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三大勢力

 会議の決定は、即座に実行へと移された。


 王都の中庭。


 整列する兵。


 旗が掲げられ、号令が飛ぶ。


 グランデール遠征軍。


 急ごしらえとはいえ、その規模は決して小さくない。


 南方奪還で勢いづいた貴族たちが兵を差し出し、教会もまた信徒兵を動員していた。


「……三万、か」


 レオンが呟く。


 視線の先には、出陣準備を進める軍勢。


 かつての王国軍とは違う。


 混成。


 貴族軍、教会兵、そして王城直属の兵。


 統制に不安が残る構成。


「指揮系統は?」


 隣に立つ重臣に問う。


「形式上は王国軍の将が総指揮」


 一拍。


「ですが……実質は教会と分権になるかと」


 苦い表情。


 レオンは何も言わない。


 分かっている。


 この遠征は、すでに“王国の戦”ではない。


 教会の意志が強く反映されたものだ。


 その時。


「殿下」


 ヴァルド――ノルディア大公が歩み寄る。


「北方の兵、一部をお貸しします」


 短く言う。


「……よいのか」


 レオンが視線を向ける。


「我らも、無関係ではありません」


 グランデール。


 かつての敗北の地。


 その因縁。


「……感謝する」


 レオンは頷く。


 だが、その目は晴れない。


 別の場所。


 教会の一団。


 枢機卿が、出陣する兵を見渡している。


「順調でございますな」


 大司教が微笑む。


「ええ」


 枢機卿もまた穏やかに頷く。


「すべては、神の御意志のままに」


 その言葉の裏にあるもの。


 理解している者は少ない。


「魔王と死霊王」


 小さく呟く。


「存分に戦っていただきましょう」


 その隙を――奪う。


 計画は、すでに進んでいる。


 同時刻。


 北方。


 雪原の彼方。


 黒い軍勢が、動いていた。


 魔王軍。


 再編された軍勢は、以前よりも引き締まっている。


 無駄がない。


 ただ、進む。


 その中心。


 一際濃い魔力。


 魔王。


 自ら前線に立つ。


 周囲の魔族たちの士気は高い。


 恐怖と、信頼。


 両方によって。


「……近いな」


 魔王が呟く。


 視線の先。


 グランデール。


 死の都。


 そして。


「アレイン」


 名を呼ぶ。


 それだけで、空気が震える。


 その頃。


 グランデール。


 静寂の街。


 崩れた建物の間を、アンデッドが巡回する。


 秩序だった動き。


 無駄はない。


 その中心。


 高台に立つ影。


 アレイン。


 何も言わず、遠くを見ている。


 その背後に、ガルドが控える。


「……来ます」


 短く。


 アレインは、わずかに目を細める。


 感じている。


 二つの大きな流れ。


 一つは、魔王軍。


 もう一つは――


「……人間も、か」


 興味なさげに呟く。


 だが。


 完全に無視することもない。


 わずかに思考する。


 そして。


「……構わん」


 それだけ。


 来るなら、来ればいい。


 拒む理由もない。


 ガルドは頭を下げる。


「は」


 短い返答。


 それで十分だった。


 三つの勢力。


 王国軍。


 魔王軍。


 そして死霊軍。


 それぞれが、同じ場所を目指して動き出す。


 グランデール。


 かつての激戦の地。


 再び。


 すべてが交わる。


 避けられぬ戦いが、迫っていた。

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