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第五話「嵐が去った」
嵐が去った。
朝だった。
甲板に出た。
空が、洗われたように青かった。
海が、静かだった。
海藻が、まだあった。
しかし、昨日より少なかった。
嵐が、流してくれていた。
そして、風が来た。
帆が膨らんだ。
船が動いた。
水夫たちが、歓声を上げた。
ミナは、甲板に立って、風を受けた。
久しぶりの風だった。
五日ぶりの風だった。
ハルが来た。
「風が来ました」と言った。
「言った通りでしたね」とミナは言った。「嵐の後に、風が来ると」
「言った通りでした」とハルは言った。「しかし、これほど早く来るとは思いませんでした」
「嵐を怖がらないでいたから、早く来たのかもしれません」とミナは言った。
「嵐が、気を使いましたか」
「そういうこともあるかもしれません」とミナは言った。「海のことは、海にしか分かりません」
ハルは、少しだけ笑った。
「航海士よりも、海のことが分かっていますね」と言った。
「分かっていません」とミナは言った。「ただ、好きになりました」
「サルガッソ海が」
「サルガッソ海も」とミナは言った。「それから、嵐の後に風が来ると言った人も」
風が来ていた。
船が動いていた。
海藻の海を、抜け始めていた。
(第五話 了)




