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第三十話 Fight

三十話更新。


訓練を受けて数日後、少女達は森へと再び足を踏み入れる。

彼女たちを待つのは、創星の主を守りし四人の気高き騎士達。


では、本編をどうぞ。


ほのか達は再び神樹の森へと足を踏み入れた。

目的はあの騎士と名乗る女性達にもう一度会って話し合いをする為だ。


「今度は勝手に一人で先に行こうとするなよ。また撃墜されたのを助けに行くのはもうごめんだ」

「にゃはは……。でも大丈夫なの!!」

「何を根拠に大丈夫って言ってんだか……」


意気込む彼女を見てあきれた表情を見せるバルド。

それにフィリスはクスクスと笑う。


「んで、ドコまで行きゃいいんだ?」

「この森の奥には一番大きい大樹がある。あの村に着いた時に見えただろ?」

「そういえばあったね」

「今度は、そこに行くんですか?」


アシュトンの問いに彼はうなずく。

あそこはこの森の中では守り神のような存在らしく『神樹の森』と呼ばれるのはそれが所以である。

強力な光属性の結界が張られていて、同属性のモンスターですら拒まれるという。


「もし、魔女って奴が森の中に住めるとしたらそこくらいしかない。あの大樹はこの大陸では最強クラスの結界を持ってるからな。噂だとSSクラスのモンスターでも入るのは難しいとさ」

「そ、そんなにすごいの!?」

「でも、それじゃあ入る事出来ないんじゃないんですか?」

「アシュトンの言う事ももっともだな。けど、あの木は敵意や悪意を読み取る力を持ってるらしい。だから、何もたくらんでなければ入れてくれる」


もし、魔女と呼ばれる存在が人に悪意を持って攻撃した訳じゃなければそこに住んでる可能性が一番高い。

そう言ってバルドは真っ直ぐに神樹の立つ場所に向かって道なき道を進む。


木々の生い茂っている道は日中のお陰で薄暗い程度で足下は確認出来る。

根がそこらじゅうから生えていて足場は悪い。


 その悪路あくろを一行はバルドを先頭に歩き続ける。時々木漏れ日が差し込み、鳥のさえずりが聞こえてくる。

地上では草を食むイノシシ『ボア』やシカの『ホーン』といった野生生物が見つかる。


 『ボア』や『ホーン』は幅広い生息地を持っており、主に食肉用として狩猟される。

分類としてはモンスターではなく、家畜の豚や牛といった動物に入る。

彼等は野生世界をたくましく生きている為、身が引き締まっており、脂ものっていて美味な食材として有名だ。


『ボア』の方は少々肉に臭みがあるものの、塩でんで臭みを取ると柔らかく鮮やかな赤身に変わる。

脂の量は『ホーン』よりもあって食用油を使わずに直に焼くのが通の食べ方だ。


逆に『ホーン』の方はねる様に駆ける強靭きょうじんな筋肉を持っているので歯応えがある。

臭みもなく、『ボア』よりも美味で調理しやすいのが特徴である。


どちらも食肉用としては重宝されている。


ただし、時々外敵と戦い過ぎて凶暴化しモンスター化した事例もあるのでそこを見極みきわめないと痛い目を見る場合もあるので注意しよう。


 森林浴を楽しみながらそれらを見つけてはしゃぐほのかとフィリス。

アシュトンもサヤに何度か指を指しながら教えるが、当の本人は如何でもよさそうな様子。

リースリットもアウルの傍から離れようとせず周囲を警戒半分で見渡していた。


あまりにも平和すぎる光景にバルドは思わず苦笑するが、前方から感じた気配に気付いて表情を引き締めて立ち止まる。


「わぷっ!?」


 その彼の背中にほのかがぶつかって鼻を押さえる。

若干鼻の頭が赤くなっており、涙目で彼女は彼を見上げる。


「バルドさん、痛いの」

「その痛みは後に取っておけ。どうやら、客人が来たみたいだぜ」

「ふえ?」


彼が視線を送る先を彼女達も見る。

すると、茂みが揺れてそこから数頭のヴォルフが姿を見せたのだ。


ただ、このヴォルフは普段のヴォルフとは様相が異なった。

口からはまるでサーベルの様な長大な犬歯をもっていたのだ。


その数は四頭。


「サーベルヴォルフ!? 繁殖期以外は群れない筈のモンスターがなんで複数も!?」

「大方、同時に獲物を見つけたって感じだな。連携は取らねえと思う」


牙を見せてうなる彼等は自分達を円を描く様にウロウロしてこちらの出方を窺っている様だ。

彼女達も互いの背中を守る様に合わせて迎撃の体勢に入る。


「ウィル、いつでも攻撃できる様にしてて」

[了解です、マスター。何処から来ても迎撃準備は整っております]

「……フォルテ、タイミングを合わせて仕掛ける」

[はい、マスター]


姿勢を落とした彼女が両足に魔力を通す。

雷が足にまとい、力を込めて地面を踏みこむ。


「行く……。ナイトチャージ……!!」


瞬間、彼女が爆発的な加速力を持って単身飛び出した。

正面にいる一頭に向かって斬りかかる。


が、相手は持ち前の瞬発力でその攻撃を避けると後方にあった木の幹に足を付けてばねの様に飛び出して彼女へと飛びかかる。


リースリットはその場から飛び退き、別の木の枝に飛び移っていく。

その後をサーベルヴォルフが追いかけて跳躍ちょうやく。彼女のあとを一頭が追跡していった。


「リースリットちゃん!?」

「あのバカ……単独行動はするなって言ってたのに」

「ぬしの事はわっちに任せい。他は任せたぞ」


そう言い残してアウルもまた彼女のあとを追って飛翔、彼女とサーベルヴォルフの追跡に行ってしまう。

残された面々を仕留めようと他のモンスターが好機とみて一斉に襲いかかってきた。


「ちっ、こうなったら仕方がねえ。お前ら、迎撃するぞ!!」


飛びかかる彼らを散開して避ける。

三頭のそれらはほのかとフィリス、サヤとアシュトン、バルドにそれぞれ分かれて地を駆けて追いかける。


サーベルヴォルフは木の幹を蹴って軽やかに動いて合間を縫って飛行するほのか達を追いかける。


「速い!?」

「さすがは森に長けた進化をしたヴォルフ種だね。森の中じゃダントツに速い……!!」


サーベルヴォルフは森の中などで生息するヴォルフ種が進化したモンスターだ。

木の上や草の合間に身をひそめて獲物が通りかかると飛び出して襲いかかる。


あの長大な犬歯で噛み付かれたら最後、致命傷で命を落とす。森の中では獲物に逃げられやすい。

だから、彼らは相手を一撃で仕留める能力を身につけたのだ。


生物の進化を感じつつも、その獲物にされてたまるかと彼女達は木々の合間をい弾幕を張る。

それを器用に相手は避けると、近場の幹を蹴りほのかへと飛び掛かって来たのだ。


「かかった……!! フォトンシール!!」


しかし、飛び掛かったサーベルヴォルフに待っていたのは桜色の輪。

それが彼の体を縛り付ける。


フォトンシールはほのかがみ出した光属性の捕縛式魔法だ。

その拘束力は強く、相手は身動き一つできずに地上へと落下。

落ちる相手に向かってフィリスが矢を構える。


「アクア、インパクト!!」


 圧縮された水属性の魔力矢が放たれる。それが見事に命中し、炸裂。

爆発が起きて煙の中から気絶したヴォルフが地面へと転がった。


「ナイスタイミングだよ、ほのか」

「えへへっ、やったねフィリスちゃん!!」


連携が上手く行った事に彼女達はハイタッチをして喜びを分かち合った。



 その頃、リースリットの方では木々を飛び交って相手と交戦を繰り広げていた。

互いに幹から幹へと、枝から枝に飛んでは交差する。


相手の鋭い爪や牙をかわしながら彼女はフォルテで確実にダメージを与えていく。

体毛に傷が付いて徐々に動きが鈍くなる。


サーベルヴォルフは幹に爪を立てて、次いで姿勢を落として一気に跳躍ちょうやく

リースリットの方へ飛びかかる。


「黒き穿槍せんそう、ブラッティエッジ!」


しかし、直後に地面から赤黒い紋様が描かれた黒槍が二本飛び出しそれが相手の体を貫いた。


「ぬしよ。あまり単独行動は頂けぬぞ?」

「アウル……」


声に反応して後ろを向くと、何時の間にか背後に立っていた。

広げた扇子で口元を隠していたがそれを一気に閉じる。


同時に槍が爆ぜ貫かれていたヴォルフもまた爆発に巻き込まれて消し飛んだ。


「さて、元ぬしの下に帰るかの」

「……ん」


 来た道を戻ると、そこには他の面々が既に戦闘を終えて集まっているのが見えた。

その中にいたほのかが、戻って来たリースリットとアウルに気付く。


「あっ、リースリットちゃんにアウルさん」

ようやく戻って来たか……」


全員が彼女の方を向く。

一人で勝手に行動した事に対して特に気にする事もない彼女だったが、バルドに手招きされてそちらに歩み寄る。


「……なに?」

「………」


問いかけるも、ジッと見つめられて無言で返される。

一体どうしたのか、と思って彼女は首をかしげる。


すると、彼はおもむろに右手を伸ばして自分の前で止める。

中指を曲げて親指の腹で先を押さえ、次の瞬間―――


「ていっ!!」

「ふみゅっ!?」


デコピンされた。



額に来た衝撃に思わず頭をけ反らせて、続けてくるジンジンとする痛みに両手で押さえうつむく。

わずかに赤く染まっている個所が、彼女の白い磁器の様な肌で目立つ。


「痛い……」

「当たり前だ。痛くなる様にしたんだからな」


とがめるような目で彼を睨むと、彼にあきれた表情で見返された。


「あのな、リースリット。せめて俺達とパーティ組んでる時くらいは連帯行動を取ってくれ。……俺が困る」

[主に面倒事が増えるからだけd「黙れナマクラ」ドゥガチッ!?]


余計な一言を言おうとしたケルベロスがド突かれて沈黙する。

聞き取れなかった彼女はキョトンとした顔で見つめてくるので、彼は誤魔化しもねて彼女の頭を今度は撫でる。


「いいな~。バルドさん、私もでてなの~」

「ん? ……いいぜ、こっちに来な」


催促さいそくするほのかを見て、彼は笑みを浮かべて手招きする。

ただ、その笑みが何かをたくらんでいるのに気付いたのは近くにいたリースリットだけだったりする。


 そんな事に気付かないで、トコトコと駆け寄ったほのかの頭にバルドがもう片方の手を添えて撫でる。

気持ち良さそうに目を細め、されるがままの状態になった。


「にゃふ~~♪」

「……ふっ、ほれほれほれほれ!!」

「にゃ~~ッ!?」


完全に力が抜けきった途端、彼の目が光った。

撫でまわす勢いが急に上がり彼女を回す動作へと変貌へんぼうする。

それを前にほのかは成す術なくその場でクルクルと回される。


まるでコマの様である……。


「うわ~……」

「フィリスもやるか?」

「え、遠慮するよ……」


目の前の光景に口を開けてほうけるフィリス。

そんな彼女を見て、バルドが誘いの声をかける。

それに彼女は、引きった笑みを浮かべて断っておく事にした。


「ふえ~~……、せ、世界が回ってるのぉ~~……」


ようやくナデナデ地獄(ほのか命名)から解放された彼女は目を回した状態でフラフラしてそんな事をのたまう。


「世界は自転してんだから回ってるのは当然だろ?」

「うぅ~~……もうもうっ!! そういう意味で言ってるんじゃないの!!」

「知ってるし」

「む~~!! バルドさんのバカバカバカ~~ッ!!」


 むくれて抗議を上げる彼女を軽くあしらうと、今度は叩いて来た。

ポカポカと叩いてくる彼女だが、その一撃一撃は大した事なく、むしろくすぐったい。


そんな彼女の攻撃をしばし笑って受ける。

微笑ほほえましい光景にフィリス達も自然と笑顔が浮かぶ。


その中で、リースリットは撫でられた自分の頭をぺたぺたと触って感触を確かめていた。

そして、それをアウルがニヤニヤと笑って見ているのに気付いて赤面してうつむいてたりしていた。


「さて、片付いた事だし奥に進むか」


敵も片付いた事だし、先へと進もうと彼が一歩踏み出す。


その時だった。

キンッという張りつめる様な音と共に辺りの景色が薄い黄色に染まって、一同の体をいい様のない気配が駆け抜けたのだ。


「これって!?」

「封鎖結界だ!」


周囲の空間と隔たれた別空間を生み出す封鎖結界。

突如として訪れた隔絶された空間に閉じ込められたのにほのかやフィリスは驚いて慌てふためく。


「……リースリット、お前がやったのか?」

「違う……。これは、私じゃない」

「ぬしの言う通りじゃ。ぬしは何もしておらん。それに、これは如何やら地属性の力を含んだ封鎖結界のようだ。それと元ぬしよ、監視に向かわせていたわっちのふくろうがやられた」

「……気付かれたか?」


それに彼女は首を横に振る。気付かれてはいない。ただ、しもべふくろうがやられたのは結界を張られる前だ。

監視していた事は感づかれたのかもしれないが、それが誰なのかはバレてはいないと予測できる。


「景気のワリィ色だな。……ぶっ壊すか?」

「霧島さん!? 状況も分からないのに、それは止めようよ!?」


爪を出して物騒な事を言い始めたサヤをアシュトンが慌てて止めに入る。

彼の考えに、バルドも同意見なのか頷いて彼女を止めた。


「アシュトンの言うとおりだ。状況も分からねえで破壊するのは不味い。相手を刺激する事に繋がるかもしれないしな」

「……チッ、分かったよ」


渋々といった感じで彼女は腕を下ろした。

それにアシュトンはホッと胸を撫で下ろし、バルドはやれやれと肩をすくめる。

その彼の服のすそをキュッとまんで軽く引く者がいた。


「……バルドさん。あっちから魔力を感じるの!」


見下ろせばそれはほのかで、彼女が指差す方向を見やるとその方角は森の奥へと通ずる方角で、彼の目指す神樹のある場所とほぼ一致していた。


「あっちか……。なんか、また面倒な臭いがしてきやがった」

[ですが、若。行かないと私達は誰が張ったかも分からない封鎖結界の中を彷徨さまよう事になりますが?]

[面倒事になってるのは最初っからだろ? だったら、増えたって今更じゃねえかウヒャヒャヒャ!!]

「どのみち、行くしかねえのか……。ほのか、案内できるか?」

「うんっ! こっちなの!!」


一番、気配を感じ取れたほのかを先頭にバルド達は森の更に奥深くへと足を踏み入れていく。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




歩き続けて数十分後、魔力反応が最も強く感じる場所へ彼女達は辿り着いた。


そこで彼女達が最初に見たのは、大量の事切れたモンスターの骸だった。

ベヘモットにサーベルヴォルフ、複数の種類のモンスター達の死体を前にほのか達は息をのむ。


「なんなの、これ……!?」

「みんな、死んでる……」


目の前の惨状さんじょうを見て吐き気が込み上げてきた。

それをグッと堪えてなんとか気持ちを落ち着かせる。


 そうこうしている内にモンスター達の骸が粒子となって崩れていく。

それぞれが特有の魔力光の粒子となって消えていくその向こうで三つの影が姿を見せる。


「誰かいる!?」


大量にあった粒子が消えていき、その姿が明瞭めいりょうになる。

それを確認したほのかが急にあっと声をこぼした。


「魔力反応があると思ったらまたテメーらかよ」

「私達の動きを監視していたこのふくろうは、どうやらあの者達の使いの様だな」


そこにいたのは、ほのかとリースリットを破った創星の騎士と名乗る『プレセア』と『ユグドラ』、更に新たに二人の人物が加わっていた。


 一人はクリームカラーの長髪にウェーブがかかっている棍を持つ女性だった。

立襟で裾の深いスリットの入ったドレスを着こんでおり、スリットから太腿ふとももあらわになっている。

そして、かぶっている帽子には札が貼られているという奇妙な出で立ちをしている。


 もう一人は明るいグリーン色『シャルトルーズ』の髪を肩辺りまで伸ばし、そこから背中にかけて一つに結った髪が下ろされている。

額を守る防具の一種鉄製のヘッドバンドを装着しており、全身を純白のドレスにその上にプレートアーマーを着こみすそなどには装甲板が付いていた。


そして、特徴的なのは腰辺りから両脇に展開されている二つの円盤……というより戦輪。

スピナーの様な身長の三分の二ほどある巨大なもので、更に腕にも一回り小さなものを装着している。


「うえぇっ!? だ、誰か来ましたです~~!?」


クリームカラーの髪をした女性がおびえた様子でユグドラの後ろに隠れて身を隠しつつほのか達の方を見て声を出す。

それにもう片方のシャルトルーズの髪の女性は顎に手を当てて落ち着いた面持ちで見据みすえている。


「魔力量が高いな。彼女らがプレセアの言う敵か?」

「ああ、そうだぜ。あいつら、絶対に村の連中にやとわれた奴らだぜきっと!!」

「ち、違うの!! 私達は、ただ話し合いをしたくて――!!」

「先に手を上げて来た奴の言葉を信用する気なんか……ないぜ!!」


誤解を解こうと弁明べんめいしようとしたほのか達の声に耳を貸さずにプレセアが地を蹴って飛行魔法を駆使して接近してきた。

彼女の周囲に黄色の魔力弾をまとったつぶてが出現し、一斉に飛ばされる。


全員を狙った弾幕にほのか達は回避行動を取って散開する。

プレセアはその中でほのかただ一人を狙って彼女を追跡、スコップ型の武器『ミョルニル』を叩きつける。


ほのかはウィルを前に水平に構えて柄の部分で防御する。

すぐに身を退いて空高く舞い上がる。その後をプレセアが同様に上昇して追いかける。


「ほのかっ!!」

「フィリス!! お前はほのかの援護に回れ!!」

「う、うんっ!!」


バルドの指示に従ってフィリスも上昇してほのかとプレセアの後を追いかける。

見送った彼は傍にいるリースリットにも声をかけた。


「リースリット、お前も協力して――「無理……」は?」

「私は、あの人に用があるから……」


彼女に視線を追って、バルドは視線を前に向ける。

目の前にいるのは三人の騎士達。


その内の一人、朱髪の騎士をリースリットが見ているのが分かった。

そしてそれは向こうも同じ様で、朱髪の騎士もリースリットだけを見ていた。


「マルグリット。あの男はお前に任せるぞ」

「え゛!?」

「私は、あの者と戦いたいのでな。任せたぞ…!」


マルグリットと呼ばれたクリームカラーの髪の女性にそう言うと、ユグドラはリースリットに向かって突撃する。

彼女自身もこちらに来ると分かっていたのか、すぐに迎撃げいげき態勢に移ってフォルテで繰りだされた槍の一撃を受ける。


金と赤色の閃光がそのまま上昇していき、激しく交差を繰り返す。


「わっちのぬしを傷つけた事……。まだ忘れてはおらぬぞ……!! 覚悟せい、ユグドラとやら!!」


 闇色の魔力を開放して黒き閃光となったアウルが疾風のごとき勢いで二人の後を追って飛ぶ。

そのままリースリットと合流し、ユグドラと空中戦を開始した。


「なんでこうなるかな……」

[結局、若……。あの訓練の意味がこれで無くなってしまいましたね……]

[まあ、昨日今日で仲良くなれるとは思ってなかったけどね~ウヒャヒャヒャ!!]

「俺の苦労を返しやがれ!!」


 無駄骨になったかもしれない訓練の日々に対して怒りの声を上げる。

戻ってくる訳ないのだが、彼の苦労を考えるに叫ばずにはいられないのだろう。

そんな彼の心中など如何でもいい残りの騎士達はそれぞれの相手を選ぶ。


「なら、ワタシはあの少年少女を相手するとしよう」

「え゛ぇ゛!?」


 というより、一方的に決められたようだ。アシュトンとサヤを見てそう口にしたもう一人。

それにぎょっとした顔でマルグリットは振り返り、慌てた様子で説得を始める。


「ルチアちゃん、私にはあの人と戦うのは無理だと思うな~?」

「何を言っている? 大丈夫だ。お前の実力ならあの者と互角に戦えるだろう」

「無理無理無理ですよぉ!! あんな怖そうな人と戦いたくないですよぉ!?」

「何とかなるだろ。任せたぞ、マルグリット!」

「えぇ~!? 待ってよ~~!?」


 説得に失敗した様でルチアは彼女を置いてアシュトンとサヤに向かって突撃を開始。

両腕にあるスピナーを射出し、裏面にある取っ手を掴んだ。


「我が名はルチア!! 主を守りし創星の騎士にして『烈風れっぷうの騎士』!! いざ、参る!!」


背後に西洋騎士の女性を描いた紋章が浮かび上がる。

同時にスピナーが回転を始め、それを思いっきり身をひねってから投擲とうてき

空気を裂いて向かってくるスピナーを二人は避ける。


避けた所でルチアがサヤを狙って肉薄し、新たに腰にある二つの大型スピナーを起動して回転させる。

その刃の部分にライトグリーンの魔力光がまとった。


「斬り裂け!! シュトゥルムスピナーッ!!」

「うおっ!?」


高速回転して迫るスピナーを前に横っ跳びで避ける。

直ぐ脇を空気を裂いて通り抜けていく攻撃に背筋が冷える。


攻撃を避けられたルチアだったが、すぐに身を翻し先に飛ばしたスピナーを操作して再びサヤへと飛ばす。飛んでくる投擲物スピナーを爪による一撃で弾き飛ばす。


スピナーの方に気を取られたサヤへ相手が一気に接近してくる。


「もらった!!」

「ヤベッ……!?」

「大地の咆哮、ガイアブレイクッ!!」


サヤにあとわずかで攻撃が届く所でアシュトンの中級魔術が炸裂。

二人のいた場所の地面に亀裂が生じ、大地のエネルギーが一気に噴き出た。


「うおっ!?」

「ぐっ!?」


噴き出たエネルギー波はサヤの体をすり抜け、ルチアに襲いかかる。

彼女はエネルギー波を避けきれずに受けて吹っ飛ばされた。

飛行魔法を発動して空中で体勢を立て直して素早く水平移動。


後に続けてアシュトンのサンダーボルトが幾つも落とされるがかわされた。


「この攻撃、魔法ではない!?」


頭上から落ちてくる落雷を見て驚いた様子を見せる。


「あの人、魔術を知らない……?」


それにアシュトンは怪訝けげんな顔になる。

そこへ彼の魔術を避けたルチアが今度はアシュトンの方へと肉薄して来たのだ。


「貴様が本体か!!」

「うわっ!? 雷撃よ、落ちよ!! サンダーボルト!?」


接近してくる彼女に慌ててサンダーボルトで迎撃げいげきしようとする。

それを左右に動いて避け、右側のスピナーで斬りかかろうとした。


「オラァッ!!」


しかし、その間にサヤが滑り込んで爪による一撃を繰り出す。

それがスピナーと激突し、火花を散らす。


「なにっ!? ワタシの一撃を素手で!?」

鬼鉄おにくろがね……!!」


驚く彼女に向かって反対の手を拳にして放つ。

咄嗟にルチアも逆のスピナーを動かして自身の前に展開、サヤの一撃を受け止める。

凄まじい衝撃に彼女の体が浮いて後方に吹っ飛ぶ。

地に足を付け、削りながらもなんとか停止する。


「なんという力だ。受けなければ、怪我は間違いなかったな……」


スピナーの腹で受けた様で接触個所が白い煙を上げている。

しかし、壊れた様子は見受けられない。

サイドに展開し直して再び彼女は姿勢を落として攻撃態勢に入る。


「まだ若いと思って油断は出来ないか」

「アンタ、つえェな。流石は騎士様ってか?」

「霧島さん、気を付けて! その人、これまで戦って来た人とは何か違うみたいだよ!」


それは同感なのか彼女は頷き両手を低くし、腰を落として飛び出す態勢に入る。

後方でアシュトンが杖を構え、魔術陣を展開。詠唱体勢に入った。



「さて、残ったのはお前だけか……」

「うええぇ~!? や、やっぱり戦うのです!?」

「こっちとしては話し合いだけで済ませたかったんだけどな……。お前の仲間さんはどうやらそれが嫌らしい。交渉のカードを先に捨てたのはそっちだろ?」

「無理無理無理ですよ~!? 私じゃ無理ですって~!? こんな怖い人に勝てる気がしないです!」

「なんか調子狂うな、こいつ……」


おびえを見せる目の前の騎士を前に困った感じで頭をく。

本当に騎士なのかはなはだ疑問である。

しばし唸ったりして悩んでいたマルグリットだったが、ようやく決心がついたのか棍を構え始めた。


「で、でもここで戦わないとあかねちゃんを守れないって言うなら……戦うしかないですね!!」


 全身から深い青色の魔力が溢れる。

背後に導師の様なコートに身を包んだ錫杖を持つ女性の紋章が展開される。


「わ、我が名はマルグリット!! 創星の騎士の一人にして『波濤はとうの騎士』なり!! いいいいざ、参る!!」


 噛みながらも、足に集めた魔力を開放し爆発的な勢いでバルドに突進する。

突き出された棍を彼は横に弾き、反対の大剣を振るって迎撃する。


しかし、手の中で棍を回して彼女はそれを受け流し反撃をしかける。

自由自在、縦横無尽に繰りだされる棍の嵐の様な連打がバルドに襲いかかる。


「ちっ……!!」

「うああぁぁぁ!! このこのこのこの~~!?」


悲鳴を上げながら振りまわす彼女。

若干涙目になりながらも繰りだされる攻撃はしかし、確実に相手の急所を狙った正確なものだった。


幾度となく繰り出される変則的な攻撃に、受ける側のバルドはやりにくさを感じた。

そして、棍に深青色の魔力が通され大きく振りかぶる。


水棍必倒すいこんひっとう!! 水爆壊すいばっかいッ!!」


叩きつけられる一撃をバルドはケルベロスで受ける。接触と同時に炸裂する水圧。

爆発のごとき勢いで爆ぜた水がバルドの体を後方へ大きく吹き飛ばす。


(水属性にしちゃ珍しい攻撃型か!!)


 相手の属性が水だと分かると同時に相手の特性を理解した彼は小さく舌打ちする。

水属性は本来、攻撃性が低く回復や防御といった補助的能力に長けている。


だが、まれに存在するのが攻撃性の高い者だ。

彼等は水属性の固定的な特性を克服して他属性に引けずおとらぬ戦力を持っている。

そして、水属性本来の能力である回復系にも長けているので非常に厄介な存在と昇華しょうかする。


ただし、補助やサポート系の魔法を習得しにくくなるようで攻撃型は近接技が必然的に増えていく。


 厄介な相手だとバルドは心の中で溜息を吐き、ケルベロスとバハムートを構え直す。

その全身から黒き魔力を放出させ、両方の剣に纏わせる。


「この私マルグリットと相棒の『ナイアス』がお、お相手するです!!」

「面倒だが相手になってやる……。ただ、俺をそこいらの冒険者と思って挑むと怪我するぞ!!」


互いに得物を向け、姿勢を落として飛び出す。闇と深青の光が森の中で激突し、炸裂。

周囲の木々が爆風で激しく揺れ、枝や葉が吹き飛んだ。


黒き閃光と深青の閃光となった二人はそのまま地上で激しく激突を繰り返し、交差する。

互いが同時に木の幹を蹴って飛び込み、得物を振るった。


双方の武器がぶつかり、行き場を失った力が大地を砕いた。

退いた二人は再び突撃して激突、そのまま激しい空中戦へと移行していった。



孤高牙狼 サーベルヴォルフ

危険ランク D

森林などに住まうモンスター。

ヴォルフ種では珍しい単独行動を主とする。パーティを組むのは繁殖期だけ。ヴォルフ種の中ではダントツの瞬発力などを持ち、口から生えるサーベル状の牙で獲物に致命傷を与えて仕留める。

『地属性』なので、『風属性』に弱い。

また、『獣系』である事から『火属性』にも弱い。牙が太くて長いほど強いとされる。


モンスターを蹴散らした後に待っていたのは、騎士達との戦闘。

強敵揃いの相手に彼女達は勝つ事が出来るのか。


それでは、次回も宜しくお願いします。

では(゜∀゜)ノシ!!

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