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第十二話 金の戦乙女

十二話更新。


モンスターの群れを操り都市を襲う謎の大型モンスター。

そこに舞い降りるのは、金の輝きを宿す少女。


戦闘描写は、相変わらずのgdgd感。

では本編をどうぞ。




港付近は既にモンスター達の襲撃によって火の海と化していた。

燃え盛る炎はあらゆるものを焼き尽くし、黒煙を生み出して天を覆い隠さんと盛大に吹き上げる。


その都市の港に佇むのは巨大な化物。

赤い血走った眼は眼下に広がる火の手が次々に上がる街を静かに見つめていた。

その者の前にSCCAの一個小隊が新たにやってきた。


「奴が親玉だ!! 総員、攻撃開始!!」


 一斉に攻撃を始める彼等。次々に飛来する魔力弾の雨がモンスターへと直撃、爆発でその身体が包まれた。


「やったか!?」

[……ラー……アルム……トール……]


しかし、白煙の向こうに赤い双眸が輝いて見えた。

次の瞬間、煙が吹き飛びモンスターが咆哮を上げて姿を見せる。

その身に傷は一切なかった。


「なっ!? 効いてない!?」

[コール……クアス!!]


鉈の様な形をした剣に青色の魔力光が纏う。

それを天高く持ち上げると、一気に振り下ろして強力な斬撃を放って来た。

地面を抉って進むそれが隊員たちを一瞬の内に呑み込み吹き飛ばす。


「ぐああっ!? ぐっ……化物…め」


 力の差は歴然だった。

たった一撃をくらっただけで彼等は戦闘不能に追い詰められていた。

そんな矮小たる存在の彼等にそれは情けをかける気など毛頭もない。


左手に魔法陣を生み出すと、それを天高く掲げた。


[ラー、アルム……トール。ラー……アルム、トール……]


 古代インペリア語で何かを唱え始める。

すると、背後にあった水面が見て分かるほど荒々しさを見せ始めた。

波打ち始める水面は徐々に波を作り始め、船着き場に激しくぶつかる。


[コール……コール……コール……ウァールッ!!!]


次の瞬間、巨大な津波が発生。

船着き場を乗り越え、暴虐なる水の奔流が地上にいる全ての者に襲いかかった。

倒されたSCCAの者達は成す術なく呑み込まれ、都市の奥へと押し流されていった。


[オオオオォォォォォ!!!]


 天に輝く月へと咆える。

まるで、怨敵を見ているかのように、憎き敵がそこにいるかのように……。

地上を襲う波が勢いを強め、都市の約三分の一までを水浸しにする。


そして、今まで動く事のなかったそれが街を蹂躙せんとその足を踏み出そうとしたその時だった。


「見つけた……」

[………!!!]


 幼き少女の声が夜の世界に小さくもハッキリと響く。

それに反応してモンスターは蹄のある足を止め、その方を見る。


 十メートルくらいの建物の上に、月の光をバックに立つ影。光を受けて神々しく光る金髪のツインテール。

身にまとう黒き闇に紛れる装甲の薄そうな服は、肩から先が肌を露出させたノースリーブ。その肩口に白い羽根が幾つか付いている。胸元もひし形に開いてそこだけ白い磁器の様な肌を露出させている。


 その胸の位置には赤い、同じくひし形の宝石が付いており、黒い手袋を装着している手には金色に光る一本の剣。黒き柄の中央には金色に輝く宝石が埋め込まれていた。


けがれを知らない紅の双眸そうぼうは、しっかりと相手を見据えている。今だ十にも満たないだろう幼い少女がそこに立っていたのだ。


「秘石『ニーベルンゲルゲン』……。その欠片を確認……封印、及び回収する」

[ウルオオオオォォォ!!!! エル……エル……レムゥゥゥゥ!!!!]


 小さく呟く少女に向かって突然モンスターが咆哮を上げて剣に魔力を通し、彼女の立つ建物へと剣を横に振るった。

轟音を響かせて迫るそれを、少女は建物から跳躍して避ける。直後にその一撃は建物を難なく砕き、瓦礫と還す。崩れ落ちる建物の前に少女は苦もなく着地。



 その少女に向かって今度は斬撃を飛ばす。地面を砕きながら迫るそれを少女は軽く横に飛んでかわす。

さっきまでいた場所を斬撃が通り過ぎ、建物に激突。爆発を起こして大穴を開ける。

その破壊された場所を見てみると、水が滴り落ちているのが分かった。


[対象の属性は水と判断。これならマスターの敵ではないですね]

「フォルテ……。サポートはいらない。私一人で倒す……」

[よろしいので?]

「うん……。これ位、私一人でも勝てる……」

[了解しました]


相棒より返答が返ってきて彼女は剣を水平に構える。

金色の刀身からは雷がバチバチと音を立てて発生しており、その光が彼女の金の髪を美しく煌めかせる。


彼女の背後に紋章が浮かび上がる。


そこに映るのは……金色の長い髪を持ち、雷を纏う剣を抱き瞳を閉じた格好でいる女神……いや、戦乙女の姿があった。


「行く……。ナイトチャージ……」


 彼女の両足に雷が纏う。それと同時にリースは地を蹴った。

彼女が地を駆ける。地を蹴る度に彼女の足元で雷が跳ね、表面を舐める。


地面を蹴る度に、少女の速度がどんどんと上昇していく。

その速さは最早、常人では出す事など不可能な域に達しており超高速で彼女は相手へと接近を開始した。


[ウルオオオオォォォ!!!]


高速で接近する少女目掛けてモンスターが咆えて魔力を通した剣を振り下ろす。

しかし、彼女は相手の攻撃が届く一歩手前で、急速に軌道を変更。彼女の姿が掻き消えた。


攻撃は誰もいない地面に突き刺さり、粉砕する。

爆ぜて吹き飛ぶ地面、しかしその中に少女の姿はない。

一方、敵の視界から消えた彼女は、相手の側面を捉えていた。


そこから地面を強く蹴って、金の流星となって相手を持っていたフォルテと呼ばれる剣で切り裂く。

斬られた個所から、血がほとばしった。


[オオオォォォォッ!?]

「遅い……」


 近くの大きな船に着地した彼女はそう呟く。斬られ、怒りに燃える瞳が少女一人に向けられる。

凄まじく濃い殺気が放たれ、僅かに彼女も汗が滲むがその表情は一切変わる事はなかった。


 咆哮を上げるそれは、力の限り上段より剣を振り下ろす。それを再び足に雷光を纏わせて船の床を蹴って飛ぶ。

かわされた一撃は容赦なく大きな船を縦に切り裂き、真っ二つにして沈没させる。


敵が大ぶりの一撃を繰り出した事で隙が生じる。それを彼女は逃す事なく、魔法陣を展開した。


「雷光よ、貫け……。サンダースピア……!」


周囲に雷の槍が出現。その穂先全てが巨大なモンスターへと向けられる。

そして、彼女の合図と共に一斉斉射。放たれる雷の槍が敵に激突し爆発を起こす。


[ウルオオォォォォォ!?]


 弱点であろう一撃を受け、悲痛な声を上げて巨大な体を持つそれは踏鞴たたらを踏んだ。

追撃を加えんと、彼女は地上を駆けて相手の背後に回り込んで隙だらけの背中を攻撃しようと跳躍する。


[シャーーッ!!]

「っ!?」


しかし、相手の尻尾……と思われる個所にあった蛇が接近する少女に体を伸ばし噛みつこうとして来たのだ。

咄嗟に身を捩じってその攻撃をかわし、相手の背中に着地と同時にそこを駆け上る。

その後ろを蛇の尻尾が追いかけて来て鋭い牙で噛みつこうとして来た。


「ふっ!」


 あと少しで彼女へ鋭い牙が届くと思われたが、そのタイミングに合わせて少女は足を踏ん張って緊急停止。相手の噛み付きを紙一重でかわして通り過ぎる蛇の頭に向かって低くした姿勢の状態から身を捩じってフォルテを振り上げた。


回転しつつ放たれた一撃が見事に蛇の頭部を斬り落とし、宙を舞う。


直ぐに相手の背より跳躍して離れた場所に着地。

同時に地面に落ちた頭部が転がり、やがて泡となって消える。

しかし、斬り落とされた蛇の姿をした尾だが、直ぐに再生して元に戻る。


[マスター、如何やらあれは独立して動いている様です。背後からの攻撃には細心の注意をして下さい]

「ん……分かってる」


 短く受け答えした後にその場より高速移動。直後に振り下ろされた剣が地面を砕く。

砕けたアスファルトの塊が宙に浮きあがり、それを足場に彼女はピンボールの様に高機動でジグザグに塊の間を飛びまわる。


相手が視界から消えたり、現れたりを繰り返すのでモンスターは目で追えなくなってきた。


「そこっ……!!」


 相手の眼の動きが鈍くなった瞬間を逃さず、彼女は相手の正面にある塊の側面に足を付ける。

直後、両者の間に一際大きな塊が落ちて彼女の姿が消える。


そして、それが両者の間から消えたと同時に彼女は足裏に溜めた魔力を解放、雷光の一撃となりて相手の頭部に斬撃を叩き込む。


[ウルアアァァァァァ!?]


 痛みに声を上げて仰け反る。

宙より、斬り落とされた牙が地面に突き刺さった。

怒りに目を真っ赤に燃やしたそれが右手の剣を握り直して背後に向かって振り返りつつ横に一閃する。


その先には少女がいたが、彼女はその場より頭上へ跳躍。

体を捻じり、遠心力と重力の力を加えた回転斬りを相手の頭部へと叩き込む。


[ガアァァァァ!?]


頭部への一撃にそれは踏鞴たたらを踏み、船着き場の縁まで下がる。

そして、バランスを崩して背中からそのまま川の中に落ちていった。

大きな水飛沫みずしぶきを上げて消えたそれを地上に着地した少女はジッと見る。


「まだ……終わってない」

[その様ですね。前方の水中より膨大な魔力反応を確認しました]


その言葉が終わると同時に目の前の水面が激しく波打ち始める。

そして、地面が激しく振動を繰り返し、再びその巨大なモンスターが姿を見せた。


[ラー……オブ……コール……!! ラー……オブ……コール!!]


古代インペリア語を紡ぐそれ。

その身に宿る魔力が膨張し、その身体を水柱が包み込み、四方に同様に水柱が噴き出した。


[ラー……コール……ナー……!! コール……コール……ナー!!]


水壁の向こう側でその赤き双眸そうぼうが輝く。


[ラー……コール……ノーディアス!!]


水壁が爆ぜ、辺りに大量の水が飛び散る。

まるでバケツをひっくり返したような大量の水が雨の様に降り注ぎ周囲一帯を濡らす。


そして、その水壁の中にいただろうそこには、先ほどの生物とは似て非なる者が立っていた。


[オオオオォォォォォ!!!!]


身長が縮まり、体長は約三メートル程だろうか。

全身が魚の鱗で覆われ、顔も鋭い牙を生やした魚の様な形をしている。

その手には自身と同じくらいの大きさの鉈の様な剣、それに加えて新たに紫色の槍が握られているではないか。


[形態変化を確認。向こうは本気になった様ですね。マスター、お気を付けて]

「問題……ない」

[ウルオオオオォォォォ!!!]


咆えるそれ……ノーディアスが槍のを此方に向けた形で突進を仕掛けてきた。

その速さたるや、先ほどとは比べ物にならない位に速い。


 瞬時に危険と判断した少女はそこから横っ跳びで回避。外れた突進が背後の建物に激突。

何の抵抗もなくその壁を穿うがち、砕いたではないか。


[攻撃力はそのままで、速度が上がってる様ですね]

「ん……」


当ればひとたまりもないだろう。

それに気をつけつつ彼女は表情を一切変えることなく正面から堂々と攻め込んで来る相手に向かってフォルテを片手に突撃していった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



金髪の少女が戦闘を始めた頃に時間を少し戻そう。

急いで向かっていたほのか達はあの巨大な生物が高速で動く金の光を前に翻弄されているのを見て驚いていた。


「なんなのあれ!?」

「速い!? まるで閃光みたいだ!?」


光はあまりにも速くて時々見失う。

それを間近で見てるだろうあのモンスターは彼女達と同じく翻弄ほんろうされているのが分かる。

地上を高速で動きまわるその光を何とかしようと暴れているのだが、一向に捕まる気配がない。


「誰が戦ってるんだろ?」

「少なくとも、私達よりも戦いに慣れてる人だと思うよ」

[フィリス。あの者……魔力量はAAクラスに及んでるみたいですよ]

「AA!? ほのかとほとんど同レベルって事!?」


 その情報にはフィリスが驚いた。AAクラスとなれば、中々いない人材である。

それ程の人物が今、目の前で戦っているのだと思うと益々(ますます)新鮮味が感じられた。


(だったら、私達は行ったら邪魔になりそうな気がするな……)


此処まで来ればそう思うのも無理はないだろう。

ほのかと同等の魔力量を誇り、尚且つ自分達以上の速さを持つ人物だ。

そう簡単には負けないだろう。


「でも、もしあのモンスターが欠片のモンスターだったら倒した後に出てくる欠片は封印して回収しないと危ないし……」


 互いのターミナルからの情報があった通り、あれが欠片だったらそれを封印しないといけない。

それに、あれは一度持って帰って調査する必要がある代物だ。


「ほのかはどうするの?」

「私は行くの。だって、一人よりも二人、二人よりも三人の方が絶対に安全なの!!」

「…そうだね。なら、急ごうか!!」


 だが、そうこうしている内に前方の巨人が遂に倒され、川の中に落ちて大きな水柱を上げて消えた。

しかし、直後に膨大な魔力反応が発生。巨大モンスターは咆哮を上げて水柱の中に消えていった。


[強力な魔力反応! マスター、相手はあの時の様に変化してます!]

「大変なの! 急いで助けに行かなくちゃ!!」


誰が戦っているか分からないがこのままでは危ない!

しかし、その時だった。下方より大量の水弾の弾幕が襲いかかって来た。


「にゃあっ!?」

「うわっ!?」


慌てて急ブレーキをかけて停止、その前を大量の水弾が通り過ぎていった。

そして、遅れて彼女達の前に水棲モンスターの群れが立ちはだかって来た。


「通させない気なの!?」

「ほのか、こうなったら倒すしかないよ!!」

「う、うん!!」


 襲い来る水棲モンスターの群れを前に二人は果敢かかんにも突撃する。

そんな二人をフライングフィッシュが口から水弾を放って攻撃を仕掛けてくる。

それを身を捩じりつつ掻い潜り、魔力弾を放って次々に命中させて撃墜する。


次に蛇型のモンスターが水ブレスを放ってきたが、これをフィリスが同属性の防御壁を張って防ぎ、素早く魔力矢を放つ。

着弾しダメージを受けるが、微々たるもので相手を焚きつけるだけに終わる。

怒りの形相で牙をむくが、そこに見えるは桜色の魔法陣。


「フォトンブレイザーーー!!」


フィリスの作った隙を逃すことなく、ほのかの砲撃魔法が炸裂。

相手はその光の奔流に呑まれ、爆発に包まれた。


攻撃を諸に浴びたモンスターは白い煙を上げてノックダウン。

気絶して地面に横たわった。


「今の内に先に行こう!!」

「うん!!」


敵を粗方あらかた撃墜したのを確認してから、二人は急いで先に行く為に飛翔していった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



その頃、船着き場で青き欠片、ノーディアスと戦闘は佳境かきょうに差し掛かっていた。


[オオオッ!!]


突き出される鋭い一撃。それを少女は自身の小ささを利用して姿勢を更に落とし、攻撃をかわす。

そして、突き出された槍に向かってフォルテを振り上げる。

キンッと乾いた音が響くと同時に夜空に何かが回転して舞いあがった。


見れば、相手の持っていた槍が半ばから綺麗に斬られていてそれはもう、槍としての役割を果たせていなかった。


回転して落ちてきた槍の先が地面に突き刺さり墓標の様になる。

まるで、それは未来を示しているかのように見えた。


 自身の武器を折られた事に怒りの咆哮を上げるそれが今度は剣を振りまわす。

高速移動でそれをかわして、一端距離を取る。


「これで、終わらせる……」


フォルテを構えると同じく足に雷が纏う。

再びナイトチャージを発動し、地上を高速で走る。


その少女に向かって剣を振り下ろすが、それは右に素早く弾かれる様に飛んでかわされる。

そこから跳躍し、相手との距離を詰めて斬撃を叩き込む。


相手の背後に着地し、また距離を詰めて斬る。

少女の素早い連撃に相手は反応が遅れ、次々に命中していく。


堪らずノーディアスは後方へ下がって距離を取って剣に魔力を通し斬撃として飛ばす。

それをかわして雷槍を飛ばす。

だが、今度は相手も魔力弾を何の苦もなく弾いて攻撃を防いだ。


[ラー、アルム……トール!! ラー…アルム……トール!!]


彼の背後にある川が波打つ。

徐々に勢いを増していく水は船着き場を激しく叩いた。


[コール…コール……コール、ウァールッ!!!]


 叫ぶと同時に巨大な波が発生し、再び船着き場を越えて暴徒と化した水が襲いかかる。

少女を呑み込まんと飛び掛かってくるそれを前に少女は跳躍、何と暴れ狂う水の上に立った。


 それにノーディアスも水上に立ち、剣を構えた。少女は足に雷光を纏わせた状態で水を蹴り駆ける。

その速さは徐々に上昇していき、常人の魔法士では到底及ばぬ速さに至る。


互いの距離が零となる。ノーディアスは剣を全力で振り下ろす。

振り下ろされる一撃を足に力を込めて横に跳躍してかわし、次の一歩で弾丸の如き速さで距離を縮めて斬りかかる。


だが、その時だ。

相手の姿が掻き消え、彼女の攻撃が初めて空を斬った。


「っ……!!」


 相手の姿を探そうと辺りを見渡すが、何処にもその姿がない。

警戒を強める彼女の背後、その水面が僅かに波紋を生んだ。


[背後より魔力反応!! 敵は後ろです!]

[オルウァァァ!!!]


 彼女の背後、その水中より相手が剣を振りかざして飛び掛かって来た。

それにパートナーからの声で振り返って一撃を受ける。


しかし、元々体重の軽い彼女はあっさりと押し負けて大きく後ろへ弾き飛ばされる。

体勢を整えて直ぐに顔を上げる。


だが、その時にはノーディアスの姿は消えていた。


「水中……」


瞬時に相手の居場所を割り当てた彼女は魔法陣を展開する。

広がるその表面からバチバチと雷が迸る。


「ライトニングフォール……!!!」


頭上に同様の魔法陣が広がり、一発の落雷が発生。

途中で枝分かれして複数の雷へと変化、彼女を中心に魔法陣が展開されている範囲に落ちていった。


[オアアアァァァ!?]


水に電気が流れ込み、強烈な電撃をまともに浴びたそれが飛び出て来た。


「これで、決める……!」


 相手の姿が現れた瞬間、彼女は再びナイトチャージを発動し高速で相手へと接近する。

痺れる体を無理に動かして接近してくる彼女を叩き潰さんと剣を大きく振り上げ、全力で下ろす。

それが彼女の頭をかち割らんと迫るその瞬間だった。


「アクセラレート……」


 少女の姿が掻き消えて、直後にノーディアスの胴に横一文字の斬撃が奔る。

そして、何時の間にか少女は相手の背後の方でフォルテを振り抜いた形で立っていたのだ。

あの一瞬の間に、少女は速度を更に上げて相手の一撃をかわすと同時に自身の一撃を叩き込んだのだ。


だが、彼女の攻撃はこれで終わりではない。


 再び姿が掻き消える程の速さで相手へと肉薄し、横一閃。

身を翻し、下段から上段に向かっての斬り上げ。


高速で繰り広げられる攻撃の嵐に巨体が徐々に浮かび上がる。

そして、浮き上がった相手を追い越し、彼女は上空へと飛翔した。


「さようなら……」


彼女の背後に再び戦乙女の紋章が浮かび上がる。

それは目を開き鋭い視線を向け、剣を右手に持って左手を添えて構える絵に変化していた。

ノードディアスの瞳に、その姿が映し出される。


金の月と彼女の影が被る。

それは何とも美しい光景であった。


まるで、それは…………


死を与える死神……否……


月夜に輝く月下美人……!!


少女の持つフォルテの魔力刃に雷が纏う。

バチバチと音を立てて迸る雷は周囲を舐めるように奔る。


相手の真上を取った少女が一気に加速し、弾丸の様に落ちる。

その後を金色の魔力光が追いかけるように帯状に伸びる。


突っ込んで来る彼女を迎撃しようと、モンスターは最後の悪あがきの斬撃を放った。

だが、空中でも自由に動ける彼女に、その攻撃は届く事はなかった……。


「レイジング……スマッシュ……ッ!!!」


繰り出されるは雷の一撃。それが、相手の頭部を見事に捉えた。

斬撃と電撃が同時に相手に襲いかかり、地上に向かって弾き飛ばす。


[ウルウァァァァァァァ!!?]


荒れ狂う水の中にそれが落ちる。そして、水中で大爆発が起きて巨大な水柱が上がった。降りしきる雨の様な水。


それを浴びながら、彼女はフォルテを片手に静かに見下ろしていた。

暴走していた水がゆっくりと消えていく。

まるで、今まで何も起きなかったような静かな水面が眼下に広がっていった。



それに合わせて、暴走していた水棲モンスター達はその殺気を霧散させる。

血走った眼が元に戻り、動きを止める。

辺りをキョロキョロと見渡し、見知らぬ場所に何やら慌てている様子。


直ぐに水気の多い個所を求めて一斉に目の前にいるSCCAや冒険者たちに背を向けて逃げ出したのだ。


「なんだ? 急に殺気が引っ込んだぞ!?」

「如何なってんだ? 向こうの攻撃性が一気に掻き消えやがった……」


 その異常な様子に誰もが戸惑っていた。

そんな彼らなど無視してモンスター達は一斉に逃げ出し、一点へと目指す。


 その進む先には、上陸に使った船着き場だった。

水中へ逃げるように身を投げ出し、次々に水飛沫が起きる。


煌めく水面の中、影だけが見える。モンスター達は優雅に泳ぎながら人の手のあまり及ばぬ川の上流目指してゆらゆらとその姿を消していった。


それを見届けてから金の少女はゆっくりと地上へと降り立つ。

そして、船着き場の一角に無造作に転がっている青い欠片を見て魔法陣を展開した。


「封印……」


式の組み込まれた金色の帯状の魔法が伸びていき欠片へと吸い込まれる様に消えていく。

その封印魔法が全部欠片の中に入ると、発光していた欠片は徐々に輝きを失せていって淡い光を零すだけの物へと変化した。


その傍に近づいて手で触れる。抵抗なく触れれる事を確認してから少女は青き欠片を拾い上げた。


「回収……完了」

[お疲れ様です、マスター]

「ん……」


相棒のねぎらいの言葉に少女は小さく言葉少なめに答える。

てのひらに納まっているその欠片を見つめる。

宝石程度の淡い光を放つそれからは悪しき反応は感じられない。


「まずは……一つ」

[残るは七つ……。いえ、つい最近になって一つの反応が消えましたから残るは六つという事になりますね]

「必ず……集める……」


 欠片をグッと包みこんで決意固く呟く。

欠片は手に入った。もう此処には用はない。

そう思った彼女はその場を去ろうと飛び立とうとした。


しかし――


「っ……。魔力反応……」


その瞬間、自分のいる此処に接近する大きな魔力反応を捉えた。

数は二つほど、どちらも大きな魔力反応だった。


[此方に来ますね? 如何しますか、マスター?]

「一度、確認する……」


如何いった目的で此処に来るのか分からない。一度、この目で見て判断すべきだと感じた。


「もし、これが目的なら……倒す」


静かに呟いてフォルテを握り直し、彼女は空を見上げるのだった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




先を急いでいたほのか達は強力な魔力が忽然こつぜんと消えたのに驚きを感じた。

もしやと思って飛行速度を上げて目的の船着き場へと辿り着いて地上に降り立つ。


「確か、ここにいた筈だよ」

「うん。まだ微かにだけど感じ取れる」


随分と弱々しい気配があってそれを辿る。

すると、その先にいたのは一人の可愛らしい少女であった。


「え?」

「あの子は……?」

[フィリス、気を付けて。あの子、先ほどのAA級の魔法士です]

「えっ!? それじゃあ、あの子があの欠片と戦ってた子なの!?」


 メローの言葉に驚いた二人が少女を見る。綺麗な金髪に透き通るような紅い眼。

自分と同い年くらいだろうか、その少女があれと戦っていたという事に信じ難い思いだった。


しかし、その少女が手にする淡く光る青い欠片を目にしてほのかが声を上げた。


「あっ、フィリスちゃん。あの子、欠片を持ってるの!?」

「それじゃあ、ホントにあの子が……!?」


 青い欠片を所持している事を見るに本当に彼女があれを倒したのだと実感する。

そんな彼女達とは裏腹に、金髪の少女は剣を持ったまま此方をジッと見ている。


「同業者……?」

[如何やら、私と同タイプのターミナルを所持している様です。恐らくは……]

「そう……なら、遠慮はいらない……」


 青い欠片を一度手放して宙に浮かせておいてから彼女は剣を二人に向けた。

それと同時に、三人を中心に魔法陣が広がってドーム状の壁が展開された。


そのドーム状の壁を見てフィリスが驚きの声を上げる。


「これは……封鎖魔法!!」

「封鎖魔法?」

「外の世界と隔絶された空間を生み出す、結界みたいなものだよ。だから封鎖魔法、封鎖結界って呼ばれてるんだ。こんな高度な魔法を……しかもこんなに広範囲に展開できるなんて、彼女は一体……!?」


 封鎖魔法は技術を持たない者には使う事すらできない。

フィリスとて展開出来るのは僅かなものだ。


だというのに、それを自分達をおおえる程に広げられるとは……。


自分と同い年に見える少女。

その何処にこれ程に高度な魔法技術を宿してるのか……。驚きは戸惑いへと変わる。


「ナイトチャージ……!!」


 だが次の瞬間、彼女はほのか達に向かって突撃を開始してきたではないか。

彼女の標的は――ほのかの方だった。


 その速さたるや、実際に近くで感じると予想以上の物だった。

あまりの速さに、ほのかは全く反応できていない。


「ほのか危ない!!」

「レイジングスマッシュ……!!」


あっという間に距離を詰められ驚きで目を見開く。

全く反応出来ていない彼女に向かって光り輝く刃が振り上げられた。


その両者の間に危険を感じたフィリスが割り込んできた。


「メロー、マジックディフェンス!!」


 張られる魔法障壁。それと剣が激突する。

激しい帯電が起きて、同時にフィリスの張った防御障壁にひびが入ったではないか。


「っ!?」

「フィリスちゃん!?」

「うそ、まさか……この子は……!! きゃあっ!?」


次の瞬間、彼女の障壁がガラスが砕けた様に爆ぜる。

続けてフィリスに斬撃が決まり彼女の軽い身体が吹き飛ばされて背後の建物に激突した。


「かはっ!?」

[フィリス!?]

「くっ…。ま、さか……雷……属性……?」


 水属性である彼女にとっては天敵とも呼べる属性。

それをまともに浴びたフィリスは、成す術もなくその場に倒れた。

全身に来る倦怠感けんたいかんは凄まじく、腕に力を込める事すらままならなかった。


次第に薄れる意識。ぼんやりとした中で彼女はそのまま意識が途切れてしまった。


「フィリスちゃん!?」


悲鳴に近い声を上げて友達の名を叫ぶが、気を失ったのだろうフィリスはピクリとも動かなかった。


[マスター、彼女の事はひとまず置いておきましょう。それよりも、目の前の少女を如何にかする事だけを考えて下さい!!]

「う、うん!」

「………………」


 フィリスの事は心配だが、このままでは共倒れになる。

彼女の身を守る為には、目の前の少女を如何にかしなければいけなかった。


(なるべく、傷つけない様に戦わないと……!!)


ウィルをギュッと掴んで、緊張で激しく鼓動する心臓をなだめる。

表情を変えずに自分をジッと見つめてくる少女、ほのかはその目の前にいる少女に対峙するのだった。





ノーディアス


青い欠片が本来の力を解放した魚人の様ななりをした姿。+AA級の実力を誇る。

初期形態時よりサイズが小さくなりやや見劣りするが、そのパワーは初期形態の時と変わらず、機動性が大幅に上昇している。

特に水中での速さは異常に速く、相手を圧倒する。


割とあっさり倒される青い欠片のモンスター。属性の相性が良かったのも勝因の一つだが、これは少し早すぎたかな?

そして、ようやく追いついたほのか達に牙を向ける少女。


次回、魔法少女と魔法少女が激突する!


それでは、次回も宜しくお願いします。

では(゜∀゜)ノシ!!




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