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第二話 戦闘と再会

二話更新です。


彼女達の戦いの行方は……。

そして、新キャラの登場です。


では、本編をどうぞ。







桜の魔力が粒子状に辺りに降る中で、ほのかは自分を追いかけ回していたモンスターと向き合っていた。


 ほのかを見ている獣は彼女の姿を見るや、その濃厚な殺気を更に膨れ上がらせて牙を見せて唸り声を上げて威嚇を始める。


それを見て怖いとは思った。


けど、逃げる訳にはいかない。

後ろには、戦える力を持たない人達がいるのだ。何が何でも守りたい。


強く思い、彼女はウィルの柄をギュッと握る。


[マスターは、実戦は初めてですか?]

「う、うん。それと……実は魔法も使った事がなかったり……にゃはは」


 堂々とした発言をしたものの彼女は魔法をこれまで一度も行使した事がない。

それどころか、今、変身(?)した訳だが姿が変わっただけで何か特別な力が出ているとは思えない。


これは結構ヤバいのでは?


内心焦りと緊張の色を見せる彼女。それに安心させる様にウィルが声を掛ける。


[ご心配なく。如何やら相手は火属性を得意とするモンスターの様です。マスターの属性は光、そう簡単には負ける事はありませんよ]

「で、でも……」

[コール、デイン!!!]


 その時、彼女に向かって獣が口から火炎を吐いてきた。彼女へと真っ直ぐに迫る炎の壁。

それに彼女はビックリしてあたふたする。


「ふええっ!? ど、どうすればいいの!?」

[落ち着いて下さいマスター。先ずは手を前に翳して下さい。そして、イメージして下さい。あなたにとって最適な守るための壁を]


 言われたとおりに彼女は左手を前に翳す。そして、目を閉じてイメージする。

浮かぶのは自身を守るドーム状の障壁。堅く、更に堅く……。


目を開ける。目の前には迫りくる炎の奔流。

それを前に、彼女は魔法名を発する。


「ディフェンシブ!!」


彼女の左手に魔法陣が展開される。

それと同時に彼女を中心に桜色の光のドームが出現し、直後に彼女の姿が炎の奔流ほんりゅうの中に消えた。


 しかし、炎が勢いを止めて消えるとそこには魔法障壁に守られたほのかが立っていた。

白煙が立ち上って入るが、その壁に損傷は一切見受けられない。


「何と強固な魔力障壁だ!?」

「防御だけでもA級以上は行ってるぞ!?」

[マスター。次は此方から反撃に移りましょう。作り方は、知っていますか?]

「う、うん。前に講義で教わってるの」


 意識を集中させて弾丸をイメージする。

女神の紋章がその瞳を開けて、閉じていた翼を開いた状態で出現した。


同時に、彼女の周囲に今まで作る事も出来なかった光球が八つほど出現して浮かび上がる。


「光よ、弾けて!! シャインバレット!! シュートッ!!」


 一斉に放たれる光弾。幾つもの方向から同時に来るそれが相手に直撃して爆発で姿が隠れる。

しかし、まともに直撃を受けたにも拘らずそれは咆哮を上げて煙を吹き飛ばして姿を見せた。


「ふえっ!? 効いてない!?」

[ラー……アルム……トール!! ラー……アルム……トール!!]


 不思議な言葉を紡ぐモンスター。その足元に魔法陣が広がる。

そして、二本の尾が伸びてほのかに向かって放たれる。

鞭の様に空を切って迫るそれを彼女は咄嗟に魔法障壁を張って身を守る。


 更に相手は地を蹴って突進を開始、障壁に激突する。その壁を破ろうと鋭い爪まで使って暴れる。

その衝撃が小さく細い腕に伝って来て彼女は顔を歪める。


「っ、くぅ!?」

[マスター、私がサポートします。魔力の集中を切らさないで下さい]

[コール……デインッ!!!]


ゼロ距離で大きな口から火炎が放たれ、同時に爆発が両者を包み込んだ。


「きゃあっ!?」


爆発に驚いた彼女が集中を切らしてしまい、魔法が解除される。

直撃こそは受けなかったが、爆風を受けて軽い身体が吹き飛ばされて床に転がる。


「あぅ~……あれ? 痛く、ない?」


 転がった彼女は上半身だけ起こし、痛みがない事に気付いて自分の体を確認する。

体の何処も痛みを感じていないのに驚いた。


[コール……デインッ!!]


 その時、余所見をしていた彼女に向かってモンスターは再び火炎を吐いた。

真っ直ぐに飛んでくる攻撃は直撃コースだ。


「させないっ!! メロー、マジックディフェンス!!」


しかし、その間に何とか復帰したフィリスが滑り込んで魔法障壁を張る。

炎の一撃を障壁が受け止め、抑え込む。


「くっ、一撃のダメージが低過ぎて決定打になってない。もっと威力の高い一撃を撃たなきゃ……!!」

「強い一撃……!!」


障壁を張って耐えているフィリスの後ろでほのかは呟いた。


目を閉じる。脳裏にイメージを浮かばせる。

必要なのは、絶対的な威力。


高火力による一撃必殺の攻撃!!



イメージする。


それは、強烈な光の閃光。


全てを照らす、眩い光の一撃。


[ォォォアアアァァァ!!!]

「くっ!?」


 火炎を吐くのを止めてモンスターが尾を振るう。

その一撃に耐えていた障壁は砕け散り、ガラス片の様に散らばった。


 好機と判断したモンスターは地を蹴って跳躍。

二人を仕留めんと真上から襲いかかろうとした。


その時だ。フィリスの背後で眩い光が放たれる。

咄嗟に振りかえる彼女が見たのは、大きな魔法陣の真ん中に立つ少女の姿だった。


頭上にいるモンスターに向かって、彼女は杖の先端を向ける。


 彼女の背後に再びあの女神の紋章が浮かび上がる。

今度は瞳を開いた状態で更に腕の中に抱かれていた筈の杖が右手に持たれていた。


同時にウィルの赤い宝石の先端にも同様の魔法陣が展開されてそこから膨大な魔力が溢れだす。


「光の一撃、貫いて!! フォトンブレイザーーーーッ!!」


叫ぶと同時に放たれるは桜色の閃光。

巨大な質量を持った光の塊が真っ直ぐにモンスターに向かって飛んで行って、相手を呑み込んだ。


[オオオオォォォォ!?]


その光の奔流に呑まれたそれは苦痛の声を上げた。

そして、桜色の閃光が天井を穿ち天高く昇った。

光の柱の中から赤い光が一筋飛び出して街の外にある森の向こうへと消える。



光の柱が消えて、元の夜空が戻って来る。



パラパラと天井の破片が落ちるのを視界に入れつつ、その場にいた誰もが唖然とした表情で今の状況を見ていた。


「砲……撃……魔法。しかも、凄い高威力……」


 現在知られている魔法の中でも射程と破壊力に富んだ一撃必殺タイプの魔法。

それを、まだ自分とあまり歳の違わない子が使った事にフィリスは愕然としていた。


そんな事に呆然としていた一同だったが、砲撃を撃った当の本人ほのかはというと……激しい息切れを起していて顔が真っ赤だった。


「はあ、はあ……やった、の……?」

[取り敢えずはですが……]

「よかっ……た」


安堵した表情を浮かべた彼女が意識を失って前のめりに倒れる――前にフィリスが何とか彼女の体を支えた。


「君!! しっかりして!!」

「フィリス君!! 早くそこから逃げるんだ!!」


 気を失ったほのかに呼び掛けていた彼女に局長が慌てた様子で叫んだ。

その声と同時に何かが崩れる音が頭上から聞こえる。

その音にハッとなって見上げると、ほのかの撃ち抜いた天井の一部が崩落して自分達へと落ちて来ていたのだ。


目を大きく見開いてその現実が目の前に迫るのを見つめるしかできなかった。


そして、瓦礫の山が彼女達へと落ちた。


「フィリス君!!?」

「こんな事って……!!」

「くそ……!! くそーーーーっ!!」


その場にいた全ての者が目の前で起きた現実に絶望の声を上げる。

モンスターを撃退できたと言うのに、その代わりに二人の尊い命が失われてしまった。


絶望に打ちひしがれる彼等。


 だが、山のように積まれた瓦礫が僅かに揺らいだ。

そして、隙間から突如として黒い炎が溢れだし、それがどんどんと湧き出てきた。


その黒き炎は全体に広がり始め、炎に触れた瓦礫が徐々に粉状に燃え尽き始めた。


 不測の事態にどよめく研究員たち。

そして次の瞬間、漆黒の炎が瓦礫を吹き飛ばす。

黒き炎に焼かれた瓦礫は、跡も残さずに焼き尽くされた。



吹き飛んだ瓦礫。

 中央には、黒いロングコートに身を包みこんだ誰かが片膝をついた形でいた。

その者の腕の中には小さな命、ほのかとフィリスが抱きかかえられていて怪我らしいものは見受けられない。


「ったく。帰ってきて早々に面倒くせえトラブルを起してんじゃねえよ」


 その者は右手に漆黒の大剣が握られていて、それには先程の炎が僅かに残っていた。

気を失っている彼女達を腕の中に収めたまま立ち上がってそれを剣を振るう事で消す。


「帰ってものんびりできねえな、これは……」


 血の様に真紅の髪を持ち、満月の様な美しい金の瞳を持った男性。

ほのか達にとって頼れる存在の、バルドがそこには立っていたのだ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



今から約一年も昔の事だ。



「や~い、や~いっ!! 魔法も使えねえ落ちこぼれ!!」


ある少女は魔力を保有しているのに魔法が使えなかった。

それを知った同学年の子達に酷いいじめを受けていた。


 一年生の頃から受けた虐めは徐々にエスカレートしていって、二年三年と時を重ねるに合わせて悪化の一途を続けた。

最初は教師の方が気付いてその子達を叱責したのだが、子供と言うのは変な所で賢い。


徐々に教師の眼を盗んで嫌がらせをし始めたのだ。



そんな陰湿な虐めがあっても彼女は親や兄姉きょうだいには話さず必死に我慢して学校に通い続けた。


そして、今も彼女は何時もの虐めっ子達に囲まれ、虐めを受けていた。


「ちょっとあんた達!! 何やってんのよ!!」


そんな時だった。彼女が今の親友と出会ったのは……。


堂々とした態度でたった一人で同い年の男子達の前に移動し、彼女を守る様に正面に立って腕を組んで男子達を睨みつける。


「よってたかって一人をいじめて、恥ずかしくない訳!? これだから男子って馬鹿ばかりね!!」


そんな汚い言葉を投げつける少女に彼等はくってかかるも、次々に口喧嘩で負かされて涙目になっていく。


元々、ひ弱な少女一人を虐めていただけの彼等は負けを知らない。


自分よりも弱い相手しか虐めない。

だからこそ、口勝負で勝る金髪少女に負かされて一部の子は逆に泣かされる羽目になった。


 口喧嘩で負けた彼等が悔しそうに泣きながら逃げていくのをフンッと鼻で笑い。

今度は座りこんでいる虐められていた少女へと向き直る。


 そして、自分に向かって手が伸びてきた。

それにビクッと身体を震わせて目を瞑る。

また苛められるのか、と思っていた彼女だったが……。


「泣くんじゃないわよ。ほら、もうあいつ等は逃げたし大丈夫よ」


そう言って優しく声をかけて来てくれたのだ。

その出会いが切っ掛けで、皐月ほのかは初めて友達を得る事が出来たのだ。



 翌日になって、マリア・レイスタードはもう一人の親友とほのかを合わせる。

如月舞華という少女とも意気投合し、こういった経緯で彼女達は親友となれたのだ。


そして、その三人を中心に他にも友達が出来てほのかは一人ぼっちから解放されるのだった。




それからというもの、彼女達は学校にいる殆どの時間を一緒に過ごした。

一緒に過ごすにつれて周りからの虐めも徐々になくなっていき、次第に消えていった。





だが、完全になくなる事はなかった。

学校では消えたかに見えたものでも、休日などで出会った時にはそれが再燃する事があった。


 公園に一人でいた時、偶々(たまたま)その子達と出会ってしまい虐めが始まった。

最近起きた鬱憤うっぷんでも晴らそうとでも言う様に声高に騒ぐ彼等にまたも囲まれる。

逃げようにも後ろには大木があって逃げ道がない。


 頼りの親友もいない周囲にも人はいない。その所為で心細くなって泣きそうになった。

魔法も使えないだけで、魔法適正を持つだけの唯の少女は彼等にとっては恰好の虐めの標的だった。


「ったく、うっせ~な……」


 その時だった。後ろにあった大木の上から声が聞こえて来て全員がビックリして上を見上げる。

太い枝から何かが落ちてくる。それが少女と男子達の間に着地した。


 闇のように黒い色で統一された服に、その上から膝下まで届く同じく黒い色のロングコートを衣服を着こんだ綺麗な真紅の髪と金の眼を持つ男性が立っていた。


背の高い彼の重苦し威圧感に男子達は顔を青くする。


「人が寝てんのに……下でぎゃあぎゃあ騒ぐんじゃねえよ餓鬼共が」


目付きを鋭くさせて睨む彼に男子達は怯える。

そして、背後で泣きそうな顔をしているほのかをチラッと見てから再び男子達を睨む。


「それとよ……。一人の女子を男が大多数で虐めんなよ、やってて恥ずかしくねえのか馬鹿共」


指をポキポキと鳴らしながら上から見下ろす様に見てくる彼に涙目になる。

そんな男子達に彼は拳を作る。


「男なら、群れて虐めなんかすんじゃねえ!!」


そして、そろぞれの男子達に一発ずつ重い拳骨が落とされた。

頭に来る鈍痛で泣きじゃくる彼等は散り散りに逃げ出す。


そんな彼等の様を溜息を吐いて肩をめた後に、彼はほのかの方を振り返ってその頭に優しく手を乗せた。


「もう大丈夫だぞ」


そう言ってくれた彼、それが今となっては彼女達の頼れる存在となったバルドとほのかの初めての出会いだった。


 冒険者として世界を旅する彼はそれ以来時々、この地に寄って遊びに来てくれた。

今はちょくちょく自分を弄ってくるが、それでも彼女にとってはマリア達と同じ様に大切な存在なのだ。


彼との交流を境に彼女は彼を通して商店街の人とも仲良くなって人気者となり本当の意味で一人ぼっちから解放された。


自分は一人じゃない。何時も、誰かが傍にいてくれる。自分を心から信頼してくれる友達がいる。

それが、ほのかを最も幸せな気持ちにさせてくれるのだった。


それが今のほのかを支えてくれる大事な大事な繋がりなのだ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





ぼんやりとする意識。


かすんだ視界が白い天井を映し出す。

次に感じたのは、自分を包みこんでくれている温かな羽毛の様な感触。


「あ……れ?」


 徐々にはっきりする意識。自分がベッドに寝かされているのに気が付いた。

起き上がって辺りを見渡すと、清潔感溢れる何処かの病室の様な部屋に自分は寝かされていた様だ。


「ここ……は?「目が覚めたか、菓子娘?」はにゃあっ!?」


突然の声に体が軽く飛び上がる。

慌てて右の方を向くと、そこには懐かしい人物が壁に椅子を傾けた状態でくつろいでいる姿があった。


「バルドさん!?」

「ひと月ぶりだな、ほのか。元気に……まあ、一昨日の様子を見るに元気みたいだな」

「おととい……?」


その言葉に首を傾げる。

彼女のその様子に彼は苦笑いして指でちょいちょいと壁にかけてあるデジタル時計を指差す。


それを彼女も見てみると……


日付は、あの日から二日も経っていたのだった。


「ふえええええええぇぇぇ!!? 二日も経ってる!?」

「丸一日、寝てたもんな。それはそれはぐっすりとな……」

「が、学校!? 学校に行かないといけないの~!!」


 慌ててベッドから飛び降りて部屋から出ようとする彼女だったが、彼の前を素通りしようとしてその首根っこを掴まれてしまった。


「アホ。何処に行こうとしてるんだよ。もう少し休んでろ」

「で、でも学校が! マリアちゃんや舞華ちゃんが心配してるの~!?」

「そこんところは心配すんな。ちゃんと、お前の両親が連絡してっからよ。学校も休みだ」

「え?」


ジタバタする彼女が動きを止めて彼を見る。

よく分かっていない様子の彼女に彼はやれやれと肩を竦めた。


「お前……一昨日の夜の事を覚えてないのか?」

「おととい? ……あっ!!」

「モンスターの襲撃で非常事態宣言が出たからな。学校も流石にこの状況で授業なんてできないだろ。だから事態が治まるまで休校だとよ」


聞かれた彼女はすぐに思い出した。一昨日の夜……。

流れ星と突如出現した黒い獣。

襲ってくるそれと不思議な指輪。



そして、自分が魔法を使える様になった事。



一昨日の出来事が次々に思い出される。


「そう言えば……私、魔法が……」

「見事に使えてたな。その歳で砲撃魔法か……。熟練の魔法士でも中々出来ない奴を一発で撃てるとかお前、適性あり過ぎだっての」


あの日の光景を思い出したのか、彼は苦笑いしていた。


「あっ!! そういえば、私の他にも戦っていた子がいたよね!? その人は今どこにいるの?」

「あぁ~、あいつか。あいつなら、もう回復して何かやってるぞ。そういや、お前が目を覚ましたら連れてくるようにって此処の局長だかっていう爺に言われてたんだよな。如何する、行ってみるか?」


それに彼女は頷いてベッドの脇に置かれていた着替えを手に取り、バルドを一回外へと追い出してから着替える。


 如何やら、自分が眠っている間に両親が此処に来てくれていたらしい。

よくよく見れば、自分が着ているのは家で使っている寝間着だった。



きっと両親が着せてくれたのだろう。


だが、今の時期は色々と立てこんでいた為にバルドが代わりに付いてくれると言ったお陰で安心して帰った様だ。



*ただ一人、父である誠治はそれを頑なに拒否したのだが、妻の慧子のフライパンの一撃の前に撃沈。息子の恭輔が彼を運んで帰っていったらしい。



 着替え終えて部屋から出て、直ぐ脇の廊下で待っていたバルドと合流する。

その彼を、彼女は見上げてジッと見つめる。


「なんだ?」

「………見てないよね?」

「そのセリフは十年後に言え。餓鬼がきの貧相な体で欲情するかアホ」


そんな質問をコンマ一秒で軽く一蹴した。

そんなやり取りをしつつ、彼女は彼に連れられ局長の待つ部屋へと向かって歩いていくのだった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「局長、例の少女が来たようです」

「うむ……。では、通してくれ」

「はい」


 局長室にいた彼の下にその連絡が入る。

彼は通す様に伝えて椅子に座りなおして佇まいを直す。

前の扉が開いて、バルドとほのかが入って来た。


「よく来て下さった。わしの名前はニコラス・オズワルドという。どうぞ、よろしく」

「あっ、えっと……!! こ、皐月ほのかです!!」

「バルドだ。まあ、よろしくな。んで、なんでコイツを呼んだんだ?」


 互いに自己紹介をした後に本題へと移る。

その質問に彼は深刻な面持ちで頷いて机の上にあの指輪を置いた。


「実はな……後になって分かった事なのだがあの生物はまだ生きておる」

「ええっ!?」


その事実にほのかは声を上げて驚いた。

仮にも砲撃魔法を受けた筈だ。それでもまだ生きているのに相手の生命力の高さにビックリした。


「奴の場所は掴めている。この街からすぐ近くにある洞窟だ」

「『始まりの洞窟』か……」

「バルドさん知ってるの?」

「冒険者の間じゃ腕試しの洞窟だからな。毎年、多くの冒険者がそこに入って三割はそこで死ぬ」


外の世界で旅をする者達を人々は『冒険者』と呼ぶ。

魔法を扱う者、魔術を使う者、武を使う者。

挙げればかなりいるが、大まかにはこの三種に分かれる。


そんな冒険者たちにとって最初の冒険する場所であり、大きな世界へと羽ばたく為の登竜門とも呼ばれている。

実を言えば、それが街の近くにある事からほのか達の住んでいる街にはそこそこの新人冒険者が集うのだ。


「そこに奴がいるんだな?」

「うむ。しかし、情報を先にSCCAに送って討伐隊が向かったそうなんだが……昨日から連絡が付かないそうだ」

「え……」


最悪の想定が脳裏をよぎる。

現在は討伐隊の捜索隊を編成されているとの事。

事実は近いうちに判明するだろう。


「だが、あれはきっと今、体力を回復させている筈だ。このままでは再びこの地にやって来て暴れるかもしれない」


そこで、と言ってオズワルドはバルドの方を見た。


「そなたは、冒険者なのだろ? 奴の討伐を、頼んでいいか?」

「別に構わねえが……。そんな事していいのか? 俺達冒険者をそっちの機関は嫌ってんだろ?」


旅する者達、冒険者。

何者にも頼らず街から街を転々と渡り歩く者たちの事を人々はそう呼んでいる。


外の世界で己の武を、力のみで自分の命を、未来を切り開いていく彼等は一部の者達からは嫌悪されている。


 特に彼等は魔法共和国の中では治安維持に関わるSCCA……その中央組織の一角、治安維持特別対策本部『タスクフォース』には嫌われている。

 理由としては、人々を守る法から抜けて生きているからだとか、その自由な生き方を真似して必要のない犠牲が外で起きているからだとかも言われている。


実際の所は分かってはいないが、一部の冒険者達からは自分達の仕事を冒険者に時々取られるのが気に入らないからだという噂もある。


「その様な者はほんの一握りだ。わし等はそんな事はせん。……頼めるか?」

「まあ、いいけどよ」


 あっさりと承諾するバルド。それに彼は堅くしていた表情が僅かに崩れる。

だが、それは直ぐに引っ込んで続けてこう言ってきた。


「ほのか君。君にはこれを預ける……」


 立ち上がって彼女の前まで来てその手に赤い宝石を付けた指輪……『ターミナル』のウィルが乗せられた。


「その子は如何やら、君以外では反応しない様だ。持っていてもわし等では如何しようの出来ない。……受け取ってくれるか?」

「え、えっと……はい」


頷いてそれを両手でしっかりと包む。


「そいつを渡したい為にコイツを呼んだのか?」

「そうだが……それが如何したのだ?」

「……いや、何でもねえよ。用がもうないってんなら俺達は帰るがいいな?」

「うむ。久々にフィリス君以外に孫と同じくらいの歳の子と話せて楽しかったぞ。また来てくれるとわしも嬉しい」

「あ、はいっ! 今度は私の友達も一緒に連れてきます!」

「ふふっ、楽しみに待っておるよ」


 礼儀正しくお辞儀をしてから彼女は先に出ていったバルドと共に部屋を後にする。

静かになった部屋にオズワルドは再び椅子に腰かけてほうっと息を吐く。


「失礼します」


 その時、ドアが再びノックされた。

それにオズワルドは何処か予想できていた様な表情を浮かべて入る様に促す。


 入って来たのは彼の助手であるフィリスであった。

ほのかと同い年くらいの少女がオズワルドと向き合う。


「局長。お願いがあります……」

「……外に出てみたいか?」

「え?」


 言いたい事を先に言われてフィリスがキョトンとした顔になる。

そんな彼女を見て彼は微笑む。


「助手の考えている事くらい直ぐに分かるよ。あのモンスターの調査をしたいのだろう?」

「……はい。あのモンスターはこの近辺では見ないタイプのものでした。ですから、少しでも情報が欲しいと思っています……。それに……あのモンスターの使っていた言葉は間違いなく『古代インペリア語』です」

「………やはりそうか」


古代インペリア語。

大昔の時代に何処かに存在していたと言う大国の言語だ。


 あれでコミュニケーションを取っていたかどうかはさだかではないが、あの言葉には特殊な魔力を増幅する効果を持っている事から戦闘時などで使用していた言語かもしれない。



 古代インペリアはある著者が作ったお伽噺に出てくる国だったのだが……。

近年になってそれらしき物が幾つか出土しているので研究が盛んになり始めている。


 それを繰るモンスターが何の因果かこの地に降り立った。

何を目的として何の為にやって来て街で暴れたのか……。


「自分の眼で確かめたいんです。あのモンスターが何のためにこの地に降りて来て暴れたのか……。そして、何であの子を狙ったのかを知りたいんです……!!」

「皐月ほのか君か……」


鍵となるのは、ほのかであった。


 彼女の事を思い返して考え込む。

ほのかは魔法適正があったのに今まで使えなかった。


 しかし、誰も使う事の出来なかったターミナルのウィルを手にした事で魔法を使えるようになった。

そんな彼女をあれは命を狙った。


まるで、彼女が魔法少女になる事を阻止せんとする様に……。


「四日前の大地震に、新たな敵……。何か、嫌な予感がするな」

「はい。ですから、私も始まりの洞窟へ行ってみようと思います。そこにきっと、何かがあるかもしれないから……」


真剣な面持ちで語るフィリス。

それをジッとオズワルドは見つめていたが、目を閉じてふうっと息を吐いた。


「君の事だ、駄目だと言っても行く気なのだろ?」

「局長?」

「行きなさいフィリス」

「え?」

「本来なら……君はほのか君と同じ様に学校に行って友達を作って楽しく生きるのが普通だ。だというのに、少し魔法学に詳しかったというだけで此方側に引き込んでしまった。すまなかったな……」

「あっ、いえいえ!! 決してそんな事は……!! ただ、私も魔法学は興味もありましたし、この生活は楽しかったです!!」


 頭を下げられてフィリスが慌てて返事を返す。

彼女にとって、此処は自分の興味を叶えてくれる場所であり、自分の帰る場所でもある。


決して、此処の生活に飽きた訳ではない。


そんな彼女の必死な様に、どれだけこの場所が大事にされてきたのかを理解でき、彼は少しだけ肩の荷が落ちた様な気がした。


「気を付けて行ってきなさい。あそこはモンスターの巣窟だ。……そうだな。彼に同行してもらうといい」

「………はいっ。行ってきます!」


見送りの言葉を聞いて、フィリスは彼に向かって笑顔を見せた。

 そして、一度深くお辞儀をして今まで自分に指導してくれた事への感謝の言葉を述べてから彼女は出発の支度をしに部屋を出ていった。


旅立つ彼女は、自分にとって大事な孫娘の様な存在。

それが居なくなるのに一抹の寂しさを感じつつも彼は何処か嬉しさを感じていた。

成長した雛鳥が大空へと一人立ちした姿を見る親鳥の様な気持だった。





ほのか達三人娘の頼れる兄的存在バルド登場。


そして、ほのかのちょっとした過去話。


ほのかの攻撃スタイルが砲撃なのは仕方がない。


魔法=火力だぜ!!


それでは、次回も宜しくお願いします。


では(゜∀゜)ノシ!!


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