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第九十一話 虚無魔法士三度

九十一話更新


激闘の末、最後のガーディアンを撃破する。しかし、更なる敵が彼女たちの前に姿を現す。


地面に半ば埋まった状態で活動を停止した最後の欠片を見てユグドラ達は小さく安堵の息を吐いた。


「ようやく止まったか」

「あのバカデカい砲台も動かなくなったみたいだな」


動力源としても動いてた欠片がその活動を停止したことで古代砲も完全に沈黙している。


「あとはあれを封印して全部まとめて厳重に保管してもらえば解決だな」


長かったオーパーツを集める冒険も終わりが見えてきた。

あとはこの争いを治めれば全部解決――


「申し訳ないけど……まだ終わりには早いわ」

「っ!! プレセア!!」

「え……?」


ユグドラの叫びと同時に人の気配を隣で感じる。隣から聞こえた人物の姿を確認しようとしたプレセアの視界に入ったのは、禍々しい輝きを放つ虚無の光。構える人物の姿を確認する暇もなく放たれた虚無の光にプレセアは飲み込まれ、撃墜される。


「プレセアーー!!」


地面に叩き落されたプレセアは意識を失ったのか身動き一つしない。その彼女に追撃の虚無弾が放たれる。間一髪のところで風となって移動したアウルがプレセアを抱え避難した事で回避できた。


「まだ…まだ終わりではないわ。これから始まるの」

「シルヴィア・ピステール……!!」


強敵の姿を認めユグドラとルチアは身構える。静かに地上に降りた彼女は地面に埋まった欠片を手に取る。


「全てのガーディアンを退け、秘石を無力化したこと……大したものね。何処かで躓き倒れ朽ちるのがオチだと思ってたのだけれど、どうやら考えを改める必要がありそうね」

「ルチア支援を頼む!」

「分かった。攻撃はこちらで受ける!!」


ルーンを構えて突撃するユグドラへシルヴィアは四発の虚無弾を飛ばす。最小限の回避で三発を避ける。最後の一発がユグドラへと迫るが彼女の眼前で風の盾により吸い込まれルチアの構える城壁に飛ばされ打ち消される。肉薄するユグドラがルーンに炎を宿して素早い突きを放つが自動防御による魔法障壁に受け止められる。


「……仲間に対する攻撃を引き受ける防御系魔法。それも中々の高出力ね」

(今のだけでルチアのシュロス・ラウンドの特性を理解した!?)

「まあ…対抗策など幾らでもあるけれど手っ取り早いものを選びましょうか」


防御壁から衝撃波を出してルーンを弾く。直後に魔力弾を飛ばし反撃の一撃を放つ。ユグドラを攻撃から守ろうとシュロス・ラウンドの効果で魔力弾を引き寄せようとした。


「ダメだルチア!!」

「もう遅い」


魔力弾を取り込もうとした風の盾にシルヴィアは躊躇せずに飛び込んだ。魔力弾と共にシルヴィアがルチアの前に飛んできた。


「なっ!!?」

「こういう手合いは……飛び込んだ方が倒しやすい。レイジングスマッシュ!」


虚無剣を作り出し振り下ろす。斬りつけられたルチアが吹き飛ばされ地面に叩き落された。彼女が力尽きた事を示すように風の城壁は徐々に弱まりやがて消えていった。


「ルチアまでやられた!? これちょっと不味いぞ!」


仲間の危機に気付いたシリウスが攻撃を中断して急ぎ駆けつけようと飛翔する。


「シルヴィア・ピステールッ。貴様ーー!!」


怒りを爆発させたユグドラが猛進して近接戦を仕掛ける。素早く尚且つ苛烈な攻撃を虚無剣を巧みに使い捌いていく。


「仲間がやられたくらいで感情的になるのは良くないわね。それだから隙だらけなのよ」

「なにお―――っ!!」


言われて気付いた。自分たちを取り囲むように展開される魔力弾の数々に。ルチアやプレセアを倒されたことで頭に血が上って視野が狭まっていたのに今になって気づかされた。


「ブレイク」

「っく……うおおおっ!!!」


迫りくる幾多の魔力弾をルーンを振り回して弾いていく。受けるたびに腕に伝わってくる強烈な衝撃。それがシルヴィアの魔力弾が如何に大きな質量を保有しているかを物語っていた。


「終わりね。レイジングスマッシュ」


身動きの取れなくなったユグドラに接近したシルヴィアが剣を振り下ろす。ルーンで受けようと水平に構えるが…意に介さず両断され斬られた。


「ば、かな……!!」

「地に這いつくばれ」


致命を辛うじて避けたユグドラへ止めの一撃を入れようと一閃する。だが割り込んで入ったシリウスが玄武で受けとめる。そのままユグドラを抱えて霞となってシルヴィアの前から消える。


「……幻術ね。小賢しい」

「げっ! もう気付いてやがる!!」


視線を下に向けたシルヴィアの視界にルチアの救助をしようとしているシリウスがいた。気付かれた彼は慌てて気を失っている二人を抱えて脱兎の如く退避を始める。


「逃がすと思う? ナンバーズ」


無数の魔力弾がまるで流星群の様に地上に降り注ぐ。


「くそっ! 正確にこっちに撃ち込んできてる! 俺の幻術がうまいこと機能してない!」


すんなり逃がしてくれないことに悪態を吐く。このままでは三人まとめてやられると判断したシリウスは次なる一手を打つ。


「飛翔せよ、天狐!」


掛け声とともに彼の傍らに五メートル以上はあろう青い炎に包まれた狐が姿を見せた。その背に負傷した二人を載せて合図を送る。狐は地を蹴りシリウスをおいて猛然と駆けていった。


「ケガ人を守るのが最重要。あかねの泣く顔はもう見たくないからね!」


弾幕の中で体勢を変えてシルヴィアに向き直ると地面を蹴って突撃を開始する。


「いくぞーー!!」

「情けを掛けましょう。ナンバーズ」


面制圧のように落ちてくる圧倒的弾幕。拳と蹴り、そして尻尾を巧みに使って被弾する攻撃だけを弾き飛ばす。


「くらえ! 狐火!!」


三発の火の玉を飛ばす。弾幕を避けて狐火がシルヴィアに命中する。黒煙の中に続いてシリウスが飛び込み中からシルヴィアと共に飛び出る。剣と体術の応酬を繰り返す。反撃の虚無弾が直撃するが怯まず更に距離を詰める。


「岩盤をも削り落とす水の力を受けてみろ!! 玄武無限掌!!」


残像を残す拳の連撃がシルヴィアに殺到する。此処に来て初めて防御魔法を展開するが、打ち込まれた箇所が削れていく。


「魔法を削る!?」

「オララララララッ!!!」

「くっ……! ブレイク!!」


防御魔法を自ら破壊して衝撃で相手との距離を取る。それをシリウスは逆にチャンスと捉えた。


「距離を取ったな!! 武具変更。神威!! ブチかます、天狐拳!!」


神威へと武装を変更したシリウスが拳を全力で打ち込む。拳の到達点で空間が歪み、次いでシルヴィアの目の前で同様に空間が歪む。そして歪んだ場所からシリウスの拳が飛び出しシルヴィアに命中する。


「くっ……。空間転移……!」

「続けるぞ! 無限掌!! ハアアアアッ!!!」


再び繰り出される高速乱撃。その全てが空間を飛び越え、シルヴィアを四方八方から襲い掛かる拳の嵐と化した。全方位に防御魔法壁を展開して攻撃を耐える。


「何時まで持つかな!? こっちは倒れるまで止まらないからな!!」

「……調子に、のるな!」


防御に徹していたシルヴィアが動き出す。魔法壁を自ら破壊し衝撃波で攻撃を防いだ後、再び弾幕を張る。攻撃を飛び退いてかわすシリウスに今度は虚無の槍が雨となって降り注ぐ。直撃する寸前に霞となって姿を消す。


姿を消したシリウスの位置にすぐに気付いたシルヴィアが背後へ剣を振るう。姿を現したシリウスの回し蹴りが剣と激突する。


「やっぱ気付いてるな!」

「なめてもらっては困るわ、幻術士。この程度、見抜けないとでも思ったかしら?」

「はっは。流石はリースリットのお姉さんだ!!」


虚無の魔法の数々がシリウスを襲う。対してシリウスも幻術を混ぜた体術で応戦する。一見拮抗している戦いが続いているが―――


「幻術の効きがだいぶ悪くなってきた……」


直ぐに対処される幻術に自分が劣勢に傾き始めているのを肌で感じる。だが、まだだ……。まだ時間を稼ぐ必要がある。


「せめて――あと十分!!!」



シリウスがシルヴィアと交戦を始めて間もなくして、フィリスとマルグリットの許にユグドラとルチアを担いだ青い炎の狐が辿り着く。


「ユグドラ、ルチア!」

「そんな…。ユグドラさんとルチアさんまで!?」


プレセアが運ばれて間もなくして二人も負傷して戻ってきたことにフィリスは強い危機感を覚えた。青い炎の狐はシリウスが出したのだろう。つまりシルヴィアを相手にシリウスが一人で応戦しているという事だ。負傷者が増える一方で回復に手が回しきれない。


「フィリス……。俺は後回しにしてプレセア達を治療しろ」

「なに言ってるのバルド! バルドが一番ダメージがあるんだよ。先にバルドを治さないと!」

「俺は後だ。いまは少しでも早く復帰できる奴を優先しろ!」


ほのかやリースリットはあと少しだけ回復に時間が必要だ。後は負傷したサヤやアシュトン、プレセア達を回復させた方が後の事を考えると優先順位が上と判断しての発言だった。


「早くしろ! シリウス一人でアイツを抑え込むにも限界がある。シリウスの時間稼ぎを無駄にする気か!!」

「っ……!! 分かったよバルド」


彼に与えていた治癒魔法を中断して他の仲間たちに宛てる。フィリスは心の中で悔しい気持ちで一杯だった。バルドの負った傷を癒せない自分の不甲斐なさに目頭が熱くなる。それを堪えて少しでも早く仲間たちを治療することに意識を集中させる。


「……む!!」


傍らで様子を見届けていたグラキエスが何かに反応して身構える。次いでアイネも同様に身構え空を見る。次の瞬間、すぐ傍の地面に何かが激しく激突する。


「シリウス君!!」

「あいたたたた……」


窪んだ地面の真ん中にシリウスが大の字で倒れていた。その体は傷だらけで相当なダメージを負っていることが見た目だけでもわかった。


「私の目的を邪魔する者は誰だろうが倒すわ」

「もうちょっと稼げると思ってたけど……現実は非情だね」


あかねに助け起こされたシリウスはこれ以上の戦闘は続けられそうもない。残りは回復と護衛で残ったメンバーだけ。治療を急ぐフィリスとマルグリットを視界に捉えたシルヴィアが目を鋭くさせる。


「回復? つまらないわ」


右手をこちらに翳してくる。その口上に覚えがあるフィリスは身を強張らせる。


「虚無の冥道――っ!!」


しかし魔法を発動しようとした次の瞬間だった。何の前触れもなくシルヴィアは全身に強い衝撃を受けて地面に叩き落された。突然シルヴィアが叩き落された事に唖然とする一行。シルヴィアのいた場所には別の人物が立っていた。


「予測よりも早く姿を現したな。彼女たちの実力が予想を超えているのに焦ったのかね?」

「あ、貴方は…!」


上空に浮かんでいる人物に驚きの声を上げる。シルヴィアを吹き飛ばし代わりにその場に居るのは、魔法共和国タスクフォース元帥カルロス・トーラスだった。


シルヴィアによって次々に撃破される仲間たち。

そんな彼女たちの危機を救ったのは、カルロス・トーラスだった。


次回もよろしくお願いします。

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