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第一話 魔法少女誕生

記念すべき一話更新。


駄文ですが見て下さると嬉しいです。


それでは、本編をどうぞ!





第三都市コーネリアにある大きな学校、『第三魔法学園』。



授業の終わる鐘が鳴って休み時間となり一斉に児童達が騒ぎ出す。

その話の大半が二日前に起きた大地震の事についてだった。


「おとといの地震、凄かったね?」

「深夜だったしね。おどろいて飛び起きたわよ……」

「でも皆無事でホッとしたの~」


二人の無事な姿が見れてホッとする。


 本当なら昨日も会う予定だったのだが、今の話の通り地震の影響で路面や一部の建物などに被害があったので外出は控えるようにとの連絡が学校より届いてしまって会えなかったのだ。


「まだ余震があるかもしれないから気を付けないといけないね」

「もしもの時は『SCCA』の人が何とかしてくれるでしょ」


 『SCCA』……この広大な領地を持つ魔法共和国内の治安の維持と災害からの人命救助、犯罪組織の逮捕から監視などを一手に担う警察組織の様な存在だ。

前にも大きな組織を壊滅に追い込んだという話もあって国民からは大きな支持を得ている。



そんな話をしている内に休み時間は終わって予鈴が鳴り響いた。


「あっ、そろそろ時間だね」

「じゃあ、またあとでね」


二人が自分の席に着席すると同時に教室のドアが開いて担任の先生が入って来て授業が始まる。


「さて、今日の授業は皆さんに将来の事について考えて頂きたいと思います。皆さんは今はまだ小学生ですが、今からでも明確な夢を持っていた方がいいですよ。そこで、今日は自分の夢を書いて貰います」


 プリントが配られ、合図と共に生徒達は一斉に思い思いの夢を書き始める。

ある生徒は友達と喋りながら、ある生徒は必死になって書いたりしている。


そんな中でただ一人、一文字も書けずに悩んでいる子がいた。



それが、ほのかであった。



彼女は深く悩んでいた。

将来の夢と言われても、今の彼女には明確な夢が見当たらない……いや、ないと言ってもいいかもしれない。


親の経営している喫茶店を継ぐ。それもいいかもしれない。


 だが、それは自分が本当にしたいという願いではなく、何処かそうしなければいけないという一種の使命感で決めつけている様な気がした。


 何を書けばいいのか、本当の自分は将来何になりたいのか?

それが思い浮かばない。

一文字も書けずに彼女は白紙の紙を見つめるしかなかった。


(私は……何になりたいんだろう)


見えない将来にただ、俯く事しか出来なかった。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





 学校が終わって下校の時刻になる。

生徒達が次々に帰る中、ほのかもまた何時もの二人と一緒に下校する。


 何時もの様に楽しそうに会話をする二人の直ぐ後ろでほのかは俯いている。

その彼女の様子に気付いた二人は心配になって声をかけて来た。


「どうしたの、ほのかちゃん?」

「元気ないわね? 一体どうしたのよ?」

「………ねえ、マリナちゃんも舞華ちゃんも今日の将来についての、書けた?」


心配そうにのぞき込んで来る二人にほのかは思い切って聞いてみる事にした。

お互いに見つめ合ってキョトンとした表情を見せた後に二人はほのかの方を向いて答えを返す。


「まあ、一応は書いたわよ。将来は医学大に入るって最初から決めてたし」

「私は魔法学の研究をするつもりだよ。将来はそういったものに就こうかなって思っていたから」

「そう……なんだ」


 あっさりと返って来た二人の返答にほのかは気持ちが更に深く沈んだ。

親友の様子がおかしい事に二人は一体如何したのかと問う。


 それにほのかは今日の授業での出来事をポツリポツリと話し始めた。

自分には将来が思い浮かばない。何をしたいのかも分からない。これといった目的もない。


ないない尽くしの自分の未来が凄く不安になった。


 周りは直ぐに自分の将来を書けているのに、自分だけ書けていない。

周囲の動きに付いていけず、置き去りにされていっているのではないか?


また・・一人ぼっちなのではないか、とそんな悩みを打ち明けてみたのだ。



その話を真剣な表情で聞いていたマリナ達は、そんな彼女へ自分たちなりの答えを言ってみる事にした。


「将来なんて分からないわ」

「え……?」

「ほのかちゃんは、それでいいと思うよ?私達はまだ子供なんだし、深く悩みすぎたらいけないと思うよ?」

「あたし達は一本道にしちゃったから仕方がないけど……ほのかはまだ道が一杯あるじゃない。だから、今はそれでいいと思うわよ。無理に考えて一つに絞ったらコケそうだしね」

「マリアちゃん、舞華ちゃん……」

「ほのかは今はまだ白紙のままでいいのよ。何時かちゃんと見える時が来るって」

「だから、それまでの宿題って事にしよ?」

「……うんっ!! ありがとうマリアちゃん、舞華ちゃん!!」


悩みを聞いてくれた二人にお礼を言って笑顔を見せる。

それに二人も微笑んで三人は再び仲良く歩きだして、何時もの分かれ道に辿り着いて別れるのだった。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






その日の晩、星達が煌めく夜空の下で人々が眠りに付いている。



 その時だった。夜空より赤い一筋の光が街に向かって真っ直ぐに落下してきた。

そして、町の中にある公園に轟音ごうおんと共に着弾し大量の砂塵さじんを巻き上げて大地を揺らした。


 その突然の出来事に眠っていた人達が一斉に目を覚まして家を飛び出す。

そして、燃え盛る公園の周囲に人が集まり始める。



 そんな爆発音に目を覚ましたほのかやその家族達も家から飛び出して玄関前から火の手の上がる公園のある方向を見ていた。


「何が起きたんだ?」

「なんか爆発が起きたみたいだけどな」

「……………」

「ほのか? 如何したの?」


 口々に不安な声を上げる家族。

その中で彼女だけは火の手の上がる方向をぼうっとして見ていた。

それに気付いた姉が彼女に声を掛ける。


「誰かが……呼んでるの」

「え?」

「ちょっと、行ってくるの!!」

「ほ、ほのか!? 待ちなさい!!」


 急に駆けだした愛娘に驚いて制止の声をかけるも、何かに導かれる様に走り出した彼女は止まる事なくそのまま突当たりの角を曲がって姿を消してしまった。




 街灯の明かりが頼りの夜道を彼女は走る。

よく分からないが、進む先で誰かが自分を呼んでいるのだ。


脳に直接語りかけてくるような声。高い事から女性だと思う。

それが、自分に語って来るのだ。


――こちらへ、此方へ来て下さい我がマスター――



 自分の事をマスターと呼ぶ不思議な声。

ハッキリ言って気味が悪いと思うのが普通だ。


だが、この時のほのかにはそれ以上に何故か自分はそこに向かわないといけないという一種の使命感が湧き上がっていたのだ。


 煙を上げる公園。火の手が上がっていてそこだけ明るく見える。

その全貌が見える坂の上に辿り着いた時に、彼女は公園である異変が起きているのに気付いた。


「えっ、なに……あれ?」


 周囲に散っている小さな火種が突然、一点に向かって浮き上がって集まり始めたのだ。

集まる炎の行方、それはクレーターの中央に浮いている光る赤い欠片へと向かっていた。


その不思議な現象にほのかは呼び声よりもそっちの方へ意識を向けてしまう。



 同様にその光景を見て、現場近くにいた野次馬達は騒然となって見守っている。

そこに、此処に駐屯している『SCCA』の部隊が駆け付ける。


「市民の皆さん!! 危ないから下がっていて下さい!!」

「隊長。前方の炎……。まるで生きている様に見えますが……?」

「分かってる。それに、この気配は魔力だ。総員、気をつけろよ。何か来るぞ……!!」


 警戒の檄を飛ばす隊長に隊員達は一斉に自身の手に魔力で作った剣を持って構える。

集まり始めた炎が徐々に姿を形作っていき、獣の姿へと変わっていった。



赤い炎が火の粉となって大気へ舞い上がり、その正体がハッキリとする。

黒い毛並みに、二本の尾。鋭い牙と眼光に鉤爪の様な爪を持った足としなやかな胴体。


全長は三メートルはあろうと思われる大きな犬か狼の姿をした獣がそこにいたのだ。


「何だこいつ……? 今までに見た事もないモンスターだぞ!?」

[…………]


 初めてみるモンスターの姿にその場にいた全員が警戒の色を強める。

得物を構えて前に立ちはだかる彼らを獣はジッと見ていた。


すると、突然獣が吠えてその足元に陣が出現した。


[ラー、アルム、トール……]

「なっ、魔法陣!!」

[コール……デイン!!!]


 赤い魔法陣が展開されたことに驚きの表情を浮かべる部隊の者たち。

その彼らに向かって獣は口から火炎を吐いたのだ。


突然の攻撃に回避もできずにまともに浴びる数名の隊員。


 高温の炎に包まれ、悲鳴を上げてのた打ち回る。

更にその炎は周囲の建物に飛び火し、火災が発生する。


「すぐに消火しろ!! 他の者は攻撃開始! 奴を倒すぞ!」


 一斉に魔力弾を放つ隊員たち。

しかし、迫る光弾を獣は真上に高く跳躍する事で回避する。


 避けられた事と驚異的な跳躍力を見せつけられて攻撃の手が止まってしまった彼らに向かって、今度はその二本の尾が伸びた。


鞭の様に襲い来る尾をまともに直撃して、残る隊員達と隊長が弾き飛ばされて建物の壁に激突して倒れる。


「ぐはっ!? まさか、尾が伸びるだと……!?」


 体の部位を伸ばして襲ってくるモンスターはいるにはいるが、目の前の敵は別格だった。

今まで出会い戦った普通のモンスターは一度放てばその方向に真っ直ぐにしか飛ばせない。


 横に避けてしまえば、かわす事は特段困難ではない。

だが、目の前の敵はその考えを打ち消した。飛んできた尾はまるで鞭だ。

目標が避けてもそのまま追ってくる。


こんな敵は見た事がない。燃え盛る公園の中に佇む獣を見つめて彼らは戦慄した。


 そんな彼らを一瞥後、獣はその後方にいた民衆に目を向ける。

その恐ろしいモンスターを前に市民は恐怖の色を浮かべていた。


 だが、そんな彼らなど無視し、獣は何かを探すように辺りを見渡す。

そして、その瞳がある人物を捉えた。


「あ……」


それが、ほのかであった。


 彼女を見つけた途端、獣は咆哮して跳躍。

ほのかの方へ向かって建物や壁を利用して迫っていったのだ。


 こっちに来る恐ろしいモンスターを前に彼女は本能から来る警鐘けいしょうに従って駆け出す。

逃げる彼女を後から獣が民家にあったブロック塀を破壊し、追いかけていった。


「隊長!! 民間人の少女を奴は狙ってます!!」

「くっ、動ける者は早く追え!! これ以上の被害を出させるな!!」


 後ろから追いかけてくる黒い獣。その眼は正に狩人だった。

その狙いはただ一人、ほのかだけであった。

狭い路地に逃げ込みジグザクに駆け抜ける彼女だが、その通路を破壊して獣はまだ追いかけてくる。


「はあ、はあ、はあっ!」


 元々、運動神経はドベである彼女のとって長時間走るのは限界があった。

その彼女の脳内にまたあの声が聞こえてきた。


――こちらです、マスター。早く此方へ……――


 謎の声がまたも響く。その声に彼女はもう縋るしかなかった。

声と共に感じる不思議な感覚に後押しされて彼女はある方向に向かって全力で走った。



声の聞こえる先に一軒の大きな建造物があった。

入口には立て札があり『魔導研究施設』と書かれている。


なぜ此処から声が聞こえるのか分からないが、今は何でもいい兎に角あそこに逃げ込もうと残る体力を振り絞って走った。


[コール……デインッ!!!]


しかし――


獣が再び口から火球を放った。

それが、彼女の直ぐ後ろで地面に着弾し爆発する。


「きゃああっ!?」


 その爆風を諸に浴びて彼女は吹き飛ばされてそのまま建物のドアを破って中に突っ込んだ。

突然飛び込んできた彼女に施設内にいた研究員らしき者たちがビックリした表情をする。


「な、なんだっ!?」

「お、おい見ろ!!」


 騒ぎに気付いた者達が一斉に一人が指差す方を見る。

そこには、黒い体躯をしたモンスターの姿があった。


「モ、モンスターだ!!」

「コールサインレッド発令!! 防衛兵器で応戦しろ!!」


 直ぐに施設内に配備されていた円盤型の魔導防衛兵器が起動し、宙に浮きあがってそのモンスターと思われる生物に向かって攻撃を開始する。


周りを飛び交う小さな虫を鬱陶しく思ったのか、獣はその尾を縦横無尽に振り回して防衛兵器を易々と破壊していく。


「皆さん、大丈夫ですか!?」

「フィリス研究員か!?」


 そこに飛び出して来たのは、フィリスと言う少女だった。

エメラルドグリーンの綺麗な髪に茶色の瞳をした子で、その手には十字架のついた首飾りの様なものが握られていた。


「今からターミナルを起動します!!」

「なんだって!? 待つんだフィリス研究員、それはまだ試作段階だ!!」

「だからって、このままだと此処にいる人全員が危険です!! オズワルド局長は急いでその子を奥へ!!」

「わ、分かった!!」


 オズワルドと言う名の初老の男性は気を失って倒れているほのかを抱え、急いで奥へと逃げる。

その後を追おうと獣が施設へと一歩足を踏み入れようとしたが、その前にフィリスと言う少女が立ち塞がった。


「実戦も何もかもが初めてだけど、やるしかない!! お願い、メロー。私に力を貸して!!」

[いいでしょう、フィリス。貴方に、力を!!]

「メロー、セットアップ!!」


次の瞬間に彼女の全身を青い光が覆った。


 白衣が光に包まれ、新たに彼女の全身を青を基調としたローブが纏った。

エメラルドグリーンの髪を青いリボンが一つに括って、両手に手袋が装着され、目の前にサファイアブルーの宝石を中央に付けた白色の弓が出現した。


 それを手に取ると魔法陣が出現し、彼女の背後に水色を基調とした背景に赤い羽根帽子を被った弓を持つ瞳を閉じた美しい人魚の描かれた紋章が出現した。


「貴方の相手は、私がするよ!!」

[オオオオオォォォォ!! コール、デイン!!]


 不思議な言葉を紡いでそれが火炎を吐く。

紅蓮の炎の壁が彼女の視界一杯に広がって迫ってきた。


「メロー、マジックディフェンス!!」


右手を前に翳して叫ぶと水色の魔方陣が出現して彼女の正面に魔力障壁が張られる。

そこに火炎が激突。その一撃を受け止める。


[フィリスは水属性なのですね?]

「そうだよ。そして……向こうは火属性みたいだね?」

[相性としてはこちらの方が有利なようですが、油断は禁物]

「わかってるよ。メロー、今度はこっちから行くよ!!」

[了解です]


炎の攻撃を耐えきった彼女が今度は反撃に移る。


 左手に持っている弓を構え、右手に魔力矢を一つ作りだして弦を大きく引く。

その先端に青い光が集まり、彼女の足元に魔力陣が展開された。


それと同時に人魚の紋章が出現。

今度はその瞳が開いており、弓に矢を付けて構えた姿になっていた。


「撃ち抜け水流、アクアスパイク!! シューーット!!」


 弦を離し放たれる矢。それが途中で複数の矢へと分裂して一斉に獣に襲い掛かる。

幾つかを尾で弾くも数で勝る矢が数発命中し爆発を起こした。


 白煙の立ち込めるその場所をフィリスはジッと睨んでいる。

手応えはあった。だが、目の前からは未だに強烈な魔力を感じ取れる。


そして、煙が晴れるとそこには獣が立っていた。


[ダメージは通ったようですが、意外とタフですね?]

「まだまだ、これからだよ!!」

[オォォ……。ラー……アルム……トール。ラー……アルム……トール!!]


追撃を加えようと構えるフィリス。

しかし、目の前の獣が急激に魔力を上昇させる。

全身の毛が逆立ち、口からは炎が零れ出ている。


放たれる殺気がフィリスに襲い来る。

その濃厚な殺意が自分にだけ向けられているのに少女は顔を青くする。


「うっ、魔力が……上昇した!? もしかして、周囲の魔力素を吸収してるの!?」

[敵の魔力量上昇を確認。A、+A、AA……+AA!!]


 驚異的な速さで魔力が上昇している光景にフィリスは思わず後退りする。

相手が怯えを見せたのを見て、今度は獣の方から攻勢に出た。



襲い来る謎のモンスターを前にフィリスは何とか気持ちを切り替えて応戦に入った。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 





「う……ううん……」

「おぉ、目が覚めたか?」


気を失っていたほのかが目を覚まして最初に見たのは見た事もない天井と、初老の男性の顔だった。

起き上って周囲を見渡すと、見たこともない機械が幾つも置かれている景色が広がっていた。


「ここは……?」

「此処は魔導研究施設じゃよ。魔法共和国第三都市設立第三研究施設といった方がよいかな?」


 その名前に彼女は此処が何処なのかを思い出した。

魔導研究施設といえば、この街ではかなりの知名度を誇る研究施設だ。


 主に魔法学を専門としており、自然界に住むと言われる精霊を探知する魔導機の開発やモンスター除けの効果を持つ魔除け札といった物を多く作って市民に貢献している研究所である。


なぜ自分がこんなところにいるのかと疑問に思っていたが、すぐにさっきの獣のことを思い出してハッとする。


「あ、あの助けていただいてありがとうございます!! そ、それで、あの、モンスターの方は!?」

「今はわしの助手のフィリス君が戦ってはおるが……」


 渋い顔をして部屋に置かれていたモニターを見る。

そこには、黒い獣と激しく戦っている自分と殆ど変わらない年頃の少女が映っていたのだ。


素人目でもわかる。かなり苦戦を強いられているようである。


「フィリス君だけでは不味い。このままでは押し負けてしまうか……」

「ほ、他に戦える人は!?」

「此処は研究施設じゃ。元々、此処にいるのは全員が非戦闘員よ。フィリス君も、今日が初めての戦闘なのだよ」

「そ、そんな!?」

「もうじき、『SCCA』が来てくれる。君は、先にそこの非常口から逃げなさい。何とかわし等が持ちこたえて見せよう」


 言われて彼女は逃げる事を躊躇ためらう。彼らだって戦闘はできない。

それでも、残って自分一人を助けようとする。


そんな人たちを置いて、自分だけ助かろうとは……ほのかは元来の性格から到底納得が出来なかった。

何か……何かほかの方法がある筈だ。


そう思ったその時だった。

脳裏に何かが駆け抜ける感覚と同時にあの声が響いたのだ。


――我がマスター。マスター、私は此処にいます――


 その声は、自分の後ろから聞こえた。

振り返ると、そこには扉があってそこより自分を引き寄せる不思議な感覚が漂っていた。


「あのっ、あそこの扉の向こうには何があるんですか!?」

「それは機密事項だ。一般人の君は教える訳にはいかない」

「お願いします!! あそこに、あそこに私を入れさせて下さい!!」


頭を下げてお願いするほのかに局長は一瞬驚く。

そして、直ぐにその願いを断った。


「駄目だ。さっきも言ったがあそこには機密事項がある。入れる訳にはいかない」

「お願いします!! あそこに、私を……私を呼んでいる誰かがいるんです!!」

「なに……!?」


彼女の発言に今度こそ彼は驚愕した表情を見せた。

そして、すぐにその考えを否定する。


 ありえない。あそこに封印しているのは太古の遺跡から出土した物だけしかない。


自分達が現在開発した物と同タイプの魔法士の為にあったとおもわれる古代遺物。

フィリスの持つメローと同じタイプであり、全ての接続コードを拒否する存在。


誰もがそれを起動させる事も出来ず、また誰の呼び声にも応えなかった代物。


 故に封印した古の遺産、遺跡より姿を見せた誰が何のために生み出したのかも不明なそれが、今、目の前の少女を欲している!!



 その事に驚きを隠せない局長。そこにモニターより少女の悲鳴が聞こえて慌てて振り返る。

そこには、獣の攻撃をさばき切れずに吹き飛ばされる自分にとって孫娘といえる大事な助手フィリスの姿があった。


「………付いてきなさい」


最早、悩んでる場合ではない。

彼は彼女を連れて厳重な魔法プロテクトをかけていたその扉を開錠かいじょうする。


 鈍い音を立てて開かれる扉。

その先には、筒状のカプセルに収められている一つの赤い宝石を持つ指輪が浮かんでいた。


 その赤い宝石からは眩い光が放たれていて、その眩しさに思わずほのかは目を細める。

逆にオズワルドの方はその現象に目を見開いて驚きの表情を浮かべた。


「何と言う事だ……!? 今まで絶対に起動しなかったあのターミナルが動き出している……!!」

「ターミナル?」

「説明は後だ。とにかく、今は行こう……」


 それにほのかも小さく頷いて指輪の前に移動する。

すると、眩しい光が弱まり仄かな明かりになる。

そして、点滅を繰り返すと指輪より声が発せられたのだ。


[我がマスター、お会いするのをお待ちしておりました]

「ふえ? 待って…いた」

[封印解凍……。コード認証……。魔法回路開放……]


ガラス張りのカプセルに罅が入る。


 そして、それが砕け散り彼女の前に指輪がゆっくりと下りてきた。

それを両手で包む様に差し出すと、その掌の上で指輪は止まった。


[魔導回路同調確認……。全システムサポート、オールグリーン]

「信じられん……。ターミナルが人を選んで起動するとは……!?」

「あ、あのこの後、どうすればいいんですか!?」

「その指輪をはめるのだ!! そして、その子の名を呼ぶのだ!!」

「は、はいっ!!」


 言われたとおりに彼女はその指輪を指にはめる。

すると、指輪に付いている赤い宝石に不思議な文字が浮かび上がり、彼女の足下に桃色の魔法陣が浮かび上がる。


 その魔法陣から桃色の羽が浮き上がって舞いあがった。

幻想的な光景の中で、彼女は自身の相棒の名を問う。


「あなたの、名前は?」

[ウィル……と申します]


WILL(意志)……。それが、この子の名前らしい。

ほのかはその子をジッと見つめ、そして決意を固める。

そこには、戦う意思を灯した小さな少女が立っていた。


「お願いウィル。私に、ここにいる人達を守る力を貸して!! ウィル、セットアップ!!」

[イエス、マスター。魔法連結開始、同調完了。マジックアーマー起動]


天高く掲げるそれ。瞬間、彼女の体を桜色の魔力光が覆い隠した。

その中で、彼女は普段着が消えて新たに戦うに相応しい服装へと変えられる。


普段着が消え、新しく白を基調とした長めのスカートに青いラインが奔っており、同様のラインの奔る長袖と金の手袋。

その上に上着が羽織られ、ツインテールにしていたリボンが新たに桃色のリボンに変わる。


 足に脚甲が付いて、最後に胸の位置に赤いリボンが付けられる。

最後に彼女の前に桃色の粒子が集まって一つの杖が形成される。


先端に赤い宝石が填め込まれたそれを彼女は手にする。

直後に、彼女の背後に桃色を基調とした背景に翼を生やした美しい女神が杖を抱いた状態で瞳を閉じた形の紋章が出現した。



紋章が出現すると、部屋全体を強烈な光が埋め尽くして天井を破り桜色の光の柱が天高くへと駆け昇っていった。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 





ほのかがウィルを手にする少し前に、時は遡る。



謎のモンスターと戦闘を繰り広げていたフィリスは追い詰められていた。


攻撃の隙を突かれて接近を許し、まともに三メートルの巨体を誇るモンスターの体当たりをくらって弾き飛ばされた。


「あぐっ!?」

[フィリス!]

「くっ、やっぱり……実戦経験のない私なんかじゃ……!?」

[ラー……アルム……トール……]


ダメージ自体はマジックアーマーが吸収してくれたのだが、足に力が入らない。

完全に腰から力が抜けてしまって立つ事が出来なかった。


「フィリスちゃん!!」

「た、大変だ!! 他に防衛魔道具はないのか!?」

「さっき壊されてもうないんだって!!」

「こうなったら、この肉体一つで――「無理だから止めろ!!」おぶっ!?」


 大事な研究仲間のピンチにパニックに陥る研究員たち。

その間にもモンスターはゆっくりとフィリスへと距離を狭めて来ている。



絶体絶命の危機――





相手が姿勢を低くして飛びかかろうとした瞬間、施設の奥から突如激しい閃光が発生して辺り一帯を光で埋め尽くす。


「うわっ!? な、なんだ!?」

「ま、魔力感知!! 推定魔力……AAA!?」

「だ、誰がそんな魔力を!?」

[オオォォ……!! エル……エル……レム……!!]

「っ!? この魔力光……!?」


 施設を揺らす振動。そして、天井を破って天高くへと昇っていく桜色の光の柱。

その粒子が辺りに煌めきを放ちながら彼等の上にゆっくりと落ちてくる。



そして、奥へと通ずる扉が開き……そこから一人の少女がゆっくりと姿を見せた。


その手には赤い宝石の填め込まれた杖を持ち純白を基調とした服を身に纏う決意を固めた少女がそこにはいた。


[属性解析完了……。彼女の属性、それは……闇、祓いし光!!]

「皐月ほのか。ただいまを持ちまして、魔法少女として戦います!!」


杖の先をモンスターへと向けて彼女は相対する。

その背より女神の紋章が出現して周囲を明るく照らす。



今、強き意思をその瞳に宿す少女が遂に目覚めた。




そして、この時から彼女の運命の歯車は静かにその回転を始めるのだった。




新キャラ登場、その名もフィリス。

姓は今はまだ出てませんがその内出します。


今後も多くのキャラが出る可能性があります。


……キャラ設定、しっかり出来るかなぁ。

そんな不安が現在進行形で過っております……。


今後も更新は週一かもしくは隔週一になるかもしれません。

或いは、もっと早く更新できる時もあるかも。


要するに、不定期更新です。


それでは、今後とも宜しくお願いします。


では(゜∀゜)ノシ!!


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