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第八話 迷子の少年と紅十字の黒蠍

第八話更新。


今日、投稿せねば翌日から四日間、所用でパソコンにあまり触れられぬので急いで仕上げました。


内容がいつも以上にgdgdしてるよっ!!

軌道修正しようとすると余計に道を踏み外すよ!!


原因は間違いなく私の脳にありますね……軽く凹みます。


そんな自分に絶望しつつも、前向きに頑張ろうと意気込みながらの投稿です。


では、本編をどうぞ!!





 朝日が昇り、世界に色を与え始める。

真っ暗闇だった森の中に木漏れ日が差し込み始め、闇の中で眠りに就いていた者達を目覚めへと誘う。



その朝日が来る丁度、火にべる薪も尽き、残り火も消えた焚火が炭だけを残し白い煙をゆらゆらと立ち昇らせていた。



 その直ぐ脇にある樹木の下、背を預けて座っているバルドは閉じていた目を開ける。

そして、木々の間から来る木漏れ日に僅かばかり目を細め、その後に視線を下に下ろす。

そこには、彼の膝を枕にスヤスヤと二人の少女、ほのかとフィリスが眠っていた。


「朝か……」

[昨晩はモンスターは一頭も姿を見せず。ラッキーだったな相棒?]


火を持っていても、モンスターは恐れる事なく時々姿を見せる。

昨晩は幸運な事にこの付近には現れなかった。


「だな。もし攻撃性の強い奴だったら面倒だった」

[流石の若も……この様では動けませんものね?]


服の裾を掴んで安らかに眠っている二人。

確かに、両足を枕にされ尚且つ服の裾を掴まれては彼も動くに動けない。


[起すのも忍びねえしな、ウヒャヒャヒャ!!]

「その時は問答無用で叩き起こす気だったけどな」

「ん~~……むにゃ」

「すぅ~……すぅ~……」

「さて、日も出た事だし起すか。おい、起きろお前等」


軽く揺すり目を覚まさせようとする。


しかし――


「んん~~……あと、ごふん~~……」


返ってきたのはそんな間の抜けた返事だった。


「…………」

[あ、相棒!? なぜに俺とバハムートを振り上げる!?]

[わ、若!? まさかとは思いますが……!! さ、流石にその起し方は些か乱暴では――!?]

「さっさと起きろ!! この馬鹿娘共がああぁぁぁ!!!」


直後、森の中で軽い地震が起き、少女二人の悲鳴が上がったのをここに記しておこう。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「うぅ~……頭がぐわんぐわんするの……」

「何だろう……。軽い頭痛がするよ…」

「ふんっ、直ぐに起きないお前等が悪い」


 派手なモーニングコールで叩き起こされた二人が手を頭にえて座っていた。

そんな二人を見て彼は鼻で軽くあしらいつつ朝食を作っている。


樹木の直ぐ脇には、非常に重い何かが落ちた様な跡が二か所あって地面が大きく沈んでいる光景があった。


軽く目を回した状態の二人はすぐ近くの川で顔を洗って目を覚まさせたのだが、それでも頭の方が未だに余震をくらっているらしく揺れている感じがした。


「今日中に第二都市の方に行かなきゃならねえんだ。少しは余裕を持って行かねえと帰れねえぞ」

「もう少し、普通に起してほしかったの……」

「だったら一回目でちゃんと起きやがれ」


 二度目でこれは横暴だろうに……。

と口を尖らせて思いつつも、彼の事だから言った所で無駄だろうと諦める。


そんな早朝トラブルの後に朝食をしっかりと摂って火の始末を終えた三人はテントなどを纏めて森を出る為に歩き出した。


「此処は水の魔力素が強いんだね?」


森の中を歩く彼女が掌に出来た拳大の水の塊を見て彼に問いかけた。


「此処は第二都市の近くだからな。あそこは水の力が強い。その影響だろうな」

「確か第二都市は水産業が盛んだって話だったね?」

「ああ。漁業もそうだが、水系統に関する産業は他の都市よりも水準が上だ」


そして、第三都市は火が強い事から火を使った産業……主に鉄鋼業などが盛んだ。

また、温かな気候もあってか植物の成長も良く、農業にも適していて安定した各種産業を経営できる利点を持つ。


[ちなみに第一都市は土の力が強いぜ~。その影響で土木系統の技術も高えし、鉱脈とかあるから鉱業や電子製品、IT企業とかも発達してる。だから、中央都市を除いて他の都市よりも金の潤いもあるって噂さ~]

「詳しいんだね、ケルベロスさんって?」

[おうっ! もっと褒めてくれよほのかの嬢ちゃん!! 褒められると伸びるタイプなんだぜ、俺はよ~ウヒャヒャヒャ!!]



宙に浮かんでいるケルベロスがカタカタと揺れる。それに二人は苦笑い。

そのまま色々と雑談をしながら先に進む。


足場の悪い森の中を彷徨う続ける事、二時間ほど経った。


「大分歩いたね?」

「うぅ~、足が疲れたの……」


二人の額には汗が滲んでおり、先にほのかが根を上げてその場に座り込んでしまった。

そんな様子を見てバルドは呆れたような顔を見せる。


「まだ歩いて二時間しか経ってねえじゃねえか。もう少し根性見せろよな」

[オイオイ相棒。運動音痴のほのかの嬢ちゃんにそれを言うのは酷ってもんだぜ?]

[それにこの悪路です。足に負担が来るのも仕方がないかと。ほのかさん達は民間人です。こういった道には慣れてないのも無理はありませんよ]


 そんな二人をフォローする二本の魔剣。

その二人(?)の意見にしょうがないといった感じで溜息を吐いて近くの倒れた樹木の幹に腰掛けた。


「三十分だけ休憩にする。そこからは直ぐに出発するからな」

「ありがとうバルドさん」

「ごめん。何か迷惑かけちゃってるね」

「もういい慣れた。無理して後で足手まといになられるともっと困るしな」


 そう言ってほれっとほのかの方へ水筒を軽く投げてきた。

それを両手で受け取って礼を言ってから彼女は一口それを口にする。

冷たい水が乾いた喉を潤し、全身の気だるさが少しだけ和らいだ。


その水筒を隣にいるフィリスに渡し、彼女も同様にそれを口にしてから一息吐いた。


「バルドさんは一日にどのくらい歩いてるの?」

「正確には分からねえな。まあ、都市と都市の間を歩くから丸一日はしょっちゅうだな」

「車とか船とか、飛行魔法とかは使わないの?」

「車は途中でガス欠や故障になると押さなきゃいけねえから面倒。船も水上でモンスターに襲撃を受けたら民間人を守りながら戦わねえといけねえからもっと面倒。飛行魔法も飛べば飛行モンスターにしょっちゅう喧嘩売られるから更に面倒。結果、徒歩が一番何も気にせずのんびり出来んだよ」


めんどくさがりな彼らしい答えに二人は苦笑いしか出来なかった。


その時だった――


「うわあぁぁぁっ!!?」


森の奥で誰かの悲鳴が聞こえてきた。

それに休んでいたほのかとフィリスはバッと立ち上がった。


「っ!! 今のは悲鳴!?」

「あっちから聞こえたの!!」

「行こう、ほのか!!」

「うんっ!!」

「お、おいっ!? 何処に行くんだお前等!!」


 さっきまでの疲れは何処へやら……二人は声の聞こえた方へ駆け出して行ってしまった。

それを呼び止めようとしたがその前に彼女達は茂みの向こうに走って行ってしまった。


姿の消えた二人に彼は後頭部をガシガシと掻いた。


「ああもうあいつ等は!! 疲れてたんじゃねえのかよ!!」

[人助けに疲れなんぞ何処へやらってか? アヒャヒャヒャ!!]

「めんどくせえ奴らだな、ホントに!!」


両手に魔剣を持って彼もまた彼女達の後を追う様に駆け出して茂みの中へと飛び込んで行った。





 茂みから飛び出たほのかとフィリスが最初に目にしたのは、一人のローブを来た人が三頭の巨大なクマを前に尻餅をついていて、今にも襲われそうな状態だった。


「危ないっ!! ウィル、セットアップ!!」

[イエス、マスター。マジックアーマー、セットアップ]

「メロー、続くよ!! セットアップ!!」

「了解しましたフィリス! マジックアーマー、セットアップ!!」


瞬時にセットアップを終えた二人がマジックアーマーを身に纏い飛行魔法を駆使して一気に接近を開始する。


「シャインバレット……!!」

「アクアスパイク……!!」

「「シューーット!!」」


無数の魔力弾と矢を形成して一斉に放つ。

突然、横合いから飛んで来た攻撃を前に熊達は反応が遅れて直撃して爆発の中に消えた。


[グオオオォォォオオッ!!]


 その煙の中からしかし、殆どダメージを受けていないのかそれ等は飛び出して二人に向かって四本の足を動かして迫ってくる。

 それに二人は真正面から飛んで行き、一歩手前で急上昇して突進を回避。

そのまま空中で体を入れ替えて少年の前に降り立った。


「大丈夫ですか!?」

「き、君達は!?」

「話は後だよ!! 今はあいつ等を追い返す!」


獲物が増えたのが嬉しいのか、獰猛どうもうな熊達は咆哮を上げて自分達へ仕掛けてきた少女達をその殺気の篭った瞳に映していた。


[データ照合完了……。マスター、あれは『リバーベア』。立派なモンスターです]

「それなら、遠慮なく行くの!!」


 真っ直ぐに此方に突進してくる三頭の熊モンスター。

その相手の動きを止めようとフィリスは捕縛の準備に入る。


「先ずは動きを止める!! 絡め取れ水流、ツイストカーレント!!」


 相手の進行方向の地面に魔法陣が広がり、そこより、帯状の水流が伸びる。

渦巻く水流が帯状に伸びて相手に絡みついた。それが相手の動きを拘束し制限する。


しかし――


彼女の展開した捕縛魔法が力づくで破壊され、弾け飛んでしまった。


「うそっ!? 水の捕縛魔法が効かない!?」

[このモンスター……まさか水属性!?]

「フィリスちゃんは下がって援護して!! 此処は私がやるの!!」


 ほのかが前に出て砲撃体勢に入る。

魔法陣が広がり、彼女の背後に女神の紋章が浮かび上がる。

そして杖の先端に魔力が集中し、膨大な光が灯った。


「フォトン……ブレイザーーー!!」


放たれる強力な光の奔流。地面を抉りながらそれは真っ直ぐにモンスター達へと飛んで行く。

 危険を察知したモンスター達の内、二頭が左右に飛んで逃げるが残る中央のモンスターは間に合わずに直撃して爆発。


 ノックダウンした同胞を無視して残る二頭が危険なほのかを狙って駆け出す。

同時に迫ってくる二頭のどちらを狙おうか一瞬だけ逡巡しゅんじゅんする。


その時、後方にいたフィリスが再びアクアスパイクを放って牽制の矢を撃ちまくる。

それが右側のモンスターへと直撃し、その進行速度が僅かに送れる。


「今の内に反対の方を!!」

「うんっ!! 輝いて、光の砲弾!! ブライト、キャノンッ!!」


 両手でしっかりと持ったウィルから圧縮された魔力弾が一発撃ち出され、大きな反動で杖が上を向く。

放たれた強力な魔力弾が左にいた二頭目を見事に捉えて胴に命中、強烈な一撃に相手の体が浮き上がって後方へと吹っ飛ぶ。


そして、桜色の爆発が発生して相手の姿がその中へと消える。

光が治まるとそこには一頭目と同様にノックダウンしたモンスターが横たわっていた。


残るは一体。



しかし、その残りの一頭がフィリスの攻撃を振り切ってほのかへと迫っていた。


「ほのか、あぶないっ!!」

「えっ!?」

[グオオオォォォオオ!!]


 丸太の様な太い腕が振るわれる。その先にある鋭い爪が真っ直ぐに彼女へ向かって飛んでくる。

それに思わず目を瞑るほのか。だが、その間に黒い影が飛び込み、煌めく黒き刃がその一撃を受け止める。


「バルドさん!!」

「おらあっ!!」


 人間の力など軽く凌駕りょうがする相手の剛腕を上に向かって弾き上げて攻撃を防ぐ。

予想外の出来事に踏鞴を踏んだ相手の隙を逃すことなく、彼はその場で跳躍し、身を捻ってその横っ面に鋭い回し蹴りを叩き込んだ。


蹴り抜かれると、それだけで巨体が浮き上がって吹っ飛び地面を何度も転がる。

それに追撃を加える様に彼はケルベロスを振り上げる。


「黒狼斬!!!」


 最初の跳躍から一気に地上へと下り、その勢いを加えた一撃を地面へと叩きつける。

地面に黒き斬撃が奔り、地面に転がる相手へと進んで直撃、爆発が起きる。


 最後の一撃が決まり、リバーベアは意識を手放して地面に倒れる。

それを見届けてから彼はケルベロスを手の中で軽く回してから地面に突き刺して一息吐いた。


「ふぅ……片づいたか」

[リバーベア、水属性の力によって変異したベアの大型種ですね。ランクは、Dでしたね?]

「あいつ等には荷が重過ぎた相手と思ったが、そうでもなかったな」

[最後は相棒が手を貸さなきゃ危なかっただろうが、まあそうみたいだなウヒャヒャヒャ!!]


ケルベロスの言う通り、最後は助けなければ危なかったが今の二人ならベア二頭程度なら勝てる事が確認出来た。

子供だというのに大した奴だ、と思いながら彼はケルベロスを地面から引き抜いて肩に担ぎ、二人の下へと歩く。


だが、それとこれとは別だ。

直ぐに思考を切り替えて、またも勝手な行動を取った二人に対して彼はお説教モードに入る。


「おい、お前等……また勝手な事をしやがって……」

「でも、もう少しで食べられちゃうところだったの!!」

「そうだよ。私達が間に合わなかったらあの人は――」

「やかましい。今日という今日は許さねえぞ。お前らまとめてお仕置きだ!!」

「「ぴぃっ!?」」


 背後に揺らめく般若に二人が恐怖で顔を真っ青にガタガタと震えて互いに抱きつく。

その後、再び森の中で小さな少女達の悲鳴が木霊したのだった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「助けてくれてありがとうございます。僕の名前はアシュトン・フリージって言います」

「俺はバルドだ、好きに呼べ。そんで……あそこで悶絶してるバカ二人……右のチビが皐月ほのかで、左のチビがフィリス・アルトレーネだ」


目線の送られた先、そこではほのかとフィリスが頬を手で押さえて痛みで悶絶している姿だった。


「あの、大丈夫なんですかあれ……?」

「気にすんな。言っても分からねえ奴にお仕置きしただけだ」

「は、はあ……」


 引き攣った表情を見せる。

その彼を見ていたバルドは彼に質問をしてみた。


「お前、何でこんな森ん中にいたんだ? モンスターがいるくらい、その歳なら分かるだろ」


 見た所、彼は中学生辺りの男子だろう。今は旅用の麻のローブと何が入ってるか分からないが大きめの皮のバックを肩にかけていた。そして、その手には杖が握られている。


「実は、僕は魔術国から来たんです」

「ほう、魔術大国からか。此処からだと随分と遠いな。遠路遥々(えんろはるばる)ご苦労さん」

「だけど実家はこっちにあるんです。僕の母さんが魔法側の人で、父の方に嫁いだという感じです」

「ふむふむ……」

「それで、本当は母さんと一緒に行こうとしたんですけど……」



~~回想開始~~



「えっ、実家? 行きたいのは山々だけど今は一ヶ月間の特売バーゲン戦争勃発中なのよ!! この戦い、制せずして何とする!! 悪いけど、アシュトン一人で行って来てちょうだい。ファイト一発我が息子!!」

「ええっ!? そんな無茶な!?」

「男なら出来る!! あんたのお父さんもこの時期には戦場に引き摺って駆り出してるのよ」

「そんな事してるの!? よく離婚しなかったね、父さん!?」

「……アシュトン。人生とは――」

「さあ、行くわよあなた!! 今日も今日とて大戦争開始~~!!」

「――人生とは、好きになった人がどんな境遇n――」バタンッ!!

「あれっ!? ちょっと待って母さん、まだ話の途中なんですけど~~!?」




~~回想終了~~



「ってな感じでね」

「……独特な世界観を持つ母親だな? そんで親父の方は何を言おうとしたんだか……」

「それで、一人で地図を見ながら来たんだけど、途中で道に迷っちゃって……」

「そうか。んで? 何処に行こうとしてたんだ?」

「第二都市です」

「なんだ、俺達の行く先と一緒か。なら序だ、お前も一緒に来いよ。道案内してやるからよ」

「ホントですか!! ありがとうございます!!」


 それを聞いてホッとしたのか、彼は笑顔を見せた。

彼の様子にバルドもフッと笑みを零し、その後に彼の前に手を差し出した。


一瞬だけ首を傾げたが、直ぐにその意味を理解して彼はその手を掴み握手を交わす。


「さてと……。おいお前等、何時までも痛がってないでちゃんと挨拶しろ」

「うにゅ~~、バルドさんが強く引っ張ったのが原因なのに~~……」

「あ、あははは……」


新たにアシュトンが加わり、道中は賑やかなものとなる。


 ほのかはアシュトンの事を君付けで呼び、フィリスは呼び捨てで呼ぶ。

それにアシュトンは気にすることなく、代わりに二人をちゃん付けで呼んだ。


ほのかとフィリスが魔術共和国の事について色々と質問をし、それにアシュトンも年上という事からしっかりとした対応をしてみせ、彼女達の質問に答えていく。


そして、逆に質問もして彼女達もそれに答える。

終始、そんな光景が続いた。


「しっかし、学校はどうしたんだよ? まだ、長期休暇には早くねえか?」

「それは……えっと、何て言えばいいのかな。母さんが、如何やら学校に何か言ったらしくて先生に『他国への留学を希望と聞いたぞ! 自ら異なる文化へと触れ、体験したいとは素晴らしい!! 校長には私が言っておくから沢山学んできなさい!!』って言われて……」

「……しばらく帰れそうになさそうだな?」

「うん、ホントに……」


 乾いた笑みを浮かべ何処か遠くを見上げる。

その表情は、何処か悟った様なそんな感じにも見えた。


 恐らく、母親の事で並々ならぬ苦労があったのだろう。

心中、ご苦労さんと呟いて彼はふと木漏れ日の降り注ぐ森を見上げる。


燦燦さんさんと降り注ぐ筈の太陽の光を目に優しい緑の葉がある程度吸収し、穏やかな光と変えて地面をやや薄明るく照らす。


 聞こえてくるのは風の通り抜ける音と、揺れる葉の奏でる音色。その景観をほのか達は楽しみ、森林浴を満喫していた。

正に平和と言う言葉が似合いそうな状況、なのだがバルドは違和感を感じていた。


(動物共が怯えてやがる。それに、僅かだが葉の揺れに規則性がねえな。何か、この森ん中で複数、同時に動いているのがいるな)


 チラリと後ろで話を続けている三人を見る。

彼女達は気付く訳ないだろうが、それでも彼女達の持つターミナルの方は幾分か早く気づけるだろう。


だが、そんなターミナル達も気付いていない。


(高度な隠密能力を持つ奴らか……。ターミナルの最大索敵範囲がどの位か分からねえから位置までは把握は出来ねえが、それでもこっちの気配察知の範囲ギリギリで行動してんのは間違いなさそうだ)


警戒は強めていた方がよさそうだ。と彼は内心思い、ほのか達を連れて先へと進む事にした。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



それからもしばらく歩き続け、時々襲い来るモンスターをバルドが軽く叩きのめして進むと森が終わりを伝える様に先の木々の隙間から光が差し込んでいた。


ようやく出口か……」

「結構、僕って森の奥深くに迷い込んでたんだね……」

「みたいだな」


自分が予想以上に迷子になっていた事に軽くショックを受けているアシュトンにバルドは軽く流す様に答える。

一方、ほのかとフィリスは長く森の中を彷徨っていたので森の出口と分かると何やらホッとした様子だった。


「バルドさん、早く森を出よう!」

「待て、お前ら」


 森の外へと駆け出そうとしたほのかとフィリスを手を前に出し、進行を妨げて制止させる。

その直後、彼女達の正面の木々の枝から数人の黒いフード付きローブを身に纏った者達が降りて来たのだ。


「ふえっ?」

「な、何この人達?」

「気をつけろよお前等。こいつ等、さっきから俺達を監視してた奴らだ」

「え!?」

「おい、お前等。一体何処のもんだ? 何で俺達を監視してる?」

「「…………………………」」


 質問を投げかけるバルド。

だがしかし、彼等は一様にその質問を黙殺しその場から動かずに立っている。

その異様な姿にほのかとフィリス、アシュトンは不気味さを覚えた。


「答える気はなし……か」


目を細めて相手を見つめる。その時、彼等の列が分れて奥より一人の人物が姿を見せた。

細身の体で、胸は僅かに膨らみを持つ。

その身に纏うのは侍らせている彼等の着ているローブとは違く、黒と紅を組み合わせた戦闘服。


 その両手には陽の光に煌めく円月刀を携えている。

そして、その左胸の場所にはある生き物の絵柄が刺繍されていた。


―――黒きさそりとハサミの甲には紅の十字架―――



「こいつらは……」

「強力な魔力反応……。みぃ~~つけたぁ♪」


 バルド達の前に立つその者が俯き加減だった顔を上げる。

紫の双眸、深い青色の髪を短く切り揃え、頬には同じくさそりの絵が描かれていた女性だった。


「泥棒さん達~、今日は貴方達の命日ですよ~きゃははは!!」

「ど、泥棒……?」

「えっ、バルドさん達って泥棒だったの?」

「アホ抜かせ。小学生の餓鬼二人を連れた泥棒が何処に居やがるってんだ」


 疑惑の眼をアシュトンから向けられる一行だが、それをバルドは鼻をフンッと鳴らして一蹴する。

まあ、小学生の少女を二人連れて泥棒なんて事する者など、世界広しといえどもまずいないだろう。


「だ、だよね……」

「……一瞬でも疑っただろ?」

「あ、あははは……ごめんなさい」

「ったく。まあ、いい。んで、おたく等は何しに来たんだ? 別にお前等から何も盗っちゃいねえんだが?」

「はいそれ嘘~!! 嘘吐いたからやっぱり死罪決定~~!!」


 此方に指……ではなく円月刀を向けて薄ら笑みを浮かべながら声を大にして言う女性。

その鋭い眼はバルドから横に滑って行ってフィリスの方へと向けられた。


「お前が持ってるな? 欠片をさ~~!!」

「っ!?」


 言うやすぐに彼女に向かって何かが投げつけられる。

空気を裂いて迫るそれをバルドは瞬時に前に移動して弾いた。


 キンッと金属音が鳴り響き、空中で何かが回転して木に突き刺さる。

それをバルドは横目で見てから相手を目を細めて鋭い眼差しで睨む。


「暗器か……」


 木に突き刺さっていた物。それは先端が鋭い形となっているクナイの様なものだった。

相手を仕留めそこなったのが気に食わないのか、相手はバルドの事を同様に睨みつけていた。


「お前……生意気!!」

「あの洞窟にあった欠片が御所望ってか?」

「この欠片を……?」

「でも、何でなの?」

「さあな、こっちが聞き手えくらいだし。まあ、どっちにしろ向こうは俺達を帰してくれる気はなさそうだ」

「きゃははは!! それを渡しても斬る!! 渡さなくても斬るよ~~!!」

「り、理不尽過ぎるよ……!!」


 どっちにしろ斬られるのでは選択の余地などないではないか。

そんな彼女の非難の声も知った事ではないと女性は円月刀を構える。


「四肢を斬り落として皆、モンスターの餌にしてあげるぜ!!!」


 足に力を込めて、地を蹴る。一歩、蹴ったそれだけで相手は自分達との距離を大きく縮めてきた。

相手の速さに一歩も動けないほのか達に彼女は跳躍しその刃を振り下ろす。

しかし、その間にバルドが割り込みケルベロスで受け止めた。


「バルドさん!!」

「お前等は下がってろ! こいつ等は俺がやる!」

「邪魔だよ、お兄さんっ!!」

「お前等にこいつ等はやらせるか!!」


 ぶんっと振るわれる大剣。

それに歯向かう事なく彼女は後ろに飛んで着地、ニヤリと深い笑みを浮かべて再びバルドへ突撃する。

彼も、もう片手にバハムートを取り出して大剣二本を持って応戦する。


バルドの動きが力重視のパワーアタッカーなら、相手は素早い動きで此方を攪乱させ追い詰めるスピードアタッカーだった。


 正確に此方の急所を狙って振るわれ円月刀。それは、正に蛇の様に不規則な攻撃だった。

しかし、喉を狙った攻撃も手を狙った一撃も、それ等をバルドは重量のある大剣を軽々と振りまわして受ける。


「いいね、いいね~~!! 上がって来たよ~~!!」


 嬉々とした声を上げて戦いを楽しむ女性。

強敵に会えた事が嬉しいかのように彼女の動きは更に苛烈かれつさを増していく。


「ったく、めんどくせえ相手だ!!」

「つれない事を言うなよな~。アタシとお前の仲だろ~きゃははは!!」

「何時からテメーと友達になったんだよ。っち、鬱陶うっとうしい!!」


 だが、バルドから言わせてもらえばこんな戦いほどバカバカしいものはない。

深い深い笑みを浮かべる相手とは裏腹に、彼は心底この戦いに呆れている表情だった。


 それでも、この戦いを投げ出すことなく向き合っているのは後ろにいるほのか達を守るためだった。

自分一人なら逃げる事など造作もない。だが、後ろの三人を連れて逃げるには隙がない。


 故に、彼は相手との交戦を余儀なくされていたのだ。

だが、彼もただ刃を交わしている訳ではない。剣を交えつつ、彼は相手の情報を読み取っていた。


(動きに余分な所がねえな。それに、紅十字の黒い蠍か……。まさかとは思うが……あそこの勢力か!)


 何かに気付いた彼は相手の振り下ろされる一撃を弾き、二撃目で相手を一度大きく吹っ飛ばしてから後方へ飛び退いてほのか達のすぐ前に降りる。


バルドが相手と刃を交えている光景をほのか達はハラハラとして見ていて、一度下がって来た彼にほのかとフィリスは駆け寄る。


「バルドさん、大丈夫なの!?」

「心配すんな。別に大した一撃はくらってねえよ」

「でも、あの人達は何者なの? すごく、強いよ?」

「もしかすっと、めんどくせえ奴らに目を付けられたかもな」

「どういう事なの?」

「黒いさそりにハサミの甲にある紅の十字架。恐らく、奴らは魔術大国にある『クロス王国』……そこに所属する『紅十字の黒蠍くろさそり』ビアンカ隊だ。多分、今相手してるのが隊長のビアンカって奴だろ」

「『紅十字の黒蠍』!?」

「アシュトン君、知ってるの?」

「魔術大国じゃ有名な部隊だよ……。クロス王国のどの部隊よりも残虐性も強くて場合によっては平気で殺人も犯すって噂の絶えない集団だよ……!!」


それに彼は顔を青くして答える。その様子を見るに彼女等がどれ程に危険な者なのかが窺い知れる。


「もっと殺し合いをしようぜ……黒い剣士のお兄さんよおぉぉぉぉ!!!」

「兎も角、お前等は少し下がってろ! こいつは俺が何とかする!!」

「わ、私達も手伝うの!!」

「馬鹿っ、止めとけ!! 相手はモンスターとは違う、人間だ!! 今まで相手をしてきたモンスターと一緒にすんな!!」

「いいぜ、別にあたしはよ!! 四人纏めて相手してやるぜ~~!!」

「そりゃ、気前の良いこって!!!」


飛び掛かるビアンカの刃が迫る。

それに反応したバルドはほのかとフィリスを自分の後ろへと突き飛ばした後に素早く剣を振るい刃を交えた。


「さあ、楽しい楽しい殺し合いだ~~!!」

「テメーの遊戯に付き合ってられるかっての!!」


狂気の笑みを浮かべる相手に向かってそう吐き捨てる様に言い放ち、彼もまたビアンカへと攻撃を再開した。



少々特殊な家計をお持ちの迷子少年とエンカウント。

そして、変な集団に絡まれる御一行。


彼女達はこの後一体どうなってしまうのか!!

次回も早めに投稿できるように頑張ります。


まあ、明日から四日間は少し難しいですけど……。



本日のモンスター紹介!



リバーベア


第二都市周辺に生息するDランクのクマ型モンスター。

見た目そのままに雑食性で時には人を襲う。

ベアの大型種で物理攻撃力が高く、体力も無駄に多いので接近戦は実力のある人以外は避けておきましょう。


属性耐性が水属性以外は弱いので遠距離から魔法攻撃や魔術攻撃で叩くのがベスト。

遠距離攻撃はしてこないので、離れた所からしこたま殴って倒しましょう。


基本ベア種は得意属性以外は耐性が無い。


リバーベア……和名で川熊。または川の熊。

そのまんまである。



それでは、読者の皆様。今後とも宜しくお願いします。


では(゜∀゜)ノシ!!


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