第六話 VS赤き欠片 業炎魔獣 クトゥグハ
時間がかかった第六話更新。
気づいたら評価が貰えてた事にビックリしてる。
素直にうれしいです!!
この調子で皆様に気に入ってもらえる作品目指して頑張っていきます!!
今回、上手く話が纏められずに少しだけ長くなった。
う~~ん、文才が欲しい……。
では、本編をどうぞ!!
[オオオオオオオオオオォォォォォッ!!!!]
祭壇の上に降り立った黒き獣が咆哮する。
それだけで声が衝撃波となって周囲に広がり風圧がほのか達に襲いかかる。
そのみより放たれる膨大な魔力を前にフィリスが驚きで目を見開いた。
「うそ……!? もう体力を回復したって言うの!?」
[検索完了。如何やらあのモンスター……魔力ランクが+AAに達してます!!]
「完全に回復されたな。面倒事になりそうだ……」
ケルベロスを肩に担いで嘆息するバルド。しかしその様子は至って冷静な面持ちだった。
黒き獣は自分の眼前に立っている三名を目に捉えるとそれぞれを一瞥。
そして、ほのかを見つけると殺気を溢れださせた。
[オォ……。エル……エル……レム……!!]
「やっぱり……」
「やっぱりって、如何したのフィリスちゃん」
隣で何かを確信した様に呟いたフィリスにほのかが問いかける。
それに彼女はいま自分が分かった事を二人へと伝えた。
「あのモンスターは間違いない。古代インペリア語を使ってるよ」
「古代インペリア語?」
「ちょいと昔に流行ったお伽噺で使われてた語源か……」
「うん。それをあれは使ってるんだ」
なぜお伽噺で出てきた言葉を相手が使っているのか、それは分からない。
だが、あの欠片は何か関係があるのだとは何となくだが分かった。
「兎も角、あれを早く封印した方がいいと思う。此処から脱け出されたら街でまた暴れるかも」
そんな事、させる訳にはいかない。
ターミナルを相手に向けて戦う意思を見せるほのかとフィリス。
[ラー……アルム…トール。ラー……アルム…トール!]
その彼女達を見た途端にモンスターは何かを呟いて咆えた。
すると、彼の左右に紅蓮の炎の塊が出現し姿を形作っていく。
それは全長三メートルを超える鎧を着た人型へと姿を変貌したではないか。
左手には盾が備えてあり、それに剣が収納されていた。
その柄を掴んで巨人が剣を抜き放つ。真っ赤な炎がそのまま剣の形となった得物が握られていた。
「手下って事か……」
[ランクはAだな。そこそこ強いんじゃねえか? ウヒャヒャヒャ!!]
[オオオオオォォォォッ!!!]
獣が咆えるとそれも同様に洞窟内を震わせるほどの咆哮を上げ、得物を構えてこっちに向かって駆けてくるではないか。
「露払いは任せな。お前等はとっとと本命を叩き潰せ! 行くぞケルベロス、バハムート!!」
[あいよ!! こりゃ楽しくなって来たぜ~。ヒ~~ハ~~!!]
[A程度で若の足止めを出来ると思ったら大間違いだという事……教えて差し上げます!!]
大剣を両手に持ってバルドは先に前衛として飛び出す。
自分達に突っ込んで来る小さき存在を見て紅蓮の巨人が咆えて剣を振り下ろす。
地面を砕くその一撃をかわし、跳躍して相手の目線と同じ高さまで飛ぶ。
「黒狼・双牙!!」
空中で身を捩じって両方に同時に剣から斬撃を飛ばして見事に顔面へと直撃させる。
しかし、然したるダメージを受けていないのか煙を破って剣を振るってきた。
それを逆らう事なくいなして着地して漆黒の炎弾を周囲に生み出して一斉射。全弾命中し砂塵が巻き起こる。
直撃を受けた二体だが、砂塵が消えると盾を構えている恰好で立っていた。
「全弾ガードされたか」
「いいねいいね~。こうじゃないと楽しめないぜ~? ウヒャヒャヒャ!!」
「ったく、呑気な奴だ。おっと……」
紅蓮の剣が高速乱舞で襲い来る。それを彼は器用に体を動かしてかわし、いなし、弾く。
手下二体を相手に余裕を持って対応しているバルドを見て安心してからほのか達は目の前の敵と視線を合わせた。
[ラー……アルム…トール。ラー……アルム…トール!!]
「ほのか。さっきの連携で行ってみよう!」
「うん、分かったの!!」
「コール、デインッ!!!」
口から強力な火炎が吐き出される。
二人を焼き尽くさんと真っ直ぐに迫るそれを前にフィリスが前に出て手を翳した。
「アクアウォール!!」
水壁が出現してそれが火炎から彼女達を守る。
火属性の攻撃に対して驚異的な守りを見せる水属性の壁は炎を易々と受け止めていた。
「ほのか、今だよ!!」
「輝いて、光の砲弾!! ブライト、キャノンッ!!」
先ほどフレイムヴォルフ達を一撃で気絶させた強力な一発の弾丸、いや砲弾が発射される。
それはフィリスの水壁を破り、火炎すら物ともせずに高速で相手に向かって飛来する。
しかし、それが届く前に獣は炎を吐くのを中断して強靭な脚力を使って真上に飛び上がりほのかの魔力弾を回避。外れた弾丸が洞窟の壁に激突して爆ぜる。
「避けられた!?」
[マスター。気にせず追撃を加えましょう。相手は普通の敵とは違う様です]
「う、うん。分かったの!」
[前にも言いましたが相手は火属性。マスターとフィリスさんとは非常に相性がいい相手です。一撃さえ決まれば勝てます]
ウィルのフォローにほのかは元気づけられる。
その時、頭上を取った獣が二本の尻尾を伸ばして二人に放って来た。
それにほのかは直ぐに反応して魔力弾を二つほど生み出して飛ばして弾く。続けてフィリスが矢を放って本体を狙う。それを強靭な爪を振るって弾き、火炎を再び吐いた。
「ウィル! ディフェンシブ!!」
[イエス、マスター。ディフェンシブ]
今度はほのかが防御を張って攻撃を防ぐ。激しい炎が光のドームにぶつかり受け止められる。
上空に飛んでいる事から回避は困難なはず。
それを好機と判断したフィリスが素早く弓を構え矢を付ける。
彼女の背後に弓矢を構える赤い羽根帽子を被った人魚の紋章が展開され、彼女の持つ矢の先端に青い光が集まる。
「撃ち抜け水流、アクアスパイク!! シューーット!!」
放たれた矢が獣目掛けて飛翔する。
途中で六つの魔力矢へと分裂したそれが見事に獣へと命中。幾つもの爆発を起こした。
しかし、それでは仕留め切れなかったか白煙を破ってモンスターは突進してきた。
「とどめはほのか、お願い!!」
「うんっ!!」
だが、これは逆にチャンスでもある。接近してくれば回避は難しくなる筈だ。
迫りくる大きな気配を持った獣は真っ直ぐにほのかへと突撃してくる。
「ウィル、タイミングはお願い!!」
[了解しました、マスター]
杖を向けて先端に一発の光球を生み出す。
魔力の圧縮されたそれは近づく敵を今か今かと待ち構える。
それを前にしても、モンスターは恐れる事なく鋭い牙を生やした口を開けて飛び掛かって来た。
[5…4…3…2…1…今です!!]
「輝いて、光の砲弾!! ブライトキャノンッ!!」
圧縮された高密度の魔力弾が放たれモンスターの胴へ直撃する。
回転する弾丸はその勢いのまま相手を後方へと押し返す。
[オオオォォォォ……!?]
魔力弾と共に吹っ飛ばされたそれが壁まで飛んで行って激突。同時に魔力弾が爆ぜて爆発を起こした。
桜色の閃光がドーム状に発生し、爆風が洞窟内に広がる。
閃光が治まり相手の様子を確認すると、諸に直撃を受けた事で立てない状態だった。
[お見事です。二人とも]
「よし。あとはこのまま後は封印するだけだね。メロー、準備して」
[はい]
相手を封印し様とフィリスが準備を始めようとした正にその時だった。
突然、正面から重圧が襲ってくる。
それに二人は背筋から冷たい汗が滲んで、身体が強張った。
「え……!?」
「うそ……!? まだっ!?」
[ラー……オブ……コール……!! ラー……オブ……コール!!]
震える四本脚を大地にしっかりと付けて立ち上がるそれが再びよく分からない言葉を呟く。
その度に、モンスターを中心に紅蓮の炎が渦巻いてその身を覆い隠していった。
[ラー……コール……ナー……!! コール……コール……ナー!!]
何かを強く、強く唱えるそれ。炎の向こうで怪しく双眸が光った。
そして――
[ラー……コール……クトゥグハ!!]
激しい炎の渦が発生し、それが一気に爆ぜた。四方八方に火柱が広がって地上を奔る。
そして、その中央には……額から背中にかけて無数の棘を生やし、紅蓮の体表となった六つの尾を生やした獣が立っていたのだ。
「変化した!?」
[火属性レベル上昇を確認しました! 気を付けて下さい]
[コール……デインッ!!!]
口を大きく開けて紅蓮の炎が吐き出された。それは先ほどよりも大きく、移動速度も速かった。
咄嗟にフィリスがアクアウォールを張って防御する。
直後に水壁に炎が激突。
その時、フィリスは手に凄い圧力が加わって来たのに顔を顰めた。
「っ!?」
「フィリスちゃん!? どうしたの!?」
「炎の威力が上がってる!! さっきとは段違いだ!?」
如何いう訳か相手の力が上昇している予想外の事態にフィリスは焦りの色を浮かべた。
その様子を手下のモンスターと刃を交わしながらバルドは横目で確認した。
「面倒くせえ事になりやがった」
[さしずめ、あれの名前は『クトゥグハ』ってか? ウヒャヒャヒャ!!]
[呑気な事を言っている場合ですか!]
クトゥグハと名付けられたモンスターの攻撃にフィリスの水壁が徐々に蒸発を始めていた。
このままでは不味いと思ったほのかが直ぐに援護の体勢に入る。
「今援護するの! 光よ…弾けて!! フォトンバレット、シュート!!」
魔力弾が形成されて一斉に放たれる。
幾つもの方向から同時に来る魔力弾を前に、クトゥグハと呼ばれるモンスターは足に炎を纏わせたと思うと地を蹴って上空へと飛んだ。
そして、そのまま空中で滞空したのだ。
「ふえっ、飛んだ!?」
「しまった。空中に逃げられたら地上からの攻撃が当てずらい!?」
[オォォォッ!!]
六つの尾の先端に紅蓮の炎弾が生み出されて一斉に放たれる。
それが二人へと殺到し爆発で彼女達の姿が隠れる。
「シャインバレット、シュート!!」
「アクアスパイク、シュート!!」
煙の中から桃色の魔力弾と水色の矢が飛び出してきた。
それが多方向から相手に襲いかかるが相手は空中で水平に飛行してそれを回避。
煙の向こうにいる二人に向かって火炎放射を放つ。
それを慌てて二人は射程範囲から後ろに駆けて逃げる。
「地上と空中じゃ分が悪過ぎる!?」
「で、でも私達は飛べないよ……!!」
[オオォォォォッ!! コール……アウスッ!!]
言葉を発してクトゥグハの眼が赤く光った。
その瞬間、ほのか達の足元が赤く発光し、地面が盛り上がる。
[マスター!! 地中より高エネルギー反応! 直ぐに回避を!!]
「「っ!!!」」
ウィルの警告に咄嗟に体が動くが直後に盛り上がった場所から灼熱の溶岩が地面を吹っ飛ばして噴き出してきたのだ。
「「きゃあ!?」」
直撃こそ免れたが発生した衝撃波をまともに受けて二人が軽々と吹っ飛んで地面を転がった。
バリアアーマーが炎の攻撃を抑えてくれたがそれでもダメージを受けて二人は起き上がるのに時間を要した。
「フィリスちゃん。大丈夫……?」
「なん……とか。っ……くっ!! このままじゃ、ジリ貧で負ける……。空を…飛べたら……」
「空を……」
頭上を見上げる。空中にいる相手に此方の攻撃は当らない。
相手と同じ土俵に立たねば、今の自分達では勝てない……。
空を飛べれば……。
体の奥底で何かが強く鼓動する。
それと同時にウィルの赤い宝石が光り、文字が浮かび上がる。
ウィルを強く握って強く願う。願うだけでなく、イメージする。自分が大空を飛ぶイメージを……。
必死に念ずる彼女へ向かってモンスターが咆えて口を大きく開けて口内に炎を集束させる。
[コール……デインッ!!!]
大出力の火炎が吐き出される。それが真っ直ぐにほのかを狙っていた。
「ほのか!! 逃げてっ!!!」
(強く……強く……念じる!! 自分が飛べるそのイメージを!!)
フィリスの声が耳に届くも彼女は逃げずに倒れたまま、眼を閉じて強くイメージを作り出していた。
自分なら、出来る。翼よ……羽ばたいて!!
彼女の下に魔法陣が出現する。
そして、彼女の前に瞳を開け、翼を広げた杖を抱く女神の紋章が出現。その女神はほのかを見つめている様に見えた。
眼をゆっくりと開ける。目の前には女神の紋章。
その背後には自分に向かって落ちてくる炎の壁が迫っていた。
慈愛の女神の瞳は語る。出来るのか?とそんな風に語っている様に見えた。
それにほのかは心で返事を返す。出来る……と!
彼女の下に紋章が下り交わり、その背後で大きく展開される。
「翼よ……羽ばたいて!! スターディウィング!!」
彼女が魔法名を口にした瞬間……火炎が着弾。大爆発を起こした。
「ほのかーーーー!!」
[相棒! ほのかの嬢ちゃんが!!?]
「なにっ!?」
フィリスの悲鳴に反応したバルド。
まさか、あの子が!?
最悪の結末が脳裏を過ぎったその時だった。煙の中から一つの閃光が高く舞い上がった。
煙を突き破って姿を見せたのは、翼を生やしたほのかだった。
両手足首に桜色の翼を生やし、そこから桃色の羽根がひらひらと舞っている。
[おおっ!? ほのかの嬢ちゃんが飛んだぜ!]
「飛行魔法を会得したか……ったく、冷や冷やさせやがって」
[オオオォォォォッ!!]
ホッとするバルド。その彼を左右から紅蓮の巨人が炎の剣を振り下ろす。
しかし、その一撃は彼に届くことなく、頭の上に水平に構えられた二本の大剣の前に受け止められた。
「さて……とっとと片付けるぞ!!」
[ヒ~ハ~ッ!! 派手に暴れようぜ!!]
両方の剣に漆黒の炎を纏わせて体格差を物ともせずに相手の攻撃を弾き上げた。
そして直ぐに地を蹴って駆け出し右の巨人を狙う。
近づく彼を踏み潰そうと足を振り下ろすが、スライディングをして地面を滑りかわして相手の背後に回り込む。
そして地面を蹴ってその無防備な背中にケルベロスを突き刺し、振り抜いてからその回転に任せて回し蹴りを背中に叩き込んで蹴り飛ばす。
背後からの衝撃に巨人がつんのめりもう一体と激突。巻き込む形で倒れる。
すぐさま起き上がって怒りの咆哮を上げて二体がクロスする様に剣を振るう。
地上を×状に炎の刃が奔ってバルドへ迫る。
しかし、それをバハムートを持つ手に力を込めて一気に振るった。
巨大な炎の刃はその一撃を前に中心点から真っ二つに割れ、霧散する。
そして、散りゆく火の粉の中で彼は不敵に笑った。
「飛行できるのがほのかだけだと思うなよ?」
その言葉通り、彼が地を蹴って飛翔する。
空を飛んだ彼を叩き落とさんと巨人が剣を振るうが悉くを彼は避けていく。
「闇の淵へと捕縛せよ、亡者の御手! アンデットハンド!!」
素早く魔術を詠唱し、発動する。
彼の足下に広がる魔術陣と同様のものが巨人たちの足下に大きく展開される。
闇より深い、濃い黒に染まった無数の黒い手が伸びて来て巨人たちに絡みついてきた。
それを引き剥がそうともがく二体だが、その拘束力は強く剥がれる事はなかった。
動きを完全に封じた相手を前にバルドはケルベロスを構え、その刀身に黒き闇の炎を纏わせる。
「これで終わりだ……」
[ヒャッハ~~!! 地獄の底へご招待~!!!]
空を蹴って弾丸の様に相手との距離を詰める。
そして、ケルベロスを下段に構え、一気に上段へと振り抜く!!
「奥義! 淵王灰塵破!!」
斬撃と共に繰り出される巨大な黒き炎の一撃。
壁の様に縦に扇状に広がったそれが容赦なく敵を真っ二つにしその闇の炎で相手の身を焦がす。
それから背を向けて剣を血を掃う様に剣を振る。
「まっ、そこそこ楽しめたぜ?」
そう評価を下したと同時に紅蓮の巨人二体は爆発を起こし、木端微塵に吹き飛んで消えた。
バルドが勝負を決めた頃、ほのかは自分が飛べている事に驚いていた。
「と、飛べたの!?」
[飛行魔法を取得。流石ですねマスター]
「強くイメージしたら出来たの。ととっ!?」
姿勢が崩れそうになって慌てて立て直す。
今まで飛んだ事がないので制御の仕方が分からず時々体勢が危うくなる。
[制御は私がサポートします。マスターは目の前の相手に集中して下さい]
「う、うん」
[オオオォォォォ!! ラー……アルム……トール!! ラー……アルム……トール!!]
ほのかの姿を見て殺気を膨れ上がらせるモンスターが再び古代インペリア語を紡ぐ。
大きく口を開けると口内に真紅の炎が集まり、溢れだす。
[コール……デイン!!!]
[回避を、マスター!!]
「ひゃっ!?」
迫る炎の一撃を慌てて彼女は横に飛んでかわす。避けたそれが洞窟の壁に激突し爆発。壁で激しく炎が燃えていた。
避けられるのは分かっていたのか今度はモンスターは空中を滑る様に飛んでほのかに向かって突進してきた。
接近されたらやられると瞬時に判断してほのかは空を飛ぶ。
彼女の後を追う様にクトゥグハも追従してきて背を向けている彼女に向かって六つの尾から紅蓮の炎弾を飛ばす。
それを身を捩じってかわしていき、身を翻して反撃の魔力弾を撃つ。
だが、それを避けて炎を吐いてきたので再び回避に専念する。
「す、すごい……空を自由に飛んでる」
[フィリス! 私達も続きましょう!!]
「えっ!? で、出来るのかな……?」
相棒に不安な表情を見せる。
しかし、その彼女を勇気づける様に弓の中央に填められている青い宝石が点滅した。
[出来る出来ないなんて考えては駄目。必要なのは、強くイメージする事。フィリスなら大丈夫、絶対に飛べます!]
「……うん。そうだね。後ろ向きに考えてちゃ駄目だよね。私だって出来る!! ほのかも飛べたんだ。私も同じ魔法士……だから、飛べる!!!」
彼女の背後に紋章が浮かび強く光る。彼女の足元より魔法陣が展開される。
そして、フィリスの頭に一対の水色の小さな翼が生え、彼女の体がふわっと浮き上がった。
「出来た……!! これなら、いける!! 行くよメロー!!」
[ええ。行きましょうフィリス!!]
相棒の返事を聞いてからフィリスもまたほのかを助ける為に空高く舞い上がった。
空で激しい空戦を繰り広げていたほのか。だが、相手との距離が徐々に縮まっていた。
このままだと追い付かれて接近戦になる。身の危険を感じたその時だ。
真下からモンスター目掛けて水色の矢が無数に飛来して全弾命中した。
[オオオォォォォッ!?]
突然の強襲に悲鳴を上げて後方に大きく下がるモンスター。
そして、ほのかの隣にフィリスが飛んでくる。
「フィリスちゃん!!」
「間に合ってよかったよ、ほのか」
ニコッとほほ笑む彼女にほのかも笑顔を向けた。
そこに正面から咆哮が聞こえて表情を引き締めて前を見る。
「これで対等な立ち位置になった。一気に勝負を決めようほのか!!」
「うんっ!!」
二人に向かって六つの尾が伸びて乱舞される。
その攻撃の嵐を身を捻って上手く潜りぬけて交わし、魔力弾を撃つ。
それを突進しながら口から炎を吐いて打ち消しつつ二人に攻撃を仕掛ける。
それを左右に飛んで避けてから魔力弾と矢を飛ばすが、上手く避けられ炎弾の雨が襲いかかる。
フィリスが素早く水の魔力障壁を張って受け、ほのかが牽制の魔力弾を飛ばして接近を防ぐ。
「ほのか。次に私があいつの動きを抑える。その時に止めをお願い!!」
「任せてなの!!」
[オオォォォォ!! ラー……アルム……トール!! ラー……アルム……トール!! ラー……アルム……トール!!]
相手が言葉を強く発する。その度に口内に集まる火球が肥大化してその口から溢れだしていく。
「今がチャンス!! 絡みつけ水流!! ツイストカーレント!!」
捕縛魔法が発動して相手の身体に絡み付く。暴れるそれだが、逆に締め付けて相手の動きを制限していく。そのモンスターに向かってほのかがウィルを向けた。
「行くよ、ウィル!!」
「これで決めましょう、マスター」
[ウォォォォ!!! コール……コール……コール……!!! デインスッ!!!]
彼女の背後に女神の紋章が大きく翼を広げ、右手に杖を持った姿で展開される。
魔力を集中している彼女に向かって相手が大火球を放った。
それは今までにない大きさを誇っており、これが相手の全力の一撃だと理解した。
だが、それはこっちも同じだ。
いま持てる自分の全力……その全てをこの一撃に込める!!
しっかりと前を見据え、彼女は一撃必殺の砲撃の名を解き放った。
「光の一撃、貫いて!! フォトンブレイザーーーーッ!!」
大火球と桃色の閃光が激突。凄まじい魔力の激突に洞窟内が激しく振動する。
暫しのこう着状態の後、ほのかの砲撃が相手の火球を押し返し始める。
傾き始めた形勢は覆る事無く彼女の大出力の砲撃が火球諸共、クトゥグハに向かって迫っていく。
そして、火球と共に桜色の砲撃がクトゥグハを呑み込んで行った。
[オオオオォォォォォォッ……!!?]
断末魔の叫びが響き渡り、砲撃の中に消えていく。
そして、彼女の砲撃は洞窟の壁に激突し閃光と共に大爆発を起こした。
桜の魔力の残滓が舞い散る空間。その一点に赤く光る欠片が浮かんでいた。
そこからは、未だ強い魔力が残されているものの禍々しさが消えた状態だった。
「今だ。メロー、封印するよ!!」
[了解です。フィリス!]
「ほのかも、辛いけどもう少しだけ手伝って!」
「はあ、はあ……。う、うんっ!」
二人が魔法陣を展開し、それが欠片を挟む形で展開される。
そして、フィリスの水色の魔法陣から封印式の組み込まれた帯状の魔力陣が伸びていき、欠片を包み込む。
「その力の全てを封じよ!! プロテクトシール!!」
帯状の式が一気に縮小し、欠片に吸い込まれていく。その全てが入ると同時に欠片がその輝きを弱める。
宝石と殆ど変らない光沢を放つと同時に宙に浮く力を失って、地面に落ちて転がる。
地上に降りた二人が傍まで歩み寄って、それをフィリスが素手で摘まみ掌に収める。
「回収完了っと……」
[二人とも、お疲れ様]
強敵を撃破した事でホッと息を吐く二人。何とか破壊せずに封印出来た。
これで、街は…自分達の守りたい人達の命は守れたと思った。
安堵の表情を見せている二人だったが、一方でバルドはその様子を静かに見つめていた。
[いや~、嬢ちゃん達は強いね~。相棒もそう思うだろ?]
「まあ……な」
[若? 如何かしましたか?]
歯切れの悪い返事にバハムートが疑問を持って問いかける。
「あの歳であれだけの力を出せる、それは別にいい事だ。将来が明るいものになるからな」
[それは喜ばしい事では?]
「だが、あまりにあいつ等は幼すぎる。今後が不安だな……」
まっ、さっさと街へと帰してやればいいか……。と彼は結論を纏めて、喜びに震えている二人の下へと歩み寄ろうとした。
しかし、その時だった。
洞窟全体が大きく脈動する様に震え、その後も激しい揺れが襲ってきた。
その急な振動に少女達はバランスを崩して尻餅をついた。
「にゃあっ!?」
「うわっ!? な、なに!?」
眼を白黒させて今起きている状況に混乱する。頭上から洞窟の壁の欠片がパラパラと落ちてくる。
そして、天井に亀裂が出来始めたではないか。それにはバルドも驚いて、直ぐに状況を理解して舌打ちをする。
「あんまし此処で暴れ過ぎたか!? それに……魔力素同士が暴走を始めやがったか……!!」
[やべーぜ相棒! 周囲の火の魔力素があの欠片の所為で集まり過ぎている。それが制御してた奴が封印されたから暴走を始めやがった!?]
[あまりにも密集し過ぎて反発し合っています! 此処にいるのは危険です!?]
「めんどくせえ事になりやがった……。おいっお前等!! 直ぐに脱出するぞ!!」
「う、うんっ!!」
「はいっ!!」
二人が立ち上がってバルドの誘導の下、祭壇の出入口の門へと急ぐ。
しかし――
「にゃあっ!?」
「わあっ!?」
門の一歩手前でほのかとフィリスは見えない何かにぶつかって吹っ飛ばされ再び尻餅をつく事になった。
その二人にバルドが駆け寄り助け起こす。
「如何した!?」
「うぅ~……何かにぶつかったの」
「な、なんか見えない壁か何かにぶつかったよ」
「まさか……お前等、ちょっと待ってろ」
二人をその場に待機させてバルドが前へ出てケルベロスを構える。
そして、一息の下一気に振り下ろす。空気を震わせながら振り下ろされる大剣が目の前の空間で何かに激突して鈍い音を立てる。
その瞬間、接触部分に赤い魔法陣が展開されてケルベロスの一撃を阻んだ。
「結界か!!」
[にゃろう、あいつを倒したのにまだ消えてなかったのかよ!? 最後の最後で置き土産ってか!?]
[如何するんですか若!? 出入り口は此処しかありませんよ!? このままでは生き埋めになってしまいます!!]
「そいつはごめんだ。餓鬼二人と一緒に仲良く化石になる気はねえよ」
「で、でも……道が塞がれてるのに如何するの?」
退路は断たれている。この空間の揺れは酷くなっており、何時崩れ落ちるか……。
その危機的状況にあたふたする二人の傍ら、バルドは静かに顎に手を当てて考え事をしていた。
「解除には時間が掛かるな……。でも、そんな時間もなさそうだ。さて……如何したもんか……」
「バルドさん!? そんな呑気に考え事してる場合じゃないの!?」
「そ、そうだよ! 早く脱出しないと!?」
[っと言われても退路がないんだから慌ててもしょうがねえのさ嬢ちゃん達よ、ウヒャヒャヒャ!!]
[前も後ろも駄目。上も駄目……。完全に手詰まりですよ若!?]
「……ああ、なんだもう一つ方法があんじゃねえか」
しかし、バハムートの言葉を聞いてバルドは一つの策を思いついた様でポンッと手を叩き地面に手を付けて眼を閉じて手の感覚に意識を集中させる。
地下深く、僅かにだが揺れの緩い場所がある。続いて地面に耳を当てて音の反響がある事も確認した。
手と耳を通して伝わって来た感覚に彼はある確信を持ち、スッと立ち上がる。
そして、何の躊躇いもなくケルベロスを全力で地面に叩きつけたではないか。
超重量の一撃が揺れが酷くなる洞窟内を更に激しく振動させ、彼等のいる足下の地面が一気に崩れ落ちる。
「にゃ~~!?」
「きゃあ~~!?」
自分達の立っている大地が崩れ落ちてほのかとフィリスは自由落下を始めて悲鳴を上げる。
そこの見えない暗い暗い闇が口を開けてほのか達を迎え入れる。
――――が、奈落の底に落ちると思ってた二人は直ぐに再び地面にお尻を強かに打ち付けた。
「あうっ!?」
「いたっ!?」
「おっ、やっぱ通路があったか」
臀部にくる痛みに手で擦って宥めている彼女達の傍らで何事もなかった様に立っているバルドは暗い空間でも先が見えているのかそんな事を言った。
それと同時に天井が遂に耐えきれなくなって崩壊を始め、彼等の上に降って来たではないか。
「おい、お前等。ケツが痛いのは後にしろ!! 全力で真っ直ぐに飛べ!!」
「「え……あわわわわわっ!?」」
真上を見上げた二人は迫る瓦礫を目の当たりにして大慌てで飛行魔法を発動して先の見えない暗闇に向かって飛んだ。
その後ろをバルドが追いかけその場から離脱する。
その数秒後に彼等のいた場所に崩れた天井が落ちて来て轟音と共に砂塵を巻き起こし、彼等の姿は瓦礫の向こうへと消えていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
バルド達が洞窟の奥の祭壇でそんな事態に陥っている頃、洞窟内の別の一角で大勢の人が倒れていた。
全員がズタボロの状態で何者かと激闘を繰り広げた事は明らかであった。
その彼等の肩にはSCCAと刺繍された文字が描かれていた。
そう。彼等は先にこの洞窟で欠片の討伐隊として派遣された部隊と、行方を捜索に来た捜索隊の面々だった。全員、戦闘不能状態で痛みに呻く者までいる。
その中で隊長と思われる男性が自分達を襲撃してきた目の前に立つ者達を首だけ動かして霞む目で見上げた。
「何…者なんだ。お前等は……!?」
「これが天下に名を響かせる魔法共和国屈指の組織『SCCA』様ね~。よっわすぎ~~♪」
暗闇に光る二つの飢えた双眸。紫色のその妖しい光と共に洞窟内に響くのは高い声。
恐らく女性であろう目の前の人物は、自分達をいとも簡単に打ちのめした恐るべき人物だった。
その背後には幾人もの部下が立っていて、同じく彼等を見下す目で見つめていた。
討伐の為に奥へと進もうとした彼等を何の前触れもなく突然襲撃してきて瞬く間に壊滅状態にし、後から来た捜索隊すら片付けてしまった。
「ねえ、もう他の奴来ないのかなぁ~? もっと楽しい相手は来ないのかなぁ~?」
しゃがんで隊長の男性の頭をその小さな手で鷲掴みにして持ち上げて目線を無理矢理合わさせて問いかける。
「おらっ、何とか言いなよ!? 返事はぁ~? イエス!? ノー!?」
「うっ、うぅ……!?」
大凡、女性とは思えない握力で頭を握られて苦悶の声しか出せない隊長。
返事を返さない彼を無理にガクガクと揺さぶって吐かせようとする。
「あの……ビアンカ隊長。あまり揺さぶっては相手も返事が出来ないかと……?」
「…………ああ?」
そんな彼女へ全身黒いコートで隠した彼女の部下の一人が止めようと声を掛ける。
すると、揺さぶっていたその腕が止まった――が振り返った彼女のその鋭い双眸がその部下を捉える。
「お前………生意気」
「は――?」
ドッという音が暗い洞窟に聞こえた。
そして、遅れて地面に肉塊が落ちる嫌な音が聞こえて居並ぶ他の部下達の前に転がる。
「只今を持ちましてぇ~、部下の一人がモンスターにやられちゃったってかな~? あははは!!」
そして、ビアンカと呼ばれた女性の前に立っていた――首なしのそれが盛大に血を噴水の様に噴き出してドサッと倒れる。地面が真っ赤な水で染まっていく。
「部下は殺すけど、他人は殺さないあたしってやっさしぃ~♪ これで周りの好感度上昇ぅ~!」
そんな恐ろしい事をのたまう。掴んでいたSCCA隊長を他の倒れている部隊の元の方へと投げ捨て彼女は残る部下を引き連れて奥へと歩み始める。
「さよなら~、弱々虫さん達~。調査の為にあの欠片は貰ってくよ~。せめて、D級以上のモンスターがやって来ない事を祈ってれば~あははは!!」
血の臭いを嗅ぎつけて洞窟内のモンスターが集まり始める。それに恐れ慄き恐怖で怯えた声を出す彼等。
その周りにあるのは申し訳程度に張られた魔物除けの札。
その効力は―――D級以下しか効果を発揮できないものだった。
今いるフレイムヴォルフ達はF級……しかし、それ以上のモンスターは……。
そんなものしか残さず彼女達は姿を暗闇に消して行った。
祭壇のある門の前へと辿り着いた彼女達。その大きな門にビアンカは手を当てる。
「さぁ~欠片ちゃんとごっ対面っ~~~!!」
そして、開かれた先には光輝く欠片――ではなく崩壊し、崩れた瓦礫の山の空間だった。
「……はあ? ちょっとちょっとぉ~、これはどういう事かな~?」
徐々に不機嫌そうなオーラが溢れだしてきているのを部下の者達は肌で感じてその原因を目だけを動かして探す。
「ビアンカ様。あれを……!!」
「んん~?」
そして、一人の部下が声を上げてその場所を指をさす。
見れば、そこだけ大穴が開いており空気の流れる音が聞こえていた。
「……お前」
「はっ!」
ニタリと不気味に笑う彼女に思わず体がピッとした形で強張って硬直する。そんな彼の肩に手が置かれる。
「気付いたお前は偉いね~。愛してるぜ~? おい、お前等!! こっから行くぜ!! 泥棒をおっかけようじゃん!」
深い笑みを見せる彼女に部下全員が返事を返す。
彼女のその両手には独特な形をした円月刀が握られていてその刃先を赤い瑞々しい舌が這った。
「泥棒さんは……血祭りにして、バラバラにして、モンスターの餌だ。あははははっ!!」
狂ったように笑う彼女が大穴の中へと飛び込む。
それに続いて彼らもまた飛び込んで行ったのだった。
クトゥグハ
謎の赤い欠片より出てきた獣が本気になった姿。
全身真っ赤な体毛と六つの尾が特徴。鉄をも溶かす強力な火炎を巧みに使う。
僕のクトゥグハ・ポーンを召喚してくるので単体と思うと痛い目にあう。
危険ランクは不明だが、魔力ランクは+AAクラスに相当する。
何とか強敵クトゥグハを撃破。
けど、代わりに祭壇の間が崩落するというオチ……。
まあ、洞窟の中でドンパチやってる全員が主な原因であるw
謎の勢力がSCCAの皆さんと遊んでいる間に、バルド達がそこを素通りして欠片を回収しちゃったという事実。
そして、そんな彼らに迫る新たな魔の手……の予感。
この後一体どうなる事やら……。
それでは皆様。今後とも宜しくお願いします。
では(゜∀゜)ノシ!!




