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異世界転移したらハズレスキル《ゴーレムハート》でした ~辺境から始める民間軍事会社経営~  作者: 東雲


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第十五話「馬の要らない馬車」

―王国歴19年 水の月

ミドガル王国/クガ男爵領/コルト村・ドワーフ工房 ジョウイチロウ・クガ


「だから!ここが上手くいけば馬なしで走るんだって!」

「そんなルッツ工の伝説みてぇなもんできるわきゃねぇだろ!」

「やってみなきゃわからんじゃろがい!」

「ほうじゃほうじゃ!やってみにゃ分からんことのほうが世の中おおいわい!」

「だったらお前らでやってみぃ!!」

「おぉう?やってやろうじゃねぇか!槌持ってこんかい!!」

「槌なんか無くても型取りでいけるって!鋳型を作ったほうが速いって!」

「なんじゃ鋳型って!」

「説明せい!!」


今日もドワーフ工房は賑やかです。

アットホームでみんな仲良し、ニコニコ笑顔が溢れる職場です!


「……理にかなっとるの」

「であれば大工衆か?」

「こないだ出来た耐熱粘土が良いかの?」

「じゃけど毎回型作って壊すのは精度が悪くなるんじゃねぇのか?」


ほら、落ち着いた。


高炉が完成してからこっち、ずっとこんな感じだ。

溶け出てきた鉄はこの世界では相当扱いにくいらしく、ドワーフの鉄工衆も四苦八苦している。

大工衆とヒビキの部隊、ハサンの部隊から工兵やってたとか手先が器用な数名を引っ張ってきた。

鉄工衆、大工衆を合わせてCF…クラフトワーカーと名付けるらしい…

マクセル曰く「手続きや資材の搬入出が面倒」らしい。


ひとまず鉄で作ったのはハサンの歩兵部隊用の剣と盾。

防具一式は、まだ新しい鉄を薄く加工する技法が追いつかず、従来通りの鉄で作ることになった。

次いで作ったのはヒビキの部隊のナイフ。

サブウェポンとして使うんだけど、彼らの本領が発揮されるのはゴーレム駆動式装甲車が完成してから。

あとは農家さん用にクワとか鋤とか…あとゴーレム耕運機も改良して今はMark.4.5。

ある程度落ち着いてきたので自走ゴーレム車の制作に取り掛かる。


「ダメじゃな」

「これじゃ歩いた方がマシじゃ」

「うーん…ギア比かなぁ…」


1台目、試作01号機…失敗。動くには動いたが子供の歩く速度より遅い…使い物にならない


「こないだよりマシか?」

「じゃがのぉ…やはり歩いた方がマシだな」

「お、重いものは運べるよ!」


2台目、試作02号機…失敗。歩行速度より少し遅いか?くらい…


「おぉ、速いのぉ!」

「では乗ってみるか!」

「……動かないね」

3台目、試作03号機…失敗。速く動けるけど荷重性能がゼロ…。


「だーかーらー!!!」


冒頭に戻る……。


そんなこんなでもうかれこれ2週間近く作っては壊し、壊しては作っていた。


—――そしてその日はやってきた。


「こ…これは…!」

「重さは?荷物はどうじゃ!?」

「石炭の袋が…1,2,3…20…!」

「動くか!?動くのか?速さはどうじゃ!?」


荷車に前輪が一つ、後輪は二輪にした。

ゴーレム機関は後輪の間に詰め込んだ。

鉄の強度のお陰でギアも小型化できたのでなんとか詰め込めた。


「俺が乗って60kg追加……これでだいたい200kgくらいか…」

箱に跨り、魔力を込める。

キャリキャリ…と音を出し進みだす。

グッと魔力を込めると回転数が上がる。

それに伴い、速度も上がる。


「うぉぉぉぉぉ!!!」

「走った!走ったぞ!!!」


速度としては自転車よりちょっと速いかな?くらい。

馬車なら……これより遅いか?いや、どうだろう。

だが、走った!走ったのだ!!


こうしてゴーレム式《《自走》》車が試作24号機にしてなんとか成功した。



―王国歴19年 水の月

ミドガル王国/クガ男爵領/コルト村・ドワーフ工房 ヒビキ・ヒタチ


「旦那…これ、オート三輪じゃねぇか!!」


とんでもないものを作り上げたな…

兵站、運送、兵の運搬……全部変わるぞ。

装備だけコイツに積んで、陣幕を張れば、あっという間に200人規模の野戦軍を展開できる。


「これが…自走車…でありますか…」


ハサンはこれの凄さにまだピンと来てない様子だ。


「他にも色々あるんだよ…失敗作もいくつかあってさ、こいつなんか速度は徒歩くらいなんだけど2t近く運べるのかな?限界まで積んだことないけど…石炭袋無くなっちゃったからねぇ」


2t……徒歩の速度とは言えその量の物資を運べるだと


「失敗作とは言えません。

 炭小屋と製材所、鉱山とコークス炉をこれで繋ぐだけで相当の人数が別の仕事に振り当てられます」


マクセルが目を見開いている。


「あー、確かに…思いもしなかったわ」


旦那はそれもそうだね!とか無邪気だ。


「鎧を着けても速度は落ちないのでしょうか?」


ハサンがいいところに目を付けた。

こいつも軍事転用狙ってるな…


「鎧……あぁ、装甲ね。

 今それも鍛冶衆が試行錯誤してる。

 木盾くらいなら大丈夫だと思うけど…全部位を覆う装甲はまだ実験中。

 荒地でもいけるように4輪バージョンにも手を出してる」

「履帯は!?戦車は可能か!!」

「履帯は…うーん、中々難しいんだよねぇ…ゴーレムハート2個使えばいけるか?って感じだけど…速度が担保出来ないんだ」


おいおい…速度を犠牲にすれば可能って聞こえるぞ…


「しかし…この数のゴーレムハート良く用意できましたね…」

「あー、それなんだけど…現在ゴーレムハート欠品中なんだ…流石にストックも使い切った」


と、言う事は現状で生産されている汎用モデルはコイツだけか…


「あ、でも試作3~22までを解体すれば19個確保できるかな?何台必要なの?」

「いや…とりあえず試作機の成功例だけ見せてください……もしかしたら利用可能な物があるかもしれません…」


そう言いながらマクセルと旦那は工房の中庭に歩を進めた。

何台か解体しちゃってるけど残ってるのもあるんだよね。とか軽く言っていやがる。


「これは…どうなのでしょうか?」

「ん?」

「いや、いまいちピンと来ていないのです」

「あー、大量輸送の意味か」

「えぇ、兵士や騎士を馬で運んだ方が圧倒的に速いように思います」

「……例えば、だ。

 歩いて3日かかる場所で戦が始まったとする」


ふむ、と考えるしぐさを見せるハサン。


「しかし、敵軍は1日前に到着してもう準備万端だ。

 疲れも癒えているだろう…我が軍は1日遅れ、到着後即座に戦闘は可能か?」

「兵も歩きどおしであれば厳しいでしょう…待ってくれと言うわけにも参りません」

「それが、ただの徒歩と同じ疲労度で戦場に辿り着く。装備はコイツに積めばいいからな」

「……なるほど。我々騎士団ですと、装備の重さも馬鹿になりませんからな」

「それに、だ」


俺はもう一つの優位な点を上げる


「馬が疲れん…これはデカい

 今の戦場の主戦力はまだ騎馬による突撃だ」

「今の…と言うのが少し気になりますが…」

「まぁ、聞け。

 この馬に必要な餌、水が現地で確実に手に入るとは限らん。だが、持って行けばいい。それがコイツにはできる」

「なるほど…」


運用方法はいくらでも思いつく。

18号とか言う速度は出ないが大量に運べるヤツは先行させてもいい。

汎用タイプに食料積んで後から来させてもいい。

18号が速度を出せる様になったら……装甲車の完成だ。

第二機甲部隊が復活できる。

しかも帝国の物より高性能だ。

あ、そうだ。あの気狂い博士《マッドサイエンティスト》と会わせたら面白いかもしれん。

帝国もアイツの扱いには困っているだろう。

こっちで引き取ってやろうとするか。




―王国歴19年 水の月

ミドガル王国/クガ男爵領/コルト村 ティール・ディール


「収穫見込み、税収見込み、共に前年比で5倍…か」


これはまずい事になりそうじゃのう。

閣下は鉄を作る!と息巻いておいでじゃったが、失敗する見込みが高いと思い放置した儂のミスか。

製鉄は成功。

農機具、燃料、治水に道作りの地力作り

商圏の拡大、無税市場の開場による税収の大増加

全て大成果を収めておる。


これはマズい。


栄えるのは構わんのだが、栄えすぎるのは周りからやっかみを買う。

今年の農繁期が終わり、税収を出す頃が危険かもしれん。


「先手を打っておくかいのぉ…」


そろそろ本格的な夏になる。

夏が過ぎて秋が終われば…


戦争じゃろうな。


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