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静かな海の果て――サルガッソの恋  作者: Kentarou Tou


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第四話「嵐の前」


五日目の朝、空が変わった。


雲が来た。


黒い雲が、地平線の向こうから来た。


水夫たちが、走り始めた。


帆を畳んだ。


荷物を固定した。


「嵐が来ます」とハルが来て言った。「船の中にいてください」


「嵐の後、風が来ますか」とミナは言った。


「来ます」とハルは言った。「嵐の後には、必ず風が来ます」


「では、嵐は悪くないですね」とミナは言った。


ハルは、ミナを見た。


「普通は、嵐を怖がります」と言った。


「怖いです」とミナは言った。「しかし、その後に風が来るなら、悪くない」


嵐が来た。


雨が降った。


風が吹いた。


船が揺れた。


ミナは、船の中にいた。


揺れた。


しかし、本を持っていた。


読めなかった。


しかし、持っていた。


扉を叩く音がした。


ハルだった。


「大丈夫ですか」と言った。


「大丈夫です」とミナは言った。


「一人でいると、怖いでしょう」とハルは言った。


「怖いです」とミナは言った。「しかし、嵐の後を考えています」


「嵐の後を」


「風が来て、海藻の海を抜けて、どんな海が続くか」とミナは言った。「それを考えていると、怖さが薄くなります」


ハルは、ミナを見た。


「変わった方ですね」と言った。


「よく言われます」とミナは言った。


嵐が、続いた。


(第四話 了)

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