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籠城案

 王都ルミナス、王城・大会議室。


 混乱はまだ収まっていない。


 北方からの急報。


 南方からの進軍兆候。


 二つの報せが重なり、場は完全に揺れていた。


「静まれ」


 レオンの一言で、空気が止まる。


 ざわめきが消える。


 視線が集まる。


 代王。


 勇者。


 今、この国で最も決定権を持つ男へ。


 レオンはゆっくりと前に出る。


「結論を出す」


 短く。


 迷いはない。


「王都は――籠城する」


 その言葉に、空気が一瞬固まる。


 すぐに反応が返る。


「籠城……!」


「つまり、防衛に徹するということですか!」


「南北から攻められて、持ちこたえられるのか……!?」


 当然の疑問。


 だが。


 レオンは崩さない。


「王城は、この地の要だ」


 地図を指す。


「南北いずれから来るにせよ、王都を落とすにはここを通らねばならない」


 王城の構造。


 都市設計。


 それ自体が、最後の防衛線として機能する。


「つまり」


 一拍。


「ここを守り切れば、負けはない」


 断言。


 強い。


 だが、理に基づいた言葉。


「……戦力は」


 重臣の一人が問う。


「現在の残存戦力で、持ちこたえられるのですか」


 核心。


 全員が知りたいこと。


 レオンは即座に答えない。


 代わりに言う。


「確認する」


 視線を巡らせる。


「現在の兵力を報告しろ」


 すぐに応答が返る。


「王都常備軍、およそ六千!」


「貴族私兵、動員可能数三千!」


「負傷兵多数につき、実戦投入可能は七割程度!」


 別の声。


「騎士団は再編中! 即応可能は一千五百!」


 さらに。


「教会戦力は……」


 一瞬、言葉が詰まる。


「……現在、謹慎状態のため動員不可」


 重い沈黙。


 だが。


 レオンは頷く。


「いい」


 切り捨てるように。


「当てにしない」


 はっきりと。


 それだけで、空気が変わる。


 依存を断ち切る言葉。


「総戦力、およそ一万前後か」


 冷静に分析する。


「防衛戦としては、十分だ」


「しかし相手は魔王軍です!」


 声が上がる。


「しかも二方向から!」


「耐えきれる保証は――」


「ある」


 即答。


 言葉を被せるように。


 全員が黙る。


 レオンは続ける。


「南方の魔王軍は、長距離行軍直後だ」


 カイゼル軍。


「補給線も伸びている。即座に全力は出せない」


 現実的な分析。


「北方本軍は、進軍中」


「到達には時間がかかる」


 つまり。


「同時に最大戦力がぶつかることはない」


 整理されていく。


 混乱が、形になる。


「各個に迎撃する」


 戦略。


 シンプル。


 だが有効。


「そのために――」


 一歩踏み出す。


「王都周辺の民を、すべて内部に疎開させる」


 決断。


「南北の街道、村落の住民を強制移動」


「補給物資も同時に回収」


 誰かが息を呑む。


「時間が足りません!」


「間に合う」


 即答。


「行軍速度から逆算すれば、猶予はある」


 すでに計算している。


 その言葉に、反論が止まる。


「軍は即時再編」


「防衛線を三層に構築する」


 具体的な指示が飛ぶ。


「外周防壁」


「市街戦ライン」


「王城防衛」


 明確。


 迷いがない。


 そして。


 一人の重臣が、静かに問う。


「……本当に、勝てるのですか」


 静かな声。


 だが。


 この場の全員の本音。


 レオンは、その問いから逃げない。


 数秒。


 沈黙。


 そして。


「勝てる」


 はっきりと。


 断言。


 迷いは一切ない。


「守り切る」


 その一言で。


 場の空気が変わる。


 恐怖が、押し戻される。


 完全ではない。


 だが。


 立て直される。


 その上で。


「北方は、公爵家に任せる」


 ヴァルド。


 あの男ならば。


「持ちこたえる」


 信頼。


 そして。


「……死霊王は動かない」


 静かに言う。


 ざわめき。


「根拠は……?」


「性質だ」


 短く。


「奴は“崩れるのを待つ側”だ」


 断言。


「今はまだ、動く理由がない」


 だから。


「警戒はするが、主敵ではない」


 整理される。


 敵の優先順位。


 その言葉で、視界が開ける。


 レオンは最後に言う。


「やることは単純だ」


 全員を見渡す。


「守る」


 一言。


「それだけだ」


 沈黙。


 そして。


 誰も反論しない。


 できない。


 その言葉には、すでに覚悟が乗っていた。


 王都は籠る。


 逃げない。


 迎え撃つ。


 南から。


 北から。


 迫るすべてを。


 ここで、止める。

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