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異世界転移したらハズレスキル《ゴーレムハート》でした ~辺境から始める民間軍事会社経営~  作者: 東雲


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第十二話「訪問者」

―王国歴19年 月輪の月

ミドガル王国/クガ男爵領/コルト村 ジョウイチロウ・クガ


天蛇の月の頭にザントリーフから受けた宣戦布告から始まる戦争の後処理がようやっと終わった。

講和の条件としてこちらが出したのは12億べリスの賠償金。

国家予算かよって額を吹っ掛けたのはティール爺とマクセルの内政担当の二人。

払えない額を提示して、やけになって決死隊でこられたら困るんじゃないの?

と思ったけど、そこは腹黒コンビ。流石の一手だった。


講和条件に書かれていたのはざっくりと


・12億べリスは即座に支払え

・捕虜600人を迎えに来い。一人当たり1000べリスの手数料を貰う

・ハサン将軍はこちらに引き込む。文句あるなら追加で2億請求するぞ

・その他交渉があるなら聞いてあげないこともないよ?土地とか欲しい


超強気の文面を貴族言葉で書いてる。

相手ブチ切れじゃね?


直ぐに相手から返信があった。


・12億べリスの支払いは物品や土地でもいい?

・クガ領近くに2つ村がある。一つ6億べリスで買い取ってくれない?

・捕虜も半分あげるから200べリスの手数料でもいい?

・ハサン将軍は無理


と貴族言葉で書かれていた。


この内容にティール爺がブチ切れ。


・なめてんのかボケ

・いいんだぞ?5億上乗せしてもいいんだぞ?

・謝罪として村は寄越せ

・どうするのかさっさと決めろ。さっさとしねぇと王家にチクるぞ?


と貴族言葉…貴族の言い回しって凄いね、これ全部丁寧語になるんだもの。

手紙じゃ埒が明かないと判断したのかザントリーフから使節団みたいなのがやってきた。


俺も交渉の場には居たけど何やってんのかよく分からん。

こういうのは適材適所。

マクセルとティール爺に丸投げだわ


最終的に使節の人たちはこっちの条件を呑んだ。


と、いっても12億べリスの支払いは勘弁してくれと泣ついてたので水の利権とザントリーフとクガの間にある山の利権を支払いの代わりとしたみたい。

水はともかくとして、山?なんで?と思ってティール爺に尋ねてみたら


「あの山の木材が頑丈で良いとのことでしたので」


とサラッと返したけど…それ密猟なんじゃ…いや、俺は何も聞いてないし知らなかったです。はい。


ハサンと部下たちについては相当揉めたみたいだけど

じゃあ20億払う?他に何出すの?と聞いたら黙って差し出してくれた。


ザントリーフさんに相当恨み買ったんじゃ無いのこれ?


「問題ないでしょう。水と土地をこちらが握り、領民の10%を取られた領主には誰もついていきますまい」


怖いって政治


結果として対ザントリーフ戦の戦果ってやつは

・村二つ…村民付きで計600人

・山一つ

・クガ領とザントリーフ領に流れている川の権利。

・捕虜のうち200人はザントリーフが買い取り、残り400名はこちらの資産

・超優秀な将軍とその配下30名


12億の価値はこんなもんだろうとマクセルも満足していた。


もし万が一12億払ったらそのお金で別の領と交渉するとか言ってた。

マジで怖いな政治家…。


で、だ。


その後の統治機構がかなり面倒だった。

クガ領から近いと言っても元ザントリーフ領の村は遠かったのだ。

馬車で1日くらいかかる。

舗装道路を繋いでも半日はかかるだろう。

駆動馬車なら2時間位だろうけど…

腹黒コンビ(ティールとマクセル)に相談した結果。

希望者はコルト村に来てもらう事にした。

コルト村の付近は土地が余っているので開拓したらその土地差し上げます。って御触れをだしたら

翌日には大量の流民があふれてた。

ザントリーフ近くの村は200人位残って一つの村として合併。

【明日への希望(ピースメイカー)】の元副官さんを代官として村に置いた。

豆の増産と訓練所を兼任するとかなんとか……

冒険者とか山師とか狩人なんかをスカウトするって言ってたな


そんなこんなで一ヶ月くらいは戦勝処理をしていた。

大量の書類に領主印を押したよ…もう先1年はやりたくないなぁ

そして一か月後の今日、事件が発生した。



―王国歴19年 月輪の月

ミドガル王国/クガ男爵領/コルト村 カナリア・エイスース


「不審人物が出現したって言うのはこっちの街道?」


弓衆の数名を連れてもめていると言う門に走る。


「エイスース将軍、対象はドワーフの一団、6名のようです。

 領主に会わせろと大騒ぎしているようで……衛兵には手に負えないとの事です」


この2ヶ月ちょっとでこの手の輩は非常に増えた。

ジョウ君に会わせろとか、この領地で働いてやるだとか騒ぐ者は後を絶たない。

まぁ、ジョウ君が関を排したせいとも言えるんだけど、そのお陰で人流はかなりいい。

良し悪しはあるけど圧倒的にいい事の方が多い。

コルト村には4つの門が新しく作られた。

門と言っても木の柵に大扉をくっ付けただけのヤツだから何時か作り直したいと大工衆も騒いでいたなぁ…

その門前には詰所があって、【明日への希望(ピースメイカー)】の元団員とか有志の兵が詰めている。

この辺りも今後何とかしなきゃいけないかな…。


「ドワーフ…?ほんとにジョウ…クガ閣下の客人じゃないの?」

「それが……」

「どうしたの?」

「案内しようにも、クガ男爵を出せの一点張りでして……」


ドワーフは種族の特徴なのか?ってくらい偏屈が多い。

うちのティールさんと別方向で偏屈が多いんだよなぁ…

うーん、ジョウ君呼んだ方がいいかしら?


「現地には私が向かいます。あなた達はクガ男爵を呼んできて」

「は」

「了解しました」


二人は角を曲がり、ジョウ君のいる館へと向かって行った。

あの子たちは…狩人の三男だったかしら?

いい使い手になりそうね。


―王国歴19年 月輪の月

ミドガル王国/クガ男爵領/コルト村・南門 門兵


「ですから、身分を証明して頂ければいくらでもお通ししますって!」

「なンだそりゃ!身分を証明もクソもねぇだろが!」

「いや、だから……ギルド証とかでもいいんですって」

「ギルド証?そンなもン持ってねぇよ!何遍おンなじ事と言わすンだ」


全く話にならない…

このやりとりもう何回目だろう……

何遍同じ事言わすんだはこっちのセリフだよ全く…


「しかしこの設計図は見事だな」

「ああ、こりゃ見事だ」

「これがありゃ製鉄魔法なんぞ要らなくなるぞ」

「「「うーん、見事だ」」」


一通り騒いだあと一行の内3人が手紙と図面を見ながらわいわい言っている。

あの”紙”といい、印章といい確実にクガ男爵のものなのは分かっているのだ。

しかしあの連中が一向に身分証を見せてくれない。

身分証を見せてくれさえすれば通すって言ってるのに…


「この見事な設計図を書いたやつに会わせてくれンのか……えぇい!」

「クガ男爵ってぇ男に会わせろい!」

「ですから!!」


さっきから同じこと何度やればいいんだよ…

【明日への希望(ピースメイカー)】の仕事よりキツいぜこれ…

ヒビキ団長は話聞いてくれてる方だったんだなぁ…

分からず屋のクソボケとか思っててごめんなさい…


「お疲れ様、状況は?」


音もなく隣にエイスース将軍が現れた。

全く気配が察知できなかった。

戦場だったら死んでるな俺…銀弓こえぇ…


「は、エイスース将軍!対象は全く話を聞いてくれません!」


将軍に報告をしていると別のドワーフが割って入ってくる。


「話聞かねぇのはお前だろクソボケ!」

「ほうじゃ!ほうじゃ!クガ男爵に会わせろっちゅうとるじゃろがい!」


あー、もう何度目だよこれ…


「だーかーらー!」

「うるせぇこの唐変木!」

「男爵を出せこのタコスケ!」


「――うるさい」


エイスース将軍の一声でドワーフ達も静かになった。

「お、おう」とか「そ、そうだな」とか言ってしどろもどろしてる。

銀弓すげぇな…


ややあって一人の弓兵が男爵を連れて町の奥からやってきた。


「ドワーフ着いたって!?どう?どんな感じ?」

「お前がクガ男爵か!なんじゃこの変態じみた炉は!どうやって考えた!」

「え?あぁ、これは高炉って言って…」

「なんじゃそれ!変な名前じゃな!で、これでどうするつもりじゃ」

「えっと鉄鉱石を」

「溶かしてどろどろにするんか!」

「そうそう、そうすると」

「鉄が大量にできるのう!」

「ほうじゃ風を送るとどうじゃ!?火力あがるじゃろ」

「それじゃぃ!じゃあ風を送るには」

「箱ふいごが現物で残ってるよ?」

「箱ふいごあるのけ!?お前さんすげぇのぉ」


……なんで一瞬で打ち解けてるんだよ…

えぇ…門兵の自信無くなってきたよ。

するとエイスース将軍が肩にポンと手をおいて慈しみ溢れる顔をした。


「ご苦労さま、クガ閣下はこんなもんだから…慣れてね」

「はっ」


おもわず直立になってしまった。

美人の顔ってそれだけで攻撃力あるよな。

絶対門兵続けようっと。

去っていく男爵一行の背中を見届けながら、そう誓うのだった。


あ、身分証見せてねぇよあのドワーフ共。

ま、いっか。閣下直々に迎えに来てるんだからな…


彼は後にクガ領の名物門番となるのだが、それはまた、別のお話——。


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