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異世界転移したらハズレスキル《ゴーレムハート》でした ~辺境から始める民間軍事会社経営~  作者: 東雲


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第十七話「軍事演習①」

―王国歴19年 獅子の月

ミドガル王国/クガ男爵領/コルト村 ギルバート・ラギー


「見事なもの……ですな」


ラギー家の筆頭執事であり、私の育ての親でもあるシルヴァが呟いた。

呟きたくもなる。

見事としか言いようがない。

整然と舗装された道、石造りとも違う温かみのある赤色の家、馬車を見ると殆ど揺れていないように見える。

ちらりと見えた耕作地の実りも見事なものだ。

今年はどこの土地も凶作と聞いていたのだが……クガ領には関係の無いことのように感じる。


「いったい何が起きてるというのだ」

「斥候の情報になりますが……領主のクガ男爵がもたらした恩恵だとか……」

「じい、クガ男爵が天の御遣いだとでも言うのか?」

「金を生むと言う意味ではそうかも知れませんな」


はぁ……と深い溜息が漏れる。

揺れない馬車、広大な土地を耕作する技術、舗装された道…どれも我が領に欲しいものだ。


「これは、敵対は誤ったか?」

「左様に存じます。少々判断を早まったかと」

「誠心誠意謝ればなかったことにならんか?」

「なりましょう……しかし、貴族間では格下に見られましょうな」

「……それはダメだな」

「えぇ、マグン子爵との和平も崩れましょう」


はぁ…と再び深く息を吐く。

王都貴族の甘い言葉にマグン子爵と共に乗ったのがそもそもの間違いだったのだ。


「だから王国の腰巾着共に騙されてはならないと申し上げたでしょう」

「耳が痛いな」

「痛くしております故、仕様のない事かと」

「開戦を回避…もしくは延期は出来ぬものか」

「……マグン家と足並みを揃えなければ難しいでしょう」


あのマグンと足並みを揃える…ね。

この戦争を無傷で収めるのと同じくらい難易度だな。


「気が滅入る事ばかりだよ……其方に言っても仕方のない事だがな」

「……では、参りましょうか」


さて、気が滅入っても仕方ない。

新兵器のお披露目とやらを見せて頂くとしようか。




―王国歴19年 獅子の月

ミドガル王国/クガ男爵領/コルト村 カサンドラ・マグン



「素晴らしい村ね…これが、当家のものになるなんて……考えただけでも、身震いするわね」


追従する部下が「まさに」とか「その通りですな」とかおべんちゃらを使っている。

分かっている。コイツ等が私の元にいるのは圧倒的な強者であり、財力があるからだ。

寒気がする程のおべんちゃらも、無駄なヨイショも受け入れてやろう。

全く、気が滅入る。


「姫様、ご覧ください!この土地の畑は豊作ですぞ!」

「肥沃な土地なのでしょうな!税収も期待できますな」


太鼓持ちが騒いでいる。

演習場と言われている広場に向かう途中の畑の様子が目に入ったようだ。

確かに豊作だ。

作業をしている人を見ても満足そうな、どこか楽しそうな顔が見える。

あぁ、我が領民であの様な表情で作業する者がいただろうか?

皆どこか暗く、陰鬱な表情をしていたのではないか?

そんなことにも気が付かず、太鼓持ち共は皮算用を始めている。


あぁ―――全く、気が滅入る。



―王国歴19年 獅子の月

ミドガル王国/クガ男爵領/コルト村・演習場 ジョウイチロウ・クガ


近隣領の貴族がゾロゾロとコルト村にやって来る。

どうやらティール爺が相当手紙をばら撒いたみたいだ。

聞いてみたら「これがこの領地を守る盾になりましょうな」とか言ってた。

あんまり意味は分からないけれども、武力を見せておけばそうそう喧嘩売れなくなるって意味だろうな。

強い相手に強気では出られないもんなぁ…右手で握手、左手で武装だっけ?

なにはともあれ宣戦布告をしてきたマグン家とラギー家を含めて六つの貴族家がやってきた。

辺境伯?とか言う地方の領主の元締めみたいな人も来たし

なんと、王様も来た。

一年ぶりに会ったけど相変わらず気の良さそうな人だ。


「閣下、賓客の皆様が揃いました。開会の挨拶を」


恭しくマクセルが言った。

マクセルの横にはティール爺が傅いている。

俺はと言えば着慣れない貴族服に身を包み、似合いもしないマントを付けている。

最上段の貴賓席には王様、その下に辺境伯、なんか偉い伯爵さん、子爵さん…と段々に座っている。

なんか偉い順があるらしい…よく分からんけど。

主催者《ホスト》で男爵な俺は一番下で皆さんを見上げながら出来るだけ大きな声で伝える。


「遠方より遥々罷り越された事、有り難く存じ上げます。

 これより我がクガ男爵領の持てる技術を皆々様にお見せする催しと相成りまする。

 えーっと……ご質問は後ほど承りますので…えーっと……とりあえず見てください」


途中で完全に忘れちゃったよ。

こら、ドワーフ衆もカナさんも笑い堪えないの!

あ、ティール爺とマクセルが怒ってる顔してる……やっちゃったかな?

まぁいいか。お小言は後で聞こう。


「それでは、まず我が領の誇る機甲部隊をご覧ください」


俺が下にいるヒビキの部隊に合図を出すと行くぞオラァ!と超体育会系の声が聞こえる。

出てくるのはゴーレム補助駆動戦車(チャリオット)三両、ゴーレム補助駆動装甲車(タンク)六両。

タンクにはゴーレム補助車載大型投射機(トレビュシェット)が二門装備されている。

ゴーレム補助車載大型投射機(トレビュシェット)も改良されており以前のものに比べて大分軽量、簡略化されている。

以前は投石機みたいな構造だったけど、指向性を持たせるために筒から射出する方式に変更した。

火薬を使わない大砲みたいな感じだ。

火薬なぁ……調べてみたらないわけではないっぽい。

ただ、魔法の方がお手軽に爆発させるから軍事、産業共に発展してないようだ。

欲しいし、実験研究はしたい…が、触ったこと無いんだよなぁ…


そうこうしているうちに駆動戦車(チャリオット)と駆動装甲車(タンク)が定位置に移動が完了したようだ。

俺が手を上げ、合図を出すと、駆動戦車(チャリオット)が起動音を響かせ、ゴーレム補助車載大型投射機《トレビュシェット》から網弾が投射される。

途中で開くように計算されている網弾は空中で花が咲くように開いて落下する。


「いいぞー!」

「ヒビキ将軍かっこいいー!!」


観客席からは歓声が湧いている。領民の皆は楽しんでるようで何より。


「あれは…」

「上空からの攻撃…だと…」

「あんなものどう対処せよというのだ」


逆に貴賓席からはどよめきと動揺の声が聞こえる。

どうよ、うちの機甲部隊。かっこいいだろ?

再度手を上げ、ヒビキにサインを送る。


「次弾装填!礫弾!」


演習場にヒビキの大きな声が響く

ガシャン、とロックが外れる音がしてゴーレム補助車載大型投射機(トレビュシェット)の装填口が開く。

本当なら全部中で出来るんだけどね…マクセルが見せた方がいいでしょうとか言うから…

射撃手が礫弾と呼ばれている瓦礫やら小石やら使えなくなった釘やらが詰まった陶器の弾を装填口に入れる。


「装填、良シ!」

「撃て!」


ガシャン!と撃ち出される音が響き、今度は先程より水平に弾が飛ぶ。

的代わりに置いてあった木の板に当たると陶器が盛大に割れ、中身がぶち撒けられる。

観客席からは歓声があがる。

楽しんでるなぁうちの領民…反対に貴賓席はシーンと静まり返っている。


「突撃、用意」

「突撃用意!」


駆動装甲車(タンク)の六両のうち三両が起動し、走り出す。

前面装甲を木製から鉄製に変更済みだ。

三両の駆動装甲車(タンク)は物凄い勢いで走り出す。

まぁ前の時と違って耕運用の馬じゃなくて辺境伯から購入したゴリゴリの軍馬だからね。

力もあれば速度もある。多分ゴーレム補助含めて時速80㎞くらい出てるんじゃないかな

よく訓練された軍馬だから、停止も加速もスムーズ。

馬への負担を減らせるように制動は全部ゴーレムハートで補助している。

この世界から見たらスーパーカーみたいなもんだろう


後部のハッチが開き、中から10名近い歩兵、計30名が出てくる。

歩兵の手には最新式のクロスボウ。

よく訓練された動きで即座に陣形を整える。


「斉射!」

「斉射!!」


弾幕…と言っても太めのボルトだが…が的の板に無数に突き刺さる。

いや、突き刺さってないな…貫通して後ろの丸太に何本か刺さってる。

予想以上に威力があるなぁ…


トリガーを引き撃ち終わった兵たちがグリップに魔力を込める。

すると、自動的にストリングが引かれる。

どうよ!これが最新式ゴーレム補助クロスボウよ!

ゴーレムハートが足りなくて三十個作るのがやっとだったけどね。

言わなきゃバレねぇって

通常のクロスボウより圧倒的に早く次弾が装填され、即座に第二射が行われる。


貴賓席の貴族達は顔が真っ青になってる。

「この兵力が…6両…だと…」とか「何なのだあの速度は…」とか小さく聞こえる。

速度ってどっちの事だろう…?馬車かな?クロスボウかな?

まぁ、どっちにしても速さは武器だぜ!って事で


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