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静かな海の果て――サルガッソの恋  作者: Kentarou Tou / Kentarou Theater


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3/10

第三話「海の話」


三日が経った。


風は来なかった。


船の上での時間が、長くなった。


水夫たちは、仕事を見つけて動いていた。


ミナは、甲板で本を読んでいた。


ハルが来た。


「何を読んでいますか」と言った。


「航海の記録です」とミナは言った。「父の船で見つけました。昔の航海士が書いたものです」


「サルガッソのことが書いてありますか」


「書いてあります」とミナは言った。「この海に迷い込んで、出られなかった船の記録が」


「出られなかった船も、あります」とハルは言った。「しかし、出られた船の方が多い」


「どうやって出たんですか」


「風を待った」とハルは言った。「ただ、待った」


「待つことが、怖くないですか」とミナは言った。


「怖いです」とハルは言った。「しかし、待つしかない時は、待ちます。海は、人間の都合では動きません」


「割り切れていますね」


「三度の航海で、覚えました」とハルは言った。「海に逆らっても、無駄です。海のペースに、合わせるしかない」


ミナは、本を閉じた。


「あなたは、なぜ航海士になったんですか」と聞いた。


ハルは、少しの間、海を見た。


「見たことのない場所を、見たかったので」とやがて言った。


「見ましたか、見たことのない場所を」


「たくさん見ました」とハルは言った。「しかし、まだ見たいものがあります」


「何ですか」


「まだ分かりません」とハルは言った。「だから、まだ航海しています」


(第三話 了)

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