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第三話 漆黒の剣士バルド

文才が欲しいと願っても、なかなか上手くいかない第三話更新です。


今回は、研究所から街へと出たところからの開始です。


では本編をどうぞ!



最近になって気付いた。タグに恋愛入れるの忘れてたぜ……。




魔法研究所を出てほのかとバルドは一度、彼女の家である皐月家へと向かう。


「バルドさんはいつ帰って来てたの?」

「お前が魔法少女になったその日にだよ。ったく、帰ってきて早々に変なトラブル起こしやがって……」

「えっと……にゃはは」

「ただ、お前が魔法を使えるようになっているのを見た時はビックリしたけどよ」


面倒くさそうに頭の後ろを掻く彼を見て苦笑いする。

ただ、自分でもビックリしているのだ。今まで使えなかった魔法を、自分も使えるようになったのだ。


それもこれも、今自分の指にはめられている赤い宝石を持った指輪、『ウィル』のお陰である。

それをバルドも気になっていたのか見ていた。


「それにしても……。そのターミナルって奴は何時頃から開発されたんだ?」

[私達ターミナルは数年前より開発が進められていました。実装が始まったのはほんの二年前からです]


彼の疑問に点滅しながらウィルが発言をする。

その話が気になって二人は一度、近くの広場に足を運んで誰もいない事を確認してから腰を下ろして話を聞く事にした。


[ではまず私自身の紹介から行わせて頂きます。私の名は『ウィル』。人格搭載型ターミナルです]

「私はほのか。皐月ほのかです。よろしくね、ウィル」

「俺はバルドだ。姓はねえからバルドって呼べ」

[宜しくお願いします、マスター、バルドさん]

「えっとウィル。人格搭載型って何なの?」

[Installation Personality (インストレーション・パーソナリティ)。略語で『IPターミナル』とも呼ばれています。独立演算システムや持ち手の魔力サポート及びその身を守る防御障壁といった防衛を自動詠唱で展開する等の補助的役割を担っております]

「所謂、AIみたいなもんか?」

「そう考えて頂く方が分かり易いと思います。そして、私達ターミナルには他にも種類があります」


 IPターミナル以外にも他にターミナルにはタイプが存在するという。

近接向きや遠距離向き姿形も様々で、初期形態は持ち主のイメージから生まれるものだという。


[続いてマスターについてですが……。マスターの属性は『光』。攻撃スタイルは砲撃に向いています。マスターは、属性などについてはご存知ですか?]

「うん。前に講義で聞いた事があるの」


この世には属性と言うものが存在する。

 基本属性である『地水火風』の四大属性に、『氷雷光闇』の四大レア属性、更に『虚無、時間、空間、変質』の希少属性の十二種類の存在が現在判明している。


 多く存在する属性の中でも『光属性』は殆どに対して相性が良く、また弱点が少ないのが利点だという。

『闇属性』も同じ様な特性を持っている事から同じ様に他の属性への相性が良いらしい。

 ただし、虚無や時間、空間、変質属性は発見数が極端に少ない事から他属性への影響がどれ程のものなのかが不明である。


 しかし、属性が全てを決める決定的なものではない。

相性の悪い相手でも使い方次第では勝つ事も可能だ。


要は所有者の戦い方次第でどの属性にも有利に戦う事も可能だ。


「そういえば、バルドさんの属性って何なの?」

「俺か? 俺は闇属性だな。まあ、ちょいと特殊な属性も混じってるけどよ」


如何やら彼は自分とは反対の属性、闇属性を持っていた様で、自分同様にバルドもレア属性持ちだったのかとほのかは驚いた。


そして特殊な属性と言う言葉にちょっと引っかかったが、彼から声をかけて来たことで思考を中断する。


「ほのか。俺が帰ってくる前に何があったのか説明出来るか? 少し情報が欲しいからよ」

「う、うん。えっとね……」


彼女はウィルを起動する前までの事を全部話した。


 空からあれが降って来た事、公園に落ちて火の海を作った事、その火が一点に向かって集束を始め、その先には宙に浮かぶ赤い欠片があった事など知っている事を彼に伝えた。


「赤く光る欠片か……。それを中心に火が集まったって事は、自然界の火の因子が強く影響を受けたって事だな」


 この世には自然界を守る精霊がいる。

主に地水火風の精霊が数多くいるのだが、如何やら今回は火の力が欠片によって強く影響を受けてしまって欠片を核として具現化した様だ。


「つまり、だ。さっさとあれを片付けねえとヤバそうだな」

「ふえ? どういう事なの?」

「考えても見ろ。奴は近くにいるだけで周りの火の力を集めて具現化させる力を持ってるんだぞ? それを自分の回復に使われてみろ。それで余った力は何処に行くと思う?」


 具現化する力を自身の傷を癒す為に使う。傷が癒え、集めた力が如何なるか……。

それが意味する事に気付いた彼女はハッとする。


「中で力に変わる!?」

「そういう事だ。モンスターの中には過剰摂取かじょうせっしゅしたエネルギーを自分の力に変える奴がいる。それによって進化する敵もいるし、手強くもなる。まっ、許容範囲を超えた奴だったら自己崩壊して消えるけどよ」


 さっさと倒して来るから安心しろ、と言って彼は彼女の頭の上に手を乗せて軽く撫でる。

そして、話を終えた二人は立ち上がり、再びほのかの自宅に向かって歩いていった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




皐月家へと辿り着いた二人が玄関を開ける。

すると、帰りを待っていた母である慧子が彼女へと駆け寄って抱きしめる。


それと同時にほのかもまた、親の下へと帰ってこれたのを実感できて嬉しくなってその温もりに身を任せた。

その暖かな空間を姉兄の紅美と恭輔、父の誠治やバルドは微笑ましく見ていた。


「娘のほのかを助けて下さってありがとうございます、バルドさん」


暫くして、落ち着きを取り戻した彼女が彼へと頭を下げる。


「いや、気にすんな。俺も丁度良く帰ってこれて良かったと思ってるぜ。なんせ、コイツは大事な奴だしよ」

「バルドさん……」


普段はあまり見せてくれない微笑みと共にそんな事を言われてジンと来るほのか。

その彼女に向かって彼は手を伸ばし――



――ふにっ――


「ほえ?」


気付けば、彼が自分の頬の両端を掴んでいた。

その現状に付いていけず、彼女の頭の上には大量の?マークが浮かぶ。


「コイツは、俺にとって大事な弄り相手だしよ~」

「ふひゃあ~~!?」


 そう言って彼は彼女の頬をぐにぐにと引っ張って遊びだした。

少女特有の柔らかさを持つ頬が横に伸びる。


彼女もされるがままという訳でもなく、両手をジタバタと上下に動かして必死に抵抗しているが全く効果はない。

寧ろ、逆に弄られやすい状態になってるだけだ。


「しっかし、お前の頬っぺたは弄り易いな~」

「ふひゃ~!? ひゃ、ひゃなしてにゃの~!? あうあうあうあ~!?」

「ふふっ、ほのかも遊んでもらえて良かったわね~♪」

「ち、ちふぁうの~!? おふぁあさん、たふふぇふぇ~!?」


母親に救援を要請するも、当の本人はクスクスと鈴の音を鳴らした様に笑う。


 その後ろで父親が刀を片手にバルドへと突撃しようとしているのだが、それを紅美と恭輔が羽交い締めにして必死に押さえこんでいる。


「まっ、弄り過ぎはよくねえか」


暫し彼女で遊んでいた彼が漸く手を離した。


「あう~……。酷い目にあったの~……」

「まあいいじゃねえか」

「よくないの!!」


ぷくっと頬を膨らませて抗議の声を上げる。

全く迫力のない睨みを利かせてくる少女に彼はその頭の上に手を乗せてガシガシと少し強めに撫でてなだめる。


暫くそうした後に彼はスッと立ち上がって背を向けた。


「さて、そろそろ俺は行くぜ」

「あら? もう行くんですか? もう少し此処で休んでも行けばいいんですよ?」

「悪いな。ちょっと遠出する事になってんだ。今から行かねえと帰って来るのが深夜になるんだ」

「何処に行く気なんだ?」


今まで威嚇するように唸っていた父誠治がその言葉を聞いた途端に表情を変え、真剣な眼つきで質問してきた。


「大した事じゃねえよ。ちょっとした露払いだ」


その彼にバルドは軽く茶化す様に答えてから玄関を出る。


「んじゃ、またな。ほのか、俺が帰って来るまでにもう少し魔法を上手く扱えるようになっとけよ~」

「うん! バルドさん、またなの~♪」


手を振って彼の背中に声を掛けた。

それに背中越しに手を挙げて彼はそのまま皐月家から去っていった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




バルドが去ってから暫くして、彼女は自室へと戻って昨日に学校の教員が配布していった学校の課題を片付けていた。


[マスター、一つ質問宜しいですか?]

「え? 如何したのウィル?」


 宿題を終えかけていた彼女はその質問に顔を上げる。

机に広げた課題の横に置かれていたウィルの宝石の部分がチカチカと光って質問をしてきた。


[バルドさんは、封印魔法を持っておられるのですか?]

「ええっと……。ごめんね、私もよく分からないの」

[そうですか……]

「ねえ。ウィルどうしてそんな事を知りたいの?」


逆にほのかの方が質問をすると、ウィルが予想外の返答を返して来たのだ。


[もしもの場合ですが……。バルドさんの身に危険が及ぶ可能性がります。それだけでなく、この街にも被害が来る可能性があります]

「え……」


その言葉を聞いた途端に、ほのかは手に持っていた鉛筆を落とす。

驚きの表情は直ぐに焦りの表情へと変わって、両手でウィルを持ってその意味を聞く。


「ど、どういう事なの!?」

[もし仮に、バルドさんがあれを倒して欠片を外へと出せたとします。しかし、封印魔法を駆使しなければあれ程の魔力を放出している物は常人が触ればたいへん危険です]


 確かにあれ程の魔力を放つ欠片は、人の手で直に触ればただでは済まされないだろう。

ウィルの言うとおり、封印魔法を持っていなければ直接手で触る事は不可能だ。


[ですがもし、彼が言っていた“片付ける”と言う言葉が『封印』ではなく、欠片そのものの『破壊』だった場合を考えて下さい]

「っ!!」


 その意味を理解した彼女は表情を強張らせる。

自分の知っているバルドは、面倒くさがりだ。封印作業が必要だと知れば、きっと物理的に破壊して片付けるかもしれない。



少し前に、モンスター学の講師の先生が言っていた事を思い出した。


 エレメント系のモンスターは元が各属性魔力の塊である為、物理的攻撃で倒した場合は直ぐに離れないと魔力暴走で発生する爆発に巻き込まれるかもしれないと言っていた。


 もし、あれがエレメント系のモンスターと同じ存在だったと仮定しよう。

あれ程に膨大な魔力を秘めた物が爆発してしまったら……如何なるのか?


恐る恐るその答えをウィルに聞いてみた。


「あれを壊すと……どうなるの?」

[膨大な魔力が一気に外へと放出されて半径十キロのものは爆発で消し飛びます]


その返答に彼女は息を呑んだ。『始まりの洞窟』はこの街から大体十キロ以内の位置にある筈である。

つまり、その爆発は間違いなく此処にまで届くだろう。


バルドだけでなく、多くの命が犠牲になるかもしれない。


 その事実に彼女は顔を青くする。

心臓の音が異様に大きく聞こえて冷や汗が噴き出る。


[ですが、封印さえできればその事故は未然に防げます]

「で、でもそんなことできる人は……!?」

[マスターは、封印技巧についての知識はないのですか?]

「簡易封印については話を聞いた事はあるけど……」


本格的な事は来年の話だ。それに聞いたといっても簡単なことしか話してない。

しょんぼりとする彼女だったが、ウィルがなんと、それで十分との返答を返して来たのだ。


[簡易的なのでも封印は可能ですよマスター。知識さえあれば、私がサポートをして補強しますので]

「で、でも私には魔法は……」

[何を言ってるのですかマスター? マスターは既に魔法の力を使えるようになっているでしょう?]

「あ……」


ウィルの言葉に彼女はハッとする。


そうだ。

ずっと昔から使えなかったから思わず口にしてしまったが、今の自分には魔法が使えるではないか!!

もしかしたら、自分にもできるかもしれない。


普段助けてもらっているバルドの役に立てるかもしれない。



 そう思った途端に、彼女はそれを成さねばならない。そんな気持ちが沸々と湧きあがって来た。

椅子から立ち上がってウィルを片手に部屋から飛び出した。


 その頭の中は既に封印の事で一杯だった。自分に始めて出来る事がある。

魔法で人の役に立てる事がある。それに高揚感で満たされていた。


「ウィル。バルドさんを今から追いかけて間に合うよね!?」

[マスターの運動能力を計算し、バルドさんが徒歩で向かったのなら間に合う可能性があります]


それを聞いて間に合うと確信したほのかは玄関に着いて、慌てて靴を履く。


「あら、ほのか。如何したの、そんなに慌てて?」

「あ……」


 そこに母である慧子が姿を見せて声をかけて来たのだ。

その姿を見た途端に、高揚していた気持ちが一気に冷静になった。


自分がしようとしている事は、大切な親や兄や姉を心配させる悪い事だ。

それをしてしまっていいのだろうか?


そんな事が脳裏を過ぎる。


「えっと……、足りないものがあったから買ってくるの!!」

「あらそう。でも、それなら紅美や恭輔から貰ったらいいんじゃないの?」

「ええっと……、自分で用意したいからいいの!」


慌てて早口になる。その様子に母が首を傾げている。バレてしまうかも……。


 不審過ぎる自分の行動を思い返してそんな事が想像できる。

ドキドキと心臓が脈打つのが嫌でも聞こえた。


「そう? 行くのなら車に気を付けていきなさいね」


しかし、返って来たのは朗らかな笑みと返事だった。

その会話が今にいた三人にも聞こえたのか残る家族もひょっこりと顔を出して見送ってくれた。


「う、うん!! 行ってきます!」


それに彼女は挨拶をしてから外へと駆け出した。

走りだした彼女だったが、直ぐに足を止めて振り返る。


「ごめんなさい。お母さん、お父さん、お姉ちゃん、お兄ちゃん……」


 嘘を吐いた事に対する謝罪を小さく呟く。

初めて嘘を突いてしまった事に強い罪悪感に囚われる。


でも、バルドや此処の人達がもしかしたら傷付くかもしれない事を考えると居ても経ってもいられなかったのだ。


それをいい訳として頭を振って気持ちを振り払って、彼女はバルドの向かっただろう『始まりの洞窟』に向かって駆け出した。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 始まりの洞窟は、ほのかの住む都市から北東の位置にある場所にある。

そこまでには、途中までは舗装された道があって冒険者たちの道標となっている。


その道のバルドはただ一人、歩いて進んでいた。


「さて、面倒な依頼を受けちまった訳だが……」

[いいじゃねえか~。面白そうだぜ? 見た感じ、結構大きな魔力を持ってたしよ~。ウヒャヒャヒャ!!]

[常人の魔法士では手に余ります。此処は、若が出るしかないですよ]

「面倒くせえな。やっぱ止めっかな……」

[おいおい、相棒。今回の事件はきな臭い臭いがするって言ったのは相棒の方だぜ~? 言ったからには最後までやろうぜ~?]

[そうですよ若。何時もの様に片付けたらいいだけですよ]

「しょうがねえな……」


 虚空より聞こえる声に溜息を吐いて彼は返事を返した。

そんな会話をしている内に道が途切れて彼の前には深緑で覆われた森の前に着いた。


 その森の中に平然と足を踏み入れて彼は奥へと進み始める。

すると、真新しい何者かが通ったらしい跡が残されているのを発見する。


「あの研究所の爺の言っていたSCCAの奴らか」


捜索隊でももう派遣されたのだろうか?

そんな事を考えていたバルドだったが、突然背後に視線を向けてゆっくりと立ち上がる。

それと同時に彼の周囲から濃厚な殺気が漂い始めて来た。


「この森に住むモンスターが殺気だってやがるな」

[大方、昨日の晩に飛来した何処の馬の骨とも知らない奴に縄張りを侵された所為だろうぜ~ウヒャヒャヒャ!!]

「ま、そんな事は如何でもいいけどな」


 自分達が見つかっていると悟ったのか、茂みの向こうからそれらは姿を見せた。

灰色の体毛に赤い瞳。鋭い牙と爪を生やした四本脚の成人男性とほぼ大きさが変わらない大型の狼の群れだった。


その数は六頭。それが、彼の周りを取り囲む様に位置を取った。

その眼は興奮している様で血走っている。


「ヴォルフか……」

[雑魚だな~。相棒の相手には、ちっと数が足りねえぜ~ウヒャヒャヒャ!!]

[そもそも、数以前の問題ですね]

「まあ、来るってんなら相手になるけどな」

[グルルルル……グアッ!!]


牙を剥き出しにして威嚇していた一頭が咆える。地を蹴ってその強靭な脚力を活かして距離を一気に詰める。

そして、彼の一歩手前で地面を蹴って彼の喉元に噛みつかんと飛び掛かった。


白く光る鋭い牙。

それを前にして、彼は静かに右手を水平にする。

その手の先が突然空間の中に沈み始める。


 そして、何かを掴み取るとそのままその場で姿勢を落とし一閃。

ヴォルフと影が交差する。彼の背後に着地するヴォルフの動きが止まった。


次の瞬間、上顎と下顎からヴォルフの体が分断されて鮮血を散らしてその一頭は絶命した。


「おせぇよ……」


それを背後に彼は呟く。


 その右手に握られているのは、漆黒の闇を彷彿させる刀身を持った身の丈を超える巨大な大剣。

切っ先には両断した時に付着しただろう血がこびり付いていた。


 仲間が一頭やられたのにヴォルフ達が更に殺気立つ。

それを前にしても彼は別段気にした様子もなく、挑発するように指をクイクイと動かした。


「一頭ずつじゃ面倒だ。全員纏めてかかってこいや」

[グアアアァァァ!!]


それに咆えて残る五頭が一斉に動き出した。

バルドは正面から向かってくる相手に狙いを絞って地を蹴る。


飛び掛かる相手の牙を紙一重で避けると同時に擦れ違いの際に剣を一閃して両断する。

その左右より同時にヴォルフが飛び掛かるが真上に跳躍してかわす。

 そして、二頭の頭が交差した瞬間を狙って身を捩じって回転し、大剣を振るう。

それが両方の首を見事に捉えて斬り飛ばした。


着地を狙って一頭が飛び掛かる。

それを回し蹴りで蹴り飛ばして、死角より飛びかかって来たもう一頭の牙を大剣の腹を見せて受け、押し返す。


力負けしてふらついた相手に向かって上段から剣を振り落として頭を叩き潰す。

その一撃は重量が凄まじかったのか落ちた個所の地面に亀裂きれつはしる。


最後に蹴り飛ばしたヴォルフが彼の背後から飛び掛かって来たが、その大きく開けた口の中にバルドは素早く振り返って自ら左腕を突っ込んだ。


「そんなに腹が減ってんなら……よく味わって逝け」


限界まで広げられた所為で顎に力が入らない状態のかもがくヴォルフ。

その口の中から黒い炎が零れだす。

内部より来る熱と痛みに更に暴れるヴォルフだが、逃げられない。


その相手を見て彼は笑みを浮かべて死刑宣告を放った。


「深淵の炎……。爆ぜろ、業火滅掌ごうかめっしょう


 漆黒の光が溢れだし、直後に相手の体が一気に膨れて爆発。漆黒の爆炎が辺りに爆風を起す。

白い煙を上げる左腕のある場所にいたヴォルフは跡形もなく消し飛んでいた。


「片付いたな」

[いや~、相変わらずの容赦のなさだぜ相棒。ウヒャヒャヒャ!!]

「一々うっせぇなケルベロス。へし折ってやろうか?」


 ケルベロスと呼ばれた漆黒の大剣がカタカタと揺れる。

バルドが先程から話をしていたのはこの大剣なのだ。


[怒んなって相棒。褒めて言ってんだからよ、ウヒャヒャヒャ!!]

[五月蠅いですよ。黙りなさい駄犬]

[なんだと~? トカゲ風情が急に横から茶々入れんなっての]

[なっ!? 私は高貴な竜族ですよ!! そこいらの爬虫類と一緒にしないで下さい!!]

「あ~もう、うっせぇなお前等は!! 直ぐ傍で喧嘩してんじゃねえ!! バハムート、お前も少し黙ってろ」


その漆黒の大剣とは反対の左側の宙にもう一振りの大剣が姿を見せた。

その名はバハムートと呼ぶらしい。

ケルベロス同様に身の丈よりも大きいのが特徴であるが、それ以上に形も特徴的だった。


ケルベロスは無骨な形の幅広の大剣なのだが、バハムートは滑らかな流線の刃が無数に出ている同様に幅広の大剣だった。

一種の芸術作の様な形をしているのに、凄まじい存在感を感じさせる。


 高めの声からして女性の様である彼女はケルベロスの言葉を聞いて憤慨していた。

そんな彼女を窘める様にバルドが言うと、途端にしゅんとなった。


[す、すみませんでした若……]

[プ~ククク!! 怒られてやがんの!]

「お前が一番うるせえんだよ!」


そうツッコミを入れて彼は刀身を掴んで力を込める。


[あだだだだ!? 相棒!! そ、そんなに力込めるなって折れちまう~~!?]

「丁度良いな。テメーは一度折れて黙らせた方がいいと最近思ってたからよ。ここらで一度逝っとけ」

[いやちょっと待って!? 俺既に地獄の門の前にいるんですけど!? そんな事されたら地獄の奥へと逝っちゃうって!?]


 ミシミシと音が聞こえる刀身とギブアップの声を上げるケルベロス。

人で言えば関節技を決められてタップしていると言ったところだろう。


[すんません!! マジすんませんでした!! これ以上はらめっ!! らめなの~~!?]

「気色悪い声出すんじゃねえ!!」

[へぶっ!?]


 変な声を出し始めた相棒を殴って物理的に黙らせる。

漸く静かになった事に溜息を吐くバルド。


しかし、彼等にとってこれが日常的会話の一種でもあるので極自然に起きる会話であったりもする。


「ってか、こんな事してる場合じゃねえな。早くしねえと夜になるな」

[久しぶりにほのかさん達の街で泊まりたいですしね]

「最近は第二都市の方だったからな。あそこもいいが、やっぱ馴染みある街の宿の方がいいな」

[そうですね。でしたら、この仕事。直ぐに終わらせてしまいましょう?]

「へいへいっと」


バハムートの言葉に軽く答えてから彼は再び先へと進もうと歩み始める。


 しかし、一歩踏み出したその時だった。

背後より何者かの気配を感じた。


「……こっちに来るな」

[数からして二人だな。………あれ?]

[如何しました駄犬? 何か気付いた事でも?]

[駄犬言うな爬虫類。相棒、こっちに向かってすんげー勢いで来る気配が二つ。その両方とも、知ってる奴なんだけどよ?]

「……あ?」


それに間の抜けた声を出して接近する気配の方へと振り返る。

茂みの奥深く、そこから感じるのは二つの気配。そして、魔力……。


「おいちょっと待て……。一つは最近見た事ある魔力反応だ。そんでもう一つは……滅茶苦茶馴染みある奴の魔力反応なんだが……」

[………なんか嫌な予感がしねえか、相棒?]

「奇遇だなケルベロス。俺も多分お前と同感だ……」


こっちに来る魔力反応にそれぞれが嫌な予感を感じる。



そして、次の瞬間……!!


「にゃあ~~~!?」

「うわ~~~!?」

「げふぅっ!?」


 茂みが揺れたと思ったら突然、二人の少女が涙目で飛び出して来たのだ。

その両方が正面に立っていたバルドの腹に弾丸の様な勢いで思いっきり体当たりする形になった。


まともにくらった彼の体が浮いて後ろに倒れる。

自分に突っ込んできた不届き者を確認すべく、視線を自分の胸の位置に落とすと――


 そこには、数時間ほど前に別れたばかりのトラブル娘、皐月ほのかと研究所で助けたフィリスと言う少女だった。


「なっ!? 何でテメーらが此処に居やがる!?」

「うぅ~……あ、あれ? ふえっ!? バルドさん!?」


その声になって漸く自分達が下敷きにしているのが誰なのかを知ったのだろうほのかがビックリした声を上げる。


遅れてフィリスもまた抱きついているのが男性で、しかも自分を助けてくれた人物だったのに気付いて驚いた表情をしていた。


その時、遅れて再び茂みが音を立てて揺れる。

それにほのかとフィリスがビクッと体を震わせる。


茂みより姿を見せたのは、さっきバルドが倒したモンスターのヴォルフであった。


「ひぃっ!? 来たの~~!?」

「さっき縛ったのに、もう破って追いかけて来たの!?」


数は四頭。そのどれも如何いう事か怒り心頭の様子。眼つきは完全に狩人のそれであった。

状況から察するに、この二人が何かを仕出しでかしたたのだろう。


だが、そんな事は今のバルドにとっては如何でもよかった。


「……おい、トラブル娘共。さっさと降りろ」

「「ぴぃっ!?」」


自分が下敷きにしている人から発せられる怒気に小さく悲鳴を上げて、少女達は素早く降りて涙目で互いに抱きついてガタガタと体を震わせる。


 その子達をスルーして、彼はゆらりと立ち上がる。まるで幽鬼の様な様相の彼にヴォルフ達は気圧されたのか後退あとずさり。

右手にケルベロスを持ってその刀身に漆黒の炎を纏わせる。


「何の怨みがあってさっきから俺に茶々入れてくるんだ狼共が!!」


沸点を超えて怒りの声を上げるバルド。

その気迫に狼どころかほのか達もビクッと体を震わせる。


「ぶっ飛べおらあっ!! 獄炎剣ッ!!!」


 跳躍し、相手の一歩手前で剣を振り下ろす。

地面に落ちた瞬間に大爆発が起きて漆黒の爆風が前方に発生して狼たちを呑み込む。


 爆発の勢いは凄まじく、正面にあった幾つもの木々がその炎に焼かれて炭も残さずに燃え尽きる。

攻撃が治まった頃には、炎の通っただろう個所の地面が削れ草木が完全に消えていた。


剣を振るって残り火を消してから彼は直ぐ脇に剣を突き刺してフンッと鼻を鳴らす。


「一昨日きやがれ馬鹿野郎どもが」


 もう他に敵の気配はない事を確認した後、ほのか達の方へと振り返る。

その彼の顔を見て二人は更に震えを増して顔を真っ青にする。


「さて……何でお前等が此処にいんのか、きっちりと説明してもらおうか?」


そこには、般若を背負ったバルドが腕を組んで仁王立ちしていた。





ほのか、親や兄姉に黙って外に出てバルドと合流するの巻。


ほのかを弄る彼ではあるが、なんだかんだいって彼女達にとっては頼りになる男性です。


さり気無く軽めにターミナルや属性の説明も入れました。

IPターミナル以外にも存在していますが、今後出てくるかは未定です。


ほのかとフィリスが外の世界へと飛び出してバルドと合流しましたね。

はてさて、この後一体どうなる事やら……。


それでは、これを読んでくださっている皆様。

今後とも宜しくお願いします。


では(゜∀゜)ノシ!!




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