表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフの森で人形は目覚める 〜男がいない世界で、人形の僕だけが男でした〜  作者: 那霧 たすく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/21

第3話 はじめての学校

 翌日、僕はティリアに連れられて、学校へ向かうことになった。

 ティリアの話では、この村の学校というのは世界の一般常識や魔法の使い方などを子供たちに教える場らしい。

 

「いってきまーす!」


 元気に家を飛び出すティリア。その手に握られた僕。

 駆け出すティリアの手の中で、ブンブンと振り回され、景色がぐるんぐるんと跳ね回る。

 

『おおおお……酔う酔う……っ!ティリア、やめてやめて』


 現状、自力で目をつぶることができない僕にとっては、軽い拷問に等しい。


「ふえ?あ、ゴメンねケイちゃん!」


 気づいたティリアが腕を止め、しばらく悩んだ末に、僕を自分の服の腰に巻かれた布のベルトに差し込むような形で固定した。


「これで、大丈夫かな?」


『うん、ちゃんと前も見えるし、いい感じ。ありがとうティリア』


「えへへ、良かった!じゃあ、しゅっぱーつ」


 にへっと可愛らしい笑顔を浮かべて、歩き始めるティリア。

 村の中を進みながら、僕のために色々と指差して説明してくれる。


「あれが道具屋のエーリカさんの家で、こっちがいつもパンを作ってくれるミモザさんの家だよ!」


 森を切り開いて作られたと思われるフラウ村だが、その家々は、自然の木をそのまま支柱のようにして建てられていたりと、森との調和を意識して作られている様子が見て取れた。

 

 そんなティリアの説明を聞きながら興味深く村の様子を眺めていた僕の横手から、遠慮気味に声がかけられる。

 

「おはよう、ティリアちゃん」

 

「あっ!リーリちゃん、おはよー!」


 む、幼女が増えた。

 

 挨拶しつつ近寄ってきたのは、ティリアと同様に新緑の髪の毛をした、少し内気な様子の少女だった。

 リーリという名のその娘は、ティリアの友達で、同じく学校に向かう途中らしい。


「ティリアちゃん、その子は?」

 

 目ざとく僕を見つけたリーリが、しゃがみこんで僕に興味を示す。


「ケイちゃんだよ!ゼフィラ様から貰ったの!お話しもできるんだよ!」

 

「え?そうなの?えっと、こ、こんにちは、ケイちゃん」

 

『…………』

 

 ああ、こんにちは、リーリ。よろしくねっ……と愛想よく返事をしたのだが、どうやら聞こえていない様子。


「……お話し、してくれないよ?」


 おっと、幼女のジト目は心にくるから、やめてもらいたい。


「あっ……そっか、ゼフィラ様に魔力のぱすとか言うの繋いでもらわないと、お話しできないかも」


「そうなんだ……ゼフィラ様が言ってるなら、そうなんだね。いいなぁ、私もお話したいなぁ」


 ふむ、ゼフィラは随分と信頼されてるみたいだ。さすがは村長と言ったところか。

 見た目はこの子らと似たようなものなんだけどね。


「後でリーリちゃんもお話できるように頼んでみるね!」


「うん、ありがとう。お願いね」


 仲良く並んで学校に向かう2人。

 道すがら、何人かの村人と挨拶を交わすが、皆が若い見た目をしており、一番年上に見える人でもティリアの母親のシレネと同じくらいだ。

 

 そして何より……本当に、女性しかいない。出会った人も、畑仕事をしている人も、すべてが女性で、男性と思われるエルフは1人も見かけることがなかった。


 ゼフィラに聞いていた話で、ある程度の予想はしていたが、実際に目にするとその異様さが際立つ。


 そんな物思いに耽る中。僕たちは目的地に到着した。


「ケイちゃん、ここが私たちの学校だよ!」


 そこは、少し開けた広場のような草地。

 立派な巨木に黒板のような板が立てかけてあり、その前に、イス代わりの切り株がいくつか置いてある。

 なんとも開放的で、のどかな学校だった。


「おーティリア、リーリ、遅ぇーよ」


「…………おはよ」


 既にその場には先客が2人いた。

 ……幼女が倍になった。


「あ、カレンちゃん、ルティスちゃん、おはよー」

 

 若干、ティリアたちより背の高い少女が2人。

 共にティリアと同じく緑色の髪の毛をしており、活発そうで明るい雰囲気の、短い髪の子がカレン。肩口まで伸びた髪に、表情の乏しい、無口な感じの方の子がルティスと言うらしい。

 

 というか、どうやらこの学校の生徒はこれで全部の様子。


「ん?ティリア、人形なんか持ってきたのか?相変わらずお子様だなー」


 カレンがティリアの腰帯から僕をつまみあげる。

 お、なんだ?いじめっ子ムーブというやつか?

 持ち上げた僕を自分の顔の前に持ってきて、まじまじと見つめるカレン。

 やがて、その頬がわずかに紅く染まる。


「な、なかなか、カワイイじゃんか……」


 意外と乙女だった。


「返してよカレンちゃん!ゼフィラ様に貰った大事な人形なんだからー!」


「げ、ゼフィラ様に!?」


 途端に顔色が悪くなるカレン。

 あーあ、知らないよと、ルティスが他人事のように呟く。


「ゴメンって!ほらもう返すから!だから……ゼフィラ様には変なこと言わないでくれよ?な?」


 平謝りして、僕をティリアに返すカレン。

 ゼフィラ……お前いったい何やったら、ここまでちびっ子たちに恐れられるんだ……?

 

 などとワチャワチャしているうちに、どうやら先生が来たようだ。

 やって来たのは、プラチナブロンドの髪を腰まで伸ばした少女。見た目は人間で言うと10代後半くらいか。


「アルメリアせんせー、おはようございまーす」


「はい、おはようございます」


 アルメリアは眠そうな目でこちらをチラリと見やる。

 仲良く並んで座ったティリアとリーリ。そして、その間に鎮座した僕。

 

「あ、せんせー、この子はケイちゃんです」


「はい。ゼフィラ様から聞いています。よろしくケイ」


 なるほど、既に根回し済みか。

 詳しい事を知らないカレンたちが怪訝そうな顔をする中、アルメリアは生徒たちを見回した。

 

「今日は、今までのおさらいも兼ねて、この世界と私たちエルフが置かれている状況についての話をします。年長組の2人にとっては既知の内容も多いはずですが、復習のつもりで聞いてください」


 そこから、アルメリアはこの世界の状況について、色々と教えてくれた。


 今僕たちがいるこの大陸は、ユーフォニアという名前で、エルフの他にも、人間やドワーフといった色々な種族が住んでいるらしい。

 ただ、他種族間での交流はあまり活発には行われておらず、特に最近はそれどころではない事情がある。


 それが世界的に問題となっている、人口の減少だ。

 

 従来、寿命や病気など何らかの理由でエルフの数が減ると、それを補充するかのように、村のどこかに赤ちゃんが運ばれてきていたらしい。

 基本的には夜中など、人目につかないように置き配されているらしいが、時折、赤ちゃんを置いて飛び立つ鳥の姿が目撃されている。


 しかし、近年、赤ちゃんが運ばれてこないという問題が発生しているとのこと。

 今の所、ティリアを最後に、近隣の村全てにおいて新しい赤ちゃんが運ばれてきたという報告はない。

 長命のエルフだからこそ、まだ致命的ではないが、緩やかに、だが着実に人口が減少の一途を辿っている。

 

 また時を同じくして、魔獣と呼ばれる正体不明の害獣の発生頻度が急増しており、魔獣に襲われて命を落とすエルフが増えたことも、人口減少に拍車をかけていた。

 

 そしてこの問題は、どうやら全ての種族において発生しているらしい。

 特に寿命が短い人間種にとっては、危機的状況となっているようだ。

 

「はい、ではカレン。現在この村の人口は何人か分かりますか?」


 アルメリア先生の質問が飛ぶ。

 ほら、居眠りなんかしてるからだぞ、カレン。


「ほえ!?えっと、その、200人……くらい?」


「正確には228人ですね。元々、エルフの村の人口は256人で安定していました。これは他のエルフの村であるアニムやフルツでも同様です。しかし、現在はどの村でも人口が減少し続けています」


 村の人数が256人で固定……?

 もはや恣意的であるとしか考えられないな。

 

「とにかく私たちエルフが滅亡しないために、できる限りのことをしなければなりません。魔獣に対抗できるよう魔法技術を磨き、世界に何が起きているのか、少しでも多くの情報を集めるのです」


 アルメリアの目が僕を捉える。

 なるほど。ゼフィラが僕に期待していたのは、そういうことか。

 僕だってできることなら、情報提供でも何でもしてやりたい所だが、何せ自分でも情けないほどのポンコツ具合だからな……


「さて、今日のところはこれくらいにしましょう。続きはまた明日。魔法技能の勉強も再開しますからね」


 まだ陽が頂点にも至らない時刻だが、本日の授業は終了らしい。滅亡の危機などとは言っても、やはり長命のエルフ、生活自体はのんびりとしたものだ。


「せんせー、さようならー」


「はい。さようなら……ケイも、また明日」


 眠そうな半眼で、チラリと意味深な流し目。

 そんな目で見ないでくれ。何もできない自分が、何だかいたたまれない気持ちになる。


 と、イス代わりの切り株から立ち上がりながら、リーリがティリアに声を掛けてきた。

 

「ね、ティリアちゃん、水浴びしてこうよ」


「うん、行こうリーリちゃん!ケイちゃんも一緒に行こうね。キレイに洗ってあげる!」


 リーリのお誘いに、元気よく応じるティリア。

 

 水浴び……って、え?それ僕も行くの?

 その、なんか色々と、大丈夫?

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ