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エルフの森で人形は目覚める 〜男がいない世界で、人形の僕だけが男でした〜  作者: 那霧 たすく


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第31話 男性の証明


 僕とノニ、そしてゼフィラは、結局そこから5日間、研究室に籠ることになった。


 ルベルム達には先行してアニムの村に向かってもらい、後追いで合流できるようなら、アニムで落ち合う予定になっている。


 ミモザは僕の護衛も兼ねているので、フルツに残り、場所を借りてパンなどを作っていて、結構評判になっているようだ。

 定期的にノニやゼフィラのご飯として差し入れをしつつ、研究室にも顔を出してくれている。

 

 フルツのみんなと約束していた、握手会(?)イベントも、すっぽかす形になってしまい、申し訳ない限りだ。

 その代わりと言ってはなんだけど、村の中央広場では、呼び寄せたK1たちが愛想を振りまいたり、のんびりと日なたぼっこなどをしており、これはこれで可愛いと、なかなかの人気らしい。

 


 さて、では肝心の僕たちが、その5日間でどんな事を行っていたかというと……


 まずは、ひたすら治癒魔法の勉強だった。

 ノニから治癒魔法の基礎技術……つまりはナノマシンへのアクセスと、期待する動作の指示、魔力供給による強制駆動とでも言うべき操作の方法を、徹底的に叩き込まれた。


 元々肉体を持っており、ある程度部位などを確認しながらナノマシンと繋がれるノニと違って、僕は完全にイメージ力のみでナノマシンに指示を出さなければならない。

 これが、思ったより難題だった。大まかなイメージでは、思った通りのものが作れないのだ。

 例えば、難易度が低そうな手の指を作ろうとした時でも、しっかりとイメージしないと、人差し指のつもりが中指が生えてしまったり、左右の手の区別ができていなかったり、下手をしたら足の指が生えてしまったりという始末だ。


 ノニや、ゼフィラの身体を参考に見せてもらいながらの作業ですらこうなのだから、自分の記憶の中にしかない肝心の部分についてなど、言うまでもない。


 数日の訓練の後、ある程度の基礎技術が身についたと判断した僕は、ついに男性として最も重要な部分の生成にチャレンジを開始した。

 そう、曰く『男性のシンボル』と言うやつだ。

 

 ゼフィラたちの髪の毛を素材に、あーでもない、こーでもないと、机の上で僕のナニを作り上げていく工程はシュール以外の何物でもなかった。

 というか、僕のナノマシンの設計図通りに生成しているからには、大きさや形も、もちろん僕本来のものであるわけで、ぶっちゃけメチャクチャ恥ずかしかった。


 でも、ノニもゼフィラも真剣に手伝ってくれているのだし、恥ずかしがっている場合じゃないのは分かっていたから、ちゃんと頑張ったよ……

 まあ日がな一日、そんなモノをこねくり回していたら、感覚が麻痺してすぐに慣れたけどね。


 そして5日目の昼下がり、ついにソレは完成した。


 残念ながら、いわゆるガワだけであり、肝心の『種』を生成する能力はまだない。

 だが、それ以外はなかなかのものだ。

 

 モノの形ができて、構造を把握してからは、ノニやゼフィラ達お得意の魔法技術による補助、というか改造が一気に進み、血液の代わりに魔力充填による膨張機能も完備。

 僕の毛糸を神経接続することにより、普通のソレと変わらず、感覚と感情の高まりに合わせて膨張し、なんと水魔法で生成された、疑似体液の射出機能まで実現されているのだ!


 ――もう、何からナニまで、本当に何言ってるか分かんないけど、とにかくできてしまったのだ。

 

 無駄にレベルの高い技術者が集まって、ブレーキ無しで暴走すると、とんでもない事が起きるのだということを、改めて実感したよ。


 そして現在、ようやく一時試作品として完成したソレは、僕のあるべき場所でフィッティング(?)されている。

 それ以外の全身の体表は、僕とノニで作ったラテ製の皮膚で覆われ、見た目としては普通に下半身丸出しの男が、ノニたちの前に立ちはだかっている状態だ。

 はい、どう見ても変態です。本当にありがとうございました。

 

 しかも、僕の前にしゃがみ込んだノニとゼフィラが、やり遂げた達成感とともに、興味深げにソレを間近で眺めているというオマケ付き。


 ……さっき慣れたと言ったな。あれは嘘だ。

 さすがに自分の股間に取り付いているモノをマジマジと見られるのは、恥ずかしすぎる!


「あの、ゼフィラ……さすがに、もう服を着てもいいかな……?」


「なんじゃ、ケチケチするでないわ。もう少しじっくり見せてくれてもいいじゃろうが」


 ゼフィラの言葉に、ノニもコクコクと頷く。

 ていうか、ノニの鼻息がちょっと荒くなってる気がする。

 なにこの羞恥プレイ……


「それにしても、コレが儂らのココに入るのか?まだ平常時とは言え、こんなに柔らかくては、入れるのが大変そうじゃの?」


 ペロンと自分のスカートをめくり上げるゼフィラ。

 どこまでも滑らかで白い脚と、下着に包まれているとはいえ、魅惑的で艶めかしいその付け根が、僕の目に無防備に晒される。

 

「だから、そんな簡単に見せびらかさないでってば!」

 

 毛糸人形だった頃の僕ならともかく、今は一応男としての身体を持っているんだから!

 って……あっ……ヤバ……っ!?

 

「お? なんじゃ? 急に大きくなり始め……て……」

 

 ゼフィラの目が驚愕に見開かれる。


「ケ、ケイよ……こ、これは大きすぎんか? こんなの入れたら、ヘソまで届いてしまうかもしれんぞ……」


 若干怯えの混ざった目をして、少し身を引くゼフィラ。

 やめて、そんな目で見ないで……ちょっと変な気持ちになっちゃう。


「何でさらに大きくなっとるんじゃ!?」


 完全に引いてるゼフィラ。

 そんなゼフィラを押しのけるようにして、ノニが身を乗り出してきた。

 

「いいでしょう、わかりました。ここまで来たら私が最後まで面倒を見ます! さあ、私が実験体になりますから、どうぞ私の中に……」


「な!? 儂だって大丈夫じゃ!それくらい受け入れてみせよう!さあケイ、儂の中に来るがよい!」


「そんなことしないよっ!?」


 勘弁してください。

 こんなとこでいきなりおっ始めるほど、頭のネジは外れてないからね?


 僕はさっさとズボンを履いて、ようやくまともな人間らしい姿を取り戻した。

 ……何で2人ともちょっと残念そうなの?


「う、うむ。まあ、なんじゃ。ひとまずケイの身体については、こんなところじゃろう。今後、必要であれば徐々に不足分を生成していけばよい」


 ようやく一息という感じで、ゼフィラが表情を緩めて、空いた椅子に腰掛けた。

 肩の長さになった髪の毛を後ろで結わえており、小さな毛束の尻尾が、後ろ頭でピョコピョコ揺れている。


「うん、2人ともありがとう。なんとか光明は見えたよ。ここからは僕の努力次第だ」


「無理に身体全てをホムンクルスと同じ作りにする必要もないですからね。あえて土人形の部分を残すことで、肉体を強化するという方法もあります」


 ノニも、寝る間を惜しんで僕のために協力してくれた。

 本当に、感謝しかないよ。ありがとう。


「これからも、一緒に頑張りましょう!」


 うんうん、そうだね…………ん? 何て?


「あの、ノニ? 僕はもうこの村を発たないといけないんだけど……?」


「ええ。ですから私も一緒に付いて行きます。これからも共に男性の身体の研究を続けましょう!そして完成のあかつきには、その効果確認として是非とも世界初の繁殖行為を私と……!」


「待てい!また何をとち狂った事を言っておるか!お主にはフルツの村を治めるという仕事があるじゃろうが……」


「そんなものは、適当に誰かに引き継ぎます!」

 

 ゼフィラの呆れたような制止にも、ノニは止まる様子がない。

 なんと言うか、完全に熱に浮かされたというか、ある種、熱狂に近い色が瞳に宿っている。


「適当って、お主……族長の仕事を何だと思って……」


「エルフの存亡が掛かった問題と、村の取りまとめと、どちらが大事だと言うのです? これは私のやるべき使命なのです!」


「いや、それは……ううむ……」

 

 おお、珍しくゼフィラが押されてる?

 まあ一応、ある意味正論ではあるからなあ……

 とは言えだ、ちょっと我を失ってるみたいだから、一度落ち着かせた方が良さそうだ。


「ノニ」


「なんですか?私は正しいことをっ……」


 さらに何か言い募ろうとしたノニを、力強く抱きしめる。

 ノニの細い体が、僕の腕の中でビクンと硬直した。

 僕はノニの背に回した手で、優しくその背筋を撫でる。

 

「ふわぁ……け、ケイさん……?」


「ありがとう。ノニの気持ちはとても嬉しいよ。でも、そんなに焦らなくても大丈夫。ちゃんと頑張るから、ひとまずは僕に任せてくれない?」


「そ、それは……でも……」


 もう一息かな?

 よし、じゃあ今回のお礼に、別の「初めて」をノニにプレゼントしようか。


 実は今回の作業で、余ったノニたちの髪の毛を素材にして、もう1つ作り出したものがある。

 これに関しては、どうしても僕が欲しかったので、半ばワガママを通した感じで、生成させてもらった。


 僕はノニを抱きしめたまま、少しだけ身体を放すと、片手の指をノニの顎に添えて、クイッと顔を上げさせる。

 

 そして、おもむろに唇を重ねた。


「……!!?」


 ノニの目が見開かれる。

 が、僕がそのまま唇をゆっくりと()むと、目を閉じて、僕に身を任せてきた。


 そう、今回作ったもう1つの部位。それはこの『口』だ。

 唇から口内の歯や舌まで、ノニたちのものを参考にしつつ、完璧に作り上げた。

 舌には味を感じるための味蕾までしっかり実装されており、これで念願のミモザのパンの味を知ることができる。と思っていたのだが……まさか先にこんな使い方をするとは思わなかったな。

 

「ん……ちゅっ……ね、またすぐ会えると思うから、ひとまず、フルツの村をお願いね?」


「ふあい。わかりましたぁ……」

 

 ノニの瞳からは先程までの熱狂が抜け落ち、トロンと蕩けたように、僕を見つめている。

 ふう。なんとか説得に応じてくれて良かった。


「今のどこが説得じゃ……」


 ……うん、ごめんなさい。

 我ながら無理があるとは思ってます。


「まったく、そんなに簡単に『初めて』を与えてしまいおって……」

 

 あれ? 今度はゼフィラの機嫌が悪い?

 ゼフィラには珍しく、見事な膨れっ面だ。

 あー……うん、まあ理由は分かりきってるよね。


 僕は、ぽやーっと呆けているノニを、空いている椅子にそっと降ろす。

 そして、ツンとそっぽを向いているゼフィラに向き直った。


「ねえ、ゼフィラ。こっち向いて?」

 

「そんな、お情けのような二番煎じで誤魔化そうなどとせんでよい。皆に愛を注いでほしいと頼んだのは儂じゃ。お主の思うようにすれば……」

 

 僕はゼフィラの顔に優しく手を添えると、その言葉を遮るように、有無を言わせず唇を奪った。

 そしてそのまま、ヌルリと僕の舌がゼフィラの口内に滑り込む。


「!!??!!?」


 何が起こったのか理解できずに混乱しているゼフィラの舌を、僕の舌が絡め取り、ジュルリと吸い上げた。

 ゼフィラの身体から完全に力が抜け落ち、腰砕けの状態でへたり込むのを、その細い腰に手を回して支える。


 たっぷりと舌を絡めた後、ゆっくりと口を離し、僕は最後にゼフィラの濡れた唇をペロリと舐めた。


「正真正銘、僕の『初めて』だよ。どうかな?」


 ゼフィラからの反応は無い。

 完全に意識を飛ばしてしまったようだ。

 

 僕がこの世界で初めて味わったのは、ミモザのパンでも、シレネの家庭料理の味でもなく、さっき飲んでいた茶葉の風味が残る、甘いゼフィラの味だった。


 

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