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第二十五話 VS 軍神バルドゥス

二十五話更新。


大戦の生き残りにして軍神と呼ばれる老騎兵。

新兵を従え、ほのか達に挑みかかる。

強敵を前にほのか達は凌ぎ切れるか?


では、本編をどうぞ。



「将軍を守れ!! 総員、あいつ等を抑え込むんだ!!」


 軍馬にまたがったバルドゥス隊が槍を突き出した形で突進を仕掛けてくる。

土煙を上げながら突撃してくる様は相手を威圧いあつする気迫が乗っている。


その突撃に単身で特攻を仕掛ける人物がいた。

それが、サヤであった。


一番手の相手の槍を紙一重で避けるとその槍を踏みつけて地面に突き刺す。

槍がつっかえ棒になって馬ごと前転する様な形になるところにサヤがその者の顔を踏みつけて跳躍ちょうやく


 更に着地点を通過しようとした一人の顔面を踏みつけ蹴落けおとし、馬の背に乗ってから軽く飛んで回し蹴り。

突き出された槍の穂先ほさきを紙一重で避けつつ相手の喉仏のどぼとけに叩き込んで吹っ飛ばして後続にぶつける。


その蹴り飛ばした相手の馬の手綱たづなを掴んで華麗かれいに馬の背に着地して同時に左右から突き出された槍をつかんで引き込む。

華奢きゃしゃな腕からは想像もつかない力に両者は鎧を着こんでいるにも拘らず体が宙に浮き馬上より浮いた。


 そして槍を思いっきり振りまわし、隊員ごと投げ飛ばして他の者にぶつけて落馬させる。

馬の背より跳躍した彼女は頭上から駆ける隊員達の間に着地。

その中で鋭い爪を振るうと衝撃波が巻き起こり彼女を中心に周囲にいた数人の者が吹き飛ばされる。


「ホリーシューター、シューーット!!」


魔力の回復して復活したほのかが誘導式魔力弾を飛ばす。

それを彼等は槍をたくみに使って防いでいった。


「なめるなっ!!」

「まだだよ!! アンブッシュトーレント!! ブレイク、シューーット!!」


 相手が一定の距離に達したと同時に複数の魔法陣が展開されて水流が発射される。

枝分かれしていって複数の弾幕となって大量の魔力弾が襲いかかる。


「各員防御体勢のまま突撃!! 魔術障壁発動!!」

「了解!!」


自身の正面に魔術障壁を展開。

シールドが発動してそれがフィリスの魔力弾を防いでいく。

そのまま勢いを殺さずに向こうは真っ直ぐにこちらに突撃してくる。


「アシュトン、今だよ!!」

「怒れる大地の咆哮!! ガイアブレイクッ!!!」


 だが、フィリスの魔法はブラフ。

本命はアシュトンの魔術による範囲攻撃だ。


 地属性の魔術を発動。突撃してくる彼等の前方に大型の魔術陣が展開。

まるで咆える様に地面が砕け噴き出す。


馬達がそれに驚いていななき立ちあがる。

それによってバランスを崩した彼等は次々に落馬していく。


「ぬっ!? いかん、やはり新兵だけでは実戦は早過ぎたか!?」

「おらあっ!!」

「むう!!」


上段から振り下ろされる一撃を槍で受ける。

金属同士が激突する音が鳴り響き火花が激しく散る。


腕に力を込めて押し返し、同時に突進。

着地と同時にバルドは横に転がって攻撃を避ける。


黒狼斬こくろうざん!!」

「なんのこれしき…!! 旋壊槍せんかいそう!!」


 繰りだされた闇の衝撃波を槍の先に魔力を込めて突き出してぶつける。

爆発が起きてバルドゥスの姿が隠れる。巻き上がる砂塵さじんを前に、防がれた事に対してバルドは小さく舌打ちをする。


「ちっ、相殺されたか」

[流石は軍神ってか~? ウヒャヒャヒャ!!]

「この老いぼれを舐めてもらっては困るぞ!!」


煙を突き破って軍馬にまたがったバルドゥスが突進してきた。

地面を蹴り上げてその速度を上げていく愛馬は真っ直ぐにバルド目掛けて突撃する。


 今度は避ける素振りを見せないバルドがケルベロスに闇の炎をまとわせて構える。

それに向かってバルドゥスも槍に魔力を込めて突っ込む。


「「はあぁぁぁ!!!」」


 同時に放たれる一撃が激突。闇と赤色の魔力光が炸裂し、周囲に行き場を失った力と力が衝撃波となって広がる。

地上をいずり回る闇と赤の魔力によって地面に次々に亀裂が生じて重力に反して浮き上がる。


「ぬっ!? 手負いながら我が一撃を正面から受けるか!?」

「ったく、こういう手合はホントにめんどくせえな!!!」

[ほらほら相棒、もちっと気合い入れねえと押し負けるぜ!]

「うっせぇ!! 集中すっから黙ってろナマクラ!」


 左手に持つバハムートにも同様に闇の炎をまとわせる。

そして、逆手に持ち替えて馬の脚に向かって思いっきり振るう。


だが、相手が手綱たづなを強く引いて立ち上がらせた事で攻撃は外れてしまう。

同時に馬が脚を動かして前足による蹴りを繰り出して来た。


 反応したバルドだったが僅かに爪の部分がかすめて弾かれる。

逆らわずに後方に自ら飛んで距離を取る。頭を切ったのか額から血が一筋、頬を伝っていく。


その様子を戦闘中にチラチラと彼の様子を見ていたほのかが先に気付いて声を上げた。


「バルドさん!?」

「ほのか、先にバルドの援護に行って!!」

「フィリスちゃん、でも……」

「こっちはもう大丈夫だよ。さっきよりも相手の数が減ったし、私達でなんとか抑えてみるよ!」

「……お願い、フィリスちゃん!!」


 後の事を任せてほのかは抜けてバルドの方へ飛ぶ。

彼女を行かせまいと隊員達が阻もうとしたが横合いから魔力矢が飛んで来て停止せざる負えなかった。


「邪魔をするか、魔法士!!」

「当然だよ! 貴方達は私達が相手だよ!!」



 頬を伝う生温かい血を感じながらバルドは静かに立ち上がる。

そこには出血したのに焦りの色を見せずに冷静な面持ちでいる彼がいた。


(負傷してもパニックに陥らないか……。これは、相当な場を踏んでいるとみた)


 バルドの冷静ぶりに彼はそう解釈して一層意識を引き締めた。

そこにほのかがバルドの隣に駆け付け、出血している事に気付いて小さく悲鳴を上げる。


「バルドさん、血が……!?」

「掠り傷だ、問題はねえ。それよりもほのか、相手から目を離すな」


両手の大剣を構えつつほのかの方を見ずに言う。その目つきは何時になく鋭い。


「戦闘の基本は相手の動き、一挙手一投足を冷静に見極める事だ。相手が次に何をしてきて、どんな動きをするのか……そこを見るんだ」


 新たに二筋血が伝い、両目に掛かる。

血が眼に入ったのか、金色の眼がまるで真紅になったかのように赤く染まる。

同時にバルドの身体から魔力が溢れ、魔力量が大幅に上昇した。


「そして、そこから自分の最良の動きを導き出せ。今のお前なら、それが出来る筈だ!」


 そう言ってからバルドは一人駆けだす。

超重量の大剣を二本片手で持っているにも拘らず、それを思わせない速さで接近して斬りかかる。


「おおおおっ!!」

「むぬうっ!?」


素早い乱舞を前に相手が防御に専念する。槍をたくみに動かして彼の攻撃をしのいでいく。

大剣と槍が激突する度に大気を激しく震撼しんかんさせる衝撃波が起こる。


超重量の乱舞が次々に繰り出されて軍馬の脚が徐々に後ろに下がり始める。


「おらあっ!!」


そして、最後に同時に剣を叩きつける。

遂に衝撃でバルドゥスが馬ごと後ろに大きく地面を削りながら吹っ飛んだ。


「恐るべき膂力りょりょく……! しかしっ、ワシもまだまだよ!!」


 応える様に愛馬がいななき前足を上げた後に力一杯地面を蹴って突撃する。

バルドも真っ向から突撃し、両者が再び激しい戦いを始める。


「今の私になら……出来る?」


先の発言を反芻はんすうするほのか。

果して本当にできるのだろうか……?

まだ、戦い方を教えられて少ししか経っていない。それに、何よりも戦いの素人の自分にそんな事が出来るのだろうか?


不安が込み上げる彼女だったが、その時ふと昔、彼が言っていた事を思い出す。



――――それは魔法の使えなかった頃、バルドに会って間もない頃だ。


 当時は魔力があるのに魔法が使えずにいたほのか。

魔法が使えない事を半ば諦めていた。


 自分にはそんな才能なんてない。

魔力があるだけで魔法なんて自分には絶対に出来ないんだ。


 そう思い込んでいた。そして、そんな事を彼の前で打ち明けた事がある。

だが、それを聞いたバルドはそんな自分にこう言ってくれたのだ。


“出来るか出来ないかなんて関係ねえよ。大事なのは挑戦する意志の強さだ。そうやって初めっから諦めたら何時まで経っても何も変わらねえんだよ。諦めたらそこでゲームセットだ。最後の最後まで諦めるんじゃない”


「出来る出来ないかじゃない……。挑戦する意志が大事……」


目を閉じてその言葉を反芻はんすうしていく。

込み上げる不安がその言葉を繰り返す度に薄れて消えていく。


 それが、完全に消え去ると同時にほのかは目をキッと開けた。

魔力があふれだし、背後に女神の紋章が大きく展開された。


「私、やるの!!! ウィル、バルドさんの援護に行くよ!!」

[了解です、マスター!!]


宙に浮かんだ彼女はその場で足下に魔法陣を展開する。

杖を戦闘を行っている方へ向けて魔力を集中する。


「ウィル、砲狙撃でバルドさんを援護するよ。微調整はお願い!!」

[了解しました]


ジッと前方の戦闘をうかがい、チャンスを狙う。

発動のタイミングを誤らぬように彼女はしっかりと杖を持ち、杖の先をジッと見つめる。


「いまっ!! フォトンブレイザーーーーッ!!」


バルドが相手の攻撃を弾いて距離を取ろうとした瞬間にほのかは砲撃を発射。

桜色の光線が真っ直ぐに飛んで行く。


「ぬっ!?」


バルドが距離を取ったと同時に、横合いから飛んでくる砲撃に気付いた彼は愛馬の腹を軽くかかとで蹴って後ろに飛び退かせる。


 直後に先ほどまでいた場所を桜色の砲撃が通り抜けていって炸裂。

外れた砲撃は地面を削りつつ真っ直ぐに両者の間を突きぬけていき、先の地表に着弾して爆発が巻き起こった。


(あの娘……!! 仲間の下がるタイミングに合わせて狙撃をしてきおったか!?)


しかも、かなりの高レベルの砲撃ときた。

これは不味いと判断したバルドゥスがほのかの方へ槍の穂先ほさきを向ける。


「だが!! 遠距離攻撃が出来るのがそなただけと思うな!! 螺貫槍らかんそう撃波げきはッ!!」


 引いた槍を前に思いっきり突き出すと槍から巨大な気が放たれる。

砲撃に近い形のそれは螺旋らせんを描いて先端を鋭く尖らせてほのかへと襲いかかる。


「ひゃあっ!?」


近接型だから接近しないと攻撃出来ないと思っていた相手からの予想外の反撃に驚いて尻餅しりもちをついた。


したたかに尻を打って擦る。そこにバルドを無視してほのかへと狙いを定めたバルドゥスが突撃してくる。

咄嗟にディフェンシブを張って受ける。槍の先が障壁にぶつかって留まるが徐々に破られ始める。


「っ……くぅ~~……!!」

「中々に強固だな。しかしっ!! この程度でワシを止め切れると思うな!!」


 必死に力を込めて堪える。バルドゥスの愛馬がその脚に更に力を込めて地面を強く踏み込む。

槍が一層深く刺さり、突破されるまで残りわずかとなった所で、バルドが接近して斬りかかる。


 咄嗟とっさに槍を引いてバルドの一撃を受け止める。

バルドの方に意識が向いた事を機にほのかが急いでその場から立ち上がって彼の後ろに退避する。


「癒しの抱擁、アクアリング!!」


 そこにバルドを中心とした範囲に水の輪が展開されてその中に彼等が囲まれる。

複数のリングが幾重も囲み、優しい癒しの力がバルドとほのかのみを癒していく。


「サンキュー、フィリス!!」


頭部の傷が消え、流れていた血も消える。発動したフィリスへ感謝の言葉を述べてバルドは力を込めて押す。剣に闇の魔力がまとい燃え上がる。


淵王灰塵破えんおうかいじんは!!」

「ぬぐおおぉ!!?」


 得意の一撃が放たれ。爆発が至近距離で起きる。

後ろに大きく吹き飛んだバルドゥスだが、しかし倒すにはいたらなかった。


「ちっ、浅いか!」

[咄嗟とっさに自ら引きましたね。反射的とはいえ、素晴らしい運動神経です]

「だが、今の一撃は効いてる筈だ。このまま一気に――」

「将軍ーーーー!!!」


畳みかけようとしたバルドだったが、そこに一騎の騎馬が姿を見せた。


 バルドゥスと共にいた隊員達とは違う甲冑を着こんだそれはこちらに向かって駆けてくる。

その後方から大量の砂塵さじんが上がり、遅れて続々と騎馬の大群が姿を現したではないか。

全員が先頭の者と同様に立派な甲冑を着こんでおり、バルドゥスと共にいた隊員達とは比べ物にならない気配を醸し出していたのを遠くにいるのにバルドは感じる。


その軍勢の中に幾つもの騎旗きはたが掲げられており、そこに描かれているのは黄金の馬にまたがる槍兵の紋章だった。


「ちっ……増援か!」

[オイオイ相棒! こいつは今度こそ本命かもしれねえぜ!?]

[若、彼等の両肩に黄金の馬とそれにまたがる槍兵の紋様もんようを確認しました]

「バルドゥス隊の近衛兵団か……!!」


その一団の先頭を走る者、隊長と思わしき人物が先行してバルドゥスへと駆け寄る。


「将軍! ご無事ですか!!」

「お主たち、なぜここにいる!!? 国の防衛は如何した!!」

「半数を白蓮はくれんに任せて残してきました。新兵だけを連れて出て行かれたので心配してましたよ」


そんな事よりも、と彼は道中で見た事をバルドゥスへと伝える。


「魔法共和国第一都市から多数の部隊が出撃したのを確認しました。真っ直ぐにこちらへと向かっております!!」

「むっ、我らの動きに感づいたか……」

「いえ、その様な気配は見受けられませんでした。何か、別の事で出動したと思われます」


しかし、それでもこの状況は不味い。

ただでさえ魔法共和国の者との戦闘中であるのに魔法士の軍勢がやってこられては危険である。


(いかんな……。我々の現在の行動は隠密をむねにしているというのに……)


ここでバレては一巻の終わりである。


それは、バルドも同じであった。

相手の話を口の動きから知る、いわゆる読唇術で知った彼は時間切れだと判断した。


[相棒、如何するよ? このままSCCAの奴らが来てアイツらを捕縛するまで抑え込むかい?]

「……いや、その必要はねえよ。俺達もずらかるぞ」


ほのか達の存在を知られるのは色々と不味い気がしたバルドは撤退の道を選んだ。


もし、バルドゥス隊をSCCAの部隊が捕縛出来たとしよう。

その後の事を考えての選択だった。


さいわいにも、向こうは動揺してるみたいだしチャンスだな。ほのか、逃げるぞ」

「ひゃっ///!?」


急に腕を回され、抱え上げられて小さく声を上げて顔を赤くする。

そのまま彼は後方へ飛び退き、新兵の騎兵たちに囲まれているフィリス達の下に降り立つ。


「っ!! バルドゥス将軍!!」

「ぬっ!? しまった!!」

「悪いな軍神さん。俺達は此処で退かせてもらうぜ」

「逃がすかーー!!」


 新兵達が果敢にも一斉に槍を片手に突っ込む。全方位からこちらに向かって突っ込んで来る彼等。

それを前にしてバルドはバハムートを片手に大きく振り上げる。刀身に闇の炎が纏い、生きているかのようにうごめく。


それを全力で地面に叩きつけると彼等を中心に地面が吹き飛び大量の土砂と砂塵さじんが舞い上がった。


 その衝撃波をまともにくらった新兵達は驚いていななく馬から転げ落ちて皆、落馬する。

すぐさま起き上がって相手の反撃を警戒して槍を構えるのだが、煙が晴れるとそこにはもうバルド達の姿がなかった。


辺りを見渡してもその姿は確認出来ず、逃げられたと分かって悔しそうな顔をする。


「ふむ……、逃げたか」

「将軍、これはこちらとしても好都合です。早くこの場から撤退しましょう」


部隊長の進言に彼もまた静かに頷き、馬首を返る。


「我等も戦域より離脱する! 無事な者は負傷者を連れて一時本国へ行くぞ!!」

「はっ!!」


落馬したりで怪我を負っている仲間を他の者が救助して同じ馬に乗せる。そして、主なき馬達を引く形で駆け出す。

バルドゥスは後方へ離脱させていたビアンカ隊からビアンカを見つけると担ぎ先陣を走る。


「しかし、あの者……。何処かで見た事のある顔であったな」


 自分と相対した真紅の髪の男。何処かで聞いた事のある特徴を持っていた。

馬上で顎に手を当てて考えていた彼はふとその正体を思い出した。


「思い出したぞ! 少し前に単独でAAA級のモンスターの群れを相手に生き残った者か!! 孤高を貫き、邪魔する者は地獄の業火を連想させる炎を持って薙ぎ払い焼き尽くす冒険者! たしか、名をバルドと言ってたか」


――――魔術大国に存在するとある村にある時、大量のAAA級のモンスターが姿を見せて襲撃される事件があった。

村の住民の一人が首都に駆け込んで報せに来た時、バルドゥスは部下を連れて最速の速さで救助に向かった。普段なら三日は掛かる距離を強行軍で一日で駆け付けるも村は完全に廃墟と化していて生存者は絶望的な状況だった。


だが、それと同じく奇妙な感じに襲われた。


人の気配がないのに死臭がただようのだ。

モンスターに食われた人がいると思った彼等はせめて亡骸だけでも回収して手厚くとむらおうとした。


しかし、そんな彼等の眼にしたのは大量のモンスターの亡骸なきがら。その全てがAAA級のモンスターの死骸しがいだったのだ。その前に立っていたのが彼、バルドだった。


 全身返り血で染まっていた彼の腕には一人の女の子がいて、気を失っていた。

自分達に気付いた彼はその子を預け、生き残りは奥に残っている家にいると言って呼びとめる自分達を無視して姿を消した。


(あの時の男か……。そうか、この地に来ておったのか)


あの後に捜索したのに姿を見かけない訳だ。生き残った者は村の総数の約三割程度だった。しかし、AAA級のモンスターの群れを単独で相手にし、尚且なおかつ生存者を残して生き残る。


当時はかなり話題になった。


(奴の一撃を受けて納得した。あやつなら、確かに出来る……!!)


 身の丈を超える大剣を軽々と振るい、強力な闇属性の攻撃を繰り出す。並みのモンスターでは歯が立たないのも頷けた。

そう理解したと同時に、彼は久々に胸の内に眠っていた闘争心がたぎっているのに気付いた。


(このワシのすたれた闘争心をよみがえらせるか……。長生きはするものだな……)

「くっ…くくく……」


思いふけっていた彼の耳に小さな笑い声が聞こえる。

目を下ろせば、腕で抱えているビアンカが笑っていた。


「覚えたぜぇ……。あいつはバルド……。あいつは、バルド……。殺してやる……次に会ったら殺してやるよ……!!」

(ビアンカにも目を付けられたか……。あやつも、難儀なんぎな者よ……)


血走った目をしている彼女を見て小さく嘆息し、仲間を引き連れバルドゥスはそのまま森の奥深くへと姿を消して行ったのだった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



誰もいなくなった平原に、SCCAの一団が姿を見せて周囲の調査を開始した。

最も調査の手が入ったのは巨大なクレーター……ほのかが最後に撃って開けた大穴とその中にあるマーダーの残骸ざんがいだった。


「ナール隊長。モンスターの残骸より微弱な魔力反応を検出しました」


隊員の一人が敬礼をしてその者に報告する。

白衣を着た老人、ナールという男性はその報告を自分の作業を止めて聞いて振り返る。


「おぉ、どれどれワシに見せてもらおうか?」


渡される資料を手に取り、めくっては頷くを繰り返す。そして、不気味な笑みを浮かべて押し殺す様に笑った。


「くっくっくっ……。機甲型モンスターが魔力を持つだけでも驚きじゃが、それよりも如何してそれを打ち倒した奴がの……」

「……? ナール隊長、何か手掛かりを掴めたのですか?」


首を傾げる隊員に彼はぎょろっとした目を向けて枯れた声で語る。


「ワシを誰だと思っている? タスクフォース第三班にして第一都市第一研究所の所長『ナール・ボルジャーノン』じゃぞ」


持っていたパソコンと髑髏どくろの形をしたアクセサリー…『ターミナル』を接続して貰った資料とその手に持っていた桜色の残滓ざんしを合わせて解析を行う。


「魔力残滓から特有の魔力周波数を見つけた。相手は砲撃型、属性は光……。ほほう、これだけでも十分な貴重な存在だというのに魔力量はAA+と来たか」


素早くキーを叩いて幾つもの幾何学の文字が出て画面が切り替わっていく様を見て彼はほくそ笑む。

更にもう一つの魔力光、金の魔力残滓を手に取りそれを解析し始める。


「くっくっくっ、こちらも凄いな! 近接型の魔法士で属性は雷か! 他にも微弱な風属性も見受けられる。こいつは、特殊能力持ち(ヴァリアブルスキル)だな!!」


解析を終えた彼はその笑みを一層深くする。この機甲型モンスターを破壊したどちらもが貴重な魔法士だ。

これ程の逸材いつざいがいたとなれば、手に入れなくてはいけない。


「推定年齢も絞れた! 両者とも……十にも満たない子供ではないか!!」


思わず声を大にして笑う。

それにひかえていた部下はビクッと体を震わせて彼の様子に怯えた表情で見つめる。

一人上を見上げる形で笑ったあと、彼は血走った目で更なる解析を始める。


「これは是非ぜひとも我らの手中に収めたいな!! 足取りを探ってみるかな!!」


コンソールを動かし、目標の相手の行方を探る。

画面にはこの地域のマップが出て矢印が真っ直ぐに第一都市方面に伸びる。



 しかし、その途中で矢印が不規則な軌跡を描き始め、画面に乱れが生じた。

そして矢印が×となり『Target Lost』の文字が画面一杯に広がった。


「キーーッ!! 逃げられたか!!」


悔しさに歯軋りして地団駄する。そんな彼に後から来た別の部下が声をかけて来た。


「あの、ナール隊長……」

「なんじゃこの忙しい時に!!」

「す、すみませんっ!! しかし、もう一つご報告がありまして……」

「報告? 何をじゃ?」

「それが、広域調査を行っている者からなんですけど奇妙な炎が残っているとの話がありまして」


奇妙な炎?

それに彼は首を傾げ、興味を示す。


その部下に案内されて連れていかれた場所――

そこは、バルドが魔術大国クロス王国のバルドゥスと刃を交えていた場所だった。


その個所には闇色の炎が一つ、メラメラと燃えており不気味な様相ようそうかもし出していた。


「ほほうっ!」

「色から見るに属性は闇の様です。恐らく、ここで何者かと交戦した様です」


説明を耳で聞きながら彼はその炎の前まで近づき手で触れようとする。


しかし、その手が触れるかしないかの一歩手前で――


「ひっ!?」


何かに気付いたのかナールはその手を引っ込めて尻餅をついた。

その表情には驚愕きょうがくおそれ、色々な感情が混じっている様子だった。


「隊長!? 如何しましたか!」

「これは……これはなんと素晴らしいものか!! こんな属性、見た事もないぞ!!」

「……は?」


しかし、それは一瞬。

次の瞬間には彼は嬉々とした表情になってパソコンを動き始めた。


「闇属性に似ているが若干違う!! なぜ違う!? ええいっ、こんな場所では調べられんじゃないか!!」


 何に気付いたかは分からないが彼はパソコンをバンバンと叩く。

ともかく、この資料を採取しておかないといけないと判断した彼は専用の採取試験管にそれを入れようとした。


だが、それが触れる前に炎は忽然こつぜんと消え……後には何も残らなかった。


「のぉ~~~~!!? 貴重な研究サンプルが~~!?」


採れなかった事に絶望の声を上げる。

激しく絶望したのか子供の様に地面を転がりまわる。

そんな様子を見て部下達はポカンとした顔をして見つめる。


しばらくして、落ち着きを見せたナールはスッと起き上がり振り返る。

その顔を見て部下達はギョッとした顔になる。


「今日一日、この近辺を調査する。各員、捜索を続けるのだ」


そこには、さっきまでのコロコロ変わる表情が消えて真面目な様を見せるナールが立っていたからだ。


「よ、よろしいのですか?」

「手に出来なかったサンプルを悔やんだ所で戻る訳でもない。ならば、手に入る物だけでも手にしておくべきじゃ。違うか?」

「はっ!!」


敬礼して応えた彼等は急ぎ散開して各々の調査を再開する。

それを見送った後で彼は手にしている二つの魔力残滓を試験管に収めて蓋をする。


「まずは、この二つの魔力を持つ者の調査が必要じゃな。魔法士登録者リストを後で拝見して、後は住民登録リストから該当の属性を持つ者を調べるかの」


 指の間に挟んだそれを陽の光に翳して不気味な笑みを浮かべる。

果して、この魔力を持つ者は一体どれほどの存在なのか?


これ程の力を持ち、尚且つまだ幼いとなれば将来有力な戦力となる。

なんとしても手に入れて我がSCCAに入隊してもらいたいものだ。


「ナール隊長、ノーム遺跡に向かった第三部隊より報告です」

「……続けよ」

「はっ。駐屯していた警備隊は壊滅、戦闘不能状態との事です。ただ、その全員が何者かによって簡易的な治療を施されており命に別条はないとの事です」

「それが何者かは分からぬか?」

「残念ながら……。続けて遺跡の状態ですが。こちらは稼働を始めていると……」

「なんじゃと? あの遺跡は完全に機能を停止していた筈じゃないか?」

「ですが、報告では活動を開始しているみたいです。同様に活動を停止していた遺跡内の機甲型モンスター達が活動を開始しており調査隊に向かって攻撃を開始している様です」


これは一体どういう事か?

古代遺跡であるノーム遺跡は太古の昔に機能を完全に停止していた筈である。

しかも、唯一第一都市周辺に存在する遺跡の中で活動を停止していたノーム遺跡の機甲型モンスターが動き出している。


それがなぜ今になって稼働しているのか?

新たな疑問に興味がき始めたナールは笑みを一層深くする。


「直ぐに向かうぞ。この目で確かめたい事がある」

「了解しました」

「今、この世に何が起きてるか……。知ってしまった時、わし等は何を得るか……」


見えない未来を想像しナールは調査隊に散策を任せて部下を一人連れて再び活動を始めたノーム遺跡の調査に向かって行った。



上手く相手の動揺を利用して撤退に成功するほのか達。

その後、現場に到着するSCCAのタスクフォース。


調査によって狙われ始めるほのかとリースリット。

素性はバレてはいないけど、今後どうなる事やら……。


ちなみに、バルドゥスはバルドの事を覚えていますが彼はバルドゥスの事は覚えてません。

理由、会った事を覚えてないから……ってか忘れている。


それでは、今後とも宜しくお願いします。

では(゜∀゜)ノシ!!

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