合合いました!!』

「はあっ!? カテゴリーAだとっ!?」

「『第一級接触禁止モンスター』が動き出したのか!? 観測隊は何を―――!? まさか貴様、観測隊すら!!」

「ええ。始末させてもらったわ。今頃、どこかで野垂れ死んでいるのではないかしらね。では、さようなら人類。この世界で築き上げた文明と共に廃れ消えていくといいわ。止めたければ私の居る所まで来ることね」


ぞっとする言葉を残してシルヴィアは姿を消した。苦虫を噛み潰したような顔を浮かべるカルロスだが思考を切り替え直ぐに指示を下す。


「全部隊へ通達しろ。各艦隊及び各部隊は速やかに当戦闘を中止。ポイントKに集結。負傷者を回収して接近するモンスターに対して迎撃準備に移れ。これはもはや『人災』を超えた――――『天災』と認定、各都市にも非常事態宣言を出しモンスターの動きに最大限の警戒をさせろ!」

『りょ、了解!!』

二人の猛攻を受けてもシルヴィアは倒すに至らず。絶体絶命の事態に追い打ちをかけるように迫ってくるのは大量の凶悪なモンスターの大群。この事態にどう対処するのか。


次回もよろしくお願いします。

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