第四話 ほのかとフィリス パーティに加わる
gdgdな第四話更新!
バルドと合流する前にほのかはどうやってフィリスと合流し、そして外へと抜け出せたのか。
今回はそこからスタートです。
では、本編をどうぞ!!
ほのかとフィリスがバルドの下に辿り着いた数時間前に時は遡る。
ほのかは街の外に通じる門も前まで来てそこで足止めを喰らう羽目になった。
門の前には、襲撃を警戒してSCCAの警備隊が立って見張りをしていたのだ。
「どうしよう……。もうバルドさんは行っちゃったのかな?」
[彼の魔力反応を索敵しましたが、もうこの周辺にはいないようです]
だとすれば、彼はもう都市の外に出て行ってしまったのだろう。
早く追い付かないといけないというのに……。
困った彼女は右往左往する。
何かほかに此処を出る手はないか?
それを必死になって考えて辺りを見渡していると、自分と同じ様に右往左往している人影を見つける。
「あれ? あの子は……」
その子は見覚えがあった。
エメラルドグリーンの綺麗な髪に茶色の瞳の自分と同い年に見える少女。
魔導研究所で出会ったあの子である事に気が付いた。
何やら酷く困った様子で辺りをウロウロしているのを見て、ほのかは声をかけてみようと彼女へと近づいた。
「あの……?」
「え?」
おずおずと声をかけてみると、彼女も自分に声を掛けられたと思ったのか振り返ってくれた。
そして、ほのかの姿を認めると驚いた様な表情を見せた。
「君は…あの時の!?」
「覚えててくれたの?」
「当然だよ。私と同じターミナルを使える子だもん。あっ、少し場所を変えようか?」
人通りの多い場所から外れて二人は移動する。
近場の公園に移った彼女達は日陰のベンチで腰を下ろしてから互いに自己紹介をする。
「自己紹介が遅れたね。私の名前はフィリス。フィリス・アルトレーネっていうんだ」
「えっと、皐月ほのかです。あの時はありがとうございますフィリスさん」
思わず敬語になってしまったほのかを見てフィリスは少々苦笑いした。
「あはは……。敬語はいらないよ。私達ってたぶん歳は一緒だと思うから。だから、気軽に呼んでよ?」
「あっ、ごめんね。それじゃあ……フィリスちゃんって呼んでもいい?」
「うん。私もほのかって呼んでもいいかな?」
「うんっ!! よろしくねフィリスちゃん!!」
互いに年の近い子と仲良くなれた事に嬉しそうに笑う。
ほのかは、何故あそこでフィリスがウロウロとしていたのかを尋ねてみる事にした。
「フィリスちゃんはどうしてあそこに?」
「えっと……。ほのかはあの赤髪の人と知り合いなのかな?」
「うん。バルドさんって言うんだよ。フィリスちゃんはバルドさんに何か用だったの?」
「実は……あの人に同行してあのモンスターの調査をしようと思ってたんだ」
つまり、彼を護衛としても雇って洞窟へ逃げ込んだと思われるあの獣を調べようと考えていた様だ。
しかし、肝心の彼の姿を見つける事が出来ず今に至るといった訳だ。
「フィリスちゃん。バルドさんなら、多分もう先に行っちゃったと思うの」
「ええっ!? もう行ったの!?」
「うん。私もバルドさんを追いかけて此処まで来たけど、見つからなくて……」
ホンの少し前まで一緒にいたのに、としょんぼりする。
追い付けない自分の運動能力の低さに内心傷付いた。
「え? どうして君があの人を追いかけてるの? 何か用事でもあったの?」
「あ……。えっと、それは……」
彼女の言葉に引っ掛かるものを感じたのか、フィリスがほのかに詰め寄る。
それにどう答えたらいいのか分からず焦りの色を見せる。
そこに、彼女達の話を今まで黙って聞いていたウィルが口を開いた。
[マスターはバルドさんと共に洞窟へ行こうと思っていたんですよ]
「え?」
「ウィル!?」
[この方も魔法士。話しても問題はないと思いますよ、マスター。始めましてフィリスさん。私の名はウィル。どうぞよろしくお願いします]
「君が……あの今まで起動を拒んでいたIPターミナルなの?」
[はい]
「そっか。それなら私の相棒も紹介するね」
フィリスは首にかけていた十字架のペンダントを出して、ほのかの指にはめられているウィルの前にそれを見せた。
「私の相棒を紹介するね。この子はメロー。君と同じIPターミナルだよ」
[メローと申します。以後お見知りおき下さい]
[此方こそ宜しくお願いします。早速ですが、互いに情報を交換しませんか?]
[いいですね。今の情報だけでは心細いものがありましたから、是非……]
十字架の中央にある青い宝石がチカチカ光る。
それに合わせてウィルの方も赤い宝石をチカチカと光らせている。
そこから察するに互いの情報を交換し合っているのだろう。
「ほのかは、どうして洞窟に行こうと思ってたの? あそこは子供の君じゃ危険だよ?」
「フィリスちゃんだって子供なの!?」
「あ、あれ……? あ、あははは……そう言えばそうだったね」
的確なツッコミを貰い苦笑いする。
そんな彼女に、ほのかは自分が急いで彼を追いかけていた経緯を話す事にしたのだ。
「そっか、ウィルから封印できる事を聞いたんだね?」
「うんそうなの。それで、バルドさんを追いかけてたの」
「確かにあれだけの膨大な魔力を宿してたら爆発して大きな被害を呼ぶ可能性はあるかもね……。出来る事なら封印して持って帰って調べた方がよさそうだし」
「フィリスちゃんは封印魔法が使えるの?」
「勿論。研究所じゃ色々と物騒な物があるからね。処理に困ったら一端封印して保管しないと危ないし、基本から応用まで一通りは出来るよ」
「そう…なんだ……」
それを聞いてほのかは自分が行かなくてもフィリス一人でも出来てしまうのではないかと思った。
そうだとすれば、自分は此処で待つ事になるだろう。
また、彼の手助けも出来ない……。
その事実を感じて心に少し影が射す。
そのほのかの様子に気付いてフィリスは少し考える様に思考を巡らして決心する。
「でも、私一人じゃ危ないしなぁ……」
「え?」
「ほのかも一緒に来てくれないかな? 封印サポートとかしてほしいから。頼めるかな?」
「っ!! うんっ!! 任せてなの!!」
それにぱあっと明るい表情になって笑顔で答えた。
その笑顔を見てフィリスも表情を崩す。
「実は……もう一つ頼みたい事があるんだ」
「頼みたい事?」
「うん。道中できっとモンスターと出くわす可能性があるんだ。その時に追い払うのを手伝ってほしいな~って……」
恥ずかしそうに少しばかり朱に染まった頬を軽く掻いてポツポツと話始める。
「えっとね……恥ずかしい話。私って攻撃魔法少ないんだよね。属性が水っていうのも理由の一つだけど、そもそも攻撃魔法の構築が下手だったりするんだ。あははは……」
「そうなの?」
「実際、今使える攻撃魔法は『アクアスパイク』だけなんだ……。後は防御系や回復系、捕縛系統だけだったりするんだよね。ほのかも知ってるよね? 魔法の各属性の特徴」
「水属性は……回復系や防御系が得意だよね?」
「私も水属性だからそこに当てはまるんだ。ほのかの場合は光属性だから殆どの事をそつなくこなせる万能属性だから羨ましいね」
各属性には得意不得意が存在する。
フィリスの様に水属性の魔法士は主に回復系や防御系と言った守りに関係する魔法が得意だ。
逆に攻撃に関する魔法を苦手とする者が多い。
稀に例外も存在するが、基本的にはフィリスの様な人物が基本だ。
ほのかの場合は光属性である。
光属性はその特殊な属性である事から攻撃から防御、また回復や捕縛に至るまで殆どの魔法をそつなくこなせる特徴がある。
ただし、突出した能力は持ち合わせていない所謂バランスタイプなので一つに特化した力を発揮できないのが欠点であったりする。
ところが、ほのかの場合は高い威力の攻撃魔法とA級以上の防御魔法を使った事から攻撃と防御が他よりも突出している傾向がある様だ。
だが、機動性は彼女自身の運動能力がドベであることから、平均的な能力よりは少し低いと思われるが……空中戦を主体に戦えばその辺りは補う事が出来るだろう。
「だから、ほのかを見てると凄いなって思うんだ」
「そんな事ないの。フィリスちゃんはその歳でもう研究員として働いてるんでしょ? それってすごい事なの」
「そ、そう? えへへ、ありがとう///」
褒められて顔を赤くし俯いて足をぶらぶらとさせる。
そして、本来の目的を思い出して話を切り替えようと立ち上がる。
「そ、それよりも早くバルド…さんを追いかけよう」
「あ、そうだったの!! 早く追いかけないとバルドさんに追い付けなくなっちゃう!!」
ほのかも言われて思い出して慌てて立ち上がった。再び門の前まで駆け出してSCCAの団員が見張りをしているのを見つけて止まる事になった。
「さ、さすがに子供二人だけを外に出してくれる訳ないよね……」
「どうしよう……。ねえ、ウィル少しいい?」
[今、丁度よく情報の交換を終えましたから大丈夫ですよ。それで、如何しましたか?]
「これ以上遅れたら、バルドさんに追い付けるかな?」
[マスターの運動能力を計算に入れると、これ以上のタイムロスは間に合わない結果になります。高速で移動できる手段があれば別ですが……]
「高速で移動って……」
そんな都合のいいもの、ある訳な――
「あ……」
「ほのか? どうしたの?」
「ねえフィリスちゃん。あれなんか、どうかな?」
彼女の指さす先……そこには道路の脇に駐車されている大型の輸送車両だった。
行き先は街の外、別の都市に向かうことを示していた。
それを見てフィリスもまたほのかの考えている事を察して同意する様に首を縦に振り、二人はそれに向かって駆け出して行った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……っで? 運良く都市間を移動する食品輸送車両を見つけて荷台に潜り込んでうまく街の外に出てから降りたのはいいが、こっちにくる道中でヴォルフと出くわして思わず攻撃をしただけに飽き足らず、捕縛で雁字搦めにした所為で怒らせた、と?」
「は、はい……」
「それが実はプライドを作っていてそいつ等の怒りも買って慌てて逃げてた、と?」
「はい……」
腕を組んで仁王立ちするバルドの前に仲良く正座させられているほのかとフィリス。
バルドから来る冷たい視線が全身にビシビシと当って来る所為でその表情は青い。
「はあ………。こんの……馬鹿野郎がっ!!!!」
「「ぴぃっ!?」」
溜息を吐いてからの一拍置いてからの怒声に二人の体が軽く飛び上がって
同時に互いに顔を真っ青に抱きつきガタガタと震える。
その気迫と怒気の篭った声にビックリしたのか周囲にいた鳥や獣たちが一斉にその場より逃げ出してしまった。
「逃げた先に俺がいたからいいものの……もし行き止まりだったらどうする気だ!!! 殺されてたかもしれないんだぞ!!」
「ご、ごめんなさい!」
素直に謝るものの彼の空気は依然ピリピリしたものだった。
その空気に当てられて二人は小さな体を更に小さくする。
しゅんとした少女達の様子を見下ろして、反省している事を感じ取ってはいるのだが、流石に今回だけは簡単に許す訳にはいかない。
「モンスターの知識も持ってない子供のお前等が親も連れずに外に出るのがどれだけ危険か、分かってないつもりはないだろ」
「はい……」
「………ふぅ。あのヴォルフだってな、普段は人間なんか襲いはしないんだよ」
「え……? そうなの?」
「でも、モンスターですよ?」
「モンスターの中にも臆病な奴らはいる」
実は、ヴォルフは滅多に人間を襲う事はない。
昔、ヴォルフの毛皮が寒さに強い事から毛皮のコートを作る為に乱獲された時期があった。
その所為か、ヴォルフは人間を見つけると殆どの場合は自ら退いて逃げ出す。
ただし、自分達が攻撃を受けたり敵意を受けるといった事態に陥ると防衛本能で襲いかかる事がある。
尤も、極端に空腹状態の時や何かしらの原因で興奮状態に陥っていると人間であろうと問答無用で襲いかかって来る事もあるので注意が必要でもある。
「あいつらは、お前達がいきなり攻撃してきたから自分の身を守ろうと攻撃してきたんだよ」
ヴォルフの生態を詳しくは知らなかった二人はその話を聞いて胸が苦しくなった。
もしかしたら、自分達が考えもなしに攻撃を仕掛けなければあの四頭のヴォルフ達はそのまま自分達の前から姿を消して今も平和に生きていったのかもしれない。
それが自分達の所為で崩れてしまったのであれば……。
自分達の所為で命が奪われたのだとしたら……。
そう思って二人は沈んだ表情になった。
そんな二人の様子を見て、怒る気が失せて来た。
軽く息を吐いてから二人の前に片膝をついて両方の頭に手を軽く乗せた。
「まあ、自分の命が一番だ。例え、それが原因でモンスターが死んでも、自分達が生きている事に価値がある」
「バルドさん……」
沈んだ気持ちでいる二人の心を解きほぐす様に語る。
彼の表情を見てもう怒っていないと分かると、今まで抑えてきた追いかけ回された時の恐怖が込み上げてきた。
「お前等が無事だったからそれでもういいけどな……」
「……ふぐ……うええ~~ん!! 怖かったよ~~!!」
そこに来てモンスターに追いかけ回された怖さを堪えていたのが遂に決壊してほのかはバルドに抱きついて泣きだした。
それをフィリスは見ていたが、バルドに手招きされてほのか同様に抱きついて泣き始めた。
暫し森の中に少女達の泣き声が響き渡った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「落ち着いたか?」
「ぐすっ……。うん……」
しばらく泣いていた二人がようやく気持ちを落ち着かせて泣きやんだ。
泣き止むまで頭を撫でていた手を退けて彼は立ち上がる。
「よし。なら、今すぐに帰れ」
「……ふえ? えええっ!?」
そして、バルドの開口一番の発言に再び別の意味で声を上げる事になった。
驚いた表情を見せる二人にさも当然だ言う様に彼は語る。
「今さっきの出来事で十分理解しただろ。外の世界がどれだけ危険かをな? お前達にはまだまだ早過ぎる。さっさと帰れ」
「で、でも私達は……!!」
「私達は……何だ?」
スッと眼が細くなり、目付きが鋭くなる。
バルドから再び不機嫌なオーラが溢れだしてくるのを感じてほのかは思わず声を詰まらせる。
「モンスターと戦うってのはお前等が思ってる以上に危険なんだよ。それを興味本位で来たってんならさっさと帰れ。それとも何か? お前達に出来る事でもあるのか?」
「そ、それは……」
「はい。あります」
「フィリスちゃん!?」
追求されて返答に困るほのか。
しかし、彼女の隣にいたフィリスが一歩前に出て堂々とした口調で返答したのだ。
「自己紹介が遅れました。私は第三魔導研究所所属のフィリス・アルトレーネと言います。研究所ではオズワルド局長の秘書として働いてました」
「……バルドだ。気軽に呼べばいい。んで? そのフィリスは何で此処に来た?」
「目的は一つ。あの欠片の調査及び封印です。その為に私は派遣されたと思って下さい」
「お前みたいな餓鬼を送り込むって事はよっぽど人材不足なんだな、研究所ってのは?」
「ですから、オズワルド局長から言伝を頼まれてきました。新たに派遣された人の護衛と調査の支援を追加するそうです」
実際はフィリスの方から先に行きたいと言って許可を貰ったのだが、大体の部分は間違ってはいない筈である。
それに護衛の件は局長自身が言っていたので間違いでもない。
「……あの爺、余計な依頼を増やしやがって……」
今この場にいない研究所にいる男性を想像して苛立ちを覚える。
視線を再び二人の少女へと戻す。
その眼は真剣そのもので、頼まれて来たという訳ではないのは分かっている。
さて……如何したものか。
いかに言い包めて彼女達を諦めさせるかを考えていた時……。
[まあまあ、いいじゃねえか相棒?]
「ふえっ!?」
「わっ!?」
突然、虚空より一振りの大剣が姿を見せたのだ。遅れてもう一振りの大剣も姿を見せる。
その二振りの剣を見てバルドはしかめっ面になった。
「ケルベロス、バハムート。何で出てきやがった?」
[な~に。何時まで経っても決断しねえ相棒の背中を押そうと思ってよ? ウヒャヒャヒャ!!]
[若、分かっている筈ですよ? この場で彼女達を二人だけで帰すのは危険だと。もしまたモンスターに出くわしたら今度は守れませんよ?]
[それによ。例え、相棒がこの子らを連れて帰ったとしたら、歩って戻って来る頃にゃ夜になっちまう。そしたら、今度はあっちが復活するだろうしな]
[若、そろそろご決断を……]
二振りの剣が言っている事に首を傾げるほのかとフィリス。
そんな二人の少女をバルドは軽く視線を向けて再びケルベロス達へと戻す。
「……ったく、めんどくせえな」
そして、次に出た言葉は何時もの口癖だった。
溜息を吐いてから後頭部をガシガシと掻いて何かを決心したのかほのか達に背を向ける。
「バルドさん?」
「付いてくるなら早く行くぞ。夜になる前にはお前等を帰してえからよ」
それはつまり……一緒に行ってもいいと言う事なのだろう。
彼の言っている意味を理解した途端に二人はぱあっと表情を明るくさせて互いを見て笑みを作った後、バルドの後ろを慌てて追いかけて付いていく。
「バルドさん。ありがとうなの♪」
「ふんっ。言っとくが、付いてくるなら俺の言う事はちゃんと聞けよ。少しでも間違えたらあっという間にモンスターの胃袋行きだからな」
「うん!!」
「ったく、言ってる意味をちゃんと分かってんだか……」
先行きが不安になる予感がして、バルドは深い深い溜息を吐いたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
[挨拶が遅れたな。俺の名はケルベロスってんだ! よろしくな、ほのかの嬢ちゃんにフィリスの嬢ちゃん!!]
[お初にお目見えになります。私の名はバハムート。若輩ながら若のパートナーをやらせて頂いております。今後は宜しくお願いしますね、ほのかさん、フィリスさん]
宙に浮かぶ二本の大剣が二人に向かって話しかける。
片や地獄の番犬で有名なあのケルベロスの名を持つ剣。片や竜帝の名を持つ剣バハムート。
どちらも伝説の存在の名を持つだけあって二人はそんな喋る剣に興味津々だった。
「えっと、二人(?)はターミナルって事なのかな?」
[いんや。俺達は唯の喋る剣だぜ~ウヒャヒャヒャ!!]
[正確には、人の言葉で言うなら『魔剣』……と言うのが正解かと思います]
「魔剣……?」
「伝承にしか知られていない剣の事だよ。たった一本の剣でもその内には凄まじい魔力が秘められていて、諸説だと剣一つで一国を落とす事すら造作もないって話だよ。その相反する存在として知られているのは聖剣って存在かな。これも同様にすごい魔力を持っているって話だよ」
魔剣について知っている事をほのかに話す。
そんな凄い剣が目の前に二本もあるのを知ってほのかはまじまじと二人(?)を見つめる。
「でも、魔剣って言ったら所有者に絶大な力を与える代わりにその身に破滅を呼ぶって噂だけど……」
「えっ!?」
[心配にゃ及ばねえぜお二人さんよ。俺達は魔剣って呼ばれるが、そんな大それた力を持っちゃいねえさ]
[私達は若の魔力を刃に通すだけが主な仕事です。あとは有事の際に結界を張るお手伝いなどをする意外、普通の剣と同じですよ。……今の所はですが]
最後の方は何を言っていたのかよく聞き取れなかったが、バルドへ何の危害も加えてはいない事に安心するようにホッと息を吐く。
そして、話はこの先にある『始まりの洞窟』についての話に移る。
[さて、これから行く事になる洞窟なんだけどよ。二人は何処まで知ってるかね?]
「えっと……にゃはは」
「あはは……ごめんなさい」
質問された二人がそろって頭を下げる。それにケルベロスが空中で器用にずっこける。
[おいおい……。せめて行き先の情報くらい軽く齧っとこうぜ?]
[では、私から説明しますね]
始まりの洞窟は周囲の火の魔力素が多い事から、主に火属性のモンスターが主体で生息している場所である。
洞窟自体は横に長く伸びていて、通路は出入り口となる一か所のみ。
あまり複雑な形はしておらず、迷う事は殆どないだろう。
ただし、それは入口の話だ。奥へと進むと先には遺跡が存在するらしい。
出現するモンスターも大体は火属性に傾いていて、弱点は水属性だ。
[つまり、フィリスの嬢ちゃんみたいに水属性の奴には有利な場所だ。ほのかの嬢ちゃんも光属性だから結構有利な場所だぜ]
[基本は若が前線に出てくれると思いますが、場合によっては互いに助け合って戦って下さいね]
「お喋りはそこまでだ」
その声に一行が止まる。ほのかとフィリスはバルドの背後からひょいっと顔を出して先を見る。
そこには、大きな口を開けて暗い奥へと通ずる洞窟の入口があった。
「これが……始まりの洞窟、なの?」
「そうだ。此処が新人冒険者の最初の登竜門で、その三割が命を落とす試練の場の『始まりの洞窟』だ。奥には遺跡がある」
洞窟に入る風の音が不気味に聞こえる。
それは、まるで自分達を招きいれようとしている様な錯覚を与えてくる。
その入口を見てフィリスは眼を輝かせて早速調査を始めていた。
「確かに火の魔力素が強い……!! これは火属性の魔法士にとっては有利な環境だね」
[ですが、出現するモンスターも火属性です]
「うん、そうなんだけど……。でも、属性レベルでそれもカバーできるしどっちにしても火属性持ちには此処はいい練習場になるよ!」
持っていたノートにペンを奔らせてメモを取り始める。
そして、一度ペンをしまってから空いた手に魔力を集めて水を生み出した。
その小さな掌には、それに収まる程度の水泡が出来て、彼女は何かを確信する。
「やっぱり……。火属性が強いと水属性の魔力素は少ないね」
[大気中に存在する水の魔力素は低い数値を指してます。フィリス、魔法を使う時は自身の魔力を使う事をおススメします]
「そうだね。でも、そうなると無駄撃ちが出来ないって事になるね」
[魔力切れだけは勘弁して下さいね?]
魔力素とはこの世界に充満する魔力の元である。
主に地水火風から氷雷光闇の八大属性の魔力の源が世界中に満ちている。
その魔力素があれば周囲から集めて、自身の魔力を最小限に抑えて使用する事が出来るのだ。
ただし、場所によっては多い所や少ない所もあるので注意が必要である。
そして、それに比例してそこに生息するモンスターもその場の属性に合わせて体質などを変化させるので固有の生物が誕生する場合もある。
ただし、希少属性である虚無、時、空、変質属性の魔力素は現在確認されていない。
自分の眼で直にその現象を確認出来て眼を輝かせてフィリスは洞窟の前で興奮しながら辺りを見ていた。
「おい、もういいか?」
「あっ……ご、ごめんなさい!」
後ろから声を掛けられてフィリスはようやく我に帰る。
振り返るとそこには呆れた表情を見せているバルドが立っていてその隣にポカンとした顔をしているほのかがいた。
「え、えっとその……」
「初めての外での調査で少し興奮でもしたか?」
「は、はい……。今まで研究所内でしかこういったものを見た事がなくて、今日が初めての外での調査だったんです」
自分の恥ずかしい行動に顔を赤くさせて俯くフィリス。
今まで研究所にある書物などでしかこういったものを知る事しか出来なかったのが今日初めて外で経験出来た事に興奮した。
その気持ちが抑えられずにさっきの行動に移ってしまったという訳だ。
「まあ、その気持ちは分からなくはねえが……あんまし俺より前に出るな。一歩踏み込めばそこはモンスターの巣窟なんだからよ」
「はい……」
「それにしても……。お前はさっきのが素か?」
「何の事です――「それだよ」…え?」
「敬語なんて使わなくていいって言ってんだ。俺は別に気にしねえからよ。寧ろ気を使わせてると思うと肩が凝るから止めろ」
そう言って右肩に手を添えて回す仕草を見せる。
そんな彼の姿を隣で見上げた形で見ていたほのかはくすっと笑った。
「……なんだよ?」
「ううん、何でもないの!」
慌てて首を横に振って誤魔化す。
そしてチラッと彼の姿を盗み見て頬を緩ませる。
彼にとって年下に呼び捨てにされようが関係ない。
ただ自然に相手も接すれる様にしてくれる。
同じ目線で接してくれるが、彼の美点ともいえた。
ほのか自身も初めは彼に敬語で接していた。
だが、それを彼はよしとはしないで普段通りに、友達感覚で接してほしいと言ってくれたのだ。
そのお陰で今はほのかも普段マリナ達に接する時と同じ風にしている。
(バルドさんは、やっぱり変わらないの)
その優しさを知っているほのかは自然と心が暖かくなる。
「そ、それじゃあ……これが素なんだけどいいかな?」
「ああそうしろ。その方が俺も疲れねえしよ。呼ぶ時も普通に呼び捨てにしろ」
フィリスもそれに普段通りの口調へと戻してみる。
それにバルドも首を縦に振って頷いて了承した。
「さて、これから洞窟に行く訳だがお前等には約束してもらう事がある」
洞窟へ入る前にバルドが二人へ注意する事を伝える。
「洞窟に入ったら俺から最低でも半径五メートル以内から出るな。それと、無暗に壁とか変なものに触るな。モンスターが出たらすぐに後ろに下がれ」
指を三つ上げる。その注意を真剣にほのか達も聞く。
「後はお前等にとっては酷な事かもしれねえが言っておく事がある。モンスターとの戦闘についてだ」
「戦闘……?」
「一応、戦闘に入ったら俺が最前線に出て相手をする。けどな、もしも相手の数が多い場合や手強い相手が出てきた場合……お前等にも戦ってもらう」
言われて二人はドキッとする。モンスターとの戦闘……。
それは今まで学校などでの摸擬戦とは違う、本当の命を懸けた戦いだ。
「その時お前等も襲ってくるモンスターを……倒せ」
「え……」
「そ、そこまでの事をしなくても!? 追い返せばいいと思うんだけど」
普段通りの口調へと戻ったフィリスがその疑問を投げかける。
それにバルドはしっかりと説明をした。
「甘いなフィリス。モンスターってのは結構根に持つ奴等が多い。一度追い返しても、回復したら真っ先に狙ってくるぞ。実際に情けをかけて逃がしたモンスターが報復して来たって情報も幾つか上がってるからな」
冒険者であるバルドの言う事であるからそれは間違いないのだろう。
それでも、その様な事……出来る訳がない。
そんな事は分かり切っていたのか、バルドは続けて補足を入れてくれた。
「まっ、殺すってのは最終手段だ。殺さずに済ませる方法もある」
「ど、どんなの!?」
そっちの方が気が楽だ。どんな方法なのか二人は聞いてみた。
その方法とは……!?
期待に満ちた四つの眼がバルドを見つめていた。
「簡単だ。強い衝撃を叩きこんで気絶でもさせちまえばいいんだよ。あるいは相手が“コイツには一生敵わねえ”って思わせる位に徹底的にボコればいいんだよ」
「「…………………」」
結論――
どっちも気が引ける選択だった……。
「それって、いじめって言うんじゃ……?」
「正当防衛と呼べ」
フィリスの指摘を真っ向からバッサリと切る。
「兎に角、大体の戦闘は俺が片付ける。だが、もしもの時は覚悟を決めろよ。ターミナルは入る前に起動しとけ。お前らの命を守る最後の砦だからな」
そう言って彼は洞窟へ向かって歩き出した。
それに続いてほのかとフィリスもターミナルを起動させバリアアーマーを展開してから彼の後ろを付いて、暗い闇へと通ずる洞窟へと進んで行った。
ヴォルフの生態
意外と臆病。
人が怖い。
モンスターの優劣を決める基準。
軽くボコられる→何時かノしてやる……
徹底的にボコられる→あっ、ダメだこいつには敵わねえ
気絶させられる→コイツ怖いよ! 怖すぎるよ(((゜Д゜;)))ガクガクブルブル!!
判断基準がいろんな意味で明確になっていると思う。
漸くフィリスの姓も出てきました。
フィリス・アルトレーネ。……女性らしい名前になったかな?
都市間を移動する輸送車両は高レベルのモンスター除けの式を組み込まれているので早々に襲われる事はない。
それでは、こんな拙い文を読んでくださる読者の皆様。
今後とも宜しくお願いします。
では(゜∀゜)ノシ




