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第六十一話 天空の柱


六十一話更新。

第七都市ルインから離れた未開の土地と化した古塔が存在する。

いまは強力なモンスターの巣窟そうくつとなった場所にほのか達は光の精霊レムルスに会うべく足を踏み入れた。


 第七都市に至る所から生息するモンスターのランクはBからAランク程度のレベルへ上昇する。

 ここで依頼を受ける者達――――冒険者、または勤務する魔法士として働く者は他の多くの者達から尊敬されるようになる。


 生息するモンスターは並大抵でなく、一癖二癖もある強敵ぞろい。加えて第七都市では生息するモンスターの多くが他属性に強い光属性を持っている。

 属性で負ける魔法士や冒険者たちは、その差をいかに埋めて倒さねばならないのだ。


――――つまり、それ程に激戦地区であるということである。



第七都市で気を付けなければならないのは『天空そらの柱』と呼ばれる今となっては未開の土地と化した塔とその一帯である。


 人の手が加えられていない土地となったここはAランクモンスターが跋扈ばっこする恐ろしい地域だ。年に何度か遠征でSCCAや召集の掛けられたギルドが連合を結んで規定数のモンスター討伐をそれぞれ独自に行っている。


 しかし、そのあまりの手強さに毎回数名のとうとい犠牲が発生している。それを防ごうとSCCAではタスクフォースの総大将カルロスが、ギルドの方ではギルド『ルドガルア』のリーダーザックスが必ず出席して指揮を執る様になった。


 SCCAとしてはギルドという非公式の組織の行動に対して遺憾の意志を示している。その理由は守るべき市民である人々が自ら武装してモンスターへ戦いを挑むことでらぬ犠牲者を出したくないからと語る。

 一方、ギルドもSCCAに対して遺憾の意志を示している。例えば、市民がモンスターの討伐の依頼をSCCAに送ったとする。

 それを受け取り、情報を上層部へと通達するのに丸一日が経つのだ。そこから情報整理と部隊の編成に二日、現地に到着後に出撃準備を整えるのにまた一日と討伐を始めるまでに時間が掛かるのだ。


 そこまで時間をかけてしまえば、気性の荒いモンスターなどだったらあっという間に壊滅してしまう。ギルドなら依頼書を受け取り、パーティを選出後にすぐに出発できる。無駄に時間をかけずに標的を倒し、被害を最小限に押しとどめる事が出来るのだ。


 無論、あまりにも危険なモンスターの場合は複数のギルドが集結し大討伐を行う事で解決を図る。

 非公式とはいえ市民から依頼を受けてモンスターの討伐に赴いてSCCAだけでは手が回らないモンスターやその他の問題を解決しているのだからその点は評価してほしいと思っている。


両者とも犠牲を出したくないという点では一緒なのに互いを認められない。だから何時までも睨み合いを続けているのだ。


 その睨み合いが一番激しいのがこの第七都市の地域にある『天空そらの柱』なのだ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 天空そらの柱に到着したほのか達は光の精霊レムルスに会うべく早速塔へと足を踏み入れた。入った直後にBランクモンスター達の熱烈な歓迎を迎えられる。襲いかかる彼等を蹴散らして安全を確保した所で次の階へ階段を上って上の階へ進む。


敵に気付かれて襲撃され、撃退しまた上る。それを繰り返すこと二時間―――



「だいぶ上がったけど、いま何階だろ?」

「……十五階だ」

「この塔って何階まであるの?」

「三十五階だ」


まだ先があるのを知らされてげんなりする。あと二十階も上がらないといけないのかと思うと疲れを感じて来た。


「また次の階でも戦って、その次の階でも戦ってを繰り返さないといけないのかー」

「文句を言うなシリウス。俺だってそろそろ面倒くさくなってきてる」

「バルドさん面倒くさがりやもんねー」


面倒くさがりなバルドにとってはこれほどに面倒なものはないだろう。辟易へきえきする彼をみてほのか達はくすっと笑う。


「それにしても……お前ら、随分と成長したよな」


話題は変わってほのか達の方を見る。急に自分達の話になって一様に首を傾げた。


「ふえ? 私達…?」

「初めの頃はヴォルフから逃げてたのに……気付けばAランクのモンスターにも挑む様になってる。ずっとお前らと旅して見てきた俺からすればすごい成長だよ」


 ポンッと手を置いてくしゃりと撫でる。まだ十にも満たない彼女達だが、もう並みの冒険者にも引けを取らない強さを手に入れている。

いままで成長を見守ってきた彼としては感慨深いものだ。


「だからこそこれからの事をしっかりと考えて生きるんだぞ」

「うんっ! ……にゃふ~~///♪」


何時もの様に頭を撫でられて嬉しそうに眼を細める。


 休憩を挟んでから再び塔を上り始める。上るにつれて下層にいたモンスターよりも手強い相手になり始める。

 魔導師の衣で身を包む人型モンスター『ウォーロック』。同じ人型でも近接に特化した騎士タイプの『ハイペリオン』など上階へ進むにつれてその姿形は人へと近づいていく。



 『ウォーロック』はAランクの人型モンスターで得意属性は光だ。元は天空そらの柱から天へと昇ろうとした太古の英雄の魂達が複合し、魔力素より肉体を形成、実体化してモンスターとなったとされる。その変化の経路が精霊と似ているとされるが、詳しい部分が不明なため学会では議論が繰り返されている。

 多種多様な魔法を繰り出す事で有名で単体でもルーキーで編成されたパーティならあっという間に全滅してしまう。

 ランクに恥じない高火力の魔法と強固な防御魔法を駆使し、遠距離戦では圧倒的な戦闘能力を発揮する。使用する魔法の種類も複数で、使用する魔法はそれぞれ異なる。


 同じ人型でも『ハイペリオン』は近接に特化した騎士の姿をしている。

ウォーロックと同じく過去の英雄の魂によって形成されているのではないかとされている。

素早い動きで相手に接近し、多彩な剣術で追い詰める。身を守る魔法鎧は弱い魔法を跳ね返す『魔法反射リフレクト』をもっており盾には自動防御魔法の式が組み込まれている。

 得意属性は光で弱点属性は闇である。しかし、装備している魔法鎧は全属性ダメージを半減させる力を持っていて弱点をカバーしている。


 彼等は基本的に塔とその近辺にしか生息していない。彼等の特徴は『弱者に反応しない』という点だ。例え相手がパーティを組んでいても、差があれば出会っても見向きもしない。無論、こちらから仕掛ければ戦闘にはなる。

 逆に強者であるならば積極的に戦闘を仕掛けてくる。強者と戦いたいという太古の英雄の魂から来るものなのか分からないが、相手が強いほど彼等は力を上げてくる。


 しかし、その生態を調べようとしても出来ないのが実情だ。何故なら彼等は倒されると魔力の粒子となって消え去ってしまうのだ。

まるで、戦いに満足して成仏したみたいでサンプルどころか欠片も手に入らない。



謎多きモンスターである『ウォーロック』と『ハイペリオン』。

その彼等とほのか達は出会い―――戦闘となった。


「シャインバレット、シューーット!!」

[シャインバレット、シュート]


 光の魔力弾が幾つも放たれる。それを狙われたウォーロックは防御魔法を前方に広げて防いで反撃の青色の魔力弾を飛ばす。

 空中で身を捻り攻撃を回避すると、地にいた一体のハイペリオンが飛行するほのかと同じ高さに跳び、持っていた魔法剣に赤色の魔力を通して振り下ろす。それを同じく跳躍したサヤが間に入って、爪でその攻撃を受ける。


弾いて逆の爪で相手を吹き飛ばし、地面へと叩き落とす。


 起き上がったハイペリオンは剣に魔力を通し、身を捻ってから床を斬りながら上段へと斬り上げを行う。剣先から光の柱が奔り、真っ直ぐにサヤへと飛んで来た。

 ハイペリオンの必殺技『シャイニングウェーブ』という光属性の斬撃攻撃だ。高い火力と誘導性を持った攻撃で『バリア貫通ブレイク』の効果を備えている。

 

迫る光の柱を前に彼女は姿勢を落とし、手に力を込める。その身から気が溢れ、美しい金の髪が意志を持つように揺れる。


「鬼刃爪・獄門ッ!!」


 両爪を床へ思いっきり振り下ろす。亀裂が正面に蛇の様に伸びていき、シャイニングウェーブへと迫る。そしてぶつかり合う瞬間に床が光り、大爆発を起こして衝撃波で敵の攻撃を相殺した。


 防いだ彼女へ再度攻撃を仕掛けようとした所で、今度はシリウスがスライディングで足下をすくってもう一度転ばす。続いて前のめりに倒れるところにグラキエスが冷気をまとった蹴り上げで上へと吹っ飛ばす。


「そこっ! アクアインパクト、ブレイクシューーット!!」


 打ち上がったハイペリオンをメローを構えていたフィリスが待ち構えていた。背後に羽付き帽子を被って弓を構える人魚の紋章が展開され、魔力矢が放たれる。

 メローから放たれた矢がハイペリオンのかぶとを粉砕する。力尽きたハイペリオンがバラバラと崩れ落ち、空中で四散して消えた。


「ふぅ……」

[命中ですフィリス。良い射撃でしたよ]

「ほのか達に負けてられないからね」


 相棒からの称賛に表情を崩して返事を返す。空中にいるフィリスへウォーロックが狙いを定めて紫色の魔力弾を撃ってきた。気持ちを切り替えて彼女は空中を飛行し、弾幕の中を掻い潜って避ける。

 右手だけで行使している弾幕、次に左手も加える。紫色の右手、緑色の左手。弾幕の数が更に増してフィリスを追い詰める。


「あっ……!」


 移動していた彼女が気付く。何時の間にか退路を塞がれ全方位に魔力弾が待機されている。ウォーロックからの合図と共に一斉に撃ち出される二色の魔力弾がフィリスに襲いかかる。


「メロー、オーバーリミッツ!!」

[Over Limits,LevelⅠ! アクアガード!!]


 彼女を包み込む様に水の防御魔法が展開される。二色の魔力弾が着弾し、爆発を起こす。苦悶の表情を浮かべて必死に防御魔法に魔力を込める。

弾幕を凌ぐと同時にアクアガードは限界に達して砕けた。


 なんとか抑える事が出来てホッと息を吐く。――ところで目の前に別のハイペリオンが跳んで来た。魔力を刃に通して上段から斬りかかってくるが、刃は黒き大剣に阻まれて停止する。


「大丈夫か、フィリス」

「う、うん。…ごめんバルド」


 援護に来てくれたバルドにお礼と謝罪をする。そんな彼女に彼はフッと笑みを浮かべてから表情を戻し、ハイペリオンと交戦を始める。

パワーで負ける相手は繰り出される重撃を前に体勢を崩していく。


「いまだ、アイネ」

「任せろ、バルド!!」


一振りで相手を吹っ飛ばした所でバルドが合図を送る。彼の背後からアイネが飛び出すと白色の魔力陣が展開される。


「煌めけ閃光っ! コズミックレイッ!!」


 六基のスフィアが出現し、高速で接近して各地点に配置されると同時に魔力が集束されてレーザーに近い砲撃が放たれる。

 六つのレーザーに撃ち抜かれたハイペリオンが撃墜されて落ちる。しかし、その身を水色の魔力が包み込むと傷の入った鎧などが瞬く間に修復されて彼は復帰する。


「あいつ、回復魔法まで使えんのか!!」


 プレセアが地上にいたウォーロックを見て声を上げる。

あの敵をなんとかしないと長期戦になると思ったプレセアが高度を落とし、地上すれすれを飛んで接近を試みる。

ウォーロックを守ろうとハイペリオン二体が彼女へと接近し斬りかかってくる。


「させるかっ!! ミョルニル、ツェアシュラーゲンフォルム!」

[Je,My Prinzessin. Over Limits,LevelⅠ]


手前で飛行を止めて降りたプレセアがスコップから鎖付き鉄球へと変形させる。そしてその場で回転を行い、鉄球を回し始める。


「くらええぇぇ!! エアーデファウスト!!」


 黄色をまとった鉄球が解き放たれて真っ直ぐにハイペリオンへと飛んで行く。盾を構えて自動防御で防ごうとするが、『バリア貫通ブレイク』の前にそれは意味を成さず砕けて命中する。

 勢いは止まらず、そのまま後方にいたウォーロックも巻き込んでプレセアの一撃は塔の外壁を粉砕して外に飛び出した。


「アタシの魔法を止められると思うな」


 ミョルニルを戻してから胸を張って決め台詞を言う。バリア貫通ブレイク能力を持った魔法を多数持っているプレセアにとって守りを固める相手など問題はない。


「しかし……上るにつれて手強くなってるな」

「一番上にはどんなモンスターがいるんだろ?」

「あと少しで頂上だ。油断すんなよ」


塔の最上階へと歩を進める。何度か休憩を挟みながら三十三階まで辿り着き、残るは一階まで上った。


「次の階で最上階なんだね」

「ほのかちゃん。もう少しやから頑張ろう」

「霧島さん、疲れてない?」

「あたしは平気だぜ。つーか、アシュトン……お前こそ大丈夫かよ?」

「少し、疲れてるけど大丈夫だよ」

「もう少しで頂上だフリージ。次を上ればレムルスに会える」


互いに励ましながら三十四階へと足を踏み入れる。その最中、バルドはリースリットへ声をかける。


「リースリット、疲れてないか?」

「ん……大丈夫。あなたこそ―――」


言いかけて言葉が止まる。どうしたのか首を傾げると、彼女は少しうつむいてからもじもじとして上目遣いで見上げる。


「バ、バ、ル…ドこそ、無理してない?」


ようやく発した言葉に軽く驚いた。それはやがて喜びに変わり、彼はフッと笑って彼女の頭に手を乗せた。


「ああ、大丈夫だ。心配してくれてありがとよ」

「ん……////」


 カルロスとの摸擬戦の際に彼女はやっと彼の名を呼べるようになった。

まだ呼ぶ際に少しどもったりするがそれは時間が解決してくれるだろう。撫でられ顔を赤くしてうつむく。


終始、和やかな感じで一行は三十四階へと足を踏み入れる。

だが、それは一歩目から消えて緊張へと変わる。


 最上階へと通ずる階段の前、そこに鎮座する者がいたのだ。

女性らしい姿なりに全身を鎧で完全武装して一見『ハイペリオン』と似た様な姿をしているが、明らかに発している気配が違った。


「厄介な奴が現れたな……」

「あれも、モンスターなの?」

「そうだな。あいつは『ゲートキーパー』。+Aランクの光属性モンスターだ」


 ほのか達を認めた『ゲートキーパー』と呼ばれるモンスターが光から鎌を生み出して手に持つ。左右に二つの魔法陣が出現すると、そこから鎧で身を固めた騎士と魔導師の姿をしたモンスターが出現する。


「召喚魔法!?」

「ゲートキーパーの配下の『GK・ハイペリオン』と『GK・ウォーロック』だ。ランクはA」


 配下のモンスターを呼んだ所でゲートキーパーが動き出す。

地を蹴り弾丸を思わせる速度でユグドラに接近して持っている鎌で斬りかかって来た。振り下ろされる鎌をルーンを展開して受け止め、火花が激しく散る。


「速いっ!?」

「ユグドラさん、いま援護を――!!」

「アシュトン、あぶねェ!!」


 魔術で援護しようとした所でサヤが身を投げ出す形で彼をその場から投げ出す。

 二人のいた場所に砲撃が通り過ぎる。間近に交差する視線に顔を赤くしながらもアシュトンは慌てて彼女の下から起きて攻撃者を見る。


そこには六つのスフィアを展開した『GK・ウォーロック』が立っており、仕留め損ねた二人に対して再び砲撃魔法を撃って来たのだ。


「ウオッ!? 砲撃魔法が使えんのかよ!?」

「う、うわーー!?」


 高火力の砲撃を連射して来たと思えば、今度は魔力弾の弾幕を放って来た。自動制御で動くスフィアが素早い動きで接近してきて仲間達を襲ってくる。


「なめるでない小童が! 黒扇烈風ッ!!」


 持っていた扇子を振るい、前方に黒い竜巻を発生させる。

闇と風の混合した竜巻に引き込まれるスフィアが次々に撃墜されて消滅する。攻撃を防いだアウルへ『GK・ハイペリオン』が斬りかかって来た。


 素早い剣の嵐が彼女へ襲いかかる。あまり近接向きではない彼女は防御よりも回避を優先する。横に薙ぎ払われる刃を身を捻りスレスレでかわす。袖の端が切れる。先のハイペリオンよりも明らかに能力が高い。

切っ先が突き出され、アウルの胸を貫こうと迫る。


「切り裂け、シュトゥルムスピナー!!」


 スピナーを回転させながらルチアが突撃してアウルを狙っていた敵を弾き飛ばした。アウルの前に立つルチアは続けて大型スピナーを合体させ一つにして姿勢を落とし投擲とうてきの構えをとる。


「我々を忘れては困るぞ! 受けてみろ、ブルーム・デス・ヒメルス!!」


 緑色の粒子を纏ったスピナーが投擲とうてきされる。その攻撃はまるで天に咲く花の如く。風を裂きながら迫る攻撃にGK・ハイペリオンは剣に光りを帯びさせ斬り上げを繰り出す。

 『シャイニングウェーブ』がルチアの攻撃とぶつかり互いに弾いて相殺される。戻ってきたスピナーを装着しルチアはそのまま近接戦闘を開始。スピナーを巧みに動かして変幻自在の攻撃を仕掛けた。


GK・ウォーロックと交戦するほのかとリースリットとあかねは数多に繰り出される弾幕を前に身を捻ってかわしていた。


「ブライト、キャノン!!」


 圧縮された魔力弾が撃ち出される。大きな質量を持った魔力弾をGK・ウォーロックは魔法防御を発動して障壁を張り、炸裂した爆発の中から平然と姿を見せる。


 反撃の魔力弾が飛んで来て慌てて回避。その間にリースリットが接近を試みようとする。しかし、彼女の動きが見えていたのか牽制の弾幕が進行方向に飛ばされて急停止する。


「っ……。読まれた」

[敵はAランクモンスター。いままでのモンスターとは格が違うようです。マスター、御気を付けて]

「ん、分かってる」


 高速移動で相手の弾幕を掻い潜り、隙を見てはサンダースピアをお見舞いする。

二人が攻撃で注意を引き付けている間にあかねは殲滅魔法の発動準備に入っていた。その彼女に気付いたGK・ウォーリアーが一発の砲撃を彼女へ向けて放つ。


「あかねちゃん!!」


 危機を察知したほのかがあかねの前に飛び込んでディフェンシブを張る。

高火力の砲撃がほのかの張った防御魔法に激突して爆発を起こした。


「あいたたた……」

「ほのかちゃん大丈夫!?」

「ちょっと危なかったかも……にゃはは」


 急ごしらえの防御だったのでだいぶ粗が出ていた。ディフェンシブは砕けており、ほのかの身体には軽くすすが付いていた。

もし二発だったら防げなかっただろう。今度はしっかりと魔力を集中させて攻撃を防ぐ準備を整える。


「あかねちゃん。私が守るから思い切ってやっていいの!」

「私が、援護する……」

「ほのかちゃん、リースリットちゃん……。うんっ、分かったで!」


 二人の傍からリースリットがアクセラレートで離れる。

高速移動でGK・ウォーロックへ接近をする。弾幕を張りリースリットを迎撃しようとするが、彼女の速さは一線を超えた速さを持っている。


「フォルテ」

[Yes,Master]

「雷光一閃、プラズマスラッシュッ!!」


 魔力刃に魔力が通り雷の斬撃が刃から放たれる。防御魔法を発動して斬撃を受け、爆発に覆われた。

 煙を振り払い視界を確保するGK・ウォーロックだが、その視界に一番初めに映ったのは振り掛かられたフォルテの魔力刃だった。

発動しようとしていた魔法陣も一緒に彼女はフォルテを振り切った。


「いまだよ、あかねちゃん!!」

「まかしときぃ! あまねく結晶よ、つるぎと成りて恐怖と絶望を示せ。アハトファルブ・レーゲン|《八色に煌めく雨》!!」


 彼女の背後に紅白の巫女服衣装を纏った女性の紋章が現れる。足下に出現する八色に染まった魔法陣。発動すると同時に、彼女の結晶翼から光の結晶が数十もの数で舞い散り周囲に回転しながら展開される。

 角度によって様々な色へと変化する八色の剣へと姿を変え、切っ先が地上を向いた途端に回転運動を止めて動きを停止してGK・ウォーロックへと降り注いだ。


 結晶剣の雨を受けて貫かれたGK・ウォーロック。その身を魔法効果『結晶化』で結晶へと変えられて活動を停止する。

 残るGK・ウォーロックとGK・ハイペリオンも体勢を立て直したサヤ達の連携攻撃を受けて次々に倒され粒子となって消える。残されたのはユグドラと交戦するゲートキーパーのみだ。


 鎧を身につけているのにその動きは素早く、そしてしなやか。

持っている鎌でユグドラの命を刈り取らんと猛攻を仕掛ける。


 ユグドラを弾き飛ばすとゲートキーパーは魔法陣を展開させて六つのレーザー状の魔力弾を放つ。彼女の周囲に着弾したそれが爆発を起こして煙で姿を隠す。

 ダメージを与えつつ相手の視界をふさいだゲートキーパーは手に持つ鎌に光の魔力を纏わせ一気にユグドラへと肉薄する。そして、煙ごと彼女を両断せんと鎌を振り抜いた。


しかし、鎌は甲高い金属音と共に半ばで強制的に停止させられた。


「くっ、強いな……だがっ!!」


 煙の中から姿を見せるユグドラ。身にまとう赤き鎧は爆発によってすすけ、数か所に傷が入っている。

 だが、その瞳は紅蓮の業火の如き闘志が宿っている。受け止めた鎌を押し返してゲートキーパーから距離をとる。赤色の魔力がユグドラの身を包みこんだ。


「私は『朱の騎士』ユグドラ! 創星の主である主あかねを守りし、古代インペリアの誇り高き騎士だ!!」

[Over Drive.Exprojonッ!!]


 カラドヴォルグの刀身を紅蓮の炎が覆い尽くし、炎の剣となった。

上段、中段、下段、袈裟懸け、逆袈裟懸け。流れる動作で彼女はゲートキーパーに連続攻撃を叩き込む。


 攻勢へと転じた彼女の猛烈な連撃を前に防御をせざるおえない。炎の剣の乱舞と共に彼女達の周囲に炎が飛ぶ。

 ユグドラの攻撃を防いでいたゲートキーパーだが、そこで気付いた。

何時の間にか、自分を囲む様に炎が壁となって燃え盛っているのを――


「はあッ!!」


 気迫の篭った声と共に振り抜かれる剣。同時にゲートキーパーを閉じ込める様に炎の壁が天高く伸びて竜巻のように渦巻いた。


「カラドヴォルグ、オーバーリミッツ!!」

[je.Over Limits,LevelⅡッ!]


 ルーンが彼女の前に現れると形を変えて弓へと変形する。

左手にルーンを持った彼女はそのままカラドヴォルグを矢を番える様に備え、弦を強く引いた。


「この一撃、避けられると思うな!! 焔の鳳、古の山々を打ち砕かん!! 紅蓮天翔ッ、ファントム・フェニックス!!」


 解き放たれるカラドヴォルグ。炎をまとったそれはやがて火の鳥へと姿を変え、炎の竜巻に囚われたゲートキーパーを竜巻諸共貫いて飛び抜ける。

 大爆発が巻き起こり紅蓮の炎が部屋を赤一色に染め上げる。

彼女の前に炎が一つ灯り、放たれたカラドヴォルグが姿を見せる。それを手にし、変形させたルーンを元の槍へと戻す。


 荒れ狂う炎の中から姿を見せるゲートキーパー。

その身を守る魔法鎧はボロボロで、見るも無残な姿を晒していた。

自らの状態を判断したのか、彼女は光に包まれ球体となるとその場より姿を消して行った。


「逃がしたか……」

「凄まじい火力だなユグドラ。あのゲートキーパーを戦闘不能寸前まで追い込むか」


 ゲートキーパーは光属性のモンスターの中で高位に属する。保有属性も相まって他属性に対して非常に高い防御力を持っている相手なのだが――ユグドラはその防御すら貫通してダメージを与えたのだ。


「いまのが私の切り札『ボーゲンフォーム・モード・ファントム』だ」

「相手の特殊な守りを無効化し、火属性のダメージを直接与えるユグドラの持つ最強魔法だ」


 プレセアのギガドリルブレイクとは違い『バリア貫通ブレイク』を持たないが、代わりに防御系スキルを無効化できる力を持っている。

有効射程、火力ともに非常に高く、火属性を最大限にまで活かす事が出来る。


「これで最上階にいけるな」

「この先にレムルスさんがいるの?」

「ああ、光の精霊にして精霊界の重鎮がこの先で待ってるぜ」


 最後の階段を上りきると、そこは屋上だった。

吹き抜ける風が髪を乱す。手で押さえながら辺りを見渡す彼女達だったが、何処を見ても精霊の祀られているような祭壇は見当たらなかった。


「なにもないよ?」

「レムルスはどこにいるの?」

「もうすぐ会えるさ」


そういうが早く、彼女達の真上から光が降りて来てきた。

眩い光に目をつむり、治まった所で目を開ける。


「えっ!?」

「な、なんだこりゃ!?」


 目を開けたほのか達が立っていたのは荒野の中にある小高い丘だった。

周囲の大地からは、数多の光る球体が出てゆっくりと天高くへと昇っていく。

そして、目の前には石碑が置かれており振るい文字がつづられている。


その石碑の真上から光の粒子が降り始める。

見上げた彼女達の目に映ったのは、ゆっくりと降下してくる光球だった。


「来たようだな」

「……ふんっ」


 それを見てグラキエスがアウルの方を向くが、彼女は鼻を鳴らし腕を組んでそっぽを向いた。

石碑の前に浮かぶ光球が眩い光を放ったかと思うと、それはやがて人の形へと変わった。


「……」

「あの人が、光の精霊レムルス……」


 現れたのは成人した男性の姿をした人物だった。

しかし、普通の人とは掛け離れた清廉で、圧倒的魔力をその者から感じる。

やがて閉じられていた目がゆっくりと開き、地上で見上げる彼女達を睥睨して――


「我の領土を土足で踏み荒らすのは貴様らか」


鋭い目付きに敵意を載せてそんな言葉を投げかけて来た。





大魔導師 ウォーロック

Aランクの魔法に特化した人型モンスター。得意属性は光で強力な光系魔法と複数の属性魔法を使いこなす。遠距離攻撃を得意としており近接戦闘に持ち込めばBランクの冒険者や魔法士でも対抗は可能。


聖魔騎士 ハイペリオン

Aランクの騎士の姿をした人型モンスター。近接特化で多彩な剣技と他属性を半減する魔法鎧で数多の挑戦者を返り討ちにしてきた。必殺のシャイニングウェーブはバリア貫通と高い誘導性を持っている。基本的にウォーロックと一セットで姿を見せることが多い。


強敵が道を阻むもそれを退けてようやく彼女達はレムルスと対面する。

しかし現れた精霊は、隠すことなく彼女達へ敵意を向けてきた。

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