プロローグ
新たに、一次小説の新連載始めました。
どうぞよろしくお願いします。
少女にとって、自分の住む街が世界であった。
街の外には広大な世界が広がってはいるが、そこ住まうのは過酷な環境を生き抜いたモンスターたちが住んでいて都市から都市へと移動するときの大きな障害となっていた。
土地の開拓によって安全が確立されてきている今でも、年間千人以上もの人がモンスターなどの被害で命を落とす事もある。
そんな外に住む恐ろしいモンスターから守ってくれる巨大な城壁。
その大きさは、自分が首を思いっきり上げなくては見えない程だった。
そして、もしもの時には自分の身も顧みずに戦いに赴く騎士達。
モンスターと戦う勇敢な戦士達の加護を受けて力のない自分達はこの城壁に囲まれた世界で平穏に生きて、大人になり、子供を産んで、そして年老いて死ぬと思っていた。
それもいいと思っていた。
けど、外の世界を見てみたい。
肌で感じたい、別の街に住んでいる人達と交流をしてみたい。
何度か街から街を転々とする行商人隊に同伴する事で家族と共に外へ出た事がある。
その時の感動は今でも忘れられない。
始めて外の世界を見た時、それは心が大きく跳ねて目が離せなくなったものだ。
また、あの景色がもう一度見たい。
小さい子ならではの好奇心が心を擽って来るのだ。
だけど、それが怖いと思うのも同様の感情だった。
外へ一歩でも出れば、実力のない者はあっという間に屍へと還られる。
自分の様な子供が生きていくには無理だと思っていた。
だから、この街の中で静かに暮らしていく方がいいと思っていた。
でも、そんな彼女の考えはある事件を境に崩れ去る事になる。
そして、同時に知る事になる。
自分達は、小さな箱庭で生きているに過ぎないのだと……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
~~魔法共和国~~
此処は、銀河系にある一つの世界『パルティナ』と呼ばれる世界が存在する。
地球に似た青い星であるが、陸と海の割合が4:6の割合である。
その周囲には月以外にも二つの衛星が存在し、それぞれが青と翡翠色をしている不思議な星だ。
その巨大な星の広大な大地には幾つもの国が存在している。
それぞれが、互いの領土を守り国境を隔てて人の行き来を監視する。
そんな国々の中に、魔法共和国というのがあった。
魔法技術の発展した国々が手を取り合って誕生した一大国家で、その国領は群を抜く。
中央に位置する大都市には共和国全体の警備や守護を担当する『特別災害対策本部』、通称『SCCA』が存在しており、それが治安維持を担当している。
彼等は中央都市のある場所から各方向に点在する八つの都市に駐在し、そこを中心として各地の警護を担っている。
そんな中央都市から離れた場所にある一つの都市の住宅街から物語は始まる。
街の中にある一つの喫茶店『皐月喫茶』。
この街ではかなり有名な喫茶店である。
美味しいスイーツを売っているおかげで毎日客がやってくる。主に女性や子供が多いが……。
その喫茶店を営業しているのが、その店の隣に建っている『皐月家』の両親である。
皐月家は五人家族。母である皐月 慧子の下に父である誠治が嫁いできたという関係だ。
その話は今は置いといて……。
早朝、台所で朝食の準備をしている慧子。三十代だと言うのにその美貌は未だ二十代を保っている。
元々が幼い顔立ちだった故か、成長してもさほど素肌には衰えというものを感じられない。
ただ、彼女は魔力を持たない所謂、一般人である。
「ふあぁ~……お母さん、おはよ~」
「おはよう、紅美。今日は早起きね?」
「大学生になったんだよ。もう、寝ぼすけじゃないもんね~♪」
この子は皐月紅美。皐月家の長女である。綺麗な艶のある黒髪を短くまとめて頭にカチューシャを付けている。
大体160センチくらいの女性としては平均的(?)な身長と出る所は出て引っ込む所は引っ込んだ、モデルの様なスタイルを持つ美女だ。
母は魔力を持っていないのと違って彼女には魔力の素質があり、高校では魔法学校を首席で卒業した優秀な魔法士である。
「よく言うぜ。この前も俺に起されなきゃ、一時限目に遅刻してただろ?」
「ふっ、過去は振り返るものじゃないの。未来を見据える事こそ重要なんだよ、恭輔」
「そんなずぼらな性格の所為で、彼氏の聖平さんに世話かかせてるって気付けよ……」
胸を張って偉そうな事を言う姉に、廊下より姿を見せて呆れた顔をするのが長男の皐月恭輔である。
今年で高校三年生になる彼は端正な顔立ちをした、所謂イケメンの部類に入る男だ。
体格は高校生としては少し筋肉がある方で、運動神経は家族の中では三番目に良い。
大体175センチに行きそうな身長で姉を見下ろす形で彼は彼女に語っていた。
彼もまた魔力の資質を持っており、主に格闘技術が高く大会では何度も優勝する実力者だ。
ちなみに運動神経の高さの順は……父>>>姉≧恭輔>>>>>>末っ子の順である(母は除外)。
「そんなこと気にしないもん。聖平はそれ位で別れるような人じゃないもん!」
「はいはい、ラブラブでようござんすね。それじゃあ、母さん。俺は道場の方に行ってくるよ」
「はい、行ってらっしゃい。朝ご飯になったら誠治さんと一緒に戻ってきてね?」
「へ~~い……」
ニコニコと微笑む母に彼は背を向けて歩きだし、背中越しに手を上げて家の隣にある道場に向かっていった。そんな彼の後姿を見て紅美は腰に両手をあててまったくと頬を膨らませる。
「ったく、あいつはあんな性格だから彼女の一人も出来ないのよ」
「いいじゃないの。恭輔はまだまだこれからなんだから。その内、可愛らしい子を連れて来てくれるわよ」
「だといいけどね……」
母の手伝いをして暫くして、朝食の時間になって道場より男二人が帰って来た。
「おはよう、慧子さん」
「あら、おはようございます。誠治さん」
彼こそがこの一家の大黒柱の皐月誠治。
慧子同様に三十代だと言うのに家族の中で最も運動神経が良い。
ただし、魔法資質を持っておらず如何してこの二人の間に生まれた自分達には魔法の資質があるのか全く持って謎である。
端正な顔立ちは今でも若い女性には人気の様で、皐月喫茶に来る女性の一部は彼が狙いで来ているのではないかと恭輔は推理する。
ただ、彼には一つだけ問題点がある。
それは、末っ子に対する異常なまでの過保護さである。
ある知り合いの男性がいるのだが……その彼が末っ子を弄ると途端に性格が豹変して刃物片手に飛び掛かるのだから始末に負えない。
そんな事を思っていた時、ふと時計を見てその話題の末っ子がまだ二階から降りてこない事に気付く。
「ってかさ、あいつ……まだ起きてこないのか?」
「ったく、あの子は……寝ぼすけなのは誰に似たんだか……」
「はっはっは、それはきっと慧子さんだろうな」
「もう、やだ。誠治さんったら/////」
「しょうがないね。私が起して来るよ」
デフォでいちゃいちゃする両親をスルーして、紅美は寝ぼすけの下へと向かう。
二階へと続く階段を上ってその子の眠る扉を開ける。
「すぅ~……すぅ~……」
「やっぱ寝てる……ほら、朝だよ。起きなさい」
「んん~~……むにゅ……」
傍まで来て布団の中でコタツに入った猫よろしく丸まっている少女を軽く揺すって起そうとする。
しかし、その子は起きる気配を見せない。
寧ろ更に布団を深く被って体をすっぽりと隠してしまった。
「こうなったら、最終手段だね」
そこで、彼女はその少女の耳元に口を近づけてそっと囁いた。
「起きろ!! お母さんの目覚めの鐘が鳴り響くぞ~!?」
「ひにゃあ~~!?」
それにまるで条件反射の如く飛び起きる少女。
寝ていたベッドの端まで素早く移動して枕を抱きかかえてカタカタと震える。
それの様子を見るに、『目覚めの鐘』というのがどれほど恐ろしいものなのかが窺える怯えっぷりだ。
怯えていた少女は目の前にいたのが母ではなく姉である事に気付いて辺りをきょろきょろとする。
「あ、あれ?お母さんは……?」
「残念いません」
「も、もうっ!! お姉ちゃん、脅かさないでよ!? すっごくビックリしたの!?」
「脅かしてごめんね?……おはよう、ほのか」
「おはよう、お姉ちゃん!!」
この少女の名は皐月ほのか。この皐月家の姉妹の末っ子である。
今年で小学4年生になる幼い女の子だ。
母似の幼い顔立ちに、亜麻色の髪とクリクリとした黒真珠の様な瞳をもった可愛らしい少女だ。
「早く着替えて降りてるんだよ? ご飯、準備できてるからね?」
「うん、分かった!!」
そう言って姉は先に降りる。
そして、暫くして家族全員が揃って楽しく朝食を摂り、姉は大学の方へと用事を済ませに出かけて兄も友人と遊びに出ていった。
その後にほのかも親友の二人の下へと遊びに行こうとしたのだが、母親に声をかけられる。
「ごめんね、ほのか。少し夕飯の材料を切らしてしまったの。買ってきてもらえるかしら?」
「うん、大丈夫だよ。ちょっと待ってね。今からマリアちゃん達に連絡入れるから」
「ごめんね、ほのか」
「大丈夫なの。少しくらい遅れても二人なら許してくれるから」
そう言ってニコッと笑う彼女。
そのほのかに買って来て欲しい食材とお金を入れた買い物籠を渡す。
それを持って彼女は玄関を飛び出した。
「ん~~、いい天気なの~♪」
今日も今日とて晴天が広がる。そのいい天気に彼女は背伸びをするように体をグッと伸ばす。
そして、深呼吸して新鮮な朝の空気を吸って両親へ挨拶をする。
「お父さん、お母さん。いってきま~~~すっ!!」
「車に気を付けてね~!」
「は~いっ!!」
舗装された道を駆ける彼女は、人通りの多い道を真っ直ぐに進んでいって歩道を渡って商店街へと入っていた。
早朝だというのに人で賑わう商店街の中を彼女は走る。
その少女を居並ぶ店の中で八百屋の店長が最初に気づいて呼びかける。
「おっ、ほのかちゃんじゃねえか」
「あっ、おはようございます。今日は何が安いですか?」
「そうだね~。今日は大根とかが安いぜ! それと、ジャガイモとナスとかも昨日よりは安く売ってるぞ」
「それじゃあジャガイモと大根をお願いします。丁度、味噌汁に使うのを切らしたそうなんで」
「あいよ!!」
そう言って店頭に並んでいる野菜を指さす。
ほのかは小さな手に持つ籠を広げ、店長はその中にジャガイモと大根を入れてあげる。
代金を受け取り、まいどっと元気よく返事を返す。
それに少女もお礼を言って礼儀正しく頭を下げてから他の店にも顔を出す。
その度に少女を歓迎する声と笑顔を店の人が見せていく。
「ホントに出来た子だな。うちのドラ息子にも見習わせてやりたいぜ」
その姿を見ていた八百屋の店長は嘆息し、改めて周囲にいる客に声をかけて営業を再開するのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
少女の名前は『皐月ほのか』。
此処、魔法共和国にある中央都市から離れた場所にある第三都市『コーネリア』に住んでいる平凡な家系に生まれた少女である。
家族構成は両親と姉と兄がいる一番末っ子の位置である。
素直で礼儀正しい可愛らしい子であることから商店街の人達にとってはアイドル的存在である。
ほのかは、買い物籠に頼まれた物を全部集めると来た道を戻り始める。
皐月家は、この街では有名な喫茶店だ。
『皐月喫茶』は住宅街の中にあって周辺住民は気兼ねなく足を運べるお店だ。
その店の隣にあるのが本家であり、家に辿り着いた彼女は玄関を開ける。
「ただいま~!!」
「あら、おかりなさいほのか」
彼女を最初に出迎えてくれたのは母である慧子であった。
艶のある肌に童顔でとても三児の母とは思えない若々しい女性だ。
その身につけているエプロンがとても似合っている。
「全部買ってきたの。はい、これ」
「ありがとうほのか。とても助かったわ~」
おっとりした声でお礼を言ってほほ笑みかける。
それに少女も笑顔を見せて嬉しさに頬を赤く染める。
そして、すぐに二階に上がってリュックサックを背負い玄関へと再び向かった。
「お母さん。私、遊びに行ってくるね!!」
「ごめんなさいね、ほのか。本当はもっと早くに遊ぶ予定だったのに……」
「ううん、気にしなくて大丈夫なのお母さん。友達には連絡していたから」
本来なら、彼女はもっと早くに広場で友人と遊ぶ予定だったのだが今晩の食材が切れていたというのを聞いて自ら買いに行く事を決めた。
その時に、友人に少し遅れるとの旨を伝えているので問題はない。
「それじゃあ、行ってきま~~すっ!!」
「遅くならない内に帰ってくるのよ?」
「は~いっ!!」
元気に返事を返して彼女は玄関を開けて外へと飛び出していった。
そして、友人の待っているだろう公園に向かって駆けだす。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
公園に辿り着いたほのかはその場で手を膝につけて息を切らしていた。
乱れる呼吸を落ち着かせてから辺りを見渡すと、大きな石像の前に親友二名を見つける。
「マリナちゃん、舞華ちゃん!!」
「あっ、ほのかちゃん!!」
「遅い!! 約束の時間から十分も遅れてるわよ?」
彼女の姿を見つけた二人がそう返す。
舞華と呼ばれた少女は紺色の髪を肩辺りで切り揃えている大人しそうな印象を与える子だった。
少女の名は『如月舞華』。
とある有名な家柄の長女だ。彼女の上には長男の『如月聖平』という人物がおり、その彼こそ、かなの姉の紅美の彼氏である。
運動神経及び学問や魔法学も非常に優秀な成績を残し、優秀な生徒として知られている。
逆にマリナと呼ばれた少女はウェーブのかかった金の髪を背中の中腹まで伸ばしていて勝気な瞳をもった活発そうな印象を与えてくる。
少女の名は『マリナ・レイスタード』。
世界的に有名なデザイン家『レイスタード家』の一人娘である。
少々勝ち気な性格を持っている少女だ。
勉学も魔法資質も優秀で舞華と同様に優等生として知られている。
それぞれの反応を示した二人の下に駆け寄ってほのかは苦笑いする。
「えへへ……。ちょっと色々と頼まれて……」
「ったくもう、しょうがないわね……」
「そう言って、マリナちゃんが一番心配してたくせに~?」
「ちょっ!? それは言わない約束でしょ!?」
舞華と呼ばれた少女がくすくすと笑う。それに顔を朱に染めて焦り顔であわてて注意をする。
それにほのかもつられてくすくすと笑い始めて、それを見て何かを諦めたようにマリナは溜息を吐いた。
「はぁ~……もういいわよ。心配してました!! 心配してましたとも!! 決めた筈の時間に待っていても来ないから心配してました!!」
そして、自棄になった様に叫ぶ。
そんな彼女を二人は宥めて何とか機嫌を直してもらってから目的の遊びを始める事にした。
「舞華、早くやるわよ」
「うん、そうだね。次に何時人が来て遊べなくなるか分からないもんね」
そう言って二人は公園の真ん中に移動して互いに向かい合う。
そして、目を閉じるて精神集中を始める。
すると、二人の足下に魔法陣が出現してそこより光が零れ始めた。
舞華の方は青い魔力光にマリナは赤い魔力光を発する。
その光が彼女達の体を包み込むと、先程まで着ていた服が一瞬で変化した。
そして、二人の前には剣と杖が現れて互いにそれを掴む。
同時に公園一帯を極僅かな結界が空間を覆って隔離する。
「さて、まずは昨日の復習と行くわよ!!」
「そうだね。意識を集中して、弾丸をイメージする……」
剣の切っ先を向けたマリナの周囲に三つの炎の球が出現する。
同じく杖の先を向けて舞華も周囲に三つの水弾を出現させた。
「「そして、構築が完了したと同時に一気に撃ち出す!!」」
一斉に放たれる三つの弾丸。
それが互いの弾丸に激突して爆発を起こして相殺された。白煙が辺りを僅かな時間だけ覆って晴れる。
「よし、感覚はあってるわね」
「上手く作れたね?」
「わぁ~、二人とも凄いの~!」
その様子を見ていたほのかが目を輝かせて二人を褒め称える。
「ほのかだって何時かは出来る様になるよ」
「あんただって魔力あんだから出来ない事はないわよ?」
「でも、私は全然だもん。二人みたいに上手くは出来ないの……」
三人は同じ魔法学校に通っているのだが、舞華達は魔法成績はいいのに対してほのかは全くと言っていいほど魔法の行使が上手く出来ないのだ。
勉学に関しては体育と図工を除けばマリナや舞華と同じくらいの成績なのだが、魔法に関してはとんと駄目なのだ。
それがほのかのコンプレックスでもあって悩みでもあった。
魔力はあるのに使えない。こういった症例は珍しいので現在の医学でも解明は出来ていない。
そういった事からほのかは学校で初めは同級生の者に虐められたものだ。
ただ、そんな少女をこの二人が庇ってくれた。
彼女達は基礎分野も魔法分野も成績が優秀だった事もあって流石にほのかを虐めていた者達も何も言えず、何時の間にかそれは鎮火した。
そういった経緯もあってほのか達は親友になれたし、他にも幾人かの友達も出来たのだ。
「そんな事で一々くよくよしないの。あんたにはあんたにしか出来ないものだってある筈よ」
「そうだよほのかちゃん。それに、ほのかちゃんも何時かは魔法が使える日が来るよ! 今はもしかしたら眠ってるだけかもしれないよ」
「うん、そうだね。二人とも、ありがとう。私、諦めないで頑張って見るね!」
二人の言葉に元気付けられてほのかも落ち込んだ表情から一転してやる気に満ちた目に変わった。
それを見て二人も笑顔を見せて、今度はほのかが少しでも早く魔法が使える様にする為に魔法のレクチャーをする。
そんなこんなで、三人は仲良く遊んで時間はあっという間に進んで行くのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
日が落ち始めて夕焼け空が広がり始めていた。
その頃には、マリアと舞華も特訓をし過ぎて体力が無くなっていた。
「今日はこれ位にして明日もやる?」
「そうだね。流石にこれ以上は魔力もないし出来ないよ」
「うぅ~……今日もセットアップできなかったの……」
いい汗掻いた二人とは逆にほのかは全然できないセットアップに落ち込み気味だった。
そんな彼女を親友二人は宥めてる様に背中に手を置いた。
「くよくよしない! 明日も休日なんだから次こそ成功させるわよ!!」
「そうだよほのかちゃん。諦めたらそこで終わりだよ? バルドさんも言ってたでしょ? “諦めたらそこでゲームセットだ。最後の最後まで諦めるんじゃない”って?」
知り合いの一人の人が言っていた言葉で諭す様に話す。
最後まで諦めてはいけない。
一瞬、刹那、瞬き一つ先にもしかすれば活路があるかもしれない。
それを投げ出して諦めるな。そういった意味合いが含められている言葉である。
その人は成人した男性であるのだが、彼女達とは浅はかならぬ縁がある。
それもあって彼女達は彼に非常に懐いているのだ。
「ふんっ。あいつの言葉を借りるのは癪だけど……その通りよほのか。あんたはまだまだこれからよ。絶対に出来るって」
「もう……マリアちゃんは本当に素直じゃないんだから……」
「にゃははは……」
それを素直に出せない親友一人の様子にほのか達は苦笑いだ。
まあ、会う度にしょっちゅう喧嘩をする位だから仕方がないと思うが……。
それからは明日の事を話し合いながら三人は並んで歩いていき分かれ道に辿り着いた。
「それじゃあ、また明日ね!」
「ほのかちゃん。またね!!」
「マリナちゃん、舞華ちゃん。またね~~!!」
去っていく二人と手を振ってまた会う事を約束してほのかもまた家路につく。
暗くなっていく空。その星の瞬く夜空が広がり始める。
月が昇り夜空の天辺に辿り着く。暗き闇を照らす優しい光、それが街全体を包み込む様に広がる。
人々に安らかな眠りを与える静かな時間が過ぎていくその時だった。
地平線の彼方より何やら重苦しい音が響き始めたのだ。
それは地鳴りを響かせながら広がっていき、大きな地震となって広範囲の大陸に拡散していく。
そして、それと同時にある地点より光の柱が一瞬ではあるが天に向かって伸びていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「エメローネ様!!」
とある場所にある研究所。その一室の扉が開いて一人の男性が飛び込んできた。
その部屋には一人の女性が椅子に腰を下ろしていた。
飛び込んできた男性は慌ててた様子でありながらも彼女の部屋に入ったと同時に片膝をついて忠義の礼をする。
「シーガル! 今の地震はまさかあの古代遺産が目覚めた予兆なのですか!?」
「可能性は高いかと!! 地震の発生源及び被害範囲、魔力周波数からエネルギー波数値などを現在検証中ですがおそらく……!!」
「直ぐに先遣隊を派遣しなさい。事の次第を見極めないと行きません!!」
「はっ、直ちに!!」
深く頭を下げた後、彼は弾かれる様にその部屋より出ていく。
それを見届けた後になって女性は立ち上がり、大きな窓の傍に歩んでそれに手を当てて苦虫を噛み潰した表情を見せる。
「まさか、あの封印が解けたというの? 数世紀も先まで安泰と言われていたあの封印が……。一体何が……?」
一点の方向を見つめ不吉な予感に表情を暗くする。だが、まだ確証はない。
この胸に込み上げてくる不安がただの杞憂であってほしいと彼女は心の中で思った。
またある国では地震が起きて直ぐに緊急招集が掛けられて王の間に名の知れた者達が集められた。
「閣下。こんな夜更けにこれだけの面子を集めるとは一体如何いった了見で?」
「口を慎まんかビアンカ。王の御前であるぞ!!」
「うっさいな~マルコのおっさんは~。こっちは寝不足でイライラしてんだよ。その額にある皺をいま此処でもう一本増やしてやろうかい?」
「若造風情が、年長者への口の聞き方ってものを教え込まんといけないか?」
「やってみろよ、こらっ!! 今度こそ冥府の先に送ってやろうか!?」
「どちらも五月蠅いぞ。閣下の前で粗相をするな。纏めて塵にするぞ……」
「むっ……そうであったな。すまない、アトラス殿」
騒ぎたてる二名に鋭い視線が向けられる。
それに若い方は言葉を詰まらせ、年長者は直ぐに謝罪する。
辺りが落ち着いたのを見てからアトラスは頭を垂れて目の前にいる王へと問いかける。
「閣下。この緊急招集は……? 一体何かあったのですか?」
「………先程の地震は、ただの自然現象ではない」
「なんと……!? それは誠でありますか、閣下!?」
「然り……。あれは何やら人為的作為のあるものに感じた……。よって、我らの国でも調査団を派遣をしようと思っている。だからこその緊急招集だ」
玉座に座る黒髪の男性。その鋭い眼が眼下にいる者達へと向けられる。
その瞳はまるで先を見越しているかの様に見えて臣下達は思わず戦慄を覚える。
「もしかすれば……。時代の歯車が今動き始めたか……?」
「閣下……?」
「ただの独り言だ気にするな。それよりも、直ぐに隊を編成しろ。もしかすれば……戦になる可能性もあるからな」
「っ!! ……御意!!」
玉座の前にいる一同が同時に頭を垂れて返答し、すぐさま王の間を飛び出して行動を開始する。
その臣下達の姿を王はただ静かに見つめ、何かを算段する様に目を閉じるのだった。
場所は再び変わって魔法共和国のある都市。
闇夜の世界が広がっている街の中にある大きなビル。
その屋上の端に一人の男性が腕を組んで立っていた。
「また面倒事が起きそうな臭いがしてきやがった……」
[世の中ってのは本当に飽きさせないね~!! 次々と色々なトラブルを送ってくれて楽しいぜ~ウヒャヒャヒャ!!]
[黙りなさい駄犬。事は重大な事態を招く可能性があるのですよ?]
[それがいいんじゃねえか!! スリルのない人生なんて、ネタのない酢飯と一緒だぜ~? 美味しく頂くにゃあやっぱネタが欲しいじゃねえか、ウヒャヒャヒャ!!]
「例えが微妙だな。もう少し捻ってから言え。ったく……。面倒事は皐月の菓子娘達だけでも十分だってのによ」
誰もいない空間に聞こえる二つの声。それに彼は返事を返していく。
そして、何時もトラブルを持ちこんで来るある少女達の事を思い出して溜息を吐いた。
[若。そう言えば最近、あちらに戻っていませんでしたね? これを機に一端様子を見に帰った方がいいのでは?]
「だな。皐月の菓子娘がまたトラブルを起こしそうな予感がする」
[第六感って奴かい、相棒?]
「かもな……。ここからだと飛ばせば二日で帰れるか……それまでに面倒事は起さないでくれよ」
[その願いは絶対に届かないと思うがねぇ~……]
[若、流石に私もそれには頷くのが難しいです……]
「言うな……。言った俺自身が一番無理だと思ってんだからよ」
そう言って彼は身を翻す。それに合わせて来ていた黒いコートが風圧で棚引く。
そして、同時に雲の切れ間から月の光が降り注いで彼を照らした。
「さっさと帰るぞ。もうこの街には用もないしな」
月の光に照らされた彼の姿……それは血の様に真紅の髪をしていて満月の様に美しい金色の瞳を持っている端正な顔立ちの男性であった。
彼の姿は月が隠れると同時に闇に溶ける様に消えていって、再び雲が晴れた時にはその姿は何処にもなかった。
この大地震の切っ掛けに、世界の歴史が再びその歯車をゆっくりと回り始めるのだった。
稚拙な文ですが、今後、宜しくお願いします。
では(゜∀゜)ノシ!!




