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第二十話 ギルド アンフィスバエナ

二十話更新。


最近、力をつけてきたギルド『アンフィスバエナ』の突然の襲撃を受けるほのか達。そんな彼女たちを救ってくれたのは金髪の不良少女。


果たして、その実力は……!

では、本編をどうぞ!!


広場で繰り広げられる戦闘。

一つ、轟音ごうおんが響くと数人のギルドの構成員が宙に吹き飛ぶ。

果敢に挑みかかる彼らだったがしかし、彼等の攻撃は届く事なく一人の少女の前に阻まれていた。


「な、なんなんだこの娘は!?」

「恐ろしく強いぞ……!!」


その少女、金髪青眼の霧島紗耶きりしまさやという少女だった。

彼女が一つ、爪を振るえばたちまち数人の相手を吹き飛ばす破壊の衝撃が襲いかかる。


「くっ!? 固まるな、散らばれ!!」


 まとまるとやられると悟った団員のリーダーが叫び、指示を出す。

それに従って彼等は一斉に分散して多方向から攻撃を仕掛ける。


「シャインバレット、シュートッ!」

「アクアスパイク、シュートッ!!」


 しかし、その彼らをサイドから二人が強襲し上手い具合に妨害する。

遅いくる弾幕を前に彼らは後方へと一時後退し、体勢を整え舌打ちする。


「やはり、グルか!!」

「ならば、容赦はせん。全員捕まえてくれる!!」

「ち、違うよ!! 私達は、そんな怪しい人じゃ――!?」

「聞く耳などない!!」


 団員の一人が魔力矢を放つ。飛んでくるそれにフィリスが同様に魔力矢を放ち、ほのかに当たる直前にぶつけて相殺する。


「ほのか! こうなったら戦って分かってもらうしかないよ!!」

「で、でもっ!?」


 反論を言おうとした彼女に再び地上より攻撃が飛んでくる。慌てて回避し、攻撃をい潜って避ける。そこに飛行できるギルドの魔法士が彼女達へ魔力弾による攻撃を始めて来たのだ。


「くっ……!?」

「フィリスちゃん!!」


魔法障壁でギリギリ防御するフィリス。

彼女を助けようとほのかが魔力弾を飛ばして何とか追い払う。


「私達はなにもしてないのに、どうして分かってくれないの!?」


砲撃体勢に入りつつも叫ぶ。背後に女神の紋章が出現し、彼女の桜色の魔力が溢れだす。

そのかつてない量の魔力を肌で感じた彼等は一瞬だけたじろいだ。


「少しは……こっちの話を聞いてよーー!!」

[フォトンブレイザー、バースト!!]


 ウィルの前に展開される魔法陣より強力な砲撃魔法が放たれる。

意表を突かれた飛行部隊の一角がその砲撃をもろに直撃、撃墜される。


「砲撃魔法だと!? あの歳でなんて奴だ!!」

「奴に集中しろ!! 空域を制圧されると不味い!!」


 ほのかが砲撃魔法士だと分かった途端に空戦魔法士の団員が彼女へ攻撃を集中させ始めた。

飛んでくる魔力弾を自身の体の小ささとウィルによるサポートを活かして弾幕の中を掻い潜って飛ぶ。


 ほのかを逃がすまいと飛行隊は彼女の後を追跡、激しい空中戦が始まる。

その時、ほのかの後を追っていた彼等の前に突然水色の魔法陣が複数展開される。


「なっ!?」

「ほのかは、やらせない!! アンブッシュトーレントッ!!」


 水魔法が発動し、魔法陣から大型の水流が放たれる。

それがある地点で枝分かれして複数の細い水流となって彼等に襲いかかり炸裂する。


「ぐああっ!?」

「くっ!? 設置型の射撃魔法だと!?」

「ほのかと特訓して作った私の新しい魔法だよ」


 アンブッシュトーレントは設置型の射撃魔法である。

敵の進行方向に予め配備したこの魔法は、一定の距離に敵が近づくと自動的に発動する様になっている。


発動すると同時に大型の水属性の魔法が放たれ、任意で途中で枝分かれして多数の敵を迎撃できる。

威力も速度もアクアスパイクを超えていて精度も抜群だ。


ただ、相手の動きを予測して配置しなければいけないので使い方はそれなりに難しい。

それを、彼女は初めての実戦での使用で成功させる事が出来たのだった。


「まだだよ。ツイストカーレント!!」


ひるんだ彼等を逃さないで続けて捕縛魔法をかける。渦巻く帯状の水流が彼等を捕えた。

捕縛魔法を解除しようと必死になる一行。


動きの止まった今がチャンス!!


「ブライト、キャノンッ!!!」


杖を相手の方へ向け、先端に圧縮された一発の魔力弾を生み出す。

両手でしっかりとウィルを握って彼女はそれを発射。

反動で杖が大きく上に持ち上がった。


高圧縮された魔力弾が砲弾の如く捕縛魔法で動きを封じられている一団へと突撃。

その中央に到達と同時に炸裂して桜色の爆発が起きる。


諸に浴びた飛行部隊が次々に気絶して地上へと墜ちた。


「空戦部隊がやられた!?」

「怯むな! どうせ奴らは少数。数で押せば抑え込める!!」

「威勢が良いのは結構だぜ。けどよ……」


 声が聞こえてハッとするメンバーが金髪の少女、サヤの方を向いた。

そこには僅かに姿勢を落とし、腕を低く構えている姿があった。

言いようのない気配がそこからは滲み出ていた。


「小さい子に束で掛って行く連中のセリフじゃねェな……」


ツリ目をより一層、細くして睨みつけつつ彼女は腕に力を込めた。


「奥義 紅刃爪くれないじんそう……!!」


そして、一気に腕を振り上げる。

その瞬間、ギルドの一団を強烈な爪の一撃による衝撃が襲い、軽々と彼らを打ち上げ吹っ飛ばした。


次々に墜落して地面を転がる彼らの後ろ、そこにあるコンクリートの壁には紅色に染まった爪で切り裂いたような跡が複数残っていた。

仲間が次々に撃破される光景を前に団員達のリーダーが歯軋はぎしりをする。


「くっ、この人員を前にしてこうも簡単に押されるとは……!!」

「あとはてめェだけだな。人のシマで勝手に好き放題に暴れやがってよ。落とし前つけさせてもらおうか?」


一歩踏み出すと同時にじゃりっという砂の音が鳴る。

それに合わせてリーダーも一歩後ろに下がる。


バカな!? 自分が怖気おじけづいている!?


モンスターという恐るべき存在にも勇敢に挑んで来た自分が、そんな自分がこんな小さな少女を前に怯えるというのか!?



そんな事実に彼は拳を強く握る。それはあってはならない事だ。

市民を守る為に、モンスターを相手に戦う自分がこんな不良少女を相手にして逃げ腰などあってはならない事だ。


そう思ったと同時に彼はサヤに向かって突撃しようとした。


「やめろ……」


しかし、それは突然現れた一人の男性によって止められたのだった。

彼等と同じ服装に、同様の紋章を付けた服。背には大きな戦斧。

がっしりとした体型の男が肩を掴んでそこには立っていた。


「だ、団長!!」

無暗矢鱈むやみやたらに突っ込むな。やられたいのか?」


団長と呼ばれる新たに現れたその者の言葉に彼は大人しくなる。

その様子を見て無理をしないと悟ったのか、その男は肩から手を離す。


「…………」

「帰りが遅いから様子を見に来ればこれか……。あんたがやったのか?」

「てめェが、こいつらの頭か?」

「その一方といった方がいいだろうな。俺の名は『ギルバート』だ」


その身体からはただならぬ気配がにじみでている。

歴戦の勇士だけが出す事の出来る闘気といった方が相応ふさわしいだろう。


鋭い眼光が彼女達を見据え、視線と共に強烈な気迫が飛んでくる。

それにほのかとフィリスは体を強張らせるがサヤだけは平然とした様子で睨み返している。


「団長、気を付けて下さい。こいつら、中々に手強いです」

「みたいだな。これだけの人員を倒したとなると、何処かの組織の上位階級の奴らって事だな。お前は負傷した奴を連れていったん後退しろ。俺があいつ等の相手をする。こうも内外で事が起きたら動かざる負えないしな」


そう言って戦斧に手を伸ばす。

その様子に気付いたほのかとフィリスが地上へ降りて、慌てて誤解を解こうと必死に声を上げる。


「ち、違うの!! 私達はそんなんじゃ……!!」

「悪いが、見知らぬ者がテリトリー付近をウロウロしているだけで十分に怪しいでね」


彼が斧を持ち、構える。

その斧の刃に魔力が通り、光りを帯びた。


「それに……でやられた部下の為にも、あんた達を拘束する!!」


次の瞬間、彼は足に魔力を通して地を蹴り爆発的な加速でほのか達へと向かって突撃して来た。

そして、その斧を大きく振り上げて三人に向かって攻撃を仕掛けた。



「――なにっ!?」


だが、彼の刃が届く事はなかった。

両者の間には新たに別の人物が立っていた。

その者が彼の斧による一撃を漆黒の大剣で受け止めており、その重撃を防いでくれたのだ。


自分の一撃を受け止める者がいる事に驚きの表情を浮かべる。

逆にほのか達もその者の姿を見て驚いた顔をしていた。



なぜなら――


「バルドさん!!」

「ギリギリ間に合ったってところか……。いや、ちょいと遅刻したか」


 相手の攻撃を受け止めていた者こそ、彼女達の頼れる人物バルドであったからだった。驚きの表情は直ぐに彼が帰って来た安堵あんどのものへと変わる。


そんなほのかとフィリスの様子を見て、無事である事を確認してほんの僅かだけ彼もまた安堵の表情を見せる。


「っ……何者だ!?」

「生憎と……名乗るほどの名は持ち合わせちゃいねえよ!!」


 力を込めて相手の武器を弾く。その衝撃だけで相手は後ろへ大きく押された。黒き大剣を肩に担ぎ、ほのか達の前に立つ。


 闇より深い黒いロングコートが風によって棚引く。鋭い眼光はより一層鋭さを増しており、相手を目だけで射抜けるのではないかと思わせる。


(こいつ、出来る!!)


 そんなバルドの立ち姿に彼は心の中で舌打ちをする。

いま此処にいる者達の中で最も実力があるとすれば、間違いなく目の前の紅髪の男だろう。


「てめェはダレだよ?」


 そして、相手と同様に聞いて来たのはサヤであった。突然湧いて出て来たバルドへ疑惑の眼を向けている。そんな彼女の方を向いた彼はその問いに答えた。


「そこのバカ三人の保護者(仮)だ」

「ふえっ!?」

「開口一番にそれ!?」

「バ、バカ三人……」


 ほのか達を指を指してそんな事をのたまう。それに三人がそれぞれ違う反応を見せた。そんな彼女たちをスルーしてバルドは自分に睨みを利かせる少女、サヤに背を向ける。


「お前は誰だか知らねえが、説明は後だ。取り敢えず、軽く押してからさっさとずらかるぞ」

「そうはさせない。あんたが何者か知らないが、何も分からずに逃がす訳にはいかない。その実力、拝見させてもらう!!」


 戦斧に土色の魔力を通し、再びバルドに挑みかかってくる。

それにバルドも両手に持つ大剣の内、黒き魔剣ケルベロスの方へ闇の炎をまとわせて迎え撃つ。


相手を叩き割らん勢いで両者の一撃が激突。

衝撃で空気が激しく振動してビリビリという音が聞こえて来た。


「この実力……間違いないな!! あんた、相当の腕を持つ実力者か!!」

「斧使いか。やっぱり、てめえはギルド『アンフィスバエナ』の片頭……『斧のギルバート』か」


互いの武器が弾かれて少しだけ後ろに下がる。

ギルバートはバルドの持つ大剣を見て目を細める。


「黒き炎……。『闇属性』の魔法士か!! いや、違うか。魔術士のたぐいか何かか!?」

「そういうてめえは『地属性』か。どうりで防御が固い訳だ」


属性の相性ではバルドの方が有利だ。

それが分かったのかギルバートは顔をしかめて険しい表情を浮かべる。


(紅髪に金の眼……。黒いコートに二振りの大剣……。どこかで聞いた事がある)


バルドを油断無く見据えながら彼は記憶の海の中からその姿を探る。

闇属性で大剣使い。鋭い眼つきに紅髪の金の眼。

その時、彼は脳裏に浮かび上がる姿にハッとする。


「そうか……!! あんたの事、聞き覚えがあるぞ……!!」

「……………」

「孤高を貫く冒険者。数々の上位モンスターを一人でほふる大剣使い……『煉獄の魔剣士 バルド』か!!」

[おやおや。相棒も随分と有名になったね~ウヒャヒャヒャ!!]

[若の名声が遂にはギルドの一角にもとどろく様になったとは……。感無量かんむりょうと言いたいですね]

「俺としては面倒くせえ依頼が舞い込んで来るから勘弁してほしいんだけどな……」


 相棒の名が上がっている事にそれぞれ反応を見せる魔剣。それにうんざりした様子で答える。

大のめんどくさがりやな彼にとって人から依頼を受けるのは非常にめんどくさい。


 出来る事なら、人と関わりを持つのは極力避けて生活したいと思っている。だというのに、悲しいかな。

その思いとは裏腹に彼の下には時々だが依頼が舞い込んで来る事がある。


結果、それを片付ける所為で名が上がっていくのだ。


「俺……職業間違えたかな」

[生きてるうちゃあ、嫌でも人とは関わりを持つのが定めなのさ相棒。ウヒャヒャヒャ!!]

[諦めて下さい若。人と同じ大地にいる以上、必ず人とは関係を持たざる負えないのです。例え、コンピュータ関係で働いても、冒険者をしていても結局は人と必ず関わりを持ちますよ]

「面倒くせえ……」


深い深い溜息を吐く。

それだけで、彼の心労がどれ程なのかがうかがえそうである。


まあ現在、主にその原因となっているのが……


「………………」

「ふえ?」

「……はぁ」

露骨ろこつに溜息をかれたの!?」


 後ろで自分を見つめてくる少女たちであろう。

こっちを見て首を傾げるほのかを見て彼は盛大に溜息を吐いた。

そんな彼の様子を見て彼女はガーンっという音が聞こえそうな位にショックを受けた。


「うおおおぉぉぉ!!」


その時、余所見をしているバルドに向かってギルバートが駆け出し、頭上へと飛んで一気に斧を振り下ろして来た。


それを眼の端でとらえたバルドはなんて事ない風にケルベロスでその攻撃を受け止める。

互いの得物の間で激しい火花が散る。


「この一撃を持ってしても突破できないなんてな……!!」

「腕力に自信があるみたいだが、生憎と俺もそれには自信があるんでね!」


相手を押し返して返しの手で一撃を叩き込む。

それをギルバートは斧で受けるが、大きく後方へ吹っ飛ぶ。


直ぐに地に足を付けて踏ん張り、足裏に溜めた魔力を開放してバルドへ再度突撃。

姿勢を落として斧を水平にスイングする。


胴体を狙った一撃を上に跳躍ちょうやくする事でかわし、逆手のバハムートを振るい相手を攻撃する。

重撃を受けてギルバートの体が後ろへ半歩下がる。

追撃を加えようとバルドが斬りかかると、初撃の反動に逆らわずにギルバートが大きく後ろに下がって攻撃を避ける。


「ならばこれならどうだ!! 爆閃斧ッ!!!」


 斧に魔力を通して彼は地面へと叩きつける。

それにともない、地面を削る様に衝撃波が走り、バルドに向かって突き進む。

相手の攻撃が迫る中、バルドの方は静かにケルベロスに漆黒の魔力をまとわせて構える。


「黒狼斬ッ!!」


 一振りと同時に解き放たれる闇の衝撃波が相手同様に地面を滑る様に走った。

そして、両者の攻撃は中央で激突し相殺されて爆ぜた。


 立ち込める黒煙を前にバルドは地を蹴って飛び出す。

その中を突き破り、彼はギルバートの前へと姿を現した。


まさか、相手の姿が見えないのに突撃してくるなど予想だにしていなかったギルバートは意表を突かれる形となった。

その彼に向かって両手の魔剣に闇の炎をまとわせて一気に肉薄にくはくする。


「黒炎双破ッ!!!」

「ぐうっ!?」


飛び上がりつつ斬り上げを繰り出し、頂点で逆の剣を振り下ろす高速二段攻撃。

得物で防御したギルバートだったが、初撃で体が浮いて二撃目で宙に浮いた自分が吹っ飛ばされる。


何度か地面を跳ねて転がるが、何とかバウンドした時に体勢を入れ替えて足から着地して勢いを両手も地面につけて止まる。


「くっ……!! だけど、まだ―――!!」


キッと顔を上げて彼は再びバルドに向かって突撃を仕掛けようとした。


――――しかし、その時だった。


突如、頭上より無数の影がゆっくりとだがギルバートの下に舞い降りてくる。

果して、彼の周囲を大量の鳥の羽毛がおおいい尽くしたではないか。


「な、なんだこれは!?」


予想外の出来事に狼狽ろうばいするギルバート。

すると、その羽毛一枚一枚が姿を変えて梟の姿へと変化したではないか。

猛禽もうきん類特有の鋭い目がギルバートを捉えると一斉に彼に向かって大きな翼を広げて襲いかかって来たのだ。


「うおおおぉぉぉ!? な、なんだこいつ等は!?」


 バサバサと翼を羽ばたかせて襲いかかる梟の大群に囲まれたギルバートは半ばパニックにおちいる。

斧を振りまわして追い払おうとするのだが、梟達はまるで嘲笑あざわらうかのように攻撃をかわして爪やくちばしで突いてくる。


その光景をバルドは見ており、やがて得物を下げて手元より消した。


「アウルの野郎…余計な手助けをしやがって」

《おやおや、梟娘が手助けとは珍しいね~。あんのなまぐさがこの状況で援護するとはどういう風の吹き回しかね~ウヒャヒャヒャ!!》

《しかし、これはチャンスです。若、今の内に撤退しましょう!》

「そいつは同感だな。これ以上、面倒事は勘弁だ。それに、こっちに近づいてくる団体さんがいるみたいだしな」


かすかに感じる気配に気付いたバルドはギルバートから背を向けて駆け出し、ほのかとフィリス、アシュトンの下へと向かう。


「バルドさん!」

「お前ら、今から移動するぞ。俺の近くに集まれ!」

「わ、分かった!!」


彼を中心に闇の陣が展開され、三人が彼の下に集まる。

それをサヤはただジッと見ていた。


そんな彼女へバルドが声をかける。


「お前も来い!」

「………」


しばし、考える様にうついた彼女だったが意を決して彼等の下に駆け寄り陣の中に入った。

全員が中に入ったのを確認するとバルドは四人へ声を上げる。


「飛ぶぞ! 暗黒転移!!」


四人を抱える様にすると彼のロングコートが大きく広がって全員を包み込む。

そして、次の瞬間には五人の姿がその空間から消え去っていた。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ふむ……。こんなものかの」


背の高いビルの屋上、その端にアウルが立っていた。

ギルバートの方へかざしていた手を水平に動かすと彼の周りにまとわり付いていた梟の群れが一瞬の内に霧散むさんし、羽根が宙を舞い地面に散乱する。


それを払い、辺りを見渡すギルバートはほのか達の行方を完全に見失った様で顔をしかめて歯軋はぎしりしているのが見えた。


「くっくっく……。残念じゃが、わらべよ。元ぬしは既に索敵できる範囲にはおらぬえ?」


小馬鹿にした様に声を殺して笑うアウル。

そして、彼が見ている方向とは逆の方を見て目を細める。


「わっちの新しいぬしの初めての頼みがこんな人助けとは……。中々に如何して面白味のあるものかの」


何処からともなく取り出した扇子を広げて口元を隠す様に当てる。


彼女がこの様な行動を取った理由……。

それは、新たな主となった少女リースリットから言われたからだ。


ホテルよりほのか達の危機を念話で受け取ったバルドが急いで出ていったのを見て、主であるリースリットが早くも頼みごとをしたのだ。


――あの人の後を追って。出来れば、手を貸してあげて――


よもや、契約を交わした翌日には働かされるとは……。

しかも、それが自身の命の恩人の手助けをさせるか……。

新たな主はなんとも律儀りちぎさとい娘よの。


そんな事を考えて、思わず扇子の向こうで声を殺して一頻ひとしきり笑った。


「さて、わっちもぬしの下へと帰ろうか、と思ったのじゃが……。如何やらそうはいかなくなったようじゃの」


 目を閉じて小さく呟く。その背後に数人の人影が飛び掛かろうと得物片手に突撃して来た。それを彼女は左手の方に新たに扇子を持ち、閉じた状態のそれを軽く振るう。


その一振りで得物を弾かれて彼等は後方へと下がり武器を構え直す。


「ふむ、名乗りもせずにいきなり襲いかかるとはしつけのなっておらぬわらべ達よの」


 総勢二十人ほどだろう。その男女を含めた者達は全員、同じ服装……アンフィスバエナの身なりをしていた。

その彼等の戦闘に一人の女性がゆっくりとした足取りで立つ。


「貴方ですね? あの者達を逃がした犯人は……」

「いかにも。して、ヌシ達は何者かの? わっちは忙しい故、手短に頼みたいのじゃが?」

「そうですか……。ならば手短に言います」


腰に挿していた鞘から得物となるレイピアを抜き放つ。

そして、次の瞬間疾風の如き速さで駆け出してアウルとの距離を瞬く間にゼロにする。


「貴方には悪いですが……。ここで消えてもらいます!」


 レイピアに魔力が通り、白色に輝く。神速の速さで突き出された切っ先はアウルの喉笛のどぶえ目掛けて真っ直ぐに放たれていた。


 だが、彼女の放った一撃はアウルが広げた扇子の前に阻まれ届く事はなかった。ギャリギャリと音を立てて両者の間で火花が散る。


扇子越しに相手の放った一撃を見て目を細める。


「ふむ、なるほど……。光属性持ちか……。なかなかに良い突きかの」

「………」

「なっ、団長の神速の一撃を防いだ!?」


 彼女の部下であるのだろう一団は、アウルが攻撃を防いだ事に驚いてどよめいていた。だが、当の本人である女性は表情を崩さずに落ち着いた様子で反動を使って後退し距離を取った。


「この速さに反応する相手と会うのはいつ以来かな……」

「あそこにいるわらべと同じ服装。ヌシ達もギルドの仲間という事で相違そういないかの?」


 しかし、彼女の問いに相手は答える事はなかった。無言で片手を上げて合図を出すと、それに合わせて背後にいた部下達が動き出して彼女を取り囲む様に動いた。


囲まれたアウルであるが、彼女は全く意に介していないのか扇子を広げて口元を隠す様に当てる。


「ふむ。わらべ達の相手をするのは問題ないんじゃが。わっちも忙しい身ゆえ此処で御暇おいとまさせてもらうとしよう」

「逃がしません……!!」


 周囲を包囲して相手の退路は断った。そこで再び女性が地を蹴り、神速の速さで突きを放つ。切っ先が今度は見事にアウルの体を貫いた。


「っ!?」


しかし、相手を貫いた女性の表情は驚きの色で染まっていて、逆にアウルの方が口角を上げて深い笑みを浮かべていた。


――――手応えがない!?


 理由はそれだった。彼女の貫いた筈の個所からは貫いた感触が一切伝わらないのだ。まるで、何もない空気に剣を突き出した感じだった。


 驚く女性。その直後に目の前にいるアウルの体が徐々に崩壊を始めたのだ。貫いた個所から水面に波紋が起きた様に、彼女の体が鳥の羽毛一枚一枚となって空へと舞い始める。


「わざわざご足労そくろう頂いた訳じゃが、生憎とわっちはヌシ達には用はありんせん。ぬしの下へ帰る故、これで失礼するのじゃ」


 最後に残った頭部も羽根となって空へと舞い上がり、上空へと消える。肉眼で確認出来なくなると同時にアウルの魔力反応も彼女達の索敵できる範囲から消え去ってしまった。


「急いで周辺の捜索を! まだ遠くには逃げてないはずよ!!」

「はっ!!」


 彼女が指示を出すと、部下達が一斉に周囲へと散らばって捜索に動き出す。粗方あらかたの部下達が姿を消したあと、一人の部下が帰還する。


「団長! 外に出向いた部隊が何者かの襲撃を受けました!!」

「なんですって!?」

「前回の時と同じ傷が多数確認出来ました。恐らく、同一犯です!!」

「どういう事……? 彼等が犯人じゃないの? いいえ、今はここで詮索する時間が惜しいわ。ギルバートと合流して急いで怪我人の治療をするのが最優先ね。戻るわよ! そろそろ、騒ぎを聞きつけてSCCAも駆けつけてくるかもしれないから」

「はっ!!」


 部下をともなって彼女は地上にいるギルバートの下へと向かい合流。急ぎ負傷して本部に搬送された部下達の治療に向かった。


そして、彼等の部下の必死の捜索も空しく。

ほのか達もアウルも発見する事は出来なかったのだった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ぬしよ、いま帰ったぞな」

「ん……」


 街中を必死に捜索しているアンフィスバエナの部下達を嘲笑あざわらうかのように悠々(ゆうゆう)と帰還したアウルが室内に戻る。

彼女を待っていたのは、既にマジックアーマーを展開した状態で待機しているリースリットだった。


使い魔の彼女が帰って来たのを確認した後にリースリットはおもむろに窓を開け放つ。


「なら、行くよ」

「……また挑みに行くのかえ?」

「ん……」


 アウルの問いにリースリットは小さく頷いた。

彼女はもう一度、あの黄の欠片を身に宿す機械兵器を倒しに行こうというのだ。


前回は失敗したが、今度は倒してみせる。

そんな強い意志が感じ取れた。


「新しいぬしは随分と忙しいの……。わっちは休みたいでありんす」

「それはダメ……。今日、終わらせる……」

「まぁ、ぬし様がいうのであれば従うしかないの。しかし、ぬしの攻撃は奴には効かぬが……どうするのかえ?」


 彼女の雷属性の攻撃は前回、対雷装備を前にして効果を発揮できずに終わった。

再び挑むとなれば、その武装をどうにかせねばならない筈だ。


「考えがあるから……大丈夫」

「ふむ……」


リースリットは剣タイプに切り替えたフォルテの柄をギュッと握る。

自分を真っ直ぐに見つめてくるその綺麗な赤い瞳をアウルは逸らさずに見つめ返す。


(嘘、は言っておらぬか。しかし……ぬしは一体どんな秘策を持っておるのかの?)


 それには少し興味がある。彼女の考えとは一体何か?

自分を驚かせるほどの事をしてくれるのだろうか?

ちょっとばかり好奇心が芽生える。


「わっちには教えてくれぬのかえ?」

「教えない……」

「いけずじゃの~」


やれやれと肩をすくめたあとにアウルはリースリットの傍らに移動し、窓より外へと身を投じて飛行魔法で空へと舞い上がる。


それに続いてリースリットも自分の持ち物を確認した後に空へと飛翔し、欠片の待つ遺跡の方へと飛んで行くのだった。



バルドの帰還で撤退に成功するほのか達。

そして、リースリットはアウルを伴い再びあの機甲型モンスターへと再戦しに飛び立つ。


ギルドの人達にはまだ疑いの眼を向けられたままの状態。

このフラグを何処で回収すべきか迷ってます。


早い内にすべきか、それとも後にしておくべきか……。


それでは、皆様。今後とも宜しくお願いします!


では(゜∀゜)ノシ!!

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