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三つ巴

 砕けた城門の前。


 雪煙の中で、三つの軍が対峙する。


 次の瞬間――激突。


 魔王軍とアンデッド軍が正面からぶつかる。


「迎え撃て!!」


 ヴァルグの怒号。


 魔族が一斉に踏み込む。


 対するアンデッド。


 声はない。


 ただ、進む。


 剣を構え。


 槍を突き出し。


 盾を並べる。


 装備は整っている。


 錆びてもいない。


 朽ちてもいない。


 規律。


 それだけで動く軍。


 衝突。


 金属音が響く。


 魔族が押す。


 腕力。


 膂力。


 単純な戦闘能力では、明らかに上。


 一体一体で見れば、アンデッドは劣る。


 弾き飛ばされる。


 砕かれる。


 押し込まれる。


 だが。


 崩れない。


 倒れても。


 欠けても。


 前列が消えれば、後列が埋める。


 止まらない。


 恐怖がない。


 退かない。


 その異質さが、流れを止める。


「チッ……!」


 ヴァルグが舌打ちする。


 思った以上に、削れない。


「数で押せ!!」


 命じる。


 魔族がさらに圧をかける。


 アンデッドが砕ける。


 だが同時に、魔族も倒れる。


 一進一退。


 均衡。


 崩れない。


 その中で――


 一箇所だけ。


 戦場が、歪んでいた。


「——」


 言葉はない。


 ただ、一振り。


 ガルドの剣が振るわれる。


 空気が裂ける。


 見えない圧が走る。


 次の瞬間。


 魔族がまとめて吹き飛ぶ。


 数体。


 いや、それ以上。


 まとめて。


 地を転がり、動かなくなる。


「な……っ!?」


 魔族側が動揺する。


 距離を取ろうとする。


 だが。


 遅い。


 二撃目。


 三撃目。


 間合いに入った瞬間、斬られる。


 防げない。


 受けきれない。


 そもそも、“重さ”が違う。


「……あれが」


 誰かが呟く。


 理解が追いつかない。


 だが、本能が理解する。


 あそこだけは――別格。


 元剣聖。


 その名は伊達ではない。


 ガルドの周囲だけ、明確に戦力差が逆転している。


 魔族が近づけば、斬られる。


 まとめて、吹き飛ばされる。


 その一点が、戦場の均衡を強引に保っていた。



 城壁上。


 壊れた石の上に、ノルディアの兵たちが立つ。


 誰も、動かない。


 ただ――見ている。


「……」


 言葉が出ない。


 眼下の光景。


 三つ巴の戦い。


 信じられない光景。


「……我々は」


 誰かが呟く。


「助かったのか……?」


 答えはない。


 ただ、戦いは続いている。


 その最前。


 ヴァルドもまた、立っていた。


 剣を手に。


 だが、今は振るわない。


 視線は一箇所。


 ガルド。


 あの剣。


 あの技。


 見覚えがある。


「……剣聖、ガルド」


 かつて王国に名を轟かせた男。


 その最期は聞いている。


 だが。


 今、そこにいる。


 形を変えて。


「……死してなお、か」


 小さく呟く。


 皮肉か。


 それとも敬意か。


 自分でも分からない。


 だが。


 確かなことが一つ。


 あの存在が来たことで――


 戦いは、終わっていない。


 まだ。


 抗える。


 その事実だけが、残る。


 雪は降り続ける。


 血と死の中で。


 三つの軍が、なおもぶつかり続けていた。

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