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第九十話 栄光を映す城壁 『円卓の城(シュロス・ラウンド)』

新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


第九十話更新。


二つ目の武具『玄武』を用いて敵を抑え込むシリウス。その間にユグドラ達は最後の欠片のガーディアンへ挑む。



上空で最後のガーディアン『ラ・ガイル』と交戦するユグドラ達はシリウスが敵の将達を抑え込んでいるのを視界の端で確認する。


「アイツ、あんな隠し玉持ってやがったのかよ」

「凄まじい水の魔力だな。水の魔力素が少ないこの地域であれ程の力を行使するか」

「あれなら暫くは動きを封じ込めれるだろう。これなら我らは目の前の敵に集中できる」


自らを拳に変えて飛んでくるラ・ガイルを散開して攻撃を避ける。


「援護する。プレセア行け!」

「任せろ!!」


矢を連射して援護射撃を行う中をプレセアは飛翔して右手を狙って肉薄する。ミョルニルを全力で叩きつける。甲高い金属音と共に攻撃が弾かれる。反撃に転じようとした右手を今度はルチアが風の魔力弾をぶつけて注意を引き付ける。


「ツェアシュラーゲンフォルム!! エアーデファウスト!!」


隙を見逃さないでプレセアが巨大な鉄球を振り回して叩きつける。強烈な一撃に右手は地面に真っ逆さまに墜落する。しかし手首にあたる部分から魔力が噴き出し姿勢を立て直した。


左手と合流すると、指先から同時に電撃を飛ばしてきた。回避行動を行うが指を器用に動かしてこちらに照準を合わせてくる。かわしきれなかったルチアがスピナーで防御する。

それに合わせて電撃を出しながら彼女の左右に移動したラ・ガイルが蚊でも潰すかのようにルチアを押し潰そうとする。パールグラスを左右に展開し防御魔法を張り、潰されないように耐える。


「「おおおおおっ!!」」


動きの止まった相手を頭上からプレセアとユグドラが強襲。二筋の光がラ・ガイルを地面へと押し返す。


「ブルーム・デス・ヒメルスッ!」


地面に叩き落したタイミングに合わせてルチアがパールグラスを投擲する。曲線を描き地面をえぐりながら両手を弾き飛ばし打ち上げる。


「紅蓮天翔ッ、ファントム・フェニックス!!」

「ギガインパクトッ!!」


宙に弾き飛ばされたラ・ガイルを地上からユグドラとプレセアの攻撃が襲う。両者の攻撃は寸分狂うことなくラ・ガイルの掌にある眼玉を撃ち抜いた。本体から目玉が弾き飛ばされた途端、糸の切れた人形のようにラ・ガイルは動きを止めて地面に落ちた。


「仕留めたか?」

「目ん玉ぶち抜いたんだ。倒しただろ。あとは残ってる秘石を封印して終わりだな」


未だ宙に浮かぶ秘石に目を向ける。そこで違和感を感じた。ガーディアンを倒したのに秘石から発せられる魔力に衰えがないのだ。それどころか、最初の頃より魔力が増えている。


「どうなってる!? 奴を倒しても活動を停止しない!?」

「待て二人とも! ラ・ガイルが…!」


倒れてい動かなくなったラ・ガイルが再び動き出した。宙へ飛びあがり秘石の左右に並ぶ。

激しく明滅する秘石が周囲を照らすほどの光を放つ。地面に落ちてた目玉が秘石へと飛ぶ。そして秘石を包むように帯電するガス状の物体が姿を作り、まるで悪魔を連想させる顔が誕生した。


「あれがラ・ガイルの正体か!」

「今までは前座ってことかよ」


悍ましい咆哮を上げたラ・ガイルが大口を開ける。口内に光が集束していき、膨大な魔力が集まる。

そして穴の空いた手がその口にちょうど掌の穴が合わさるように移動する。


「なにか、くる…っ!!」


手から光の線が口に向かってガイドのように幾つも伸びていく。そして口内に溜まった魔力をラ・ガイルは解き放つ。雷の魔力の塊が放たれる。それは光のガイドに導かれ掌の穴を通過する。直後、吐き出された時の数倍の出力となってユグドラ達に襲い掛かってきた。


「二人とも下がれ! 疾風の壁ヴェンデ・ヴィント!」


前に飛び出したルチアがパールグラスを高速回転させて風の防御壁を張る。

前面に展開した防御壁にラ・ガイルの一撃が直撃する。衝撃にルチアの表情が険しくなる。


「ルチア!」

「この威力…! 皐月女史のホーリーバスター以上か!!」


耐えようと試みるもその火力を前に押し返される。遂には弾かれ、砲撃は彼女たちのすぐ傍を通り抜け地面を焼き払っていった。


「くっ……。防ぎ、きれなかった…」

「何なんだよ、今の! ホーリーバスターどころか、収束砲撃魔法を超えてるぞ!」

「ルチア、大丈夫か!?」

「私は大丈夫だ。けれど……」


背後にある地上を見る。延々と続く平野に超高熱で融解した一筋のラインが出来上がっていた。共和国兵やクロス王国の兵たちが交戦する場所だ。射線上にいた者達がどうなったか、語るまでもない。


「見境なしか……!」

「願望器の欠片にそのような識別能力などある訳もないじゃろ」


三人の前に一陣の風が吹く。鳥の羽が舞い散る中からアウルが姿を現す。


「お前、いまままで何処に行ってたんだよ!?」

「わっちは主の傍におったよ。それよりも、風となって辺りを探っておったが……。いまの攻撃、奴だけの力で出したものではなさそうじゃ」

「カラクリがある、という事か?」

「そこまで大層な事もない。ただ単純に奴はこのアラガミ平野に集うつわもの共から魔力をほんの僅かばかり徴収しておるのよ。それこそ米粒にも等しい程の微々たる量をな」

「アタシたちから魔力を奪ってるってことかよ。でも、全然そんな感じはしないけどな」


自分の体に不調がない事を伝える。如何に少量だろうと減れば気付けるはずだ。

違和感と呼べるものは一切感じられない。


「それも当然と言えよう。奴の行いは蚊に刺された時のように意識せねば気付けぬほどの微量の魔力を奪ってるだけ。じゃが、それもこれ程の大人数であれば膨大なものとなろう」

「防ぐ算段は?」

「ない。両軍がここより撤退せぬ以外は、の…」

「ならよ、やることは一つじゃねえか。速攻で潰せばいいんだよ。どうせアタシ達から魔力を奪って回復すんだろ? ならやられる前にやっちまえばいいだろ」


単純な答えだな!と胸を張って言うプレセア。自信満々に言う彼女に苦笑しつつも三人は同意する。


「うむ。わっちらの魔力に余裕があるうちに叩くことには賛成じゃな」

「では、私が道を拓こう。トドメはプレセア、お前に任せる!」


先陣を切るのはルチア。魔力をパールグラスへと送り込む。


「世界を巡る風よ。先へ進む者達に万雷の喝采を響かせよ。パールグラス、オーバーリミッツだ!!」

[Je. Over Limits,LevelⅡ]


パールグラスがライトグリーンの輝きを放つ。回転を始め周囲の大気が渦巻く。

コアの残してパールグラスが装甲をパージする。


「パールグラス第二形態。『円卓の城シュロス・ラウンド』!!」


自らの装甲すらパージしたルチアの背に現れるのは大きな城壁。円形のレンガを積み上げ、並べ、それを幾層にも連ねた城壁一枚一枚が美しきライトグリーンの輝きを放つ。

パールグラスとルチア自身の身を守る装甲が全て魔力を通して結びつき築き上げたものだった。更に彼女は言葉を紡いでいく。


「祝福の福音よ、響け。其は栄光を映すものなり。勇む者に勝利の道を指し示す!」


城壁の最上階にある鐘が鳴る。福音は波紋となってユグドラ達を鼓舞する。


「駆けろ! 奴の攻撃はすべて私が引き受ける!!」


合図と共に三人は一斉に動き出す。ラ・ガイルは冷静に三人を見定め、初めにユグドラへと攻撃目標を定めた。先と同様の大砲撃がユグドラに襲い掛かる。迫る砲撃はしかし、ユグドラの目前で展開された風の大盾に吸い込まれて消えた。


消えた砲撃が何処に行ったのか……。その答えは後方にあった。ルチアの前に風が渦巻き、直後中から先の砲撃が出現して彼女の背後にある城壁に激突する。大砲撃を受ける城壁だが、砕けることなく防ぎ切った。


(味方への攻撃を全て引き受ける防御型形態かの…?)


初めて見るルチアの姿にアウルは冷静に分析する。大した魔法だ。あれ程の大砲撃を受けながら傷一つ付いていない。


「ルチアの持つもう一つの姿『円卓の城』。あれには三つの能力がある。その一つが、味方への攻撃を全て自分一人で引き受けることだ」


代償として彼女はその場から動くことはできない。それどころか本体である彼女自身は自らの守りもこれにつぎ込んでいる。攻撃を受ければ大怪我を負う危険性すらある。


「速攻で決めるぞ。カラドヴォルグ!」

[Over Limits,LevelⅡ!]


弓形態に切り替わるルーンに矢と化したカラドヴォルグを装填する。

砲撃が効かないと判断したラ・ガイルが手を拳に変えロケットの如く飛んできた。

再び風の円盾が出現して攻撃を受け止める。盾に吸い込まれた拳は後方にいるルチアの下に飛ばされ城壁にぶつかる。


邪魔な壁と思ったかどうかは分からないが拳は破壊しようと怒涛の攻撃を仕掛けてきた。叩き込まれる数々の重撃を真っ向から受け止める。疾風の城壁はそれでも微動だにしない。その隙にユグドラは攻撃の準備を整えた。


「この一撃、避けられると思うな!! 焔の鳳、古の山々を打ち砕かん!! 紅蓮天翔ッ、ファントム・フェニックス!!」


焔を纏った矢は火の鳥となって本体を目指し飛翔する。危機を察知した両手が攻撃を中断して猛スピードで本体の下に移動。接近する火の鳥を叩き落さんと魔力を込めた両手を合わせた一撃を振り下ろす。


「させると思ったか戯けめ。黒扇封!!」


扇子より放たれた黒風が拳の軌道を逸らさせ空振りさせる。遮るもののなくなった道を火の鳥は飛翔して本体の脳天を穿ち抜いた。


「決めろ。プレセア!!」

「任せな! ミョルニル、オーバーリミッツだ!」

[Je.My Prinzessin. Over Limits,LevelⅡ!!]


スコップからドリルへと変形したミョルニルが回転を始める。黄色の魔力が渦巻き、全身を包む。


「覚悟しやがれ、顔面野郎!! これが、アタシの全力!! ギガァ、ドリル……ブレイクゥゥゥーーーーーッ!!」


ドリルが回転速度を上げて行き、彼女の体を遥かに超えるサイズへと変貌する。

そのドリルと共に彼女は魔力全開で突撃、ラ・ガイルへ向けて突貫した。


砲撃での迎撃が間に合わないと察したラ・ガイルは保有する魔力を全て両手に収束させる。

両手を合わせて拳を作り回転させながら撃ち出す。激突する両者は進退を繰り返す。


「ぶち抜けえぇ!!」


気合の声と共にミョルニルが回転をさらに上げる。

威力を増すミョルニルを前に回転速度が落ち、遂に失速した拳が削られていく。

遂に穿たれ拳は粉砕される。遮るものが無くなった空間をプレセアは勢いをそのままに飛んでいき、ラ・ガイルの体内にある秘石を本体より引き剥がした。


「どりゃああああ!!」


シュピラールフォームから通常形態に素早く戻したプレセアが渾身の一撃を叩き込む。

パコーンッと乾いた音が響いて、秘石は地面に流れ星のように叩き落される。

激しい明滅を繰り返してた欠片はやがてその頻度を落としていき、やがて色褪せた紫色になって活動を停止する。


秘石がその動きを止めると同時にガーディアンのラ・ガイルも活動を停止。ボロボロと崩れ落ちて消えていった。




円卓の城シュロス・ラウンド


ルチアの第二形態。オーバーリミッツⅡを発動時に使用可能。パールグラスの装甲や自身の騎士甲冑までも使用して巨大な城壁を作り出す。何層にもわたって分厚い壁が展開されている為、破壊するには相当な大規模攻撃が必要とされる。この形態には三つの能力が備わっており、その一つが『味方への攻撃を全て引き受ける』というもの。

デメリットは使用者本人はその場から動くことができなくなるということ。故に発動するときは後方に待機していた方が安全。


それでは次回もよろしくお願いします。

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