その後のシュベタイン王国
「どうした? なんか元気ないじゃないか」
カニドゥラックでカニを食べてもあまり覇気を感じないシスコにホープがそう声をかけた。
「別に。いつもと同じよ」
シスコはツンモードのようだ。
暫く沈黙が続いたあと、
「淋しいんだろ?」
と、図星を突いたホープ。
「だっ、誰が淋しいなんて言ったのよっ!」
「そう強がんなって。ずっと一緒に戦ってきたバネッサがいなくなったんだ。淋しくない訳なんてないだろ」
「べっ、別にそんなことないわよ。私がハンナリー商会に掛かりきりになってから、ほとんど一緒にいなかったんだから」
「それでも、戻ってくると思ってるのと、戻ってこないと思ってるのとは違うだろ?」
シスコは、ホープの言葉に反論できなかった。
「……いつまでも一緒にいれるわけじゃないわよ」
「それもそうか。でも、俺ならずっと一緒にいてやれるけど?」
ホープはシスコを見つめてそう言った。
「何よそれ? もしかしてプロポーズのつもり?」
「ははっ、まぁそんなところかな」
「だったら、もっとロマンチックにしなさいよ。こんなときに言わないで」
カニの汁でベタベタなときにプロポーズされたシスコなのであった。
◆◆◆
「ほら、ちゃんと注文取ってきな」
「うん……」
リッカはマーギンが別れを告げてから立ち直れていなかった。
「大将、手伝いに来たぜ」
「おー、毎晩悪いな」
タジキは特務隊の任務が終わったあと、リッカの食堂に手伝いに来ていた。そして、客が引けたあと、
「大将、ちょっとリッカを数日借りたいんだけど、ダメかな?」
「リッカに何させるつもりだ?」
「特務隊と軍人用の食堂を作ることになってさ、作る方はなんとかなるんだけど、注文取りとか配膳とか教えてやってほしいんだよ」
「そうか、他のやつもちゃんとした料理作れるのか?」
「俺が教えながらになるかな」
タジキが大将たちに相談すると、大将と女将さんは顔を見合わせて頷いた。
「数日でいいんだな?」
「うん。あとは自分たちでなんとかする」
「よしっ。俺たちも手伝ってやろう」
「えっ? 店はどうすんだよ」
「数日ぐらい閉めても問題ねぇ。それにそこの食堂だけでずっと食うわけじゃねぇだろ? うちの新規客の獲得にもなるってもんだ」
大将たちは環境を変えることで、リッカの立ち直りのきっかけにもなるんじゃないかと思い、タジキの手伝いをすることにしたのであった。
◆◆◆
「お前……それをどこで手に入れた?」
カザフが、訓練後にミスティから渡された指輪を見ていたら、ラリーに声を掛けられた。
「これか? これはマーギンの魔法の師匠から渡されたんだ。何にも説明してくれなかったから、意味が分かんねぇ」
「お前は、それが何か知らないんだな?」
「だから、意味が分かんねぇって言っただろ。お前はこれが何か知ってんのかよ?」
ラリーは黙った。お目付け役のサイモンとボンネルも黙っている。
「知らないなら知らないでいい」
「何だよそれっ! 知ってるなら教えろよ」
カザフがラリーに怒鳴ったが、ラリーたちは何も答えないのであった。
◆◆◆
「オルターネン・バアムを特務隊、大隊長に任命する。これからも我が国に貢献せよ」
「はっ! このオルターネン・バアム、ありがたく大隊長の任を拝命し、国のために尽くします」
王から直々に大隊長の任命を受けたオルターネン。
次いで、ホープとサリドンも隊長に任命された。
「ロッカ、本当に自分の隊を持たなくて良かったのか?」
任命式のあと、隊長への推薦を断ったロッカにオルターネンが改めて確認をする。
「えぇ。私には人を指揮する力はありません」
「星の導きのリーダーだっただろ」
「ハンターと特務隊とは違います。それに私が一番年上だったからリーダーになっただけですよ」
と、ロッカは笑って答えた。
「これから私は魔物を防ぐことに力を注ぎたいと思います」
「北の街の防壁か」
「そうです。マーギンから託されたパワーショベルで立派な防壁を作ってみせましょう。北の街が終わればライオネルや他の街や村も必要になるでしょうから、忙しい日々になりますよ」
「そうか。俺も嫁にずっと家にいてくれとは言わん。好きなことをしてくれ」
「はい。ありがとうございます」
ロッカは正式にオルターネンからプロポーズされていた。
「お披露目のパーティーにマーギンを呼びたかったな」
「そうですね……バネッサも呼びたかったですね」
◆◆◆
「のう、オルヒ」
「なんですか?」
オルターネンたちの任命式が終わったあと、王は王妃に淋しそうな顔で話しかけた。
「カタリーナは戻って来るかの?」
「どうでしょうね」
それに対して淡々と答える王妃。
「なし崩しにマーギンハーレムに加わるつもりじゃろうか?」
「それはありませんわ」
王の心配ごとを即座に否定する王妃。
「しかし、付いて行ったではないか」
「最後のわがままでしょうね。カタリーナが望んでも、マーギンさんは受け入れませんわ」
「なぜそんなことが分かるのじゃ」
「マーギンさんだからですわ」
「は?」
「マーギンさんはカタリーナを女性として見てませんもの。どちらかと言うと娘みたいな感じですわよ」
「し、しかし……カタリーナはマーギンを好いておったのではないのか?」
「でしょうね。でもカタリーナは王族。惚れた好いたは泡沫の恋だと理解してますわよ」
「そうじゃろうか……」
「だからこそ、ローズを自分に見立てたのでしょうね。これを乗り越えて、立派な王族になるのがマーギンさんの卒業試験なんだと私は理解しています」
王妃はカタリーナの気持ちを良く理解していたのであった。
◆◆◆
ラーのみんなに盛大に見送られたあと、マーギンたちはナムの集落に来ていた。
「こっ、こらやめんか。やめろと言っておるのじゃっ!」
「お前を子供と思って、あやしてくれてんじゃねーか?」
「なんじゃとーっ! 離せっ、離さんかっ!!」
ナムの集落に到着したあと、ハナコがミスティを鼻で巻き付けて、ゆらゆらとあやしてくれている。
ハナコから逃れようとジタバタ暴れるミスティを見て、ムーは大笑いしているのであった。




