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第八十九話 堅牢なる守り 玄武

第八十九話更新


仲間を守るために強敵達へ単身挑むシリウス。果たして勝算はあるのか。



ズボンのポケットから両手を取り出し広げた手の上に青い炎を生み出す。


「さあ、俺が相手になろう」


両手に生み出した狐火をアガレスへと飛ばす。間に割って入りアトラスが両断し打ち消す。

同時に地面を蹴りシリウスとアトラスが交戦する。

素早いパンチとキックを繰り出し手数で挑むシリウスに対し、受け流して鋭い一撃を繰り出す。


「おおっと!?」


身を捻りかわした一撃からくる剣圧に驚きの声を上げ距離をとる。


「剣圧で押すかやるね~」

「あまりなめると痛い目見るぞ。この剣と正面から打ち合って生き延びた者はいない」

「あっ、そ~? じゃあ、俺がその第一号になるってわけだ」

「減らず口を!」


尚も余裕を見せるシリウスに接近して斬撃を加えようとする。


「幻想を駆ける拳、神威!!」


手甲と脚甲を装備して迎え撃つ。剣と拳がぶつかり合い甲高い金属音が鳴り響く。

素早い回し蹴りでアトラスを蹴り飛ばした後で何かを感じ取ったシリウスが身を反らすと顔の前をライフルの弾丸が通り抜ける。


「あっぶな!?」

「くそっタイミングを合わせたはずなのに!」

「銃弾ってのは…目で追いにくいから厄介なもんだねぇ!」


オーラの尻尾で地面を薙いで土煙を巻き上げる。

目標がスコープ越しから消えた事で身の危険を感じ慌てて離し肉眼で目標を探す。


「天狐拳!!」


煙の向こうから拳を打ち込む。右の拳は空間に消え、次の瞬間にペインの正面に現れて彼を殴り飛ばした。


「神威の拳はバ~ラバラってね」

「よそ見してんじゃねえぞ優男よぉ!」


土煙を逆に利用したビアンカが気配を消して死角から一気に襲い掛かる。両手の円月刀でシリウスを斬った。


「がはっ!?」

「ひゃっはは!! いっちょ上がりだぜ~!!」


斬り抜けざまに身を翻しトドメの一撃を刺そうと首目掛けて腕を振るう。


「…な~んちゃって!」


斬られたシリウスが霞みとなって消える。空を斬ったことに驚くビアンカを下から衝撃が襲い掛かる。

いつの間にか懐に潜り込んでいたシリウスが顎を蹴り上げていた。浮いた彼女の腹を回し蹴りで更に蹴り飛ばす。


「はあああっ!!」


気迫の籠った雄たけびと共に白蓮が偃月刀で斬りかかる。軽く地面を蹴り、初撃をかわし着地から連撃を交える。


「血気盛んなお嬢さんは嫌いじゃないよ。烈狐脚!!」


疾風の如き回転蹴りを打ち込み白蓮を蹴り飛ばす。

次いで仕掛けてきたバルドゥスへと目標を切り替え交戦に入る。


「無理すんなっておっさん! いい歳してこんな事してると腰やっちゃうぞ?」

「その軽口……そろそろ閉じたらどうだ!!」

「それこそ無理ってもんさ! これが俺の性分なんでね!!」


暴風の如き槍の乱撃を真っ向から拳と蹴りで迎え撃つ。

突き出された槍を右足で思いっきり踏みつけ、その反動で一気に上空へと跳躍する。


「荒れ狂う嵐撃、エアスラスト!!」


空中で姿勢を変えてバルドゥスの方に向き直して中級風魔術を発動。

無数の風の刃がバルドゥスを襲う。ランスを振るい魔術を打ち消す。


「嵐は止まらず突き進む。サイクロン!!」

「なにっ!?」


その間にシリウスは次の魔術を準備し終えていた。

発動するは上級風魔術サイクロン。巨大な竜巻がバルドゥスを飲み込んだ。


「う、おおおおおっ!? 連続詠唱だと!?」

「もういっちょ! 嵐より火炎は踊り狂う!! 謳え、ワイルドフレア!!」


嵐の目に向かって頭上から火球が落ちる。

暴風にまかれた炎がまるで風に乗り炎の竜巻と化してバルドゥスを包み込んだ。


「バルドゥス将軍!!」

「連続詠唱魔術…! それも上級魔術以上を重ねてだと!?」

「まずは一人、焼き鳥になったかな?」


手応えを感じるシリウスだったが、炎の竜巻の中で揺らめく黒い影が現れる。


「およ?」

「幾多の戦場にて、幾多の強敵を退けた勝利の御旗よここに。エースガード!!」


炎の竜巻を消し飛ばし無傷のバルドゥスが姿を現した。ダメージはおろか鎧に傷一つ入ってないのに今度はシリウスが驚かされた。その隙に愛馬を奔らせ、猛然と突撃し一気に距離を詰める。


「粉砕する!!」


体重ののったランスの一撃を防御するがあっさりと弾き飛ばされた。


「ッ……、やっぱ神威はパワー型とは相性が悪いな! …ん?」


空中で体勢を整えようとしたシリウスの体に赤い光の点が映った。目を送れば搭乗兵器からレノンが照射しているのが見える。


「照準完了。いまですぞ~!!」

「おっしゃくらえ!!」


担いでいた大筒のような物体に付いているスコープを覗いていたペインが引き金を引く。

火を噴いて放たれたのは全長が1mはありそうな対戦車誘導弾だ。


「げっ!? これってまさかレーザー照準!?」


これは不味いと思ったころには中腹まで接近されていた。逃げるも回避も厳しいと思った彼は周囲に多数の狐火を展開。一斉射で飛来する誘導弾を射抜き撃墜する。


「ふい~、間一髪!」

「荒れよ、烈火の旋風。阻みし者を包み、焼け! ファイヤートーネードッ!!」


息つく暇もなく今度は白蓮が魔術を展開。炎の渦がシリウスを包み込んだ。


「あちちちっ!?」


身を焦がす炎の熱気に慌てて脱出するとそれを待ってたと言わんばかりにビアンカが飛んでシリウスに斬りかかる。


「しっつこいな~!」

「そんなつれないこと言うなよ~! その首アタシにくれよ!」

「お断りだね!」


地面に落ちる寸前で武器を弾いて蹴り返すが素早い身のこなしでかわされる。着地したシリウスを今度はバルドゥスとアトラスが近接戦を仕掛けてきた。


「パワー推しがぞろぞろ…。神威じゃきついかな」

「そろそろ決着をつけさせてもらう。秘技 絶花一閃!!」


アトラスが一気に距離を詰めて神速の一撃を繰り出す。迫る一撃を前にシリウスは身構え唱える。


「幻想を駆けるは終わり、大地はそびえ立つ。玄武!!」


神威が白く光り輝き、黄色の輝きに変わる。肘に届くまで光は伸び膨れる。光る腕を前に出し、アトラスの一撃を真っ向から受け止めた。


「なに!?」


必殺の一撃を受け止められたことに驚きの声を上げる。シリウスの両腕を包むのは亀の甲羅の様な形を模した手甲だった。


「玄武の防御はその程度じゃ崩せない」


何度も剣と拳を交える両者。今度のシリウスは力負けせず一歩も退かずアトラスの攻撃を受け続ける。そして次に来た攻撃で得物を左手で掴み受け止め動きを封じる。


「歯ぁ食いしばれ!!」


右手に力を溜め全力で叩きつける。吸い込まれるように相手の顔に叩き込んだ拳を振り抜き殴り飛ばす。


「おおおお!!」


追撃から守るようにバルドゥスが突進する。神威を装備していた時のシリウスは彼の突進を受けきれなかった。


「ふんっ!!」


しかし今度のシリウスは腕を交差させ防御で受け止めた。

それどころか強烈な突進を正面から受けたのにもかかわらず微動だにしなかった。これにはバルドゥスも驚かされた。あのバルドですら正面から受けて押される威力だというのに彼は少しも動かなかった。手に来る衝撃もそれ相応に凄まじいものだった。


「パワー推しの奴なら守りを固めればいい。よく言うでしょ、防御は最大の攻撃ってさ!!」


ランスを弾いて今度はシリウスが攻勢に出る。強烈な攻撃がバルドゥスを襲う。神威と違い“殴る”のでなく“叩き潰す”に近い攻撃を前に堪らず後退する。


「このままでは埒が明かぬか! 皆、準備は良いか!」


応と白蓮、ビアンカ、ペイン、レノンが答える。すでに準備は万端。四人がそれぞれ魔術の詠唱を完了しシリウスを囲むように四方に分かれて構えていた。


「混合魔術、ミリオンバスター!!」


それぞれ炎と水、風に土の属性を持った魔術がまるで砲撃のように放たれシリウスを攻撃した。

混じり合った属性は膨大なエネルギーを発し、中央を基点とした大爆発を起こす。


「やったか!?」

「四属性の混合魔術だ。これならば――!!」


しかし、次に彼らが見たのは爆心地に鎮座する巨大な水泡だった。

弾けて消えると中からシリウスが出てきて降り立つ。怪我らしい怪我はない。


「玄武が司るは水。どんな攻撃だろうと受け止め、そして防ぎきる。大いなる水よ、立ち上がれ!!」


地面を踏み鳴らす。呼応するように地面が揺れ、幾つもの水柱があたり一帯に広がる。


「大地を飲み込む一撃を受けてみろ! 大海嘯!!!」


地面に向かって拳を叩きつける。地面にエネルギーが伝わり、広範囲に広がる。

溜まりに溜まったエネルギーが弾け、地面を吹き飛ばし流れる水の暴力が相手に襲い掛かった。


「災禍となり唸れ、メイルシュトローム!!」


ただ暴れる水が呼応するように動きを統一させる。

彼の合図と共に大渦となってバルドゥス達を巨大な渦潮の中に閉じ込めた。


「なんだこれは! さっきまでと違う!?」

「いや~驚かされるね~。人間には毎回色々と驚かされるよ~。まさか、第二門まで解放させるなんてね!」


宙に浮かぶシリウスの姿に変化が起きていた。体から生えている尻尾が更に一本増えて二本の尾となっていた。たったそれだけの変化だが、シリウスから放たれる肌を突き刺す様な威圧感がさらに増していた。


「さて、こっからが本番だ。あれを味方が倒すまでの間、抑え込ませてもらうよ!」



強烈な攻撃を前にシリウスは第二の武具を解放する。

堅牢なる守りを誇る玄武と呼ばれる武具は、バルドすら苦戦した軍神の突進すらものともせず押し返す力を持っていた。強固な守りを駆使して遂に将軍たちを抑え込む。

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