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第二十七話 聖なる森に住む騎士達

二十七話更新。


突如村に現れた少女。

武器を片手に敵意を向ける村人へ攻撃を仕掛ける。

そして、ほのかは魔女を守りし気高き騎士と出会う。


では、本編をどうぞ。


 静かな夜がにわかに騒がしくなり始めたのに、寝ていたほのか達は目を覚まして窓から顔を出した。

何かが村の中で起きている様で、時々地鳴りが聞こえる。


「魔力反応!! 誰か戦ってる!?」

「フィリスちゃん、誰か分かる!?」

「ごめん、分かんない……。でも、大きな魔力を持ってる人なのは間違いないよ!!」


推定でもAクラス以上はあるらしい。

それ程大きな魔力持ちはそうそういないだろう。


「もしかして、魔女さんかも!! ちょっと行ってくるの!!」

「えっ!? ほのか、ちょっと待って!?」


 もしかしたら噂の魔女かもしれない。

そう思ったほのかはウィルを起動してセットアップ。

フィリスが制止の声をかける間もなく、マジックアーマーを展開してから外へと飛び出してしまった。


ほのかが居なくなって少しして、隣の部屋で休んでいただろうバルドとアシュトンが遅れて飛び込んできた。中にほのかの姿がいないのを確認した後にバルドは彼女の所在を聞いて来た。


「おいっ、ほのかは何処に行った!?」

「さっき、この魔力反応が魔女かもしれないって言って……!!」

「ちっ、少し遅かったか!! サヤ、俺と一緒に来い! あいつを追いかけるぞ!!」

「ああ、分かった」

「フィリス達は後から来い!! 道中で村の連中には気を付けておけよ!!」

「うん!!」


 フィリスとアシュトンが準備を始める中で、バルドはサヤと共に宿屋の二階から飛び降りる。

途中でバルドがサヤの手を掴み、そのまま空中を飛翔してほのかの向かっただろう魔力反応のする場所へと飛んで行った。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 先に飛んで行ったほのかはというと、眼下を見渡しながら魔力反応のする場所付近まで来ていた。

空中で停止して地上を見下ろせば一人の人物が魔法を駆使して村人達を攻撃しているのが見えた。


「大変なの! 急いで止めなきゃ!! 行くよ、ウィルッ!」

[了解です、マスター]


 このままでは村の人が危ないと思ったほのかは空中から急降下。

眼前で謎の少女が振るった得物を避けた拍子に尻餅をつく一人の男性。

その彼に向かってその者が大きく得物を振り上げて叩きつけようとしているのが見えた。


「だめっ!! シャインバレット、シューーット!!!」

「っ!?」


 咄嗟とっさに魔力弾を形成して一斉に放つ。

頭上から来る魔力を察知したのか、その者は後方に飛び退いて攻撃を避ける。

魔力弾が地面に着弾して爆発を起こしていく。


攻撃を避けたその者にほのかは続けて魔力弾による弾幕攻撃を開始。

相手を森の方へと誘導する様に張る。

舌打ちをして相手はその意図にしたがう様に飛んで行き、その後を追う様にほのかも神樹の森の中へと飛び込んで行った。


 薄暗い森の中を二つの影が飛び抜けていく。

木々の間をう様に飛んで行き、ほのかは相手の姿を見失わない様に必死に食らいつく。


 しばらく追い続けると開けた空間に辿り着いた。そこに来て、相手が逃走を止めて地上に降りる。

ほのかも地上に降りると、その者がゆっくりと振り返る。その正体を見て彼女は小さく驚きの声を上げる。


自分の目の前にいる者、それは自分と年の殆ど変わらないだろう少女だったからだ。


(この子が、魔女さんなの?)

「……おい、てめぇ。なんでアタシの邪魔をしたんだよ」


そんな事を思っていた所で目の前の少女が声をかけて来た。

その目つきは鋭く、こちらを警戒しているのを理解するのには十分なものだった。


「あ、あのっ!! 私は戦いに来た訳じゃないの!! ただ、話がしたくて――」

「はっ! いきなり攻撃をしてきた奴が言うセリフかよ?」


しかし、それに対して鼻で笑って一蹴いっしゅうする。だが、ここで引き下がってはいけない。

そう思った彼女は言葉を続ける。


「それは、貴方が村の人に攻撃しようとしてたから……!!」

「アタシはいいんだよ。そうする理由があるんだからな」

「理由があってもなくても、人に手を上げるのは良くないの!!」


 強く言い切る。いかなる理由があっても、人に暴力を振るうのはいけない事だ。

それが気にさわったのか不愉快ふゆかいだといわんばかりの表情を浮かべた。


「綺麗事抜かしやがって……。てめぇだって人に手を上げた事くらいあるだろ。子供が良い子ぶってんじゃねえよ」

「貴方だって子供なの!?」

「ア、アタシは子供じゃねえ!!」


 言われた途端に、目の前の少女は顔を真っ赤にして否定する。

ガルルッと牙を向けて怒っている様子の少女だが、容姿ようし故に如何いかんせん迫力が欠ける。


「アタシは子供じゃねえ! アタシは……騎士だ!!」


背後にドリルを持つ少女の紋章が出現して全身より黄色の魔力が放出される。

そして、片手に持っている得物をほのかの方へと向けた。


(スコップ……?)


その手にある武器がスコップの形をしているのに気付いて怪訝けげんな顔をする。

あれで一体どうやって攻撃するのだろうか?


「シュベルトゲーベルッ!!」


そんな事を考えていた所で相手が攻撃を仕掛けて来た。

スコップを地面に突き刺すと、魔法陣が広がりその中にある地面から魔力を帯びたつぶてが無数に姿を見せて一斉にほのかへと飛んで来た。


「ふえっ!?」


黄色の魔力弾にビックリしてほのかは飛行魔法を発動して飛び上がり逃げる。

上空へ逃げたほのかを目で追う少女は地面に突き刺していたスコップを持つ手に力を込めて引く。


 自分と同じ大きさの岩塊がんかいが飛び出し、そのまま少女は右足を軸に回転。

スコップの腹を見せる様に持ちつつ大きく振りかぶる。


「ギガインパクトッ!!!」


全力のフルスイング。スコップの腹が岩塊がんかいの中央に命中し、その衝撃で弾丸のごとき速さで塊がほのかに向かって飛んで来たのだ。


「っ!? ディフェンシブ!!」


予想外の攻撃を前にほのかは魔法障壁を張って防御体勢に入る。

飛んで来た岩塊がんかいが激突し凄まじい衝撃が伝わって来た。


「ぐうぅ!?」


 真正面から受けた彼女の体が徐々に後ろに押され始める。

このままだと押し負けると思ったほのかは咄嗟とっさに己の高度を急に落とす。


結果、角度が付いて岩塊がんかいは障壁のラインに沿って行くように進んで斜め上に向かって飛び抜ける。


難を逃れてホッとしたのも束の間だった。接近する魔力反応。

ハッとするほのかの頭上には何時の間にか飛翔していた少女がスコップを大きく振り上げた恰好でいた。


「おらあっ!!」

「きゃあっ!?」


スコップの一撃が決まってほのかが地面に向かって弾き飛ばされる。

錐揉きりもみ状態で落ちるほのかだったが、なんとか姿勢を制御して地面に落ちる前に立て直す。


そのまま水平に飛んで下がると同時に追撃を加える様に少女がスコップの切っ先をこちらに向けたまま落下して来た。


避けられて地面を砕くだけに終わる。

舞い上がる砂塵さじんを突き破って相手はほのかを追って魔力弾を放って来た。


「待って!? 私の話を聞いてよ!!」

「聞く耳なんざ……ねえよ!!」


必死に呼びかけるほのかだが相手は攻撃を繰り返す。

避けてしのぐほのかだが、このままではらちが明かないと判断する。


反転して今度は彼女の方から仕掛けた。


「シャインバレット、シューーット!!」


 飛来する相手の魔力弾に向かって自身の魔力弾を飛ばして相殺する。

そして、相手とすれ違うと素早く反転して今度はほのかが相手の背後を取った。


 後ろに付かれた事に舌打ちをした少女は速度を上げて振り切ろうとする。

それにほのかは食らいついて後ろにピッタリと付いてくる。


「ちっ、シュベルトゲーベル!!」

「シャインバレット、シュート!!」


黄色の魔力弾と桜色の魔力弾が激突して爆発を起こす。

炸裂さくれつする両者の魔力弾によってほのかの前方に黒煙が張られる。


そこに突っ込んで飛び出すと―――――少女の姿が前になかった。

見失った彼女を探そうと見渡すと、当の本人が何時の間にか背後に回っていたのだ。


「無暗に突っ込んで来たのは失敗だったな!!」


如何やら先ほどの爆発を煙幕代わりにして姿を隠したと同時に急制動をかけて速度を落としてほのかの背後に回った様だ。

追われる立場に逆戻りしたほのかは高度を落として地上すれすれを飛んで木々を利用して振り切ろうとする。


「っ……!! 少しはこっちの話を聞いてよーーーっ!!」

[フォトンブレイザー、バーストッ!!]


身をひるがえして追いかけてくる少女に向かって砲撃魔法を放つ。

木を穿うがちながら砲撃は真っ直ぐに少女へと向かって飛ぶ。



突如とつじょ、暗闇を照らす閃光を前に目を見開く。咄嗟とっさに直撃を避けようと身をじる。自身の脇すれすれを砲撃が通り過ぎ、その魔力の余波が少女に襲う。


―――――その時だった。

彼女が首にかけていた首飾りが余波を受けた拍子か切れてしまった。


「あっ!!」


それに気付いた少女はほのかを追跡するのを止めて落ちる首飾りを慌てて追いかける。

手を伸ばす少女。


しかし、それは届かず首飾りは地面に落ちた。

地に落ちて泥を被った首飾りを見て目を見開いて固まる。


伸ばした手は震えており、その表情は悲愴ひそうな色に染まっていた。首飾りの前に降りて力なくうつむく少女。

如何したのかと思ったほのかが同じく地上に降りて様子をうかがう。


だが次の瞬間、歯を食いしばり広げていたてのひらを拳へと変え、持っているスコップの柄を強く強く握りしめる。


「よくも……!! よくもアタシの大事なものをーーーー!!!!」


烈火の如く咆える少女の全身から魔力が噴き出す。

怒気のこもった気迫を前にほのかは僅かに後ろに後ずさる。


「ミョルニル!! 子供相手だから手ぇ抜いてたが止めるぞ!! リミットブレイクッ!!」

[Je,My Prinzessin. Over Limits,LevelⅠ……]


 スコップの取っ手の左右にある宝石が点滅して返事を返す。

同時に少女の魔力が突然大幅に上昇したではないか。

更に、ミョルニルと呼ばれたスコップが光りその姿を変え始めたのだ。


柄の部分から鎖が伸び、スコップの先端が鉄球へと変わる。

そして柄の部分も幾つか分離して鎖で繋がれる。


「ツェアシュラーゲンフォルム!!」

「へ、変形した!?」


相手の得物が変わった事に驚くほのか。

そんな彼女を前に、怒りに燃えた目で捉えた少女が動き出した。


左足を軸にその場で回転を始める。それに続いて鎖付き鉄球が重たげに動き出す。

地面を削りつつ動いていたそれは少女の回転速度が上がるにつれて徐々に浮き上がり、遂には完全に宙に浮く。


回転している少女は、その眼でほのかの姿をしっかりと捉えて両腕に力を込める。


「うおぉぉぉ!! エアーデファウスト!!!」


 右足を地に付けて踏ん張り、溜めに溜めた力を解放する。

手より離れた自分と大差のない大きさの鉄球が黄色の魔力を纏って真っ直ぐにほのかに向かって放たれたのだ。


「ディフェンシブ!!」


 直撃は不味いと本能的に悟ったほのかが正面に魔法障壁を張る。

あらゆる属性に対して絶対的な強さを持つ光属性の魔法障壁が張られ、少女の放った鉄球を迎え撃つ。


そして、鉄球がほのかの障壁に激突――――――彼女の障壁が砕け散った。


「え……」


 木端微塵こっぱみじんに砕けた自身の魔法障壁を前に目を大きく見開く。

時がゆっくりになった様に全ての時間がスローになる。



―――――自分の魔法防御が……負けた。


それを理解した直後に時が戻りほのかに鉄球が激突。

勢い止まらずに彼女を連れ去り、後方にあった木々を次々に轟音ごうおんを立ててぎ倒して飛んで行く。

一際大きな大木に激突して大きくへこませる事でようやく停止、地面に落ちる。


「あ、ぐ……」


持ち主の下に戻る鉄球。残ったのは、大木に全身をめり込ませる形で打ち付けられたほのかだった。

力なくそこから落ちて受け身も取れずに地面に倒れる。

ウィル自体もダメージを受けたのか、損傷して火花と煙を上げている。


 彼女の身を守っていたマジックアーマーが耐久力を失ったのか弾けて消え普段着に戻る。

うつ伏せに倒れているほのかの下へ少女は鉄球をスコップの形態に戻して歩み寄る。


「く、うぁ……」

「アタシの名はプレセア。創星そうせいの守護騎士にして『破城はじょうの騎士』プレセアだ。よく覚えておけ」


スコップの切っ先をほのかへと向けて自身の名を名乗る。

切っ先に魔力が伝わり黄色に染まる。


そして、ほのかへそれを叩き込もうとしたその時だった。



頭上より、金色の槍の雨が降って来たのだ。


「ちぃっ!!」


後方に飛んで攻撃を避ける。

自分を攻撃してきた者を確認すべくプレセアは顔を上げる。

彼女の前……そこに降り立つのは金の髪をツインテールにして黒きマジックアーマーに身を包んでいる小さな少女だった。


「増援か!!」

「……違う、ただの同業者」


それに対して金の少女、リースリットは短く答えてフォルテをプレセアに向ける。

金色の魔力陣からはバチバチと雷がほとばしり、それが地面にはしる。


一度、リースリットが後ろを見る。

ほのかは如何やら気を失っているのかぐったりとして動く気配はなかった。

それを確認した後に彼女は正面を向き姿勢を低く落とす。


「ナイトチャージ……」


両足に雷の魔力がまとうと同時に地面を蹴る。

一気に最高速へと達した彼女が超高速で接近、プレセアに斬りかかる。


その一撃をスコップの柄の部分で受ける。

防御されたと分かると直ぐに後方へ下がり、複数の雷槍を飛ばして牽制する。


上空へと飛んで攻撃をかわす。

その後をリースリットが追いかけまたたく間に追い付く。


「ふっ!!」

「ちぃっ!!」


 フォルテの一撃を受け止める。両者の間で金と黄の魔力が火花となって散り合う。

互いに反動を付けて後方へと飛んだ後、金の閃光と黄色の閃光が交差を繰り返す。


 互いの魔力弾が激突を繰り返し、空中で激しい爆発が彼女達の動きに合わせて帯状に伸びていく。

両者が擦れ違いざまに得物を振るい、刃を交えて交差する。

何度か交えた事でプレセアはリースリットの属性が分かったのか小さく舌打ちする。


「レア属性の一つ、雷属性かよ……!!」

「……ライジングウィップ!!」


 左手に魔法陣が出現。同時にプレセアに向かってその手をかざした。

すると、プレセアの体に雷の輪が掛かり彼女の体を拘束してきたのだ。

不意を突かれた形となった彼女は驚きの色に染まった。


「捕縛魔法!?」

「これで、終わり……」


魔力を刃に通して剣を構える。魔力刃が一層強く輝き雷がほとばしる。

動きを封じたプレセアに向かって彼女が高速移動魔法を使って一気に接近する。


身動き一つできない状態のプレセアは苦虫を噛み潰したような顔で次に来るだろう一撃を身構えて強張らせる。


しかし、彼女が攻撃を叩き込もうとしたその瞬間だった。

二人の間に赤色の光が割り込んで来た。


その光の中から朱色の槍が顔を出すと、リースリット目掛けてぎ払う様に振るわれたのだ。


 驚き目を見開く彼女だったが、咄嗟にフォルテでガードする。

直撃はまぬがれガードに成功するも、強烈な衝撃で彼女は後ろに吹っ飛ばされる。


なんとか踏ん張って大きく離されない様にする。

ビリビリと手に伝わる強烈な衝撃にしびれるような感覚を覚えた。


「帰りが遅いから心配して来てみれば……またかプレセア?」


 自分を弾き飛ばした相手が光の中から姿を見せた。

赤い甲冑を身にまとい、その背中には反り返る角の様なものが四本ほどもある。

下は足首まで隠せるロングスカートでそこには装甲板が幾つもあてがわれていた。


くびれた腰にすらっとしたモデルのような体型。

胸部を守る鎧の下には大きな二つの膨らみがあり、棚引く長髪はつやのある腰まで届く美しい朱髪。

うなじの部分で纏めてポニーテールにしており、サファイアブルーの瞳がより一層彼女の美しさを滲ませていた。


美女と言っても過言ではない美しい女性がリースリットとプレセアの間に立っていた。


 その彼女が振り返りプレセアの下に移動すると捕縛魔法に手をかざして破壊する。

そして、次に右手を差し出し、手に収められていた物を見せる。それは、先ほどほのかによって彼女の下から離れた首飾りだった。

汚れが見当たらない事から如何やら目の前の女性が落としてくれたようである。


「失くしたら困る物だろ。次からは戦闘中はしまっておいた方がいい」

「お、おう。サンキュー……」


それを大事に両手で取るとそっぽを向いてぶっきらぼうに礼を言った。

素直になれない彼女をその女性は苦笑して、次には表情を変えて凛々(りり)しい面持ちになる。


その鋭い眼光をリースリットへと向ける。


「あの者がやったのか?」

「いいや違うぜ。そいつはアタシが倒した。けど、新しく出てきやがったんだ」

「成程、な……」


左手に持っていた朱色の槍を右手に持ちかえると手の中で回してから穂先ほさきを向ける。


「あの者は私に任せてくれないか? 少し私も動きたくてな……」

「別にいいけどよ。アイツ、雷属性だから気をつけろよ?」

「ほぉ、レア属性持ちか。これは中々に楽しめそうだ」


警戒するどころかむしろ強敵に出会えた方が嬉しいのか不敵な笑みを見せる。

プレセアから離れると、その女性はリースリットと対面する。


「我が名はユグドラ。『朱槍剣しゅそうけんのユグドラ』!! 主を守りし創星の守護騎士の一人!!」

「……リースリット。リースリット・ピステール……」

「ピステールか、良い名だ。では、行くぞ!!」


ユグドラと名乗る女性の全身より赤い魔力光が発せられる。

そして、背後に目を閉じ刀の柄に手を添えた鎧武者の女性の紋章が出現する。


油断無く構えたリースリットが雷をまとうと背後に目を閉じた戦乙女の紋章が展開される。

両者が同時に飛び出し互いの得物をぶつける。


「良い太刀筋だ……。迷いがないな」

「…………」


 一太刀交えただけでリースリットへその様な評価をする。

それに表情一つ変える事無くリースリットは距離を一度とってから高速移動魔法を発動。


ユグドラの前から姿を消す。


「流石は雷属性……。機動性はトップクラスだな」


しかし……。

続けてユグドラが槍を何もない右に向かって神速の速さで突き出す。


「っ!?」


すると、そこにはリースリットがいたのだ。

突然突き出された槍を前に驚いて身をひねり直ぐに下がる。


だが、その下がった彼女へ今度はユグドラが高速で接近してくる。

槍に魔力を通しその穂先ほさきに集まると発熱し、炎が溢れだす。


「私の槍『ルーン』の一撃を受けて見ろ!! 緋閃槍ッ!!!」

「うぐぅっ!?」


炎をまとった一撃が放たれる。

強烈な一撃を真正面からフォルテで受けたリースリットが弾き飛ばされ地面に落下。

砂塵さじんが舞い上がる。


「はああぁぁぁ!!」


 しかし、その砂塵さじんを突き破ってリースリットが姿を見せる。

金の魔力を全身にまとってユグドラへ一気に接近しフォルテを振るう。


彼女の激しい乱舞を彼女は槍をたくみに扱って受け流していく。

そして攻撃のわずかな隙を狙って槍の一撃が飛んでくる。


炎をともした槍が顔めがけて飛んで来る。

その攻撃を咄嗟とっさに顔の正面に魔法障壁を張って受け、直撃は避けたが弾き飛ばされた。


「サンダースピア!」


身をひねって体勢を整えつつ雷槍を放つ。

自分に向かって襲いかかる魔力弾の雨を前にユグドラは朱槍を構える。


「はあぁぁぁ!!」


気迫のこもった声と共に彼女が槍をたくみに振るって魔力弾を次々に弾いていく。

まるで舞いの様な華麗な槍捌やりさばきでリースリットの放った魔力弾が全て弾き飛ばされる。


しかし、最後の魔力弾を弾いた途端にその影よりリースリットが姿を見せた。

持っているフォルテは魔力が通されており、相手の上段を取った。


「レイジング、スマッシュ!!」

「くうっ!!」


不意を突かれた形となったユグドラが初めて防御を選んだ。

得意の斬撃が激突し、ユグドラを後ろに大きく吹っ飛ばす。


「良い一撃だ…。その歳で出来るとは大したものだな。ならば、この一撃を受けるに値する武人として認めよう」

[敵魔力反応上昇。マスター、気を付けて下さい]

「ん……」


 ユグドラの魔力が大幅に上昇するのを肌で感じ取る。

その大きさに冷や汗が自然と浮かんで頬を伝った。


「起きろ、カラドヴォルグ!!」

[Je……]


ルーンを真上に放り投げる。槍はクルクルと回転しながら空中高く舞い上がる。

そして、彼女は腰にある鞘に挿してあった剣を抜いた。両刃のシンプルな形の刀身に、つばは反り返っている。これまた朱色に染まった剣だった。


「カラドヴォルグ、オーバーリミッツ!!」

[Over Limits,LevelⅠ……]


彼女の全身から赤い魔力が迸る。

背後に鎧武者の紋章が現れ、それは剣に炎をまとわせて切っ先を向ける形に変化していた。

彼女の持つ剣『カラドヴォルグ』からも炎が噴き出し、炎の剣となる。

燃え盛る剣を両手で持ち、姿勢を落とし構える。


「行くぞ、ピステール!! この一撃、受けてみろ!!」


足にめた魔力を解放し、爆発的な加速でリースリットへ向かって彼女が突撃する。

その速さは、リースリットすら反応が出来ていなかった。

瞬く間に距離がゼロとなってリースリットの視界が炎一色に染まる。


「紅蓮剣ッ!!!」


灼熱しゃくねつの一撃が振り下ろされる。

咄嗟とっさにフォルテで受け止めようとしたリースリット。


 だが、その金に輝く魔力刃がその一撃を前にあっさりと両断されてしまった。

驚愕きょうがくに染まる彼女にユグドラの放った一撃が炸裂。空中で大爆発が起きた。


黒煙が発生する中からリースリットが落ちる。

受け身も取れずに地面に彼女は体を打ち付けた。


「あぐっ!」


仰向けに倒れる彼女の直ぐ脇に刀身の折れたフォルテが突き刺さる。

も衝撃に耐えきれなかったのか所々にひびが入っており、煙と火花を散らしていた。


倒れたまま動かなくなったリースリットを上空から見下ろしていたユグドラ。

その真上から投げたルーンが彼女の下へ落ちてくる。


剣を鞘に収めると右手を水平にして手を広げる。

そこにルーンが落ち、彼女は掴んだ。


プレセアの下に降りると二人は倒した少女達の下に近寄る。


「この者達は私達と同じ『ターミナル』を持っているな。それも、人格搭載型の様だ」

「ああ。アタシも最初見た時はビックリしたぜ。んで、コイツらどうするのさ?」

「気を失っている様だ。ならば、此処に放置するという選択はダメだろう。連れて帰るとしよう」

「マジかよ~……」

「放置したとあっては主が怒るか悲しむぞ?」

「うっ……」


言われてプレセアが言葉を詰まらせて黙る。

想像したのか気まずい表情を見せる。


「わ、分かったよ……。連れてけばいいんだろ?」


 仲間からの了承も得たユグドラが頷いてから目の前に倒れているリースリットへ手を伸ばそうとした。

しかし、それをさえぎるかのようにその間に突然黒き炎の壁と旋風が現れたのだ。


「なっ!?」


慌てて手を引いて彼女達は一端距離を取る。その炎と風の中より二人の男女が姿を見せる。

それが、バルドとアウルであった。


「ぬしよ!! ぬしよ、しっかりするのじゃ!!」


倒れて動かないリースリットを抱え必死に呼びかけるが反応がない。

すぐに気道を確認すると、息はしているのが分かった。


ホッとするアウルだが、前方にいる二人組を見るや敵意剥き出しの殺気を放ち始める。


「よくもわっちのぬしに酷い仕打ちをしてくれたな……!! わらべども、命はないと思え!!」

「止せ、アウル。よく分からねえ敵に牙を向けるな」

「しかしっ、元ぬしよ!!」

「今は戻る事が先決だ。サヤ、ほのかは回収できたか?」

「おう、何時でもいいぜ」


声にそちらを向いたプレセア達は、もう一人いたのに気付いた。

その少女が、自分達を攻撃してきたもう一人の少女ほのかを抱き抱えているのを見つける。


「逃がさねえよ!! ギガインパクトッ!!」


 地面にミョルニルを突き刺し、自分よりも大きな岩塊を地面より打ち上げる。

それを魔力を通したミョルニルでフルスイングして打つ。

インパクトと同時に弾丸の如き勢いで巨大な地面の塊が魔力をまとって打ち出される。


それは真っ直ぐにサヤとほのかの方へと向かって空気を震わせて迫る。

迫りくる岩塊を前にサヤは右手を前にかざす。


プレセアの飛ばした岩塊がぶつかる。わずかに足が後ろに下がるが、それを真正面から彼女は受け止めていたのだ。

そして、右腕に力を込めて彼女の一撃を上に弾いて飛ばした。


「なっ!? アタシの一撃を……!!」

「ならばっ!!」


今度はユグドラが槍を地面に刺して剣を抜き、駆け出す。

それに今度はバルドが駆け出し、ケルベロスを持って両者が同時に剣を振るった。


金属音が鳴り響き、剣圧が衝撃波となって吹き荒れる。


(この者……!!)

「アウル! 準備はいいか!!」

「何時でもよいぞ、元ぬしよ!!」

「なら、やれっ!!」


 その声にハッとなるユグドラ。目の前の真紅の髪の男性の影にいる銀の長髪の女性を見る。

アウルの足下には魔術陣が広がっており、そこから黒き魔力が旋風のごとき勢いで吹き荒れていた。


「幻惑呼びこむ闇鳥の旋風、吹き荒れよ!! ダークサイドランページ!!」


ユグドラとバルドの足下に巨大な魔術陣が展開される。

その左右から挟む様に荒れ狂う黒き竜巻が発生し、それが徐々に中央へと進む始めて来たのだ。


このままでは危険と判断したユグドラはバルドとの鍔迫つばぜり合いを止めて後方へ飛び退く。

バルドもまた後ろへと飛んで直後に竜巻が一つとなって巨大化。道を阻む様になった。


「先にいけ二人とも。殿しんがりは俺がやる」

「任せたぜ」

「うむ、頼む」


負傷した二人を抱えたサヤ達を先に行かせる。

まだ荒れ狂う竜巻の向こうの人物達を見てから、バルドは後を追って闇夜の森の中へと姿を消して行った。



「逃げられたようだな……」


 渦巻く竜巻の向こうにあった魔力反応が薄れて消えたのを感じ取ったユグドラがカラドヴォルグを鞘に収めてその先が見えているかのように目を細める。

気配が完全に消えてしまったのと同時に目の前で荒れ狂う竜巻が消え、森に静寂せいじゃくが戻った。


「今から追いかけて倒すか?」

「いや、深追いは危険だ。他にも仲間がいるかもしれん。それに、主が帰りを待っているぞ」

「どうすっかな……。結局、何も持って帰れなかったし……」

「すぐに必要と言う訳ではないのだろ? ならば、別に大丈夫だ。主もそのくらいでは怒らないさ」


 困った顔をするプレセアにユグドラがフォローを入れる。

幾分か気持ちは楽にはなったが、それでも彼女としては頼まれた物を持って帰りたかったという思いが強かった様で少し残念そうな顔をしていた。


「また行けばいいだろう。その時は、私とマルグリットとルチアも共に行こう」

「……分かったよ。今日は帰るよ」


ようやく納得してくれたのか渋々といった感じで帰る旨を伝える。

それにユグドラは頷いて、二人は森の奥地へと飛んで帰りを待っている者達の下へと撤退したのだった。



突如として姿を見せた二人の騎士の前に成す術なく撃墜されるほのかとリースリット。


朱髪の女性騎士と桃髪の少女(?)騎士。

独特な服装に見たこともない武器を持つ彼女達は一体何者なのか?


それでは、次回も宜しくお願いします。

では(゜∀゜)ノシ!!

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