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エルフの森で人形は目覚める 〜男がいない世界で、人形の僕だけが男でした〜  作者: 那霧 たすく


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第11話 賢人会議


 夜も更け、村人たちも寝静まる頃。

 フラウ村の集会所となっている建物に、5人のエルフが集まっていた。


「では、今月の賢人会議を始めるとするかの」


 円形の机の一端、時計に例えるなら12時の位置に座ったゼフィラが、厳かに告げる。

 他に席に着くのは、この村の最高実力者である四賢者の称号を戴く4人。


 学校の先生 アルメリア

 道具屋のエーリカ

 パン屋のミモザ

 ティリアの母 シレネ

 

 肩書きだけ聞けば、まるで近所の井戸端会議である。


「まずは、何か村の中での懸念点や、急を要する問題などが発生しているようなら、報告してほしい」


 ゼフィラの言葉に、スッと手を上げるアルメリア。


「最近、川辺に作った露天風呂の混雑度が高くなっています。風呂の拡張と増設を許可してください」


「ふむ、具体的にはどの程度の大きさにする予定なんじゃ?」


「現在の50倍くらいです」


「却下じゃ!何を考えておる!川の水を枯らす気か」


 思わず声を荒げるゼフィラ。

 それに対し、アルメリアは立ち上がると、バン!と机を叩いた。


「横暴です!風呂は命の洗濯なんです。風呂のない世界など滅びるべきです!」


「横暴なのはどっちじゃ……」


「あと、ケイを私にください」


「却下じゃ!!」


 結局、アルメリアの要望については、同サイズの露天風呂をもうひとつ増設することと、混雑時の入浴時間制限を行うことに決定した。


「他には何かあるかの?」


 今度はミモザが手を上げる。


「問題というほどではないんですけどぉ、最近開発したパンが人気すぎてぇ、原材料が不足してるんですぅ……品切れが続いちゃって、残念がってる人がいますぅ」


「ふむ、他の村から仕入れたり、行商などに発注する必要があるかもしれんの。何が足りんのじゃ?」


 ゼフィラの問いに、ミモザは指先をあごに添えて、おっとりと答える。

 

「砂糖竹と蔓黒豆ですぅ。蔓黒豆を甘く煮込んで潰したペーストをパン生地に入れて焼いた『あんこパン』が大人気なんですよぉ」


「おお、あれか。儂もこの前一度食べたが、甘くてうまかったのぉ……さすがミモザ、良いアイデアを考えついたものだの」

 

「いいえ、あれはケイくんから教えてもらったんですよぉ。他にもいろいろと美味しそうなパンのアイデアがあるみたいなんで、ぜひ、うちのパン屋で一緒にパンづくりを手伝ってほしいんですけどぉ?」


「……またケイか……あやつめ、少しは手加減というものを覚えんか……」

 

 ミモザの依頼に関しては、とりあえず村への原料の仕入れ量を調整するということで話がついた。ケイの手伝いについては、本人とティリアの了承があれば、たまには可としておく。


「で、他には何か……」


 すでに疲れが見えているゼフィラに、今度はエーリカが手を上げる。


「エーリカか……なんじゃ?」


「ケイを私にくれ」


「もはや、取り繕う気すらないのう……」

 

 ガックリと肩を落とし、深いため息をつくゼフィラ。

 

「……一応、理由を聞いておこうかの」


「うん、ちょっとバラして中を見てみたい」


「だから、少しは取り繕わんか!……そもそも、ケイの本体を編んだのはお主じゃろうが」


 もともと人形としてのケイの身体自体は、手先が器用で魔道具を作るのが得意なエーリカに、ゼフィラが依頼して作成してもらったものだった。

 材料である魔羊の毛をより合わせるところから、本体の編み込みまで、エーリカのお手製である。


「だからこそ、何であんなことになっているのか気になるんだ。1回バラさせてくれ。ちゃんと元に戻すから」


「ダメじゃダメじゃ。別に中には何も入っとらん。それにティリアが悲しむ」

 

 エーリカの意見は完全却下となった。

 疲れ切った表情のゼフィラは、頭痛を堪えるように、こめかみを押さえる。

 そして再び口を開く前に、今度はシレネが手を上げた。


「なんじゃ、シレネ?」

 

「ケイちゃんは、うちの子なのであげません」


「はぁ……わかっとるよ。もうケイは家族も同然じゃ。勝手に他の者に渡したり、ましてや分解なぞさせんから安心せい」


 苦笑したゼフィラを見つめるシレネの目が、優しげに細められる。


「ありがとうございます。うふふふ……あんなに可愛くて謎な生き物、手放してなるものですか……」


「……この村は頭のおかしい奴しかおらんのか……」


 ゼフィラは、頭を抱えて机に突っ伏した。


 ――――――――――――――――


「さて、そろそろ本題に入ろうかの」


 気を取り直したゼフィラの言葉に、ピリッと部屋の空気が引き締まる。

 今までの緩んでいた雰囲気が嘘のように、四賢者全員の目がゼフィラへと集まった。


「アニムの村が、魔獣の襲撃を受けたという連絡があった」


「……被害状況は?」


 エーリカの声のトーンが、わずかに低くなる。

 

「幸いにも死者はゼロじゃ。ただ、防衛にあたった者たちのうち、意識不明の重体が1人。5人が重傷。軽傷者にいたっては20人以上とのことじゃ」


「魔獣が凶暴化しているとは聞いていましたがぁ……そこまでなのですかぁ?」

 

「アニムの族長のリオンは出なかったのですか?彼女なら、魔獣ごときにそう簡単にやられはしないでしょうに」


 ミモザとシレネの問いに、ゼフィラは一呼吸置いてから、静かに答える。

 

「意識不明の1人とは、そのリオンじゃ。どうやら襲撃してきた魔獣の中に『エルフ喰い』が居たらしい」


「「!!」」


「その場を見ていた者によると、リオンは村を襲撃してきた魔獣共を最前線で食い止めておったが、その中に紛れておった『エルフ喰い』に不意を突かれたとのことじゃ」

 

 エルフの天敵とも言える魔獣『エルフ喰い』

 凶暴な狼の姿をしたその魔獣は、魔法の効きづらい体質である上に、高い知能を持ち、エルフに対して並々ならぬ執着をもっている。


「かろうじて魔獣の群れ自体は追い払ったらしいが、『エルフ喰い』は取り逃したうえ、リオンは意識不明、その他、魔法が得意な者たちにも負傷者多数ということで、応援の要請が届いておる」


「私が行きます。今度こそ『エルフ喰い』を消し炭にしてみせます」


 アルメリアのまとう魔力の圧が高まり、周囲にも伝わるほどの熱を帯びる。


「落ち着かんか、話は最後まで聞け。この話はもちろんフルツの村にも届いておる。フルツの族長のノニは回復魔法の達人じゃからの、すぐにでもアニムに向かうじゃろう」


 ゼフィラのハシバミ色の瞳が、鋭い光を持ち始める。

 

「だから、儂も行く。共有したい情報もあるし、少し時期は早いが族長会議でも開くことにするのじゃ。ついでに、魔獣共を根絶やしにしてくれよう」


 幼いゼフィラの表情に、残忍とも言えるほどの壮絶な笑みが浮かんだ。


「アルメリア、エーリカ、儂と一緒に来い。ミモザとシレネは不測の事態に備えて今回は留守番じゃ。警戒を怠るでないぞ」


「「ハッ!!」」


 四賢者は揃ってゼフィラに頭を下げる。

 多くのエルフを巻き込んだ、かつてない事態が動き出そうとしていた。


 ――――――――――――――――


 『生命の揺り籠』管理システム『Eir』より報告。

 ケージNo.100456〜100466まで、生成完了。

 出力チェック開始……エラー。

 

 設計品質未達。出力判定「NG」

 品質レベルカテゴリより、型式をType-Zと認定。

 廃棄処理実施。


 ……エラー

 Nastrond システムダウン中。

 一時収容エリア オーバーフロー。

 Type-Zの流出を確認。

 N.O.R.Nシステムへの早急な対処を要求します。

 早急な対処を…………

 


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