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異世界転移したらハズレスキル《ゴーレムハート》でした ~辺境から始める民間軍事会社経営~  作者: 東雲


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2/20

第二話「ハズレスキルの使い方」

王国歴18年 大地の月

ミドガル王国/綿花街道 ジョウイチロウ・クガ


ガタゴトと荷馬車に揺られている……

道の左右には白い花…名前の通り綿花なのかな?綿あるのか……遠い目になる。

「ん?どうしました男爵どの。

 何か馬車に不具合が……?」

荷馬車の隣を並走する銀髪のお姉さん…耳が尖っているからエルフだろうか?

もちろん初めて見たが、ふーんって感じだった。

「いや、不具合はないんだけど…ね」

声が萎んでいく。

馬車一台と物資を少し、文官も付けるって言ってくれてたのにさ……

城を出て用意されていたのは幌馬車と馬…じゃないなこれ。ロバだな。

あと腰の曲がったおじいちゃんが一人。

護衛ですってやってきたのが銀髪のエルフさん

名前が確か【カナリア・エイスース】さんだったかな。

到着早々カナリアさんは

「さぁ、参りましょう男爵どの!」

と大張り切りだった。

あれだけ希望に満ちた目だと何も言えなくなった。

いや、まだだ!領地に着いたらきっと何か起きる!

内政チート編は始まったばかりだぜ!


王国歴18年 大地の月

ミドガル王国/ナインテイルズ湖街道 カナリア・エイスース


なにやら護衛対象のクガ男爵は滅茶苦茶凹んでいる。

ぶつぶつとうわ言のようになにかを繰り返しているのは流石に心配になる。

馬車の不具合かなんかだと思って声を掛けたが、「内政ちーとがあるさ…」とかつぶやいている。

異界人は何考えているか分からないと冒険者仲間に言われた事があるが、確かにその通りと思った。

しかしこの異界人…クガ氏は見ていて飽きない。

急に黙り込んだと思ったら手を前に出して「ファイア!」って叫んでた。

まさかの短縮詠唱かと思ったけどファイアって魔法は無かった気がする…

他にも私の弓や短剣を使わせてくれって頼みに来た事もある。

「やっぱり武力ちーとはないのか…」とまた訳の分からない事もつぶやいていた。

王都を旅立って4日目、ナインテイルズ湖の街道に差し掛かった時に小さな問題が発生した。

「こりゃ…軸が歪んでいるなぁ…」

御者を兼任していた文官が馬車の異変に気が付き、少し早い休息に入ったときだった。

後輪の軸が歪んでいるらしい…

「直せますかねぇ…?」

クガ男爵が何故か申し訳なさそうに文官に尋ねる。

貴族なのに偉そうにしない…異界では貴族は無いのだろうか?聞いてみたい。

「うーん……とりあえず支えでもありゃ良いんだがね」

文官氏も貴族相手に物怖じ全くしていない。

私もクガ男爵との距離感に慣れなければと思い会話に参加する。

「その辺の木じゃ駄目なのですか?」

「棒にする技術がないんじゃよ。それに生えている木は水が多い。朽ちた木は脆い。上手くいかないもんじゃな」

カラカラと笑う文官氏

「ここで使えなきゃホントに使えないスキルだぞ」

ボソリとクガ男爵が呟く。

すくりと立ち上がり、目を閉じる。

おぉ、何かしようというのだろうか…少し期待をしてしまう。


王国歴18年 大地の月

ミドガル王国/ナインテイルズ湖街道 ジョウ・クガ

軸がダメになっているとの事なので馬車の底にもぐりこんで見る

カナリアさんが「貴族なのにそんなことを…」とか言ってたけど

俺、貴族歴4日なので気にしないです。

よくよく見てみるとかなり簡素な作りの馬車だと分かる。

軸受けも直だし、こりゃ力の分散とか全く考えられてねぇな…

しかし、この車輪の真円っぷりとか軸とか…手作業だよね?

旋盤とかないんだよね?すげぇな中世…

「何かわかっ…りましたか?」

カナリアさんが顔に泥が付いているのか手拭いを差し出してくれる。

「あー、軸が歪んでますね。鉄棒だったら叩いて直せるけど…」

状況の説明を続ける。

「歪み自体は大したことないんですが…このまま動かすと折れる可能性がありますね」

ふふっと小さくカナリアさんが笑う

「……?どうしました?」

「いや、護衛に敬語で話す貴族さんがちょっと珍しくて」

封建制社会はこれだから困るぜ…日本人は誰にでも丁寧な態度をモットーとしているのさ

「いやぁ、相手がなんであれ年上の女性相手だと緊張もしますよ」

「あら?おばあちゃんって意味?」

「そ、そんな事ないって!精々2~3上でしょうし」

「クガ男爵はおいくつになったの?」

「19ですね…」

「じゃあ

私が80だからだいたい60歳下ね」


えぇ…エルフってそんな長命なの…

すげぇなファンタジー世界…


っと、思考が横道に逸れた。

カナリアさんが美人お婆ちゃんってのはまぁ、いいとして今はこの馬車をどうにかしなきゃいけない。

軸はただの板を貫通してついているだけだ。

これだと軸の中央部に荷重が集中してる。

結果歪む、実際歪んでいるしね

じゃあどうするか?

本当なら軸受けを増やして荷重を散らしたいところだけど、加工する設備も部材もない。

軸そのものの修理は不可能。

この軸に掛かる負担を減らせないか?

うーん…

軸そのものは直せない。

だったらせめて、こいつに掛かる負担を増やさないようにゆっくり走るしかない。

でも速度を落とせば到着が遅れる。

ロバだってかなり疲れてる。

……車輪の方を手伝ってやれないか?

だったら…軸を回してやれば負担は多少なりとも減るだろう。


回転する軸…か…


ん?回転…?


「あの、目的地まであとどれくらいですかね?」

部材は木材。

思い付いた物を取り付けるとしたら強度が気になる。

折れたら何にもならん、だけど短時間なら?

「そうですね…あと1日走らせれば…しかしロ…馬がもつかどうか」

おじいちゃん、いまロバって言いそうになったよね?

これやっぱりロバだよね?

しかし、1日か…もつか?もつよね。きっと大丈夫。

よくわからないけどきっとそう!

「なるほど…じゃあ大丈夫かな」

俺はその辺で拾った拳大の石を掴む。

発動してくれよ、ゴーレムハート作成っ!

石に力を込め握る。魔力が何かよく分かってないけどとりあえずゴーレムハート…と力を込める。

石が熱くなり、持っていられないくらいに熱された頃に、石の真ん中に赤い宝石のような珠が浮かび上がった


「はじめてのさくせい」進捗達成


頭の中に声が響く

なんだよそれ…ゲームか?


よく見ると作成されたゴーレムハートは元の石より一回り小さくなり、表面は削り出したように滑らかになっている。ぐっと力を込めると赤い球を中心にゆっくりと回り始める。


「回る石…ですか?」

「回ってますね…」

二人はなにやら若干残念そうに回る石を眺めている。

俺は別の感想を抱いた。

ゴーレムハートって原動機か!!

これなら…!

「なんか固定できるもの!ロープとかないですか!?」

興奮気味に二人に問い掛けると若干どころか結構引いてる。

なんでだよ!回転を発生させるって事は色々出来るのに

「こんなもので良ければ…」

文官じいちゃんが使い込まれた荒縄を渡してくる。

「穿孔ドリルでもありゃ穴開けて通せるんだけど…今はこれでいいか!」

荒縄を何重かに巻き付け、ずれないように結び目で押さえる。

巻き付けた状態で荒縄に魔力を少し込めると、ゴーレムハートが回り始める。

「よし、直接触らなくても回転は生まれるな!」

荒縄を即席のベルト代わりにして、ゴーレムハートと車軸をつなぐ。

完璧な修理じゃない。軸の歪みだってそのままだ。

ただ、こいつが車輪を回す分だけ、ロバが引っ張る力は少なくて済む。

一日程度なら――たぶん、保つ。


縄と軸が連動して回転を始める。

よっしゃ!成功だ。


……これ色々出来るな。

やはり内政チート編か!

汲み上げ、揚水水車、粉挽き、圧搾…

回転があればだいたいできるぞ!

よしよしよし!これはデカい!

待ってろ新天地!俺がその地を豊かにしてやる!!!


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