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静かな海の果て――サルガッソの恋  作者: Kentarou Tou / Kentarou Theater


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9/10

第九話「次の航海」


次の航海の日が、決まった。


ハルが、乗る船の出発日が。


ミナは、それを聞いた。


港でハルに会った時に、聞いた。


「いつ出発しますか」と言った。


「十日後です」とハルは言った。


「どこへ」


「スペインへ戻ります」とハルは言った。「この島からの荷物を持って」


「サルガッソを、また通りますか」


「通ります」とハルは言った。「帰りも、同じ航路です」


「また、止まるかもしれませんね」とミナは言った。


「止まるかもしれません」とハルは言った。「しかし、今度は一人です」


ミナは、港の海を見た。


「私も、いつかスペインへ行きたいと思っています」と言った。


「スペインへ」


「父の商売で、いつか行くことになるかもしれません」とミナは言った。「その時は、サルガッソを通る船に乗りたいです」


「またサルガッソに入るつもりですか」


「入りたいです」とミナは言った。「あの静かな海を、もう一度見たい」


「危ないですよ」


「危なくても」とミナは言った。「見たいものは、見たい」


ハルは、ミナを見た。


「スペインへ来る時は」と言った。「教えてください」


「教えます」とミナは言った。「案内してもらえますか」


「喜んで」とハルは言った。「セビリャの街も、港も、全部」


「全部、案内してください」とミナは言った。


港の風が、来た。


次の航海に向かう風だった。


(第九話 了)


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