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静かな海の果て――サルガッソの恋  作者: Kentarou Tou / Kentarou Theater


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8/10

第八話「島の話」


島に、しばらく滞在することになった。


父の商談があったからだった。


ミナは、島を歩いた。


ハルも、次の航海まで島にいた。


二人で、島を歩くことがあった。


山の上から、海が見えた。


サルガッソとは違う海だった。


青く、波があり、風があった。


しかし、遠くに、緑がかった場所があった。


「あそこですか」とミナは言った。


「あの方向です」とハルは言った。「見えるかどうかは分かりませんが」


「見えます」とミナは言った。「緑の海が、遠くにあります」


「本当ですか」


「本当です」とミナは言った。「見えます、少し」


ハルは、同じ方向を見た。


「見えるかもしれません」とやがて言った。「あなたには、見えるんですね」


「サルガッソの色を覚えているので」とミナは言った。「目が、探してしまいます」


「航海士でも、陸からサルガッソが見えると言う者は、少ない」とハルは言った。


「好きになったものは、見えます」とミナは言った。


ハルは、ミナを見た。


「サルガッソだけが、好きになったものですか」と言った。


ミナは、遠い海を見たまま言った。


「サルガッソだけではありません」と言った。


「他には」


「嵐の後に風が来ると言った人も、好きです」とミナは言った。「先に言ってしまいますが」


ハルは、しばらく黙っていた。


「先に言われてしまいましたね」とやがて言った。


「言いたかったので」とミナは言った。


(第八話 了)


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