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異世界転移したらハズレスキル《ゴーレムハート》でした ~辺境から始める民間軍事会社経営~  作者: 東雲


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第十六話「繁栄の代償」

―王国歴19年 天馬の月

ミドガル王国/クガ男爵領/コルト村 ジョウイチロウ・クガ


鉄の安定供給に成功し、ゴーレム自走車が走り出し3ヶ月が過ぎた。

この三ヶ月はあっという間だった。

今のコルト村は大建築ラッシュが起きている。

最初に建てられたのは領主の館―――俺んちだ。

煉瓦造のとんでもない豪邸が建てられた。

それに伴い、周囲に色々建ち始めている。

迎賓館、技術館、高級宿に高級道具店。

もちろん低層向けの宿や道具店も立ち並んでいる。


さらには今まであったボロ屋と言っても差し支えのない家々は建て壊され、新たな家が作られている。

なんでも全家に暖炉があるそうだ。


何故こんなにもラッシュが起きてるのかと言うと

領民が最初の頃から考えて100倍以上になっている。

100人かそこらだったクガ領コルト村は現在3000名。

周辺領からの避難民やら流民がぞろぞろと流れてきているのだ。

年始に取ったザントリーフ領の村も同じ規模になりつつあるらしく、コルト村からそう離れてない場所に新たな村を作り出した。


新たな避難民、流民達から数十名の鍛冶屋、大工がクラフトワーカーに参入した。

なんと建築業に従事した事がある人が居てどんどんと知識、技術を共有してくれた。

しかし、建築ラッシュで問題が発生した。

人手不足だ。

部材を運ぶとかの簡単な作業はゴーレム補助自走車やらが取ってしまったので

技術がない人は掃除などの本当に軽作業しか出来ない。

教室でも開こうか?ありかもしれん。

手に職あれば食うに困らないからね。


話が逸れた。


人手不足の解消法としてゴーレムを使用する事にした。


そう。


腕を増やしたのだ。

単純な持ち上げるとか、置くとかしか出来ないが、作業効率が爆上がりしたのだ。


「領主様ぁ!この補助アームってやつぁ凄いですなぁ!」

「おぉ!領主様だ!このアームのお陰で3人でやるところが1人ですんでまさぁ!大助かりだ」

「そう?なんか困った事あったらなんでも言ってね!反応が悪いとか、動きが遅すぎるとか!」

「今んとこ問題ないです!」

「ありがとねー!」


建築現場のおっちゃん達がニコニコしてる。

うんうん、いいね。

技術で人々が幸せになっていくのは見ててやはり気分が良いね。


おっと?

ヒビキが何やら慌てた様子でこっちに来た。

なんか新しいものでも見つけたのかな?


「旦那!!大変だ!宣戦布告が発せられた!」

「……は?」

「時期は収穫前……来月だ!!」


えええええ!!!

平和だったのに……!!



―王国歴19年 天馬の月

ミドガル王国/クガ男爵領/コルト村 ティール・ディール


やられた!

完全にしてやられたわい

年内の挙兵は無いと勝手に思い込んでいた。

ラギー伯爵とマグン子爵め、密命をかわしておったな。

両者ともにクガ領を狙っておったか。

あの犬猿の二人が、休戦協定を結び、クガ領に宣戦布告してきよった。

こちらが男爵だからと交渉もせんと、踏み潰さんとしておる。

舐めおってからに……。


「閣下。

 読み切れなかったのは儂の失態でございます。

 まさか、両者が同時に領土的野心を抱くとは思いませんでした」

「ま、仕方ないよ…ティール爺で読めなかったなら俺なんか全く読めないからねぇ……

 さ、それより気を取り直してどうするか考えなきゃ」

「はっ…」


器がデカいのか何も考えておらんのか…

恐らく両方じゃろう。

閣下は驚くほど戦に忌避感が無い。

忌避感が無いと言うよりも、起きたら起きたて仕方ないと、割り切っておる。


「あくまで想定ですが、恐らく一万は超える兵数でしょう。

 相手も収穫までには終わらせたいと考えておりましょう…短期決戦を狙うはずです」


ハサンが立ち上がり具申する。

儂と同意見のようじゃな。儂の予測も兵数一万はくだらないと思っておる。


「我が領内で徴兵を行なっても…総数千がいいところ…十倍の兵差になるかと」

「一人十人仕留めればいいとは思うが…まぁ、それなりに厳しいだろうな」

「一人十人って…なかなか大胆な計算だねぇ…」


次いでヒビキが意見を述べ、閣下がそれに嘆息をする。

半年…いや、三ヶ月あれば対抗できたかもしれんが…一月ではなぁ……。


「閣下。自走車は何台可能でしょうか?」

「クラフトワーカー総出で.…4台が限界じゃ無いかな。自走車用の装備も作らなきゃいけないしね」

「4台…ですか…ゴーレム補助駆動戦車(チャリオット)は?」

「10……いや、これも五台が限界かな…一月で作れるゴーレムハートが十個、ゴーレム補助駆動装甲車(タンク)も台数必要だろうしね」


軍事の二人がうーむ…と唸る。

カナリアが挙手し、発言の許可を取る。


「複合弓(コンパウンドボウ)の作製目処がたった。

 弓の性能がかなり上がっているし、兵の練度も、かなり高い。弓衆を中心に編成しては?」

「いや、弓は修練に時間がかかる。弓兵はカナリア将軍を除き、後詰にまわってもらいたい」


ぶっきらぼうにヒビキが続ける


「ゴーレム補助駆動装甲車(タンク)にはハサン率いる騎士隊が乗車し、敵陣中央に斬り込む…後方からゴーレム補助駆動戦車(チャリオット)とカナリアで打ち漏らしを仕留める…しかないか?」

「うーん、出来るだけ捕獲したいけどねぇ…」

「今回は厳しいだろうな……おそらく見られている。

 前と同じ策はつかえないだろうな…」


で、あろうな…

開戦前に挫くことは出来ないか、あらゆる情報を脳内で纏める。

戦わずして勝つ方法があれば一番なのだが…


「……荷止めを行いますか?」


マクセルが重々しく提案する。

荷止め…つまりクガ領で全ての荷を止めてしまう。

ラギー伯爵領にはあまり効果は無いだろうが、隣接しておるマグン子爵領であれば効果は絶大だろう。

しかし…


「荷止めは最終手段にしとこう。食べるものが無くなった人は、怖いから」


閣下は責める風もなく淡々と告げる。

そうなのだ。

兵と言えど、半数以上は普段は農民。

飢えた相手は《《何をするか分からん》》

それに、だ。

勝利した際に、《《飢えさせた相手》》に従うとも思えん。

表面上は従うふりをして、一揆など起こされたらたまったものではない。


「……」


全員が黙り込む。

誰も何も言えなくなり、時間だけがただ流れる。

そこで口を開いたのは、先ほど苛烈な提案をしたばかりのマクセルであった。




―王国歴19年 天馬の月

ミドガル王国/クガ男爵領/コルト村 マクセル・スカイ


「それでしたら……演習を、公開演習を行いましょう」


会議室がざわりとざわめく。

こちらから戦いを避ける事は出来ない。

恐らく交渉や提案は全て蹴られて終わりだろう。

相手は子爵と伯爵……我がクガ領と比べても圧倒的な格上だ。

そこで思い付いたのは商談時の提案。

「私はこんなにいいものを貴方に提供できますよ?」と言うブラフ。

未知の兵器であるゴーレム自走車、改良されたゴーレム補助駆動装甲車(タンク)にゴーレム補助駆動戦車(チャリオット)。

それに建築衆が使っているゴーレム補助アーム…

これらをわざと堂々と見せつける事によって

「戦えば勝てるかもしれない。だが、相応の損害は覚悟しなければならない」と思わせる。

圧倒的な軍事力を見せつけるのが一番なのだが、それはこの小さな領では難しいだろう。

しかし、我が軍には”銀弓”カナリア・エイスース、”修羅”ヒビキ・ヒタチ、”猛将”ハサン・ザガンが所属している。

この三人の実力と、率いる部隊の精強さを見せつければ…あるいは。


「あー、富士火力演習みたいなもんか…」

「日本帝国軍でも定期的にあったな…お祭りみたいな騒ぎだったが」

「ヒビキの方でもあるんだ」

「軍事外交の一つさ」


伝わるかどうか一か八かの提案だったが、閣下とヒビキにはピンとくる催しがあったようだ。


「そうなると…見せるのは、ゴーレム補助駆動装甲車(タンク)にゴーレム補助駆動戦車(チャリオット)、ゴーレム自走車…補助アームは見せる必要ある?」

「あれは、建築よりも恐らく戦場で本領を発揮すると思います」


ハサン殿が発言する。


「以前から考えておりました。

 重装兵に装備させる案があります。背中に盾を二枚背負う事が可能になります。

 他にも両手を塞がずに携行武器が増やせます」

「……確かに。

 歩兵部隊に装備させるのが最も恐ろしいかもしれん」

「えぇ、数が揃えられれば補給部隊に装備させてもいいかもしれません」

「弓衆もあれがあれば矢筒が単純に三倍近くは持てる。予備の弓だって持てる。

 単純に継戦能力が跳ね上がるわね」


軍事に強い三人がこれは使える、これはこう使えば…と延々と話している。

私には半分も分からないが、彼らが言うならそうなのだろう。


「待った待った…ゴーレムハートがそんなに準備できないって!」

「構いません、今建築に利用している動かせる補助アームと一つか二つ追加出来ればいいのです」

「えっと…チャリオットとタンク…自走車に…三個くらいならなんとかなるか…でも足りるの?」

「同じ様なハ(・)リ(・)ボ(・)テ(・)で構わないんですよ。

 動かすのは四~五人、残りは見せかけでいいです。勝手に相手が想像してくれます。

 それと…」


私は間を一つ入れ、呼吸を整える。


「試作十八号。あれを使いましょう。

 大量の物資を積んで、ア(・)レ(・)をアピールしましょう」

「え?遅いよ?」

「あの大きさと積載量に恐怖を感じない者は武官や文官をやる資格はございません」


ピシャリと言い切る。

ティール翁がニヤリと笑う。


「で、ありますな…

 十八号に重装補助アーム部隊を搭載し、大量投入する姿。

 想像するだけで恐ろしいですわい」


こうして、公開軍事演習を行うことになった。


―――この判断は間違いだったと気が付くのは演習の後の話だ。


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