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異世界転移したらハズレスキル《ゴーレムハート》でした ~辺境から始める民間軍事会社経営~  作者: 東雲


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第一話「回るだけの石」

王国歴23年 天の月

民間軍事会社 KUGA PMC/社長室


「社長!北の辺境伯より出兵依頼です!500の歩兵とゴーレム部隊と申請されています!」

ドアをノックせずに少女が飛び込んでくる。

銀髪を高い位置で一つに束ねた少女。長く尖った耳を見れば、エルフだとひと目で分かる。

「500!?大口じゃねーか!契約書持って…」

「若さま」

ピシャリとした口調に黙るしかない雰囲気がある。

こちらの金髪の美丈夫は有無を言わせない迫力がある。

「北部辺境伯さまは以前にも我が社に依頼をしておりますが……

 まだ一部料金が未払いです。安請け合いなさらないよう、ご注意を」

「お、おう」


すると今度はドカドカと乱暴な足音が部屋に響いてきた。

「おう、旦那!この間の部品だけどよ!ありゃだめだ!試作品255号の方がマシだ!あっちで作ってくれ!」

部屋に飛び込んで来たのは、ヒゲを蓄えた小柄なドワーフの男。

短く太い手足で、ずかずかとこちらへ歩いてくる。

「簡単に言うなよぉ…!あれ作るのにどんだけ魔力使うと思ってんだよ…」


部屋の窓が叩かれる。

外に目を向けると猫耳の女が窓に張り付いている

「ボスぅ〜!偵察任務完了したぜぇ〜。東の国でもまた戦争だとさ〜」

妙に間延びした声と幼さの残るその表情に顔が緩みそうになる。

「窓は出入り口じゃねぇって何度言えば…」

「そうなのか〜?ごめんごめん〜」

分かってない口調だなこれは…


「社長!どうしますか!?」

「若さま、よくお考えを」

「旦那!早く作ってくれよ」

「ボスぅ〜。ミャーはもう寝てもいいかなぁ〜?」


「あのさぁ!!」

思わず声を荒らげた。

「いい加減呼び名統一してよ!!」

心からの叫びだった


西暦20××年

某県 要山交差点 空閑 城一郎

「はぁ…今日も駄目だった…」

信号待ちの間、俺はボソリとつぶやく

愛車のレブル250の排気音にその声は飲まれた。

今日も駄目だった。

高校卒業間近に父が倒れ、進学を諦めた俺は働く事を選んだ。

運良く、学校の方で町工場の斡旋をしてくれたので、なんとか就職はできたのだが……不運というのは続く。

働き出して一年で町工場は経営不振により倒産。

しかも、社長は会社のなけなしの金を持って逃亡。

俺達従業員には一銭も残らなかった。

残された従業員は皆離散。

俺に残ったのは少しの工業知識と初任給で買ったバイクだけだった。


信号が青に変わる。

「あー!!なんかいいことねぇかなぁ!!!」

ヤケクソ気味にアクセルを捻る。

愛車は風を切って走り出す。

バイクは自由だ。

金がなくても、職が無くても。

アクセルを捻ればどんどん前に進む。

このまま何処かに連れて行ってくれればいいのに…


『願いを確認しました。世界接続《コンタクト》を開始。これより転送処理へ移行します』


は?

目の前が光に包まれた。

トラックのヘッドライト?いや、もっと強烈な光…

なんじゃこりゃ……!!



王国歴18年 大地の月

ミドガル王国/召喚の間 空閑 城一郎

目を開けると石造りの部屋だった。

部屋の真ん中には何か絵が描かれている。

アニメとか漫画でよく見かける魔法陣だ。

「えぇ…何これ…」

床をペタペタと触る。

ひんやりと冷たく、がっしりと硬い。

視界が狭いのはメットのせいか…愛車と共に買ったインカム付きのメットを外す。

テンション上がってインカム付きにしたけど…使わなかったなぁ…

「*******?」

部屋に入ってきた鎧の男が何やら言っている。

何語だ?英語?違うな…フランス語か?

まぁ、いうて英語もフランス語も映画でしか知らないんだけどね。

「え、えっと…あいきゃんのっといんぐりしゅ…」

いかん、テンパりすぎて英語もカタコトだ。

もっと英語やっとけば良かった…

「****……*****!!」

相変わらず何言ってるのか分からん。

わからんが、なんか失望した的な雰囲気なのは表情でわかる。

そして鎧の男は、部屋の外に何かを頼んだのも雰囲気でわかる。

察しのいい日本人舐めんなよ。

「***…」

ややあって部屋に長い白ひげのおじいちゃんが入ってくる。

某魔法学校の校長みたいな雰囲気だ。

さっきから全部雰囲気で察してんな俺…

「***」

おじいちゃんは手に持ってる巻物を拡げてオレに差し出す。

なんだこれ?触れってか?

恐る恐る、その巻物に触る。

紙とも違うざらざらした感触。

ややあって、何かが体を通過した


【ガイアアースとの世界接続(コンタクト)を確認。

 転移者『空閑 城一郎』に祝福と技能を授けます】


「間違いない、異界人ですな」

おじいちゃんのしわがれた声が聞き取れるようになった。

「そうか!!ではさっそく鑑定の儀を…!」

鎧の男の方は何やら嬉しそうだな。

うーん、これは漫画アニメによくあるあれか…

異世界に転移したらチート能力があって ハーレム展開の後に英雄になるあれか…

来たな、俺の時代。


王国歴18年 大地の月

ミドガル王国/謁見の間 空閑 城一郎


なにやらご大層な部屋に通された。

滅茶苦茶偉いっぽいなおじさんが椅子に座ってる

あれか?王様ってやつか?

赤い絨毯を進み、片膝を付く。

なんかこうするのが正しいらしい。

「面を上げよ」

隣にズラッと並んだおじさん達がざわざわ言ってる。

これが、異界の勇者…とか

なるほど、精悍な面持ちよ…とか言ってる。

一般的な日本人男子だけどね俺は。

「宮廷魔術師、この者が異界人で間違いないか?」

王様?の隣にいた偉そうなおじさんが声を上げた。

あれか、大臣とかそういう役職の人か?

「は、その通りで御座います」

おじいちゃんがうやうやしく言った。

「では、鑑定の結果を申せ」

「は……名はジョウイチロウ・クガ、年齢は19のようです。

 身体能力は一般兵と同等かそれ以下」

シーンと謁見の間が静まり返る。

なんかがっかりな空気を察する……悲しくなってきた。

「こ……固有技能《スキル》がありますな」

おい、言い淀むなよおじいちゃん…

ピクリと王様の眉が動く、大臣さんもどこかほっとした様な表情を見せる。

「固有技能《スキル》は……【ゴーレムハート作成】…です…ね」

なんだよ!ゴーレムハートってなんだ!?強いのか弱いのか!?

「ゴーレムハート……聞いたことないが如何様な技能か?」

「ゴーレムの核を作成出来るようです…」

「ほう!ゴーレム量産が可能なのか!」

横の列にいた筋肉ムキムキのおっさんが笑みを浮かべる。

「いえ、ゴーレムの量産ではなく…その…」

だから声小さくするな!腹から声出せ!タマ落としたか!?

思わず某軍事映画の軍曹が出てくる。

「宮廷魔術師、続きを」

大臣さんが促すとおじいちゃんは困ったように続けた。

「ゴーレムの量産ではなく…核の生成が可能なスキルのようです。

 しかもその生産量は……3日…いや、4日に一つが限度…かと」

王様ははぁ…とため息をついた。

「では軍事転用は出来ない、か」

大臣がその言葉を拾い呟く。

「…現状では、無用のスキルですな」

俺の時代はどうやら終了したようです。



王国歴18年 大地の月

ミドガル王国/応接室 ジョウイチロウ・クガ


謁見の間でのいざこざの後この部屋に通された。

この後俺はどうなるのか?

処刑とか幽閉だったらこんな所に通されないだろう。

ややあって部屋の扉が開く。

王様と大臣、それに最初の鎧の男が入ってくる。

「真に申し訳無い事をした!」

席に座るなりなんと王様が頭を下げた。

「我々の都合で召喚したが、そなたの技能《スキル》を活かす術を我が国は持たぬ」

「思ってたのと違う…って感じですかね……?」

三人とも顔を見合わせ、口をつぐむ。

あー、その反応でわかるわ…日本人でよかった…

「じゃあ、俺は《《お役ごめん》》で送還ですか?」

「送還術は未だ確立されておらん。送還方法を我々も探してみる」

あー、帰れないのか…

「あぁ、別にいいです。元の世界に未練はないので」

無職だしね。

「その代わりと言っちゃなんですが…暮らしていけるだけの措置をお願いします」

王様と大臣が顔を見合わせる。

「……陛下、あの地を下賜するのは如何でしょう?」

大臣が王様に耳打ちする。うん、聞こえてるからね?

王様はこくりと頷く。

「ジョウイチロウ・クガ、そなたを男爵位とし、東に領土を与える。必要な文官はこちらで用意する。」

用意していたのかってくらいすんなり決まる。

用意してたんだろうな

「領土…ですか?」

いやいや、俺領土経営なんてしたことねぇぞ?

「これって断れたりしますかね?」

ニコッと大臣さんが笑った。

あ、これ断れないやつだ。よし、覚悟を決めよう。

「...… わかりました。やってみます」

「うむ。明朝、護衛と共に出立してもらう」

わお、手配速いのね…


こうして、無職だった俺は異世界で男爵になった。

内政チートってやつか?やってやろうじゃないか



王国歴18年 大地の月

ミドガル王国/城内/客室 ジョウイチロウ・クガ


とりあえず一泊していいと言われた客室のベッドに寝転がる

スキルか…と目を閉じる。

ん?

なんだこれ…頭ン中にゲーム画面みたいのが見える…。


1.ゴーレムハート作成法

 ① ゴーレムハートとは

 ② 動力源に使ってみよう

2.現段階の解除状況

3.故障かな?と思ったら


3はなんだ!?俺のスキルは家電か!?ん?電源は入っていますか?って最初に書いてあるのか?

頭の中で3を選択してみる


Q.ゴーレムハートが動かない、途中で止まる

A.魔力は足りていますか?魔力が尽きると死にます。


うおっ…思ったより物騒だぞこの世界


とりあえず、1を見てみようと意識をそっちに動かす。

ゴーレムハート作成法…天然由来の物質に魔力を集中させましょう。

表面に赤い石が生成されたら成功です!

おめでとうこれで貴方もゴーレムマスターの一歩目を歩き始めました!


魔力の集中ってなんだよ!!!!


ツッコんでも仕方ない…続きを読む


①ゴーレムハートとは

回転の力を発生させる核です。

初期の回転は非常にゆっくりで力強く回ります。


なるほど…?


②動力源に使ってみよう

ゴーレムハートを動かしたいものに接続してみましょう。

回ります


そりゃそうだろ!!!


ん……?回転……?


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