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第八十一話 激闘、目醒めの兆候


八十一話更新


文字数を削減して更新速度を上げていきたいと思います。


クロス王アガレス、そして集合した将軍たちと激しい戦闘を繰り広げる。

近接型の白蓮とアトラス、遊撃型のビアンカ、後衛型のペインとレノン。

五人は連携してバルドの動きを最大限に封じてくる。


接近する白蓮とアトラスを援護するように張られる弾幕。

レノンの登場する機動兵器から発射される背部ミサイルが曲線を描き、バルドの周囲に着弾する。

爆炎に視界を覆われたところにペインが機関銃を連射する。


煙を貫いて飛んでくる銃弾をケルベロスで防御する。

その隙に白蓮が突進。銃弾が横切る危険地帯に臆することなく飛び込み得物を振り下ろす。

バハムートで防御すると同時にケルベロスを振るい、白蓮――でなくその後ろから飛び出したアトラスの追撃を防いだ。


両者の攻撃を弾いて地面に魔剣を叩きつける。岩塊が二人に襲い掛かる。

宙に浮く岩塊は飛んでくる銃弾も弾き、身を守る盾となる。


バルドの頭上をビアンカが飛び越えると同時に体を捻って何かを投擲する。

ごく至近に浮いていた岩塊に正確に刺さったそれは突然、火を噴いて炸裂する。


彼女の特技『爆雷符』。苦無に爆発効果を持たせた符をつけて攻撃する。

爆発に包まれたところで後退した白蓮が術を発動する。


「焔よ。ファイヤーボール!!」


三つの火球が飛び込み更なる爆発が起こる。

炎の海からバルドが飛び出す。地を一度蹴り、衝撃波を伴う爆発的な加速を行う。飛んでいく先には着地しようとしていたビアンカがいる。


彼の気配に気づいて振り返ると同時に頭部に強い衝撃が襲い掛かる。

接近したバルドはビアンカに肘鉄をくらわせて殴り飛ばしたのだ。

更に接近した時の勢いをケルベロスを地に突き刺すことで無理やり停止させる。


そしてケルベロスの腹に両足を乗せ再度 高加速で今度はペインの方へと迫ってきた。


「ちょっ!?」


剣を発射台のように利用して飛んでくるとは思っていなかった彼は完全に虚を突かれる形となった。

体をのけ反らせギリギリ回避する。かわされた彼は身を捻り着地する、と同時にその場から駆ける。

援護射撃と魔術が次々に着弾、振り切る彼が右手をかざす。


置き去りにしていたケルベロスが反応し、独りでに地面から抜けて持ち主へと飛んでいく。

掴んだ彼はその場で攻撃を弾いて防ぐと、剣を振るい衝撃波を飛ばす。

白蓮とレノンへと迫る一撃はしかし、割り込んできた陰によって防がれる。


「くくくっ…! がははははっ!! なんだお前達。面白い奴と戦っているではないか!!」


二人を守った人物『マルコ』は目の前にいる強者に昂る感情を剥き出しにして突撃する。振るわれた剣を真っ向から拳を突き出し、弾き飛ばす。


「若造のくせに……良い一撃だあぁっ!!」

「このっ…筋肉爺が!」


互いの重撃が幾度となくぶつかる。互角の勝負を続ける両者だが、単身乗り込んできたバルドとは違い、マルコには仲間がいる。


「荒れよ、烈火の旋風。阻みし者を包み、焼け! ファイヤートーネードッ!!」


火属性中級魔術『ファイヤートーネード』がバルドを包み込んだ。

身を焦がす灼熱の炎に舌打ちし、炎から逃れようと飛び出す。


だがそれを狙っていたのかマルコが待ち構えていた。渾身の一撃を込めた拳が放たれる。防御するもそのまま殴り飛ばされ派手な音と共に地面に叩き落される。


「締め付けるは毒の棘。汝、彼の者を縛り、浸食せよ。ポイズンバインド!!」


地面に叩き落されたバルドにビアンカからの追撃の魔術が襲い掛かる。

紫色のバラの茎が幾つも地面から生え彼の四肢を拘束する。


絡みつくバラの棘が肉に突き刺さり、肉体を蝕んでいく。


「なめんじゃ…ねぇぞぉっ!!」


力を込めて吠えると共に全身から魔力を放出し、拘束を力ずくで引き千切る。

続けて素早く魔術詠唱を行う。


「黒き炎弾、ブラックファイヤーボール!」


放たれる火球がビアンカに飛んでいく。だが間にマルコが割り込み、腕を交差させ防御姿勢を取り攻撃を受けた。


「ぬおっ!?」


しかし予想以上の威力を有していたのかマルコの態勢が僅かに傾く。

そこに魔術を飛ばしたと同時に動き出していたバルドが接近、ケルベロスを上段に構えた。


「沈んでろ爺!!!」

「ぬぐおぉ!?」


超重量の一撃が真上から襲い掛かる。とっさに全身に肉体強化を付加したのかマルコは彼の言葉通りに地面に沈むに終わる。


「ちっ。ミンチにする気で叩きつけたのに生きてやがる!」

「マルコ将軍から離れろ!!」


白蓮が突進しバルドに体当たりを仕掛け、マルコの上から引き剥がす。宙に浮き、弾き飛ばされそうになった彼だがすぐに地に足を踏み下ろし突進に対抗する。


「たった一人の体当たりで…吹っ飛ばせると思うなよ!」


愛馬『黒隼』の勢いが弱まっていく。腕力だけでは彼の馬鹿力に対抗できない。


「ならば二人ならばどうだ!!」


しかしその声と同時にもう一つの影がバルドに体当たりする。

声の主、バルドゥスに白蓮が驚きの声を上げる。


「バルドゥス将軍!?」

「遅れてすまぬ。だが、これ以上はやらせん!!」


二頭の驚異的な突進を前にバルドの足が地面から遂に離れた。

そのまま頭上に彼を弾き飛ばす。

空中に吹き飛ばされ体勢を整える時間も与える間もなくレノンの機動兵器から重火器による掃射が始まる。


防御するも爆発の衝撃で地面に再び叩き落される。

そして直後にビアンカの『ポイズンバインド』が彼を拘束する。

今度は通常の倍の魔力を込めた魔術だ。先のような力技で破壊するには時間を有する。



――だからこそこの時を待っていた



「閣下! いまですぜ!!」


将軍達に任せ、いつの間にか後方に下がっていたアガレス。

彼の足下に広がるのは莫大な魔力を集約した白色の魔術陣。


「天上に輝く破邪の煌めきよ、我望むは不浄なる者の浄化なり。汝、その力をもって悪しき者を討ち果たせ! 光あれ。バニッシュ!!」


雷鳴轟く黒雲の向こう。空の彼方から光が溢れる。

分厚い雲を突き破りあらゆるものを浄化する光が解き放たれる。

そしてまばゆい極光が動けないバルドを大地諸共、光の中に飲み込んでいった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



航行艦フェンサーの医務室。

その一室でほのかは眠りについていた。


「っ!!」


しかし、深い眠りの淵にいた彼女は急に眠りから覚めベッドから飛び起きた。

まるで導かれるように目覚めた彼女は周囲を見渡し見慣れぬ部屋にいることに気付く。


「……ここは?」

[おはようございます。マスター]


ベッドの隣にある机の上に置いてあったウィルから声がかけられた。

手に取り自分の顔の位置まで持ち上げる。


「ウィル。ここはどこ? それに、なんで私はベッドにいるの?」

[ここは艦内に設けられた医務室ですよ。なぜ寝ていたのか覚えていませんか?]

「うん……なんだか思い出せないの」


皆とあの全てを飲み込んでしまう光を見たところまでは思い出せる。

だが、そこから先が全く思い出せないのだ。


まるでその部分だけくり抜かれて穴が開いてしまったような感じだ。


「みんなはどこにいるの?」

[ブリッジにいますよ。先ほどカルロス・トーラスとの接触に成功したとのことです]


ブリッジを目指し歩く。その間もなぜ自分が寝てしまっていたのかを思い出そうと記憶を辿ろうするがどうしても思い出せない。


そうこうしている間にブリッジに通じる通路までたどり着いた。

みんなが待っているだろうと思って彼女は歩を進めようとした――


「では、彼は単独で戦場に降りたというのだね?」


が、その声が耳に入った彼女は歩みを止めた。


「はい。おそらくあの戦術兵器を破壊に向かったと思います」


次に聞こえた声の持ち主はエメローネだ。

そっと扉に近づいて声に耳を傾ける。




ブリッジに集結する面々の前にカルロスを移すモニターが展開されていた。

エメローネからの報告に彼は神妙な面持ちでいる。


「無謀すぎる話だ。あの砲台前までにたどり着くには展開されている大部隊を排除していかなければならない。個人でどうにかできる話ではないぞ」

「一人で行ったほうがやりやすいって言ってたけどな」

「確かに彼の実力ならば一点に集中して突撃すれば突破は可能かもしれない。だが、先も言った通り無謀すぎる話だ」

「あの……。元帥さんはなにを案じているのですか?」


アシュトンの問いかけにカルロスはしばし考える素振りをしてからその質問に答えた。


「もしかすれば、の話だが……彼は、バルドは差し違える覚悟かもしれん」



「っ……!!」


廊下で身を小さくして話に耳を澄ませていたほのかはその言葉に体が震えた。

バルドが、死ぬ……?

あの大砲を阻止することと引き換えに?

なんで? どうして?


幾つもの疑問が頭の中をかき乱していく。



その返答に彼女と同じ様にブリッジにいる全員が絶句した。顔を青くして身を凍り付かせる。


「誰でも考え至る事だ。あの大軍を相手に突き進み、たどり着いたとしよう。だが、あそこには間違いなく国王であるアガレス・ラ・ドヴァーキンがいる。彼の実力は未知数だが他の将軍とは一線を隔てた力を持っているのは間違いない」


凍り付く彼女たちを他所にカルロスは結論に至った考えを語り続ける。


「それと各所に散らばっていた将軍たちが一斉に後退したとの報告も上がっている。彼は国王の他に将軍たちも相手にするということになる。果たしてたった一人の名の知れたただの冒険者と、国王とそれが認める王国屈指の将軍たちどちらに軍配が上がると思うかね?」


結果は火を見るより明らかだろう? と言いたげに問いかける。


「ただ、彼の心配をするのも重要だが……。ここにシルヴィア・ピステールが現れるという話の方が重要だ」


話を変えて彼はモニターを動かし、シルヴィアのデータを表示させる。

顔写真と共に彼女の過去の経歴が表示された。


「彼女は強大だ。策を講じねばならない。協力してくれないかね?」

「……分かりました。私もシルヴィアと話し合いたいと思ってます。彼女の捕縛に協力いたします」


早くしないと深刻な事態が起こる。そんな予感がしているエメローネは了承した。



以降はエメローネとカルロスとの間で意見交換をする話が聞こえてきた。

ブリッジと扉を隔てた向こうで身を小さくしていたほのかは静かに立ち上がった。


「ウィル……。行こう」

[マスター?]

「思い出した…全部、思い出したよ」


隠されていた最後の記憶のピースがはまった。失われた記憶が呼び起こされた。

それと同時に彼女は自分が何をすべきか、その答えを見つけた。

仲間たちのいるブリッジから背を向けて彼女は歩き出す。


「バルドさんの所に行こう!」

[っ! 危険です。それは推奨できません。止まってください]

「止まれない。わたしはバルドさんの所に行く」

[バルドさんの居場所もわからないのにどうするのですか?]

「ううん。それは大丈夫だよ。バルドさんの居場所なら、わかるよ。どうしてかよくわからないけど……いまならわかる」


確固たる意志を持った返答にウィルは少しの間、思考を巡らせる。


(居場所がわかる……。マスター、もう貴方はそこまで……)


自分を見つめる小さな少女。その内に眠る確かな力が目覚め始めている。

ならば、自分は彼女の意志に従うまでだ。危険と分かっていても彼女の意志が立ち向かおうとするならば、自分はIPターミナルとしての力を最大限に活用し、彼女を助けるまでだ。


[……分かりました。では、マスター。後部カタパルトへ向かいましょう。

転送装置はセキュリティが厳重で解除は難しいですが、あそこならなんとかできます]

「ごめんねウィル。わたしの我がままに…」

[いいえ謝らなくても大丈夫です。最短ルートを表示します。行きましょう]

「うん!」


力強く頷いた彼女はウィルの示す道を駆けて行った。




その頃、エメローネとカルロスの会話を黙って聞いていたあかねはふとシリウスの方を見上げる。


彼は首だけを後ろの扉の方に向けてジッと見ていた。

その姿に彼女は違和感を覚えて声をかける。


「シリウス君。どないしたん?」

「えっ? あ~ごめん。話長くなるんならちょぉ~~っとトイレに行ってきていいかな? 漏れそう」


しかし、それは彼の返答により霧散した。

脱力して、行きたければ行ったら? っといった呆れた顔を向ける。


「ごめんね~。ちょっとだけ席を外すよ~」


他の仲間達にも断りを入れてからブリッジを出る。

周囲を見渡した後、彼はほのかが駆けていった通路をジッと凝視する。


「やれやれ…。目が覚めたと思ったら一人で勝手に動いちゃうなんて困ったお姫様だ」


ニヤリと笑みを浮かべ、彼は彼女の後を追うように歩いて行った。


光魔術 『バニッシュ』


天上より降り注ぐ浄化の極光で全てを焼き払う光属性の最上級魔術。

現代魔術の中でトップの火力と全ての属性に対して有効な打撃力を保有する現状最強クラスの魔術。

最大攻撃範囲は100~300mとされるが、術者により範囲は調整可能。狭めれば狭めるほどにその威力は収束し強大な一撃となる。

最上級魔術に分類している故、その消費魔力量も詠唱時間もトップクラス。



それでは、次回もよろしくお願いします。

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