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第八十七話 激闘

第八十七話更新。


覚醒した欠片より出現したガーディアン『ラ・ガイル』。そして地上にはアガレス率いる将軍達。

不利な状況下に彼女たちはどう立ち向かうか。


[魔力容量70%。魔導回路連結完了。各部正常に機能確認。ジェネレーター出力安定。ガーディアン『ラ・ガイル』起動開始。エル、エル、トリトリス]


巨大な手を模した最後の秘石のガーディアン。至る所に古代の文字が彫られており、淡い輝きを放っている。幾つものブロック体が結集してできたものでありながら手の動きはまるで人間と遜色はない。掌にある眼を動かし、眼下にいる面々を視界に捉える。


[多数の生体反応を感知。敵性判断………完了。攻撃性生命体と判断。排除すべき存在と認定。戦闘モードに移行]

「う、動き出した!」

[ラー、アルム、トール。コール、ビルド]


全身に雷の魔力を纏う。両手を拳に変えると何度か打ち合わせた。そして拳をほのか達へと打ち込んでくる。動けない三人を担いで仲間たちは後方に退いて攻撃をかわす。


「うげぇっ!? ちょっとシャレにならない攻撃だぞこれ!?」


打ち込まれた地面のありさまを見てシリウスが露骨に嫌な顔をする。さっきまでいた地面は大きく抉れ、纏っている雷の影響で黒く焼け焦げていた。誰が見ても直撃を受けたらただでは済みそうにない事が理解できた。


「我々が前に出る! マルグリット、アルトレーネは三人の回復を急げ!!」


仲間を残してユグドラとプレセア、ルチアが飛翔する。


「仕掛けるぞカラドヴォルグ! ボーゲンフォーム!」


弓に切り替えたユグドラが魔力矢を連射して攻撃を始める。紅蓮の矢を前にラ・ガイルは手を拳に変えて受ける。全身を覆う雷が矢を弾き飛ばした。


「ぶっ潰れろーー!!」


振り上げたミョルニルを叩きつけるように振り下ろす。スコップの腹で叩きつけるがものともせず彼女を押し返す。続けてルチアが肉薄しパールグラスで斬りかかるも表面を軽く傷つけるだけで大したダメージを与えられない。


「堅い! ならばっ!」


ルーンを持ったユグドラが一気に距離を詰めて紅蓮の槍で突きを繰り出す。

ラ・ガイルは右手で彼女の攻撃を受ける。急降下からの強烈な一撃にわずかに下方に沈んだが受け止められた。その間に左手が回り込んでユグドラへ拳を叩き込んできた。間一髪、身を捻って直撃はかわしたが掠めただけで彼女は吹き飛ばされた。


「なんというパワーだ!?」


冷汗が一気に噴き出る。相手の動きをよく読まねば不意の一撃で即撃墜されかねない。槍を構えなおし、プレセアとルチアと連携して攻撃を再開する。

空中でラ・ガイルと交戦するユグドラ達の様子を窺っていたアガレスの下に、ラ・ガイルの魔力吸収の被害を受けて倒れた兵たちの容態を確認してきたバルドゥスが戻る。


「周囲の兵の様子はどうだった」

「殆どの魔力を奪われてはおりますが、命に別状はありません。後退させ、回復に専念させた方がよいかと。部下に任せますか?」

「任せる」


一任されたバルドゥスは素早く部下へ指示を出し、負傷した兵たちの救護を回収させる。


「閣下!! 奴らへ追撃の許可を!!」


威勢よく進言するのは鉄拳のマルコだ。有り余る体力を発散したいのか、地上に残っているほのか達へ攻撃の許可を求めてきた。


「あの手擬きは我々の兵から魔力を奪った。だが、今はあの者達を敵と認めて攻撃している。立ち塞がる壁を打ち砕くには今が好機か」

「では!!」

「行け。この好機を逃すな」


闘志が膨れ上がったのを肌で感じた。

溢れんばかりの闘争本能を隠さずにマルコはほのか達へと突進していく。


「おいッ! ハゲダルマのおっさんが突っ込んでくるぞ!!」

「鉄拳のマルコだ。くそっ、俺が出る!!」

「ダ、ダメだよバルド!! 外傷は治っていても、体の内側はボロボロなんだよ。ジッとしてて!」


二人掛りで治癒魔法を施しているのだが、どういう訳か治りが非常に遅い。

治癒魔法を掛けながら体の状態を検査してて分かったことは、彼の身体は酷い重傷を負っている事だった。


(何時もより治りが遅い! 私たちの治癒魔法じゃ力不足だっていうの!?)

「これ以上待てるか! あの筋肉ダルマ止められるのは俺だけだ!」


接近してくるマルコを前にもう待てなくなったバルドが動こうとしたその時、彼の前にサヤが立った。


「おい、サヤ。何の真似だ?」

「ハゲダルマのおっさんを止めれば、テメェは少しは大人しくなるのか?」

「まさかとは思うが……アイツを止めようとか思ってんじゃねえだろうな?」


問いかけに対して彼女はハッと鼻を鳴らした。


「止めるんじゃねェよ。ぶん殴って大人しくさせてくんだよ」

「馬鹿な真似は止めろ。相手は戦争を生き残った猛者だぞ。路地裏の喧嘩だけしてきたお前と違って、殺しを知ってんだぞ!」

「だからどうした? ダチ公を大勢でぶん殴ってケガさせた連中が前にいんのに、引き下がって怪我してる奴をまた矢面に立たせて後ろでガクガク震えてろってか? ……冗談じゃねェぞ!! アタシはそこまで薄情な人間じゃねェえんだよ!!!」


制止の声を聞かずにサヤが前に飛び出す。自分に突っ込んでくる相手が年端も行かない少女だというのに少し驚きはしたが、その身から溢れ出る闘志を感じてそれは喜びへと変わった。


「このワシに挑むか娘っ子!!!」

「来いよハゲダルマ!!! そのツラ地面に叩きつけてアイツの前で土下座させてやる!!!」

「ガハハハハッ!!! その意気やよし!! だが、力勝負でこのワシに勝てると思うなよ!!!」


唸り声をあげて振り下ろされる拳を真っ向から爪で受ける。

お互いの力が周囲に広がり衝撃で地面が吹き飛ぶ。


「これを受けるか!!」


自分の一撃を真っ向から耐える相手に歓喜の声を上げる。素早く身を翻し、回し蹴りをマルコの頭部側面に叩き込む。重い音を響かせて打ち込まれる蹴りだが、受けた本人は微動だにしない。


「なッ!?」

「効かんなぁぁっ!!」


反撃の拳が振り下ろされる。ギリギリでかわして再び攻撃を打ち込む。


「威勢はそこまでかぁ!! まるで効かないぞぉ!!」

「かてェな」


過去のどの相手よりも目の前の老兵は頑丈だった。それに加えてまるで暴風が目の前で暴れているような強力な格闘攻撃。直撃を受けたら一瞬で意識を刈り取られそうだ。激しく迫る攻撃の嵐に防戦に追い込まれる。

こんな輩があれだけいる中でバルドは一人で立ち回ったというのか。そう考えただけでたった一人を相手に苦戦を強いられている自分が情けなく感じる。


「そこだ! 潰れろ!!!」


僅かな隙を逃さず拳を叩き込もうとする。かわせない、ととっさに判断して腕を交差させ少しでも直撃のダメージを減らそうと防御の構えを取る。


「怒涛の岩槍! ロックランス!!!」


突如響く声に応えるように大地から岩の槍が突き出てマルコへと殺到する。

虚を突かれる形となった彼は後ろへと下がり、攻撃者をにらむ。


「霧島さんは、やらせない!」

「アシュトン!?」


魔術の発動者、アシュトンが次の魔術を展開した状態で立っていた。


「魔術か…。小僧、魔術側の人間で我々に牙を向くか」

「そんなの関係ない。僕は僕の友達を守りたいから魔術を使うんだ」

「うむ。その考えは正しいな。同郷の者が相手だろうが優先すべきものは十人十色だ。それに異を唱えることもなかろう」


だが―――――


「女の背に守られて戦う男がいるかあぁぁ!!」


筋肉が一瞬膨張したように見えた。雄たけびと共に地面を全力で殴りつけると地面から衝撃波がアシュトンへと放たれ、軽々と吹き飛ばされた。


「鍛え方がなっとらんなぁ、もやし小僧!!」

「テメェみたいなゴリラと一緒にすんじゃねェよ!!」


アシュトンへの攻撃をこれ以上させまいとサヤは前に出て応戦する。彼女を援護するためにアシュトンもまた次なる魔術の詠唱に入る。


「風よ謳え! エアスラスト!!」


彼女が下がるタイミングに合わせて風の中級魔術を発動する。大気が刃となってマルコへと襲い掛かる。

殺到する風を前にしかしマルコは怯むことなく力ずくで突破しサヤへと肉薄する。


「なよなよした風だなぁ!! ワシを止めたければ上級魔術でもぶち込むんだなぁ!!」

「チッ! 奥義、紅刃爪!!!」


紅の斬撃がマルコに命中する。直撃打を受けた彼の動きがピタリと止まる。


「……ハッ」


次の瞬間、マルコの蹴りでサヤが吹っ飛ばされる。

踏ん張って倒れはしなかったが、膝をついた。


「がッ、は……!?」

「霧島さん!!」

「良い一撃だった。もう少し威力があればワシを倒せずとも膝をつかせられただろうな。だが、あまりにも貴様らは貧弱過ぎる」


とは言ったものの、マルコはサヤの攻撃にいつかの出来事を思い起こさせるものがあった。


(この娘っ子の力……。昔似た様なものを共和国に行ったときに一度くらったことがあるな。これよりも数段上の威力だったが)


喉まで出かかっているがそれ以上は出てこない。気の所為だったか。


「まあいい。恨むなら己の非力さを恨め」


ケリを付けるべく一歩前に踏み出したマルコだが、サヤの前に立った者を見て足を止める。


「アシュトン!?」


恐怖心から膝が笑っていて顔も青ざめてはいるが、彼はサヤを守るように前に立ち杖を構えてマルコに対峙していた。


「なんだもやし小僧?」

「いつだってそうだった。僕に前で戦えるだけの力がないから何時も霧島さんは前に出て戦ってくれていた。だから、だから今度こそ僕が霧島さんを助けるんだ!」

「ガハハハハ!! そうか! なら見せてみろ。お前の覚悟とやらを。全身全霊の魔術をワシに叩き込んで見せろぉ!!」


地を蹴りマルコが突進してくる。対するアシュトンは詠唱を開始。魔術陣が広がる。


(あの人の速さだと中級魔術が限界だ。でもそれだとあの人を止められない。なら……!!)

(っ! 小僧の眼つきが変わった。何かしてくるか!!)


アシュトンから感じる強い気迫にマルコは口角を上げる。

あのもやし小僧はどんな魔術を次に披露するか、そしてそれをいかに討ち破るか…!!


「吾願うは魂の解放。遍く者を砕き蹂躙する羅刹の徒――」


一気に距離を詰め大きく振りかぶる。だが、迫る巨躯を前に彼は詠唱を止めない。

相手から決して目を逸らさなかった。


「その身に宿れ!!! 鬼の魂オーガソウルッ!!!」


魔術の名を叫んだと同時にアシュトンは殴り飛ばされた。

地面に転がって動かなくなった彼の脇に杖と衝撃で割れたメガネが転がる。


「何をしてくるか楽しみだったが……間に合わなかったか」


攻撃的現象は起きていない。もしや強化系の魔術だったのだろうか。だとしたら残念なことだ。

いくら強化したところで、もやしは剣にはなれない。


「残りも魔剣士と白い娘っ子を除けば大したことも―――っ!?」


強い圧迫感を含んだ気配がマルコに急に圧し掛かってきた。

気配の方へ向き直り自然と身構えた。


「アシュトン……やっぱりお前はスゲェよ。逃げりャいいのに、こんなアタシの為に体張る必要なんてねェのによ」


そんな事されたら―――――


「イヤでもヤル気が出てくるじゃねェか」


全身から他を圧倒するような人ならざる気配を放つサヤが立っていた。

鬼のオーガソウル


これまで攻撃魔術しか使えなかったアシュトンの初めて使用する補助系中級魔術。効果範囲は一人だけ、尚且つ消費魔力は上級攻撃魔術に匹敵する等コスト面では最悪。しかし付与される攻撃力の上昇値は他の攻撃強化魔術の中でも群を抜いて高く、名の通りその身に鬼でも宿したかのよう。



次回もよろしくお願いします。

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