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第三十一話 創星の騎士

三十一話更新。


魔女と呼ばれる人物を守る四人の騎士は己が得物を持って、再び現れたほのか達に挑みかかる。

神樹の森を舞台に、勇ましき乙女達が空を舞う。


では、本編をどうぞ。



空中でほのかはプレセアの繰り出す弾幕を必死に避け続けていた。


「お願い!! 私達の話を聞いて!!」

「何度も言わせんな!! 聞く耳なんざねえよ!!」


説得を試みるほのかだが、相手はそれをばっさりと切り捨てて接近しミョルニルを叩き込んで来る。

それをウィルで受け止めて牽制けんせいの魔力弾を一発だけ作りゼロ距離で破裂させる。


「にゃあっ!?」

「くっ!?」


 爆風をまともに受けて二人は吹っ飛んで距離が出来る。

バランスをなんとか整えてからほのかは弾幕を張って相手に接近されない様にする。


牽制弾として飛ばされた桜色の弾幕内をプレセアは小柄な体を活かして擦りぬけていき、時々邪魔な魔力弾をミョルニルで破る。


「こんな事してたら余計に悪いうわさが立っちゃうの!! 魔女さんが悪者だって思われちゃうよ!!」

「魔女魔女ってうるせーな!! あいつは……あかねは魔女なんかじゃねえ!!」


激昂げきこうするプレセアの強力な一撃が叩き込まれる。

ディフェンシブで受けたほのかだったが、勢いに負けて押される。


余所よそから来た奴が、あかねを……あかねの事を知らねえのに魔女って言うんじゃねえっ!!」

[Over Limits,LevelⅠ……]


 怒りをそのままに彼女が咆える。

同時にターミナル『ミョルニル』から何かが外れる音が聞こえ、彼女の魔力量が跳ね上がりその背後に質量のある、ドリルを持つ少女の紋章が出現した。


ミョルニルの形態が変化し、あの鎖付きの鉄球の姿となる。


「受けきれると思うんじゃねえぞ!! くらえ、エアーデファウストッ!!」


 回転を始め鉄球を振りまわす。

小柄な少女が持つには似つかわしくない巨大な球体が回転に合わせて速度を増していく。

少女の回転速度が上がるにつれて徐々に勢いを増して重低音を響かせ、プレセアが投擲とうてきした。


黄色の魔力をまとった巨大な鉄球がほのかに向かって真っ直ぐに飛んで行く。

圧倒的存在感を見せつけながら自身に向かって迫るそれをほのかは逃げもせずに真っ向から迎え撃つ!


「ウィル……。あの時は負けたけど、今度はいけるね?」

[はい、マスター。今のマスターなら、大丈夫です。思い切ってやりましょう!!]


ウィルを持つ手に力が入る。精神を集中して、魔力を集める。

全身から桜色の魔力が溢れ、ほのかの背後に杖を持つ女神の紋章が姿を見せる。


「ウィル!! オーバーリミッツ!!」

[Over Limits,LevelⅠ!!]


彼女が叫ぶと同時にウィルが形態変形を開始。

先端の宝石を囲む様に三つの先の尖った金の魔力板が装着される。

輝くそれの表面に魔法文字が刻まれ、強き輝きを一層放つ。

更に後部にはブースターが付いてそこからは桜色の粒子が翼となって広がる。


「ブレイブモード!!」


潜在魔力量が一気に上昇する。同時に、彼女の背後にあった女神の紋章が厚みを増して立体感のあるものへと変化。より一層、荘厳そうごんさを見せつける。


―――そう、彼女はこの数日間の訓練で遂にオーバーリミッツシステムを使用できるまでに力を付けれたのだ。


彼女は、新たな姿となったウィルを構える。

先端を相手に向けて魔力を集中、同時に足下に魔法陣が展開される。

三叉の中央に桜色の魔力が集束を始め、ウィルの前に大型の魔法陣が展開される。


「聖なる煌めき!! ホーリーーー、バスターーーーッ!!」


放たれる光属性の砲撃。

フォトンブレイザーを凌駕りょうがする大出力の砲撃がプレセアの放った巨大な鉄球と真正面から激突した。


炸裂さくれつする桜色と黄色の魔力。

大爆発が巻き起こって両者の魔法が相殺そうさいされ霧散むさんした。


「なっ!? アタシの攻撃を……相殺そうさいした!?」


持ち主の下に戻る鉄球。自身の攻撃を相殺そうさいされた事が信じられないとでもいうような顔をしている。

急に彼女の能力が上昇し、尚且つ魔力量が跳ね上がった事に驚愕きょうがくしたプレセア。

そして、それはすぐに苦虫を噛み潰したものに変わった。


「てめぇ……。オーバーリミッツシステムを使いやがったのか!!」

「そうだよ。本当は使いたくはなかった。けど、こうしないと話し合いが出来ないなら……私は戦うよ!!」

「ほのかっ!」


遅れてフィリスがほのかに合流する。

そして、彼女がシステムを開放しているのに気付いて心配そうな顔になる


「ほのか、無理はしないでね? まだシステムは安定していないんだから無茶したら体に大きな負担が掛かるからね?」

「うん、大丈夫だよフィリスちゃん。無理はしないから」


 そう言って笑みを向ける。そうは言われても、心配なものは心配なのだ。

オーバーリミッツを使える様になったが、まだ完全に使いこなせている訳ではない。

使える時間は持って五分。それ以上は彼女の体に負担を来たす。


それまでに勝負を決めねばならない。

一度、解除されて再使用できるようになるのは体力的な面も考えて五分だろう。


「行くよ、フィリスちゃん!!」

「うん!! 援護は任せて、ほのか!!」


 ならば、自分にできる事……それは一つ。ほのかを守る事だ。

彼女を狙った攻撃を、自分が出来るだけ防ぎ、つ隙を作る様に攻撃する。

そうすれば、ほのかは安全に攻撃できる筈だ。


まだまだ自分は攻撃魔法が少な過ぎる。

捕縛魔法を加えてその少ない攻撃パターンでどうやって相手を抑えるか、何処まで相手の隙を作れるか。


(ほのかを守るのが、私の今できる事だ! 絶対に、守ってみせる!!)


 メローを強く握りしめ、目の前にいる騎士を見据える。

相手は魔力光から見て地属性。属性勝負ではほのかの方が有利だ。


だが今の一撃を見るに、破壊力に関しては向こうの方が一枚上手の様だ。

光属性で更に魔法界ではトップクラスの威力を持つ砲撃。

それがオーバーリミッツシステムで強力になったのに相殺そうさいされた。


つまり、相手の鉄球の一撃は一発の威力がほのかの砲撃をわずかに上回っている事を意味する。


(見た感じだと、あの子の持つ魔法にはバリア貫通ブレイク効果があるみたい。真正面から防御したら勝ち目はないみたいだね)


現存する防御魔法を破壊する魔法は『バリア貫通ブレイク』という特性を持っている。

一点集中する事で防御魔法の瓦解がかいうながし、突破を試みるたぐいの魔法だ。


魔法では高威力を持つ一部の魔法がこの特性をもっていて、正面から受ければ高位の結界魔法士でないと防ぐ事が出来ない。


あの攻撃をどう防いでほのかを援護するかが勝敗を分ける。

それを頭の中で何度も言い聞かせてから、親友のほのかを見る。


 何時でも準備はいいよとアイコンタクトで伝え、彼女も頷き返す。

プレセアもまた彼女達の動きを鋭い眼つきで観察していたのか、彼女達の動きに変化があったのに反応して動き出す。


「いくらオーバーリミッツシステムが使えても、アタシに勝てると思うなよ!!」


 鉄球を再度投げる。それを二人は散開して避け、彼女達はプレセアに向かって突撃する。

ミョルニルを引き戻して、再度初期形態に切り替えたプレセアもまた特攻。


三つの閃光が激しい空戦を再開した。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



一方その頃、リースリットもユグドラと刃を交えていた。


「ふっ!!」

「はあっ!!」


フォルテの斬撃と朱槍『ルーン』による鋭い突きが同時に放たれ、激突する。

雷と炎が迸り、大気中に残滓ざんしが舞い散る。


金と赤色の魔力光が空を駆けまわり、何度もぶつかっては離れるを繰り返す。

巧みな槍捌きでリースリットを攻撃するが、彼女も高機動で身を捻り反撃の斬撃を繰り出したりして応戦する。


一度、離れてサンダースピアを幾つも生み出し一斉に放つ。

ユグドラは正面から来るその弾幕を冷静に槍でさばき、避けれるものは避けて対処する。


そして、槍に炎をまとわせて離れた場所にいるリースリットに向けて突き出す。

先端より強力な火属性が放射状に放たれる。その勢いは凄まじく、まるで砲撃さながらだ。


自身の張る弾幕を吹き飛ばしながら迫る炎をギリギリのところで高度を上げてかわす。

その時、頭上の太陽に影が生じた。それにハッとなって彼女は上を見上げた。


「はああぁぁぁ!! 緋閃槍ッ!!」

「っ……くぅ!?」


何時の間にか上段をユグドラに取られていた。

上空から猛スピードで落下し、ルーンに炎をまとわせ突き出す。


咄嗟とっさに防御魔法を張って受ける彼女だったが、接触と同時に障壁が波打ち強烈なインパクトが発生。

その衝撃で彼女は障壁ごと地上に向かって錐揉みして落ちる。


地上に落ちる寸前に何とか体勢を整えて激突はまぬがれる。

が、魔法ダメージによってマジックアーマーが一部爆ぜ、肌が露わになる。

使用者の身を守るはずのそれが処理しきれない程にダメージが大きい事を物語っている。


破損した箇所かしょに魔力を通し、新たに展開して補強する。

その彼女の前に大量のふくろう達が何処からともなく姿を見せる。


再度リースリットへ肉薄しようとしたユグドラは驚いて急停止し突如出現した梟達を前に警戒して身構える。無数にいる猛禽もうきん類の鋭い眼光が全て自分をにらんでいる。


そして、羽ばたいていた梟達の中より一人の女性……アウルが姿を見せた。

振り袖の中から手を出し、手に扇子を握る。黒き風をまとって彼女はユグドラへと肉薄してその扇子を振り下ろす。


「はっ!!」

「ちぃっ!!」


それを炎をまとわせたルーンで受け止める。両者の魔力が爆ぜて周囲に拡散する。

アウルの攻撃を受け止めたユグドラは、その一撃の重さにまゆを動かした。


「ぬしの事を傷つけた事、わっちは許さぬぞ!!」

「この感じ……。貴様……ピステールの使い魔か!?」

「わっちの名はアウル!! 騎士の娘よ、覚悟せい!!」


相手を押し返して後方へ下がり距離を取ると同時に腕を振るう。

振り袖がはためき、彼女の周囲に大量のふくろうの羽根が舞い散る。


千鳥旋風破ちどりせんぷうはっ!!」


それが一斉にユグドラの方に向くと飛んで行くではないか。

回避しようと射線上から逃れる彼女だが、羽根達はその彼女を追って軌道を修正して背後に着いて来た。


「誘導式か……だとしても!!」


紅蓮の炎が槍を包み込み、上手く槍を振りまわしてアウルの飛ばした羽根を弾いて防ぐ。


全て弾いた彼女は勢いそのままでアウルへと突進。槍に魔力を通して突きを放つ。

赤色の魔力光を放ちながら放たれた攻撃をアウルは扇子を広げて防ごうとしたが、勢いあってか弾き飛ばされる。


「ナイトチャージ……!!」


そこにリースリットが両足に雷を纏った彼女が空を蹴って高速移動を始める。

ユグドラへと肉薄し、フォルテで斬りかかる。それをいなされて石突で攻撃されそうになる。


「っ、アクセラレート……!!」


しかし、さらなる高速移動魔法を発動してユグドラの前から姿を消す。

眼前で高速移動されて目が追い付けなかった。

その速さにユグドラがリースリットを一瞬だけ見失ってしまった。


「っ!! 後ろか!?」

「レイジング、スマッシュッ!!」

「ちぃっ!?」


気配を感じてすぐに振り返るも、リースリットは既に彼女を射程圏内にとらえれる範囲にまで近づいていた。フォルテの魔力刃に雷をまとわせて強烈な斬撃を繰り出す。


咄嗟にルーンで受ける彼女だが、体重を乗せ体全体を使って放たれた一撃を不安定な状態で受けてしまったので後ろに大きく吹き飛ばされてしまう。


「……ふっ、ピステール。お前を相手にルーンでは厳しい様だ」

「………」


その言葉に彼女はあれが来ると感じ取り身構える。

リースリットの予想通り、ユグドラはルーンをしまうと腰に挿してあったさやから剣を抜き放った。


朱色の剣『カラドヴォルグ』。その刀身に紅蓮の炎が纏った。


「だから、お前にはこの剣『カラドヴォルグ』で行かせてもらうぞ!!」

[Over Limits,LevelⅠ]


ユグドラの魔力が上昇する。

その背後に剣を構える鎧武者の甲冑を着こんだ女性の紋章が質量を持って大きく展開される。

カラドヴォルグの刀身に紅蓮の炎がまとい、炎の剣となる。魔力が風圧を生んで、彼女の美しい朱髪がなびく。


「行くぞ、ピステール!!」

「フォルテ!!」

[了解しましたマスター。システムを起動します]


魔力を爆発させて自分に真っ直ぐに突っ込んで来るユグドラを見たリースリットが相棒のフォルテへと声をかける。

それに応えてフォルテがシステムを開放する。


[Over Limits,LevelⅠ!!]

「……行くっ!!」


彼女の全身を金の魔力がおおう。

背後に剣を構えて立つ戦乙女の紋章が同様に立体感を持って姿を見せた。

フォルテを強く握り、リースリットも飛び出してユグドラに真っ向から勝負を挑む。


互いに上段に構え、一気に振り下ろす。金と赤の刃が激突して激しい火花を散らした。


「っ!! お前もシステムを使うのか!!」

「……はあっ!!」

「くっ!?」


力を込めてリースリットがユグドラを弾き飛ばす。

システムの力で上昇した威力に負けて吹っ飛ぶ彼女へリースリットは更なる追撃を仕掛ける。


剣に魔力を通し、大きく振りかぶる。

金の魔力刃がバチバチと雷を迸らせ、淡く光輝く。


「プラズマ、スラッシュ!!!」

「紅蓮剣!! はあっ!!」


剣より雷の斬撃が飛ばされた三日月状の斬撃はユグドラを狙って大気を裂きながら迫る。

それにユグドラもカラドヴォルグにまとった炎を斬撃として放つ。


空を焼く紅蓮の炎と雷刃。

互いの斬撃が両者の間で激突し爆発を起こして相殺された。


「ふっ、中々にいい一撃だな。これは、益々(ますます)楽しくなってきたぞ」

「………」


相手がより強くなっている事にユグドラは笑みを深くする。

もっと彼女は強くなる筈だ。その潜在能力をもっと引き出させたい、それを見たい。


そんな欲求が強くなった彼女はリースリットに突撃する。


リースリットも真っ向から勝負を挑みユグドラと剣を交える。

その彼女を弾き飛ばし、剣から炎の衝撃波を飛ばす。


「っ……。ヴァルキリーシールド!!」


盾を構える戦乙女の紋章が背後に姿を見せ、右手を前に翳すと正面に自身の身を隠せる程度の大きさの金色の盾が展開された。

青いラインの入った精巧なシールドに相手の炎の衝撃波が激突して爆発を起こす。

直撃は避けたが衝撃で小柄な彼女は吹っ飛ぶ。


その彼女と入れ違いでアウルが復帰し、リースリットの体勢が整う時間稼ぎをする為にユグドラへ突撃する。


相手の剣を紙一重で避けつつ羽根を飛ばし、風を砲弾に変えて撃ち出して攻撃する。

ユグドラもその攻撃を避けては剣を振るい、そして両者は得物同士をぶつけて鍔迫つばぜり合いになる。

アウルもまた強敵だと思ったユグドラは楽しそうな笑みを浮かべた。


「貴様も、中々に手強いな……!!」

「わっちをそこいらの使い魔と一緒にするでない。黒風のアウルと呼ばれたわっちの力……思い知れ!!」


黒き風が渦巻く。身に危険を感じたユグドラは後方へ下がる。


「貴様……風と闇の双属性か!!」


アウルより感じる魔力に驚いているユグドラへ接近し、アウルは閉じた扇子を叩きつける。

その攻撃をしまっていたルーンを取り出して受け止めた。

しかし、アウルの攻撃はそこで終わっていなかった。


黒扇烈風こくせんれっぷうッ!!」


腕をクロスさせて扇を広げて振り払う。

黒い旋風が巻き起こり、正面にいたユグドラに襲いかかる。

咄嗟に防御障壁を張り彼女は攻撃を耐えきる。

その間に何とか体勢を立て直したリースリットが戻って来た。


「アウル……」

「ぬしよ。わっちが援護する。存分に戦うがよい!!」

「……うん」

「二対一か……。だが、その程度で倒せるほど我々インペリア人は甘くはないぞ!!」

「え……?」


気になる発言が聞こえ、彼女は動きを一度止めて今の言葉に対して思考をめぐらせようとした。

しかし、その答えが分かる前にユグドラが突撃してきたので思考を切り替えて彼女はユグドラと交戦を再開した。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



ルチアは自分と相対する二人の少年少女に驚いていた。

金髪の少女の方は魔法を使わずに己の肉体だけで自分の魔法を弾き、相棒であるターミナル『パールグラス』の攻撃を爪で弾いてくる。


身体能力が高く、一撃でも貰ったら致命打になりかねない。


 もう一方の黒髪の少年も見た事もない魔法とは違う力を振るって攻撃してくる。

単発式もあれば、範囲系もある。詠唱してから発動されるのである程度の予測は出来るが……如何いかんせんそこから繰り出されるのが予想できないから厄介極りない。


 サヤから繰り出された爪による一撃を避ける。

その斬撃が背後にあった大木を縦に両断。幾つもの木材へと変えてしまう。

腰にある大型のスピナーを高速回転させて突撃、サヤへと攻撃を仕掛ける。


 それを爪を振るって応戦。両者の間で火花が爆ぜてまたたいた。

魔力を込めて回転力を上げて威力を上げてサヤを弾き飛ばし、追撃を入れようと両足に力を込める。


しかし、足下に見た事もない陣…魔術陣が広がる。

身の危険を感じた彼女は追撃を諦めてその場より飛び退く。


 直後に地面が赤く光って盛り上がる。赤熱した地面が爆ぜて溶岩が噴出した。

間一髪で避けた彼女は周りに飛び火した木々を見てスピナーを動かして根元から両断。

そのまま自分を中心に高速回転。燃え始める木を次々に細切れにして周囲に広がるのを防いだ。


「貴様!! この森を焼き焦がす気か!!」


 アシュトンの使用した魔術に対して、ルチアが激昂げきこうして咆える。

その怒り様に彼は体をビクッとさせて慌ててそれを否定しようとした。


「えっ、そ、そんなつもりじゃ……!?」

「主を焼き殺すというのなら、ワタシは貴様らを許さん!! 『パールグラス』、オーバーリミッツだ!!」

[Je. Over Limits,LevelⅠ……]


怒りを力に変えてルチアの魔力が跳ね上がる。

彼女の呼び声に二つのスピナーから少女の声が聞こえて来た。

腰にある二つの大型スピナーの腹の一部が開いて排気口が出てくる。


その二つのスピナーを合わせて合体。

それはまるで四枚の花弁を咲かせる花の様にも見えた。

排気口から彼女の魔力光であるライトグリーンの光の粒子が噴き出る。


「この世との別れの花を、貴様に送ろう!! ブルーム・デス・ヒメルスッ!!」


大きく振りかぶったスピナーを全力で放った。

放たれたスピナーは排気口から排出される魔力を巻き込んでまとい、ライトグリーンに輝く戦輪と化した。


それは正に、天へといざな葬花そうかの様に見えた。


あまりに綺麗な光景を前にしてアシュトンは避ける事すら忘れて口を開けてほうけた表情で立ちつくしていた。その彼へ容赦なくスピナーの一撃が直撃する。


「っ!? がはっ!?」

「アシュトンッ!!!」


まともにくらった彼の体が宙を飛び、蹴鞠けまりの様に二、三回跳ねて地面を転がった。

彼を弾き飛ばしたスピナーは弧を描いて宙を舞い、ルチアの下へ舞い戻りその脇の地面に突き刺さる。


「アシュトン!! オイ、しっかりしろ!!」


直撃を受けた彼の下にサヤが駆け寄って抱き起こす。うめき声が聞こえる事から生きてはいる様だ。

しかし、まともにくらった一撃が重い事をサヤは触れただけで理解した。


仲間の事に気を取られてサヤの両サイドにスピナーが飛来して滞空。

正面にはルチアが移動して大型のスピナーを向けていた。


「動くな。動けば貴様もただでは済まんぞ」


 低い声で語るルチアの眼にはそれを実行する気迫が乗っていた。

動く事も出来なくなったサヤは歯軋はぎしりしてルチアを見上げてにらみつける。



「アシュトン君、サヤちゃん!!」

「二人が危ない!! 助けに行かなくちゃ!!」


上空で交戦をしていた二人がアシュトン達のピンチに一瞬だけ意識をそちらに向けてしまう。

その一瞬の隙がプレセアにとっては攻撃のチャンスとなった。


「テメーらの相手はアタシだーー!!」


ミョルニルを変形させて再び鉄球にする。

自分ごと回転して遠心力で勢いを付けてコマの様に回転する。


「ギガント、バスターーー!!」

「っ!? きゃあっ!」


鎖が伸びて回転の力を受けた鉄球がほのか達を横から襲撃する。

咄嗟にほのかはフィリスごとディフェンシブでおおい身を守る。


 しかし、オーバーリミッツを発動した状態で張った障壁に激突した途端。

凄まじい衝撃が腕に襲いかかり彼女達は呆気あっけなく障壁ごと弾き飛ばされて墜落した。


 地面に激突する寸前に何とか姿勢を変えて飛行魔法を再度発動、何とか安全に着地する。

ただ、身体に来るダメージの影響で二人もまたその場で膝を折ってしまい動けなくなった。


 四人がピンチにおちいったのにマルグリットと戦闘していたバルドは気付いた。

彼女達を救助しようと彼は鍔迫つばぜり合いになっている相手を押し返し、ケルベロスを地面に叩きつける。


砂塵さじんが土砂と共に舞い上がって目晦めくらましとなり、マルグリットはその場から動けなくなる。

その間に彼はその場から退き、先にルチアの方へと駆ける。


「黒狼斬!!」

「なにっ!? くうっ!?」


死角からの攻撃に驚いたルチアが驚いて咄嗟とっさに魔法障壁を張って防御する。

盾に激突し、爆ぜる黒き衝撃波。立ち込める黒煙を突き破ってバルドが目の前に飛び出す。


「しまった!!」

「はあぁぁぁ!!」


両手の大剣を大きく振り上げ闇の炎をまとわせ、上段から同時に叩きつける。

サヤ達に向けていたスピナーを自身の前に回して風の魔力をまとわせて盾の様に構える。


障壁が砕かれ、スピナーに激突。

爆発が巻き起こってルチアの体が後方へと大きく吹っ飛んだ。

両方の剣を虚空にしまった彼はアシュトンとサヤを抱えてその場を退き、地面に膝を落としたほのか達の方に移動する。


「二人とも無事か?」

「だ、大丈夫なの……」

「な、なんとk―――っ!! バ、バルドッ後ろ!!」

「もらったーーー!!」


背後よりプレセアがミョルニルを振り下ろす。

重力と彼女の腕の振りに従って柄が動き、それに繋がっている鎖が連動して鉄球へと力の向きを伝達する。


彼の真上から巨大な鉄球が猛スピードで落ちてくる。

肩越しに目の端で捉えたバルドは虚空より再びケルベロスを取り出し、自身の頭の上に水平にかかげた。


ケルベロスの腹に鉄球が激突し、強烈な荷重が掛かる。

わずかばかり彼の脚が地面に沈んだのを二人は気付いて彼の名を叫ぶ。


「~~~っ……!! おらあっ!!」


歯を食いしばって耐えきった彼がそれを弾き上げた。

よもや自分の一撃を今の体勢から押し返されるとは思ってもいなかっただろうプレセアは驚いて動きを止めてしまった。


その間に向きを変えたバルドは跳躍ちょうやくし、プレセアへと肉薄する。


「淵王灰塵破!!」

「うおあっ!?」


闇の炎の斬撃が繰りだされる。

障壁を張って身を守るプレセアだったが、直撃を防いだ後に爆風で吹っ飛ばされる。


それと入れ違いになる様に今度はマルグリットが飛び掛かる。

空中で上段、中段、下段と素早く繰りだされる攻撃をさばききるバルド。


「『ナイアス』、オーバーリミッツ!!」

[Je,My master. Over Limits,LevelⅠ!!]


得物を振りまわしていたマルグリットが突然システムを開放する。

棍だったそれに幾つもの関節を作る。

多節棍となった『ナイアス』はバルドの構えた防御を回り込む様に避けて頭部へと命中した。


脳を揺さぶられて動きが鈍った彼に更に追撃を仕掛ける。

それを何とか腕を動かして防ぐが、力が入らずにそのまま地面に叩き落とされる。


背中から落ちる寸前に回転して足から着地する。

ただ、頭部にダメージが残っているのか若干ふらつく。それを慌ててほのかとフィリスが支える。


そこに三人の騎士が一気に攻め込んできた。

突撃する三人を前にほのか達が迎え撃とうとウィルとメローを構える。

それをバルドが手で制し、自らが腕を振り上げる。


崩襲臥龍陣ほうしゅうがりゅうじんッ!!!」


地面にバハムートを叩きつける。

すると、彼を中心に全方向にエネルギーが伝わり地面が盛り上がって噴き出す。

大量の土砂と岩塊が広範囲に渡って巻き起こり、プレセア達は吹っ飛ばされた。


「くっ、手負いだと言うのになんという力だ!!」

「うえぇ~!? 無理無理無理ですよ~!! こんな人に勝てる気がしないですよ~!?」

「泣き言言ってんじゃねえ!! アタシ達が戦わなくて、誰があかねを守るんだよ!! アイツらみたいな敵から守るのは、アタシ達しかいねえだろ!!」

「ま、待って!? 私達は本当に戦いに来た訳じゃないの!! ただ、お話がしたくて……!!」

「信じられるか!! そう言ってあかねに近づいて倒す気なんだろ!!」

「そ、そんな事は――!!」

「この森から、出ていきやがれーーー!!」


 ミョルニルを振りまわし彼女達に向かって投擲とうてきする。

巨大な鉄球が再び彼女達へと向かって轟音を立てて迫る。


オーバーリミッツも終了してしまった彼女達にあれを防ぐ術は今ない。

それでも、何としても防ごうとほのかとフィリスは身構えた。


―――――その時だ。両者の間に地を蹴って滑り込む影があった。

それが、足に魔力を通して蹴り上げる。


鈍い音が森の中に響き渡り、鉄球ミョルニルが真上に打ち上げられた。


「「「なっ!?」」」


その正体を見て驚いたのは騎士達だった。

ほのか達の前に立つのは白い袖の広い服を身にまとった銀髪の女性がいたのだ。

ただ、その姿は少し異様なものだった。


腕はクロスした形で拘束具の様な物で拘束されており、口も声を発せられない様に布の様な物でふさがれている。

ただ、その紅い瞳はこれ以上の戦闘は止めろと言っている様に鋭くとがって騎士達を見ていた。


「な、なんで邪魔すんだよアイネ!!」

「……………」


アイネと呼ばれた女性はその抗議の声に対して(喋れないから)無言を貫く。

そして、視線だけを森の奥へと向ける。


その先にいたのは――――


「こらーーっ!! 皆して何してるんや!!!」


怒った様相で騎士達を呼ぶ、一冊の本を抱える一人の栗色の髪をショートカットにした少女が立っていたのだ。




魔女を守ろうとする騎士達の激しい攻撃を前に押されてピンチに陥るほのか達。

そんな火花散らす両者の前に現れたのは、銀髪の女性を引き連れた一人の少女。


栗色の髪をショートカットにした少女は一体何者か?

それでは、今後とも宜しくお願いします。

では(゜∀゜)ノシ!!

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